格子QCDからハドロン間相互作用へ 石井理修(筑波大) 連携の位置関係 現在の計算法 今後5年間での到達点・目標 研究者間での連携

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

QCD Sum rule による中性子電気双極子 モーメントの再評価 永田 夏海(名古屋大学) 2012 年 3 月 27 日 日本物理学会第 67 回年次大会 共同研究者:久野純治,李廷容,清水康弘 関西学院大学.
今まで行ってきた研究 2003年11月 九州工業大学 工学部 物理  鎌田 裕之  .
Orbifold Family Unification in SO(2N) Gauge Theory
HBT干渉法における 平均場の効果の準古典理論
格子QCDによる核力ポテンシャル 石井理修 (東京大学) 2007年3月28日日本物理学会(都立大)45分講演、日本語.
---核力プロジェクトの近未来の拡張の形(私見)---
木村 匡志 極限ブラックホール近傍の 高速粒子衝突における “バックリアクション“の影響について (YITP 元OCU)
クラスター変分法による 超新星爆発用 核物質状態方程式の作成
重力レンズ効果を想定した回転する ブラックホールの周りの粒子の軌道
スパコンとJLDG HEPの計算環境 HEPnet-J
中性子過剰核での N = 8 魔法数の破れと一粒子描像
法政大学 石川壮一 1. はじめに 2. 3体力 3. 少数核子系における3体力の効果 4. モデル3体力による解析 5. まとめ
to Scattering of Unstable Nuclei
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
質量数130領域の原子核のシッフモーメントおよびEDM
RHIC-PHENIX実験での 直接光子測定
Lattice QCD approach to the nuclear force
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard)
The Nuclear force from lattice QCD
原子核物理学 第8講 核力.
電子 e 光子 g 電磁相互 作用を媒介 陽子 中性子 中間子 p n ハドロン 核力を  媒介 物質の 究極構造 原子 原子核 基本粒子
「計算科学による素粒子・原子核・宇宙の融合」
Λハイパー核の少数系における荷電対称性の破れ
ストレンジネスが拓く エキゾチックな原子核の世界
非局所クォーク模型Gaussianバリオン間相互作用とその応用
Muonic atom and anti-nucleonic atom
クォーク模型バリオン間相互作用 fss2 による 低エネルギー nd 弾性散乱
核物理の将来 WG ストレンジネス sub group
QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了
D中間子崩壊過程を用いた 軽いスカラー中間子の組成の研究
原子核物理学 第2講 原子核の電荷密度分布.
原子核の質量 B (束縛エネルギー) 束縛エネルギー *束縛エネルギーが大きいほど安定(質量が軽い)
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
担当教官 理論: 菅沼 秀夫 実験: 成木 恵 前期: それぞれ週1回のゼミ 後期: 理論ゼミ + 実験作業
LHC計画が目指す物理とは × 1:ヒッグス粒子の発見 2:標準理論を越える新しい物理の発見 未発見!
軽い原子核における芯のないモンテカルロ殻模型による第一原理計算 (A02班公募研究)
電子後方散乱の モンテカルロ計算と実験の比較 総研大 桐原 陽一 KEK 波戸 芳仁、平山 英夫、岩瀬 広.
チャネル結合AMDによる sd殻Ξハイパー核の研究
奈良女子大学 肥山詠美子 理化学研究所 根村英克 九州大学 上村正康 東北大学 木野康志 東京大学 山中信弘
「核力についてどんなことができるか」展望
原子核の殻構造の相対論的記述 n n n σ ω n σ ω n 柴田研究室 石倉 徹也 1.Introduction n n
有限クォークおよび有限アイソスピン化学ポテンシャル
ストレンジネスで探る原子核 -ハイパー核の世界-
素粒子分野における計算機物理 大野木哲也 (京都大学基礎物理学研究所).
中性子過剰F同位体における αクラスター相関と N=20魔法数の破れ
井坂政裕A, 木村真明A,B, 土手昭伸C, 大西明D 北大理A, 北大創成B, KEKC, 京大基研D
半経験的質量公式 (Bethe-Weizacker 質量公式: 液滴模型) 体積エネルギー: 表面エネルギー: クーロン・エネルギー:
QCDの有効理論とハドロン物理 原田正康 (名古屋大学) at 東京大学 (2006年11月6日~8日)
タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析
? 格子QCDシミュレーションによる南部-ゴールドストン粒子の 質量生成機構の研究 質量の起源 ドメインウォールフェルミオン作用
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
計画研究代表者 京都大学基礎物理学研究所 大野木 哲也
Marco Ruggieri 、大西 明(京大基研)
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
原子核物理学 第7講 殻模型.
課題研究 P4 原子核とハドロンの物理 (理論)延與 佳子 原子核理論研究室 5号館514号室(x3857)
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
ハイパー核物理分野から見た K原子核物理へのコメント
Brueckner-AMDの軽い原子核への適用
低エネルギー3核子分裂反応について 法政大学 石川壮一 1.はじめに 2.3体クーロン問題の定式化 p-p-n系
媒質中でのカイラル摂動論を用いた カイラル凝縮の解析
(K-,K+)反応によるΞハイパー核の生成スペクトル
現実的核力を用いた4Heの励起と電弱遷移強度分布の解析
J-PARC-HI 提案書へのコメント 高エネルギー原子核実験グループの立場から
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
軽い原子核の3粒子状態 N = 11 核 一粒子エネルギー と モノポール a大阪電気通信大学 b東京工業大学
Presentation transcript:

格子QCDからハドロン間相互作用へ 石井理修(筑波大) 連携の位置関係 現在の計算法 今後5年間での到達点・目標 研究者間での連携  共同研究者:   村野啓子(筑波大)   根村英克(理研)   青木慎也(筑波大)   初田哲男(東大) 連携の位置関係 現在の計算法 今後5年間での到達点・目標 研究者間での連携 計算資源やアルゴリズム開発に関する希望 他の計画班への期待 15+5 minuites talk 新学術領域WS 081201 筑波大計算科学研究センター

連携の位置関係 A01班 A02班 JLQCD project PACS-CS project 格子QCDによる核力 2+1フレーバ ゲージ配位 格子QCDによる核力 核力・ハイペロン力 クラスター 変分法計算による核物質 UMOA法計算による 有効核力 A02班 モンテカルロ殻模型や 密度汎関数法計算による 核構造 少数多体計算による ハイパー核

計算法(格子QCDから核力へ) S.Aoki et al.(CP-PACS Collab.), Phys. Rev. D71,094504(2005). (ππの散乱長の研究) 拡張 Static quarkを駆使する方法 波動関数から逆算する方法(こちらを用いる) N.Ishii, S.Aoki, T.Hatsuda, Phys.Rev.Lett.99,022001(’07). 格子QCDでNN波動関数(BS波動関数)を作る。 (Effective) Schrodinger 方程式を使って、 波動関数からNNポテンシャルを逆算する。 Schrodinger 方程式 特徴 結果(波動関数)を再現するように仕組まれたNNポテンシャルである。 波動関数中に埋め込まれた散乱位相差の情報も同時に再現する。 NN散乱実験に忠実なポテンシャルへ道 (s-wave)

BS波動関数 QCDにおいて量子力学のNN波動関数は 本当は近似的な概念である。 この概念に最も近いものが、 同時刻 Bethe-Salpeter(BS)波動関数である。 この式は、xに3つのクォーク、yに別の3つのクォークを見つけるamplitudeに対応する。 |x-y|→大で、散乱位相差で特徴付けられる漸近形を持つ。 次のeffective Schrodinger方程式を満たすことが示せる。   (1) U(r,r’) は、interaction kernelの役割を果たす。 (2) U(r,r’)は、最も一般には non-local である。 (3) U(r,r’) は、total energy E によらないように構成できる。 (s-wave) “Asympototic momentum” k2 For derivation, see C.-J.D.Lin et al., NPB619,467 (2001). S.Aoki et al., CP-PACS Collab., PRD71,094504(2005). S.Aoki, T.Hatsuda, N.Ishii, arXiv:0805.2462[hep-ph].

主な結果.1 ((有効)中心力) 波動関数 クォーク質量依存性 近距離の斥力芯と中間距離の引力を同時に保持。 (強い)クォーク質量依存性。 クォーク質量が軽くなるにつれ強力に。 軽いクォーク質量での直接計算が重要である。 当然、full QCD計算が望ましい。

主な結果.2 (テンソル力) 波動関数(“動径”成分) クォーク質量依存性 Machleidtのレビューに出てくるのと同じような形 強いクォーク質量依存性 (クォーク質量が軽くなると強力になる) 軽いクォーク質量での直接計算が重要。 当然、full QCD計算が望ましい。

主な結果.3 (ハイペロン力) J-PARC (もうすぐ稼働) ハイパー核物理のインプットとなり、 中性子星内部でのハイペロン物質出現の議論に必須の情報 現在、実験的情報が著しく少なく、 不定性が大きい。 J-PARCにおける核物理の主要ターゲット 我々の方法は、 様々なハイペロン力に適用可能。 NΛ potential NΞ potential (I=1)

よりNN散乱実験に忠実な核力 目標: 様々なエネルギーのBS波動関数を同時に再現する energy independent なポテンシャル(一般にはnon-local)  このようなポテンシャルは、よりNN散乱実験に忠実なポテンシャル E0 E3 E2 E1 BS波動関数は長距離で次の漸近形を持つ。 使われた波動関数は同時にexactに再現される。  同時に、散乱位相差も再現される。  同時にたくさんの波動関数を使うことによって、 どんどん散乱位相差が正しくなる。 (s-wave)

ポテンシャルのエネルギー依存性 (この方向への第一歩) ポテンシャルのエネルギー依存性 (この方向への第一歩) E0 E3 E2 E1 これまで紹介したポテンシャルは、  E=E0~0の波動関数一個から計算されていた。   厳密には散乱長しか保証できない。 他のエネルギーにおける妥当性の議論のため、  E=E1=50 MeV の波動関数一個から  ポテンシャルを計算してみる。 ポテンシャルの形に変化がなければ、  E~0で作った local potentialが  区間[E0, E1]で正しいことになる。  (この領域で、正しい散乱位相差を提供すること  が保証される。) 統計誤差がまだ大きいが、  割合よく一致している。 エネルギー依存性が小さい。   E~0で作った local potentialが 0~50MeVでほぼ有効。 この結論を徹底するためには、  統計を徹底的に改善しなければならない。

今後5年間での到達点と到達目標 L=6fmの格子上で物理クォーク質量を採用した   2+1 フレーバ 格子QCDによる核力・ハイペロン力  (A01班PACS-CS projectに完全に依存しております) 2体力: 核力の斥力芯の解明。 中心力、テンソル力、LS-力。P-wave。 ハイペロン力(elastic sector)。(全組み合わせ) エネルギー依存性やnon-localityの評価。  微分展開の妥当性の評価。  対角化の方法を駆使して励起状態の波動関数も求める。   そして、それも同時に再現できるようなポテンシャル。 operator 依存性。 3体力: 現在ホットな話題。 その他:(応相談)

研究者間で必要な連携 格子QCDで生成した核力・ハイペロン力ポテンシャルを A02班の諸グループ提供して、 QCDに基づく高密度中性子物質・ハイペロン物質の構造 QCDに基づく安定・不安定原子核の構造 の研究を進める。 初めての試みなので、すべてが手探り?  A02の諸グループの方々へのお願い どのような形でポテンシャルを提供するのがよいか、   御意見をお寄せください。(x-space v.s. p-space 等) 様々なリクエストをお寄せください。  (不備な点や改良すべき点、こうすると便利であるとか。。。) 密な議論を通して、次第に基盤を整えていく。

計算資源やアルゴリズム開発に関する期待 それぞれのスーパーコンピュータ上で効率的に動く並列化3次元FFT。  (NNの場合、1 gauge configあたり、約5000×Nt 回行われる) JLDG Data Gridによるゲージ配位の共有。 JLDG Data Grid (+SuperSINET)による各拠点間の効率的なデータ転送。 A04班のNVIDIA TESTLA 魅力的です。 大容量のハードディスク。  (エネルギー依存性の V=323 の計算では、  2000ゲージ配位分の波動関数で約3TB必要であった。)

他の計画班に期待するところ 格子QCDで生成した核力を使って、 現実の原子核やハイパー核を研究していくために最も重要なのは、  巨大な空間体積   (バリオン2個を十分に収容しなければならない。   Lが小さいと外側の引力が浸食される  原子核が束縛しにくくなる)  できるだけ軽いクォーク質量   (核力のクォーク質量依存性は大きい。余計な不定性を排除するため) です。従って、A01班のprojectに期待することは、 A01班(PACS-CS project)への期待 より空間体積の大きな物理クォーク質量のゲージ配位を よりたくさん提供してください。 A01班(JLQCD project)への期待 厳密なカイラル対称性を持ったゲージ配位は非常に魅力的です。  できるだけ大きな空間体積のゲージ配位を生成してください。

終了