電気回路学 Electric Circuits 情報コース4セメ開講 供給電力最大の法則 山田 博仁
供給電力最大の法則 E Z0=R0+jX0 R jX Z=R+jX I (テブナンの定理) R で消費される電力 P は、 電源側 負荷側 電源の内部インピーダンス 負荷インピーダンス E Z0=R0+jX0 R jX Z=R+jX I (テブナンの定理) R で消費される電力 P は、 電源側 負荷側 Y0=G0+jB0 J Y=G+jB G jB (ノートンの定理) V G で消費される電力 P は、
供給電力最大の法則 [1] R 一定、X 可変の場合 より、X=-X0 の時に P が最大となる [2] R 可変、X 一定の場合 を R について微分し、dP/dR=0 を求める 電源の内部インピーダンス E R0 R jX jX0 E R0 R jX0 jX 電源側 負荷側 電源と負荷とのインピーダンス整合
供給電力最大の法則 [3] R、X 両者可変の場合 E R0 R jX jX0 で、 X=-X0、 R=R0 の時に最大となり、 Pmaxは、電源から取り出し得る最大の電力で、電源の固有電力または有能電力と呼ばれる。 この場合、電圧源Eが発生している電力は、 であるから、P0の半分が電源自身のインピーダンス(R0)で、残りが負荷で消費される。 取り出し得る最大電力を電源から取り出したいのなら、電源の内部インピーダンス Z0の複素共役の値の負荷インピーダンス Z0* を繋げばよい。ただしその場合、半分の電力は電源内部で熱になって消費される。
乾電池の経済的な使い方 E ri + - 単一、単二、単三乾電池などの場合、E =1.5V ri の値は電池の種類によっても異なるが、一般的に ri (単一) < ri (単二) < ri (単三) となる 内部抵抗 今仮に、E =2V、 ri =1Wの電池を考えてみよう この電池に R =1Wの負荷抵抗を繋いだ場合 乾電池の等価回路 負荷抵抗 R に流れる電流は、1A E =2V ri =1W R =1W 1A 1W 従ってこの場合、 負荷抵抗 R で消費される電力も 内部抵抗 ri で消費される電力も共に等しく 1Wとなる 1W 1Wh 1Wh つまりこの場合、電池から取り出し得る最大電力を取り出していることになる 電池の性能として重要なものに電池の容量がある。容量とは電池に蓄えられているエネルギー量のことで、容量(mAh)=放電電流(mA)×放電時間(h)で与えられる 例えば 1000mAhの容量の電池の場合、1Aの電流を流し続けると、1時間でなくなる 従って上の例の場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1Wh 同じく 1Whのエネルギーが、電池の内部抵抗で熱となって消費される
乾電池の経済的な使い方 次に、この電池に R =3Wの負荷抵抗を繋いだ場合を考えてみよう E =2V ri =1W R =3W 0.5A 0.5Wh この場合、負荷抵抗 R に流れる電流は 0.5A 1.5Wh 従ってこの場合、 R で消費される電力は 0.75Wである 一方、内部抵抗 ri で消費される電力は 0.25Wとなる 1000mAhの容量の電池の場合、0.5Aの電流なら2時間流し続けることができる 従ってこの場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1.5Wh 一方、 電池の内部抵抗では、 0.5Whのエネルギーが熱となって消費される じゃあ、負荷抵抗 Rが 9Wの場合どうなるのか、考えてみてください E =2V ri =1W R =9W 0.2A 0.04W 0.36W 0.2Wh 1000mAhの容量の電池の場合、0.2Aの電流なら5時間流し続けることができる 1.8Wh この場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1.8Wh 一方、 電池の内部抵抗では、 0.2Whのエネルギーが熱となって消費される
賢い乾電池の買い方 TVのリモコン用の電池を買いに行くことを想定して下さい リモコンは、単三電池2本使用。あなたはどちらを選びますか? ただし、リモコンの消費電力は、3mW@3Vとします 単三型 アルカリ マンガン アルカリ乾電池 (2本で200円) マンガン乾電池 (2本で100円) 3000mAh 1000mAh 使用期限は共に 2010.10 今回の出席レポート どちらを選んだのか、その理由も書いて下さい アルカリ乾電池、マンガン乾電池の放電特性(PanasonicのHPから)
信号源からの電力取り出し 例えば放送局などで、送信機から信号電力を取り出してアンテナへ送る場合 ← アンテナの記号 送信機 ← アンテナの記号 送信機 そこで整合回路を用いて、整合回路を通して見たインピーダンスをZとなるようにしてやれば、送信機の電力を効率よくアンテナに伝えることができる 従って、これらを直接接続してもZ0 ≫ Zのため、信号電力はアンテナに殆ど伝わらない 整合回路 jwL Z Z 送信機の終段真空管の出力インピーダンス Z0は通常数kWと高い 一方、アンテナのインピーダンス Zは通常50Wや75Wと低い ただし、このインピーダンス整合がとれるのは、ある特定の周波数wの近傍のみ。周波数が大きくずれると、インピーダンス整合条件は崩れる
インピーダンス整合 インピーダンス整合 E Z0= R0+jX0 Z= R+jX Z = Z0 即ち、 R = R0, X = X0の時 → 共役整合 左側 右側 反射係数 或いは Z0= R0の時、r = r’ :電力(パワー)反射率 つまり、 負荷に向かう電力 Pmax Z = R+jX 負荷から反射される電力 例題8.7 L型マッチング回路 P: 負荷で消費 される電力 jX1 jX2 Zin Zout または |Zin| < |Zout|の時 |Zin| > |Zout|の時
L形インピーダンス整合回路 問題 特性インピーダンスの値が300Wのフィーダーを、特性インピーダンスが75WのアンテナにL形インピーダンス整合回路を介して繋ぎたい、具体的にどのような整合回路となるか? ただし、使用する周波数は1MHzである。 |Zin| > |Zout|なので、以下のL形整合回路を用いる ヒント jX2 jX1 Zin= 300W Zout= 75W フィーダー アンテナへ Zin, Zout などは、リアクタンス分を含まない実抵抗 Rと考えてよい 1 1’ 端子1-1’から右を見たインピーダンスが300Wとなるような X1, X2の値を求め、それに対する具体的素子をあてはめれば良い。 X1がコイル L, X2がキャパシタ Cの場合と、その逆の X1が C, X2が Lの場合の2通りの実現方法が考えられるので、両方の場合について求めよ。
L形インピーダンス整合回路 jX2 jX1 R1= 300W R2= 75W 1 1’ 解答 従って、 上式が成り立つには、 上式からX1, X2 を求めると、 (ただし、複合同順)
L形インピーダンス整合回路 X1 > 0, X2 < 0の場合、右に示すようなL と Cからなる整合回路となる jX2 jX1 1230 pF 27.6 mH X1 < 0, X2 > 0の場合、右に示すようなL と Cからなる整合回路となる jX2 jX1 C L 20.7 mH 919 pF
インピーダンス整合 [4] X/R一定、|Z|可変の場合 n : 1 E Z0 E Z0= R0+jX0 Z= R+jX (一定) n2Z Z = 8W 高インピーダンス アンプ スピーカー マッチングトランス Z n : 1 E Z0 Z 左側を見たインピーダンス: Z0 右側を見たインピーダンス: n2Z 左側 右側 n2|Z|=|Z0| の時、インピーダンス整合条件 つまり、負荷 Z で消費される電力が最大
インピーダンス整合 演習問題(8.17) R で消費される電力が最大となるように R の値を定めよ 電源側 負荷側 E r R -jX jx 電源側のインピーダンスは、 これの絶対値に Rを等しくとると、
電力の保存則 ある回路中の各電源(理想電源)が発生する瞬時電力の総和と、その他全ての回路素子が受け取る瞬時電力の総和は相等しい (言い換えると、回路中の全ての素子が出す瞬時電力の総和はゼロである) コイルやキャパシタ、変成器などのリアクタンス素子は電力を消費しない(一時的に蓄積することはある)ことを考えると、電源の実効電力の総和は、抵抗素子で消費される電力の総和に相等しい テレゲン(Tellegen)の定理 回路の各枝を流れる電流と、枝間の電位差の積の和は0となる 例えば、N本の枝を持つ回路で、 i 番目の枝を流れる電流を Ii (t) 、枝間の電位差を Vi (t) とし、電流の流れる方向に電圧降下が起こるとすると、 が成り立つ