Shigeki Hirobayashi 富山大学大学院理工学研究部(工学) 教授 広林 茂樹

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Shigeki Hirobayashi 富山大学大学院理工学研究部(工学) 教授 広林 茂樹 February 24, 2019 高分解能の信号解析とその応用 富山大学大学院理工学研究部(工学)  教授 広林 茂樹 University of Toyama

Shigeki Hirobayashi University of Toyama 講師の紹介 Shigeki Hirobayashi February 24, 2019 音響 画像・動画 経済指標 数値計算 脳科学 医用応用 February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama University of Toyama

Shigeki Hirobayashi University of Toyama 信号解析とは 規則性や類似性を定量的に評価 周期に着目 周期成分に分解することで、スペクトルの分布による違いを利用したり、ノイズなどの信号を分離できる。 February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama

音を構成する波とは 相対的な波の大きさや遅れ によって、様々な信号ができる 各波の相対的な大きさと遅れを抽出する手段        ↓     フーリエ変換

従来の周波数解析手法 フーリエ変換の改良 ウェーブレット変換 基底関数を拡大縮小して足し合わせる。時間分解能が高い。 窓関数・・・ハミング窓、ハニング窓によるサイドローブ抑制 Zero-Padding・・・0付けによる周波数分解能の補間 ウェーブレット変換 基底関数を拡大縮小して足し合わせる。時間分解能が高い。 (S. Mallat, IEEE Trans. Pattern Anal., 1989 etc.) MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法 固有値ベクトルを利用、基本周波数特定、到来方向推定 (B. D. Rao and K. V. S. Hari, IEEE Trans. Acoust., Speech, Signal Process., 1989 etc.) 瞬時周波数解析(Instantaneous Frequency : IF) 位相の微分値を利用、詳細な倍音構造の解析 (F. Auger and P. Flandrin, IEEE Trans. Signal Process, 1995 etc.) 一般調和解析(Generalized Harmonic Analysis : GHA) MWSTFT(Multi-Windowed Short Time Fourier Transform) 複数の窓長を利用、高精度な周波数特定 (Y. Hirata, Journal of Sound and Vibration, 2005/ M. Tohyama, et al., Acoust. Science and Technology, 1998 etc.) 「この問題に対して、これまでにもさまざまな手法が提案されています。」 フーリエ変換を改良する方法としては、 サイドローブを抑制するために窓関数を使用したり、 「解析対象信号のデータ長を」 0を付加することで引き伸ばし、 周波数分解能を向上はかるZero-paddingがよく知られています。 別の解析手法としまして、 MUSIC法は、「解析対象信号の」固有値ベクトルを利用して「周波数を特定する手法で、」 基本周波数の特定のほか、「求めるパラメータを角度にすることで、」 音源の到来方向の推定に使用されている例もあり、「広く使われています。」 瞬時周波数解析は、位相情報の微分値を利用して、 「周波数を再配置することで、スペクトルを収束させる手法で、」 詳細な倍音構造の解析に使われています。 「ただし、振幅情報については基本的に処理を行わない手法であり、 周波数の特定に特化しています。」 一般調和解析、GHAは、 「フーリエ変換を拡張した手法であり、」 複数の異なる窓長の解析窓を用いて、 「選択的に周波数を特定する手法です。」 高精度に周波数特定を行えますが、 「フーリエ変換の応用であるため、 やはり周波数分解能と解析対象の周波数が合致しない場合には、 サイドローブが発生してしまいます。」

完全周期と不完全周期(FFT) 9Hz 8Hz

Shigeki Hirobayashi University of Toyama 分析窓とは 窓関数 対象信号 窓処理 時間域で両端の不連続な歪を軽減することで、、周波数域でのサイドローブを抑えることができる。 Shigeki Hirobayashi University of Toyama February 24, 2019

Non-Harmonic Analysis Shigeki Hirobayashi February 24, 2019 Non-Harmonic Analysis 国際出願 広林茂樹、富山大学、PCT/JP2008/066689 優先権番号 特願2007-243858 10万~100億倍以上の精度の向上 February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama University of Toyama

Shigeki Hirobayashi University of Toyama February 24, 2019 これらの問題を解決すると・・・ 究極の周波数分解能を有する信号解析法が誕生 これまでの周波数分析法に比べ10万~100億倍以上の精度の向上 一般的なDFT (Discrete Fourier Transform) 調和形の周波数解析法の中で最も解析精度が高いといわれるGHA (General Harmonic Analysis)。   正規化した周波数なので、1Hzが窓内の1周期分に相当します February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama University of Toyama

Shigeki Hirobayashi University of Toyama 解析例 Shigeki Hirobayashi February 24, 2019 ② ① ④ ③ 信号解析結果(4本の場合) ② ① ④ FFT(DFTも同じ)は窓の影響によりメインローブ以外にもサイドローブが発生する   サイドローブよりも小さいスペクトルも独立に抽出できる ② ① NHAの解析結果は線(点)的にもとまる ④ ③ February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama University of Toyama

短時間窓周波数解析

Shigeki Hirobayashi University of Toyama 減衰振動の特性 Shigeki Hirobayashi February 24, 2019 時間分解能の向上と周波数分解能の向上の両立 周波数変化と振幅変化を個別に抽出することで時間信号の式の振幅と周波数に対応 一山の特性 February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama University of Toyama

Shigeki Hirobayashi University of Toyama 主な適応分野 Shigeki Hirobayashi February 24, 2019 音波や光など波の性質をもつ信号を正確に解析可能 可聴域の音、水中音波(ソナー)、超音波、脳波、光 さまざまな分野に柔軟に対応でき、工学をはじめ、医療、経済学などにも応用可能 February 24, 2019 Shigeki Hirobayashi University of Toyama University of Toyama

Shigeki Hirobayashi 近赤外線を使ったOCTへの応用 February 24, 2019 断層撮影技術への応用 近赤外線を使ったOCTへの応用 University of Toyama

SS-OCTとは SS-OCT(Swept Source-OCTの略で)とは波長ごとに走査することによって、光の干渉を起こし、イメージング技術である 生体表皮下5mmの深さの断層像を10μm程度の空間分解能でイメージング技術 主に医療や工学の分野で用いられている。 近赤外の後方散乱光の干渉を利用することで、電子顕微鏡や実態顕微鏡とは異なり、可視域で透明でなくても生体や試料を採取・破壊することなく、内部構造を可視化できるため、X線CT、MRI、超音波、共焦点顕微鏡に続く最先端断層測定器として近年大きな注目を浴びている。 可視化ディスプレー プローブ 波長走査型 近赤外線光源 光検知器 計測計算部 santec社製 SS-OCT装置

OCTの基本原理 SLD光源から光を出し、ビームスプリッタにより分光される そして一部光を試料に当てて、そこからの後方散乱光を同じスプリッタに返す もう一部光は参照ミラーに当てて反射してきた光をスプリッタに返す 試料側からきた光と参照ミラー側から来た光を合わせて干渉させる 光路長が等しいときにのみ干渉縞が現れる 光検知器でその干渉縞を検知し、データを取得する 取得したデータをフーリエ変換することで、深さ方向の画像情報を得られる。 Reference Arm ⊿L1 ⊿L2 High Coherence Source Probe Arm l Scan l Δλ c/⊿L  t ➔ f FFT OCT signal dz 16 16 Depth ⊿L1 ⊿L2

現在のOCTが直面問題点 2ln(2) λc2 Δz= π Δλ 着目点 現在、OCTの分解能は共焦点顕微鏡と超音波の間に介していて、10μm程度に留まり、癌細胞を可視化するにはもう一桁上の分解能が必要と言われている。 分解能は従来法DFT(離散フーリエ変換)に制限され、光源の波長帯域幅に依存していて、ハードウェアでの解決方法としては光源の帯域幅を広げるしか方法がないである。 分解能公式 (Δλ = Swept range  λc =Centre wavelegnth) 2ln(2) λc2 π Δλ Δz= DFTの代わりにNHAを用いて分解能を向上することを試みた 新規性

OCTの医用応用 Eye Esophagus Trachea Brain Oral Cardiovascular Tooth Cochlea Pancreas Cochlea Lung Cervix Kidney Colon Stomach Bladder Skin Blood flow Bone

1μm間隔のフリンジデータを用いたNHA精度の検証実験 光源は波長帯域12.5nmと100nmの2パターを用意 1.000mm、1.001mm、1.002mmのフリンジデータをそれぞれ作り、そして、DFTとNHAで解析 1.000mmでの解析結果を基準値として、1.001mmと1.002mmの解析位置を計算 解析位置と真の位置とのエラーを取る

DFTとNHAの解析エラー 波長帯域12.5nmの場合 波長帯域100nmの場合