(RHIC-PHENIX実験における粒子放出の方位角異方性の測定)

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(RHIC-PHENIX実験における粒子放出の方位角異方性の測定) Measurement of Azimuthal Anisotropy of Particle Emission in Au+Au Collisions at RHIC-PHENIX (RHIC-PHENIX実験における粒子放出の方位角異方性の測定) 数理物質科学研究科 小野 雅也 方位角異方性とは? 解析方法 Motivation PHENIX実験 解析結果 結果の比較 Measurement of azimuthal anisotropy of particle emission in au+au collisions at rhic-phenix rhic-phenix実験における粒子放出の方位角異方性の測定 という題で数理物質科学研究科2年の小野雅也が発表します 本発表内容は以下の通りです。

The RHIC(Relativistic Heavy Ion Collider) PHOBOS BRAHMS STAR PHENIX 2000年6月より米国ブルックヘブン国立研究所にて 世界最高エネルギーを持つ重イオン衝突型加速器RHICを 用いた実験が開始されました。 RHICでは現在4つの実験が行われており、 2000年度は核子当たり130GeVで金原子核同士を衝突される実験が行われました。 我々の研究室が参加しているPHENIX実験においても 多数の衝突事象が観測されました。 Year-1(2000) sNN =130GeV Au+Au Collision (Design value = 200GeV) 2002/01/23(WED)

1st harmonics “Directed Emission” 2nd harmonics “Elliptic Emission” 方位角異方性とは?(1) 非中心衝突において粒子の方位角分布に偏りが起こる現象。 定量的な解析はフーリエ級数を用いて行われる。 1st harmonics “Directed Emission” 2nd harmonics “Elliptic Emission” X Y v1>0 v1<0 X Y v2<0 v2>0 Reaction Plane PHENIX実験においては様々な物理量の観測が 期待されていますが、その中の一つに粒子放出の方位角異方性があります。 こちらの図は原子核同士が衝突する様子を表しているものですが、 衝突する原子核間の距離をimpact parameterとよび、また インパクトパラメータとビーム軸からつくられる平面を ReactionPlaneと呼びます。 方位角異方性とはこのReactionPlaneにたいして非中心衝突領域で放出された粒子の 方位角分布に偏りが起こる現象であり Flowともよばれています。 定量的にFLOWの大きさを見積もるためにフーリエ級数を用いて解析がされ、 以下のように3つの項を使って表されます。 第一項はRadialflowと呼ばれ、これは定数項になります。 第二項はDirectedflowと呼ばれ、ReactionPlaneに対してある一方向に粒子が偏る現象です。その大きさはフーリエ係数のv1で表現されます 第三項はEllipticflowと呼ばれ、ReactionPlaneに対して楕円型に偏る現象です。大きさはv2で表現されます。 本研究ではこの第3項のEllitpicFlowに着目しています。 2002/01/23(WED)

方位角異方性とは?(2) 方位角異方性強度 Beam Energy P. Kolb, J. Sollfrank, and U. Heinz hep-ph/0006129 QGP発生時の方位角異方性強度のBeam Energy依存性 方位角異方性強度 Beam Energy このような方位角異方性がなぜ発生するのかということですが、 たとえば、こちらの図は流体力学による理論計算の論文から持ってきたものですが、 原子核同士が非中心衝突をする際に反応関与部がアーモンド型になることが原因で 圧力勾配が一定でなくなり、それが最大の方向に粒子がより多く発生して、 方位角異方性が生じると考えられています。 また、Flowは原子核衝突の初期段階における圧力勾配の情報を持っていると 考えられており、QGPが発生した場合、Flowの大きさが減少すると 予測している理論計算もあります。 非中心衝突の際に反応関与部が“Almond”型になることで、圧力勾配が最大の方向に粒子がより多く発生し、方位角異方性が生じる。 方位角異方性は原子核衝突初期の段階における圧力勾配の情報を持っていると考えられている。 2002/01/23(WED)

方位角異方性の解析方法 全粒子対の方位角相関を用いる方法 Reaction Planeを決定する方法 全粒子のペアについて計算をするので統計誤差が小さくなる。 Acceptance補正がevent mixingを用いて可能である。 方位角異方性を生じる別のsource (Jets,HBT,Resonance Decay, Momentm Conservation等)のうちJetの効果が現れると考えられている。 Event by event にReaction Plane の決定が必要。 識別された粒子の解析が容易である。 Acceptanceの補正はflattening methodを用いて可能である。 方位角異方性を生じる別のsourceへの感度が異なるのではないか、と考えられている。 方位角異方性を解析する方法は大きくわけて 2粒子の方位角相関を用いる方法、reaction-planeを用いる方法 という2つの方法が考えられます。 2粒子の方位角相関を用いる方法 は2粒子の相関を用いて計算する方法で、 図のように全ての粒子の相関を計算して方位角の異方性を 求める方法です。 この方法の特徴としては ReactionPlaneを決定する必要がない。 全粒子のペアについて計算をするので統計誤差が小さくなる アクセプタンスの補正がEventMixingを用いて可能である。 また、方位角異方性を測定する際に重要になってくることは non-flow effectと呼ばれるものの寄与があることで、 non-flow効果と呼ばれるflow以外の物理量のうち 得にjetについて感度があるのではないかと考えられています。 一方、ReactionPlaneMethodは簡単にはこちらの図で表されますが、 ReactionPlaneを決定し、それにたいして各粒子の分布を調べます。 特徴はReactionPlaneの決定が必要なこと、 識別された粒子の解析が容易にできること、 Acceptanceの補正がFlatteningを用いて可能であること Twoparticleの方法とはことなったNon-flow効果に感度があると期待されていること 等があげられます。 2002/01/23(WED)

RHIC-PHENIX実験において方位角異方性の測定は重要である。(特に識別された粒子に関しての解析) Motivation RHIC-PHENIX実験において方位角異方性の測定は重要である。(特に識別された粒子に関しての解析) Reaction Planeを用いた解析が要求される。 PHENIX実験では全粒子対の方位角相関を用いた解析は行われている。 PHENIXのように全方位角の半分しか覆っていない検出器を用いた実験では Reaction Planeを用いた方法は行われたことがない。 異なった解析方法による結果を比較することは系統的なチェックになるばかりでなく、方位角異方性を生じる別のsourceについての研究も可能になる。 本研究のMotivationですが、 RHIC-PHENIX実験において方位角異方性の測定が 重要であると考えられます。その理由はPHENIX実験では 粒子識別が他のどの実験より大きな横運動量領域まで 可能であるからです。 しかしながら次ページでお見せするように PHENIX実験のように方位角をπしか覆っていない実験で ReactionPlaneMethodを用いて解析された例はありませんでした。 すでにPHENIX実験内ではTwoParticleを用いた解析はなされており、 この結果との比較、及び他の実験で得られている方位角異方性解析の結果と 比較することにより、PHENIX実験におけるReactionPlaneMethodの妥当性を 判断することが目的です。 Reaction Planeを用いた方法が可能であるか、 RHIC-PHENIX実験で2000年に得られたデータを元に解析し、判断する。 2002/01/23(WED)

The PHENIX Experiment Beam Beam Counter---Vertex,Start timing Drift Chamber---Charged Particle Tracking Pad Chamber--- Charged Particle Tracking Time of Flight---Particle Identification こちらがPHENIX検出器の図ですが、 左がビーム軸に垂直な平面で見た図で、右がビーム軸に平行な面で見た図です。 本研究に用いた検出器を簡単に説明しますと 衝突点、及び、TOF測定のスタートタイミングを測定するビームビームカウンタ-。 およびTOF測定のストップタイミングを与えるタイムオブフライト。 荷電粒子のトラッキングを行うドリフトチェンバーと 3次元ヒットポジションを測定するパッドチェンバーです。 2002/01/23(WED)

粒子多重度分布 Pad Chamber-1でのhit数分布 非中心衝突領域 中心衝突領域 2002/01/23(WED) こちらのグラフはパッドチェンバー1におけるヒット数になります。 本解析ではこの分布を図のように分け、それぞれのビンで解析をおこないました。 非中心衝突領域 中心衝突領域 2002/01/23(WED)

Analysis Method:(1)-(3) Reaction plane 2 Correction factor 3 2Y0=2Y0obs+DY0 n:degree of Fourier series(n=100) ここから実際の解析手順を5つのステップにわけて説明します。 まず、最初にReactionPlaneをこのように求めます。 ここでφは各粒子の衝突点における方位角の値であり、 weightとして横運動量をかけています。 また2という数字がでているのは楕円軸を要求しているためで、 これはEllipticFlowを用いてReactionPlaneを決定しようとしているためです。 式中のOBSは直接観測された量という意味で、何も補正はされていません。 これにより得られた生のReactionPlane分布はAcceptanceなどの影響が 全て入っており、 こちらの赤い分布のように一様分布はしていません。 この分布をフラットにするためにこのような式を用いてReactionPlaneのフラットニングを行うための コレクションファクターを求めます。 右がわの図が求まったコレクションファクターです。 最後に求まったコレクションファクターによってReactionPlaneのフラットニングを行います。 青の分布がフラットニング後の分布になります。 2002/01/23(WED)

Analysis Method:(4),(5) 4 5 or Sub-events Each event Sub-event A A.M.Poskanzer,S.Voloshin,Phys.Rev.C58(1998)1671. 4 Sub-events Reaction plane resolution計算のために、各eventを2つのsub-eventsに分割し、それぞれのsub-eventでreaction planeを求める。 何通りかのSub-eventsの結果を比較することにより、系統的なチェックになる。 Each event Sub-event A f distribution Sub-event B 5 Measuring v2 以上のようにしてReactionPlaneを決めるわけですが、 1イベントで1つ決めるわけではなく、1つのイベントを2つのサブイベントに分割して それぞれのサブイベントでReacionPlaneを決めます。 この理由は2つあって、 サブイベントに分割することによりReactionPlaneのResolutionを 簡単に求めることできるということです。 実験的にもとまったReactionPlaneは真実の値から多少ずれているはずであり、 このずれをResolutionで補正します。 また、いくつかのサブイベント分割方法で解析をすることによって 解析結果の系統的なズレを見積もることができるというメリットがあります。 そして、方位角分布は片方のReactionPlaneと、もう一方の粒子のφを使って 求めます。 最後にEllipticFlowの強さv2を求めるわけですが、2通りの計算方法があり、 実際にφーψ分布をフーリエ級数でフィットしてv2を求める方法、 及び、フーリエ係数であるv2を直接計算する方法です。 この2つは統計が十分ある際には同じ結果を与えます。 本解析ではフーリエ係数を計算する方法を用いました。 最後に得られたv2をResolutionで補正します。 or 2002/01/23(WED)

Sub-events Selectionの一例 φ-slice : φ方向に50binに分割(Gap=0.2°) η-slice : η方向に20binに分割(Gap=0.01) Random : ランダムに2グループに分割 Charge :粒子の電荷によって分割 φ-slice without pt weight : φと同様であるが pt のweightをかけない。 Sub-events Selectionの一例 h-slice サブイベントの分割方法ですが、 これらの5通りの方法で計算を行いました。 またここで いーた はシュウドらぴでぃてぃと 呼ばれる量でビーム軸方法のある種の速度を表す量です。 2002/01/23(WED)

f-Y0分布 非中心衝突領域 中心衝突領域 nch/nmax<0.27 0.27< nch/nmax<0.54 このグラフが実際に得られたφーψ分布です 横軸が1イベントごとに決定したrpと 粒子の方位角の差。 縦軸は規格化された粒子数です。 Padチェンバーのヒット数によって大きく3つに分割して表示しましたが、 方位角異方性が明らかに非中心衝突領域で大きくなっているのが観測できています。 (nmax:PC1の最大hit数) f-Y0[degree] 2002/01/23(WED)

Reaction Plane Resolution 次のグラフです。 横軸はPC1ヒット数を規格化した値です。 図中には2つのプロットがしてあり、 赤がcosの項、青がsinの項になります。 reaction plane のresolutionはコサインの√をとったものなので、 cosの分布はsemi-central領域で最も良くなっている傾向が見えます。 これはセントラル領域ではフロー自体が小さいのでrpがよく決まらない、 またperipheral領域ではフローは大きいと考えられますが、1イベント当たりの 発生粒子数がすくないためにrpのResolutionが悪くなっていると考えられます。 次に青のサインの項についてですが、 psiAとpsiBは共に元は同じイベントからとって きているので psiA-psiBの分布はAとBを入れ替えても同じはすの偶関数であり、そのためsinの項は0になるはずです。 明らかなようにサインの値は0付近になっているので rpの相関はただしく計算できていると考えることができます。 Resolution(cosine-term) はsemi-central領域で最もよい。 ΨA・ΨB、は共に母関数が同じであるので、(ΨA-ΨB)は偶関数である → Sine-termは0になるべき。        →Reaction Planeの相関は正しい。 2002/01/23(WED)

解析結果:粒子多重度依存性 Resolutionの補正後、5つのsub-eventsから同様の傾向を得ることができた。 各sub-eventsのresolution分布 こちらが解析結果ですが、 Resolutionの補正後、粒子多重度依存性の解析結果のグラフです。 左の分布が各サブイベント毎のresolutionの分布であり、 サブイベント毎にその大きさにばらつきがあることがわかります 右側のグラフの横軸は先ほどと同様、粒子多重度で、縦軸がResolutionで補正したEllipticflowの大きさv2です。 resolutionで補正すると 5つのサブイベントの結果は同様の傾向を示しています。 ただηスライスの結果が全体的に値が小さくなっていますが、 この原因はまだよくわかっていません。 また、粒子多重度が最も大きなビンでは各サブイベントの結果のばらつきが大きいですが、 これはResolutionが悪いことによる系統的な誤差であると考えられます。 Resolutionの補正後、5つのsub-eventsから同様の傾向を得ることができた。 2002/01/23(WED)

PHENIX実験において本解析方法は有効である 結果の比較 横運動量依存性 粒子多重度依存性 Reaction Planeを用いる方法と全粒子対の方位角相関による解析結果は同じ傾向を示している。 本解析結果と STAR,PHOBOS実験の結果もよくあっている. 得られた結果との比較のグラフがこちらになります。 まず、左のグラフを見てください。 v2の横運動量依存性です。 横軸が横運動量、縦軸がEllipticFlowの大きさv2になります。 赤の点が私の解析結果、緑が2粒子方位角相関による解析結果、青の点がSTARという他の実験結果です。 2つのことなる解析方法が同様の結果を示していることがわかります。 また、右のグラフは粒子多重度依存性の結果を他実験(STAR,PHOBOS) の結果と比べたものであり、こちらの分布も非常によい一致が見えています。 以上の結果より、PHENIX実験においてもReactionPlaneの決定を要求する 本解析方法が有効であることがわかりました。 PHENIX実験において本解析方法は有効である 2002/01/23(WED)

識別された粒子の方位角異方性 2001年以降のデータ解析に向けて PID cut condition: 0.2<pp<2.0 GeV/c 0.2<pk<2.0 GeV/c 0.2<pp<4.0 GeV/c さて、ここからは2001以降のデータ解析にむけて という題で識別された粒子の方位角異方性の解析についての話しをします。 2001年以降と題しているのは2000年のデータでは統計が少なくて 十分な解析ができなかったためです。 こちらの図は 初年度のデータについて 飛行時間測定器を用いた飛跡解析の結果、 粒子識別がきれいにされている図です。 識別された粒子について方位角異方性を見てみました。 2002/01/23(WED)

φ-Ψ0分布 π++πー K++Kー Proton+Pbar f-Y0[degree] 2002/01/23(WED) こちらの3つのグラフは上から ぱい中間子、K中間子、およびproton and pbar の方位角分布です。 粒子毎に方位角異方性が観測できています。 f-Y0[degree] 2002/01/23(WED)

解析結果:粒子種依存性 Resolutionの補正後、粒子種毎にelliptic emission強度の測定ができた。 v2の値をもとめたものがこちらです。 Resolutionの補正後、粒子種毎にelliptic emission強度の測定ができた。 Need more statistics!!!→2001年のデータ解析では100倍の統計量!!! 2002/01/23(WED)

衝突エネルギー依存性 My Analysis 2002/01/23(WED) 最後に横軸にbeam energy縦軸にEllipticFlowの大きさv2をとった、衝突エネルギー依存性ですが、 本解析でもとまった全荷電粒子のEllipticFlowの大きさv2の値は衝突エネルギーとともに増加していることがわかりました。 2002/01/23(WED)

Summary PHENIX実験においてreaction plane を決定し、方位角異方性を測定することは可能である。 異なったsub-eventsを用いた結果は同じ傾向を与えた。 本解析から得られた横運動量依存性は全粒子対の方位角相関による解析結果と一致している。 本解析から得られた横運動量、粒子多重度依存性は他実験の結果と一致している。 識別された粒子の解析も可能である。→2001年以降のデータに期待!! 本研究のサマリーです。 (りーど、すらいど) 2002/01/23(WED)

Fourier Expansion 理想的 実験的 sinの項はφlabがΨ0に対して対象なことより消える。 2002/01/23(WED) 本研究のサマリーです。 (りーど、すらいど) 2002/01/23(WED)

Resolution (ただし、Sub-event A,BのResolutionが等しいと仮定) ΨA:Sub-event A で決まったreaction plane angle ΨB:Sub-event B で決まったreaction plane angle とすると、 本研究のサマリーです。 (りーど、すらいど) (ただし、Sub-event A,BのResolutionが等しいと仮定) 2002/01/23(WED)