測距技術 ー 2波長干渉計による歪計測 ー 寺田聡一 産業技術総合研究所.

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測距技術 ー 2波長干渉計による歪計測 ー 寺田聡一 産業技術総合研究所

概要 地殻歪を測るレーザーひずみ計は、数十mから数百mの間の地殻の伸縮を直接的に測ることができ、その感度は非常に高い。しかし、レーザー光の通る光路を真空にしなければその感度は著しく悪化する。それは、気温や気圧の変化によって大気の空気屈折率が変化するからである。長い距離の光路を真空にするのは、真空装置が大掛かりになり大変である。大気中で空気屈折率の影響を受けにくいレーザー歪計を開発すれば、光路を真空にすることなく地殻の伸縮を測ることができる。 ここでは、空気屈折率の影響をキャンセルすることの出来る二波長干渉計の地殻歪計測への応用を考える。

はじめに 産業技術総合研究所・計測標準研究部門の紹介 はじめに  産業技術総合研究所・計測標準研究部門の紹介 産業技術総合研究所(産総研)・・独立行政法人(経済産業省) 計測標準研究部門・・・・・・・・物理量(単位)の国家標準 長さ標準研究室・・・・・・・・・長さ(メートル)の標準 メートルの定義 光が1秒間に真空中を進む距離の299792458分の1 (にくくなくふたりよればいつもハッピー) 全ての人が長さを測るときに‘メートルの定義’で測るわけにいいかない!!! 工業会でよく使われている基準的な長さの測定道具を校正する(ブロックゲージ、標準尺、距離計等) 。

長い距離の標準(5m~) トータルステーション (光波距離計) 干渉測長器

Distance Measurement in Air メートル(長さ)の定義は真空中 一般的な長さを測る道具は大気中で使われる 特に長い距離を測る道具は大気中で校正が必要 大気中で正確に距離を測る技術の研究 大気中で光による長さ測定においては、空気屈折率の影響が最も大きい。

Distance Measurement in Air 空気屈折率は、光の波長、温度、気圧、湿度、二酸化炭素濃度で変化する。 これらの値から空気屈折率の値を導き出す式 Ciddorの式 または Edlenの式 特に温度は空間的に分布があるので、長い距離の測定では、温度を正確に測定するのは困難であり、大気中での正確な距離測定は難しい。 産総研には、「光学トンネル」という全長300mの地下トンネルがある。地下トンネルは、温度が非常に安定していて、光学測定にはとても良い環境である。

Refractive Index of Air 空気屈折率の値は、大体 1.000270 くらい(真空は、1)。 温度1℃で、約-1ppm 気圧1hPaで、約0.3ppm 湿度10%で、約-0.1ppm CO2濃度100ppmで、約0.01ppm 変化する

Refractive Index of Air 空気屈折率の値は、波長と空気状態に依存する。

Refractive Index of Air 2波長の空気屈折率の環境依存の違いから、自動的に空気屈折率を補正できないだろうか?

Two Wavelength Interferometer 2種類の波長の光を用いて距離を測定することで、温度や気圧などの大気状態を計測することなく距離を測定する、2波長干渉計を開発。 用途 長い距離の標準 大気中でも正確な距離標準 歪測定への応用 真空パイプなしで、地殻ひずみを直接測定

Two Wavelength Interferometer 原理 ⇒ Constant !!

Two Wavelength Interferometer 原理 ほとんど 変化しない 距離が微小変化 変化する 空気屈折率が変化 変化する 変化する この2つの変化が等しく、打ち消しあう。

Two Wavelength Interferometer 2波長測長のメリット 気温、気圧などの大気状態を計測する必要がない。 2波長測長のデメリット 高分解能化が難しい。 高分解能化のためには「差」を精度よく測る必要がある。

Two Wavelength Interferometer 現実に大気中で長い距離を測定すると、空気の揺らぎによって、D2、D1を精度良く測定することは困難である。 例えば、100mの距離を測ったとき、空気が10mK、もしくは、0.03hPa変化しただけで、1μmの変化となり、干渉計では、数フリンジの変化となる。 しかし、この大きな変化の大部分は2つの波長に共通であり、それを用いて、 D2-D1の差だけを精度良く測定できる干渉計を考案。

Two Wavelength Interferometer YAG Laser 1064nm PP-KTP PD Servo Filter 制御ON 時刻 一方の波長の干渉計の信号を用いて光路長制御をすると、他方の波長の干渉計の信号も安定になる。光路長変化は両方の波長に共通な要因が主である。 このような制御をすることによって、2波長による測長の差だけを精度良く測定することが出来る。 2波長干渉計では、この差だけを精度良く測定する必要がある。

Two Wavelength Interferometer PZT AOM YAG Laser 1064nm ISO. PP-KTP PD Move 80MHz PD Phase shifter +0000000 Counter +0000000 Counter +0.00v Voltage meter Servo Filter

Two Wavelength Interferometer

Two Wavelength Interferometer

Two Wavelength Interferometer

まとめ 空気屈折率補正型2波長干渉計を製作した。 40mの測長で、2×10-8の分解能でその変化を測定できた。 電圧制御型位相シフターの校正 現在は、カタログ値 30deg./V を使用。 電圧に対する 位相シフト量を校正。 A定数の実験的検証 現在は、Ciddorの式より導出。 8桁の精度では不確かなので、真空パイプを 用いてA定数の直接測定。 地殻歪計測に応用するには、各部の長期安定性を考慮した光学設計が必要となる。