Electroweak baryogenesis

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

Searching supersymmetry in radiative B meson decay 石田 裕之 ( 島根大 ) @Flavor physics workshop 12月8日 共同研究者:波場直之、髙橋亮 ( 島根大 ) 中家剛 ( 京都大 ) 、清水康弘 ( 工学院大 ) To be.
QCD Sum rule による中性子電気双極子 モーメントの再評価 永田 夏海(名古屋大学) 2012 年 3 月 27 日 日本物理学会第 67 回年次大会 共同研究者:久野純治,李廷容,清水康弘 関西学院大学.
Introduction 標準模型は実験結果をよく再現している。 しかし、標準模型の枠組では説明できない現象もある。
Orbifold Family Unification in SO(2N) Gauge Theory
Direct Search of Dark Matter
Hadronic EDMs in SUSY GUTs
名古屋大学大学院 理学研究科 高エネルギー素粒子物理学研究室(N研) 名古屋大学タウ・プトン物理研究センター 飯嶋 徹
Bファクトリー実験に関する記者懇談会 素粒子物理学の現状 2006年6月29日 名古屋大学 大学院理学研究科 飯嶋 徹.
岡田安弘 Bファクトリー計画推進委員会 2006年10月17日
高エネルギー物理学特論 岡田安弘(KEK) 2008.1.8 広島大学理学部.
高エネルギー物理学特論 岡田安弘(KEK) 2007.1.23 広島大学理学部.
複荷電ヒッグス粒子のWW崩壊に対するLHC実験からの制限について
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
岡田安弘 高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 2008年11月27日 Bの物理ワークショップ 於箱根
小林・益川理論とCP対称性 岡田安弘 第27回KEK素核研金茶会 2008年12月19日.
ILCにおけるリトルヒッグス・モデルの検証に関する
LHCの開く新たな宇宙物理 松本 重貴 (高エネルギー加速器研究機構).
Cosmic strings and early structure formation
g-2 実験 量子電磁力学の精密テスト と 標準理論のかなた
山岡 哲朗 (共同研究者:原田 正康、野中 千穂)
Unitarity in Dirichlet Higgs Model
理科指導法D ノーベル物理学賞.
LHC での超対称性の物理 (京大 野尻) 超対称粒子発見 スカラーのクオーク (n) フェルミオンのグルオン (gluino)
東京大学 理学系研究科 宇宙論研究室 松浦俊司
アトラス実験で期待される物理 (具体例編) ① ② ③ ④ ① ② ③ 発見か? 実験の初日に確認 確認! 2011年5月9日 ④ 未発見
D中間子崩壊過程を用いた 軽いスカラー中間子の組成の研究
2018年夏までの成果:ヒッグス粒子発見から精密測定へ
まとめ 素粒子実験領域、素粒子論領域合同シンポジウム “2010年代のフレーバー物理” 岡田安弘(KEK)
高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 岡田安弘 2006年6月21日 茨城大学
研究室紹介 2007年1月29日               坂井典佑 素粒子理論 2019/4/8 坂井典佑 東京工業大学大学院 理工学研究科.
LHC計画が目指す物理とは × 1:ヒッグス粒子の発見 2:標準理論を越える新しい物理の発見 未発見!
岡田安弘(KEK,素核研) 2005年8月3日 加速器セミナー
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
ILC実験における ヒッグス・ポータル模型での ヒッグス事象に関する測定精度の評価
Gauge-Higgs-Inflaton Unification in (4+n)D Super Y-M
冷却原子系を用いた 量子シミュレーション: 格子場の理論に対する 新奇シミュレーション技術の 現状と未来
チャネル結合AMDによる sd殻Ξハイパー核の研究
2015年夏までの成果: 超対称性(SUSY)粒子の探索
素粒子原子核理論のフロンティア 岡田安弘 総研大大学院説明会 2006年6月.
素粒子、原子核、宇宙の理論研究のフロンティア
岡田安弘 (KEK) シンポジウム「物質の創生と発展」 2004年11月4日
LHC計画で期待される物理 ヒッグス粒子の発見 < 質量の起源を求めて > 2. TeVエネルギースケールに展開する新しい物理パラダイム
LHC計画で期待される物理 ヒッグス粒子の発見 < 質量の起源を求めて > 2. TeVエネルギースケールに展開する新しい物理パラダイム
岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学) 2007年11月12日 研究会「SuperKEKBが拓く物理」 秋葉原ダイビル
小林・益川理論とBファクトリーの物理 (II)
2013年夏までの成果:ヒッグス粒子発見から精密測定へ
素粒子分野における計算機物理 大野木哲也 (京都大学基礎物理学研究所).
高エネルギー物理学特論 岡田安弘(KEK) 2008.1.15 広島大学理学部.
岡田安弘 高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 2008年10月7日 広島大学 “高エネルギー物理学特論”
QCDの有効理論とハドロン物理 原田正康 (名古屋大学) at 東京大学 (2006年11月6日~8日)
電子・陽電子リニアコライダーで探る素粒子の世界
2015年夏までの成果:標準理論を超える新粒子の探索(その2)
計画研究代表者 京都大学基礎物理学研究所 大野木 哲也
Massive Gravityの基礎と宇宙論
高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 岡田安弘 2006年8月10日 日本物理学会科学セミナー
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
2017年夏までの成果:ヒッグス粒子発見から精密測定へ
岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学) 札幌Winter School 2011 2011年2月7日 北海道大学
高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 岡田安弘 2006年6月14日 KEK総研大夏期実習
理論的意義 at Kamioka Arafune, Jiro
2015年夏までの成果: 超対称性(SUSY)粒子の探索
2016年夏までの成果:標準理論を超える新粒子の探索(その1) 緑:除外されたSUSY粒子の質量範囲 [TeV]
2017年夏までの成果:標準理論を超える新粒子の探索(その1) 緑:除外されたSUSY粒子の質量範囲 [TeV]
2015年春までの成果:ヒッグス粒子発見から精密測定へ
実数および純虚数化学ポテンシャル領域における 2+1フレーバーPNJL模型を用いた QCD相構造の研究
ATLAS実験におけるSUSY の発見能力
Massive Gravityの基礎と宇宙論
[2] 超対称性理論(SuperSymmetry, SUSY) [4] ヒッグス粒子の階層性(微調整・不自然さ)問題
[2] 超対称性理論(SuperSymmetry, SUSY) [4] ヒッグス粒子の階層性(微調整・不自然さ)問題
Presentation transcript:

Electroweak baryogenesis 岡田安弘(KEK、総合研究大学院大学) 2005年12月20日 KEK Winter School

宇宙のバリオン数生成 現在の宇宙のバリオン数とエントロピーの比 (元素合成時期でも同じぐらい)       (元素合成時期でも同じぐらい) この数を説明することは、素粒子物理と宇宙論に課せられた大きな課題のひとつ。

(1) バリオン数生成のための Sakharov の三条件 (1967)   バリオン数の破れ   C および CP 対称性の破れ   平衡過程からのずれ (2) 大統一理論におけるバリオン数生成 (M.Yoshimura, 1978) GUT におけるバリオン数を破る相互作用を利用して宇宙のバリオン数   生成を行うシナリオを提案。 (3) 高温での標準模型のバリオン数の破れ (V.A.Kuzumin, V.A.Rubakov, and M.E.Shaposhikov, 1985) 量子異常によるバリオン数の破れの効果は電弱相転移温度(Tc)ぐらいに  高温になると無視できなくなる。それによって 高温ではいつもバリオン数  保存は破れている。 ただし、バリオン数とレプトン数の差(B-L)は保存している。

二つの系統のシナリオ このtalk では、 1.高温におけるバリオン数の破れ 2.Electroweak Baryogenesisの概略 高温(T>Tc)で B-L を作ってそれをバリオン数に転換する。    たとえば、Leptogenesis。 電弱相転移でバリオン数を生成する。(Electroweak Baryogenesis) いずれの場合も様々な現象論的な帰結が期待される。 とくにElectroweak Baryogenesis は LHC/ILC 物理と直接関連する。 このtalk では、 1.高温におけるバリオン数の破れ 2.Electroweak Baryogenesisの概略 3.現象論的帰結

標準模型の高温でのバリオン数の破れ バリオンカレントのアノーマリー SU(2)ゲージ理論の真空の構造 バリオン数の破れ バリオンカレントのアノーマリー  SU(2)ゲージ理論の真空の構造 バリオン数の破れ バリオンカレントのアノーマリー SU(2) レプトンカレントのアノーマリーも同様なので B - L は保存する。

SU(2) gauge +Higgs 系の古典的真空の構造 Topologically non-trivial solution Chern-Simon number Sphaleron (N. Manton 1983) Broken phase の球対称静的(不安定)解 広がり Energy  

アノーマリーの式との関連 U(1) part gauge field configuration =0 (U(1) part) 真空のC-S number の変化にともなって バリオン数がNf だけ変化する。

バリオン数を破る過程の起こる確率 (1) T=0, Quantum tunneling ( ‘tHooft 1976) 非常に小さい (2) T<Tc, Sphaleron transition B= 1.52 (light Higgs) – 2.70 (heavy Higgs) (3) T>Tc, T<Tc より大きくなると評価されている。 k O(1) の係数

電弱相転移程度の温度(T ~ 100 GeV) では、 宇宙膨張   したがって  のときは B+L を破る相互作用が十分早くおきる。T>Tcではもっと早い。 バリオン数は高温では消える。 これを逃れるためには、 (1)最初に B-L を作って、B+Lを破る相互作用でバリオン数として残す。    GUT Baryogenesis, Leptogenesis (M.Fkugita and T.Yanagida, 1986) (2)電弱相転移でバリオン数を作って、その後消えないようにする。    Electroweak Baryogenesis

Electorweak baryogenesis の概要 電弱相転移が一次相転移であること。 Broken phase の泡が成長する。 泡と周りのプラズマ中の粒子との相互作用により泡の壁の前後でいろいろな粒子のチャージの流れがおきる。(CPの破れ) Symmetric phase に運ばれたチャージによって、バリオン数の破れがおきる。 最終的にsymmetric phase が泡の中に取り込まれたとき、バリオン数生成がおきる。 十分強い一次相転移が起きることと、 十分大きなCPの破れの効果が存在 することの2点で 標準模型を超える 物理が必要。

ヒッグス場と粒子の相互作用に CP の破れがある。 wall バリオン数密度 Symmetric phase

強い一次相転移の条件 たとえ電弱相転移でバリオン数が生成されても, 相転移温度付近で broken phase 側で sphaleron transition が十分抑えられていなければ 作ったバリオン数が消えてしまう。 バリオン数が消えないための条件

fc/Tc>1 の条件を満たすには ヒッグス粒子の質量は 50 GeV 以下でなければならない。これはLEP 実験からの下限値 標準模型の高温のヒッグスポテンシャル 高温展開では (m/T <1) fc/Tc>1 の条件を満たすには ヒッグス粒子の質量は 50 GeV 以下でなければならない。これはLEP 実験からの下限値 (114 GeV) より小さいので、既に否定されている。

可能な解決策 ヒッグスセクターに係わる変更が必要 => LHC やILC 実験におけるシグナル (1) ボソン のループ補正 (1) ボソン のループ補正    2 Higgs Doublet Model (2HDM) の重いヒッグス粒子のループ効果。    Minimal Supereymmetric Standard Model (MSSM) の軽い    スカラートップ(stop) のループ効果。 (2) トリーポテンシャルの変形    NMSSM や 余分なU(1)を含んだSUSY模型に現れる 3次の項    余分なゲージシングレットをふくんだ模型    ヒッグスポテンシャルに6次項をふくんだ模型 ヒッグスセクターに係わる変更が必要 => LHC やILC 実験におけるシグナル

MSSM におけるElectroweak Baryogenesis 軽い right-handed stop (m(stop) < m(top)) が強い 一次相転移のために必要 CPの破れの原因 Stop A term (At) chargino/neutralino の質量行列 ( m パラメーター) Chargino が最も重要な寄与を与える。

Left-handed stop , multi TeV 特徴的な質量スペクトラム Right-handed stop (<top mass) LSP neutralino, chargino ( < ~ 200 GeV) Left-handed stop , multi TeV バリオン数の値の例 C.Balazs,M.Carena,A.Menon,D.E.Morrissey, C.E.M.Wagner 2005

軽い chargino/neutralino で大きなCP位相(sin fm >0.1) EWBG と EDM で許されるパラメーター 現象論的特徴 軽いright-handed stop 軽い chargino/neutralino  で大きなCP位相(sin fm >0.1) 電気双極子モーメントが実験の上限に近い C.Balazs,M.Carena,A.Menon,D.E.Morrissey, C.E.M.Wagner 2005

他の模型の例 SM with a low cut-off SUSY U(1)’ model トップの相互作用に関するCPの破れ D.Bodeker,L.Fromme,S.J.Huber,M.Seniuch,2005 J.Kang, P.Langacker,T.Li, T.Liu,2005 トップの相互作用に関するCPの破れ SHdHuの項による一次相転移 M (GeV)

Electorweak Baryogenesis と Higgs self-coupling S.Kanemura, Y. Okada, E.Senaha 強い一次相転移=> 有限温度ヒッグスポテンシャルに大きな補正 =>ゼロ温度のポテンシャルにも量子補正がある。 =>Higgs self-coupling の測定で検証可能 2HDM の場合 高温展開で3次の項に対する補正 (M=0) このとき  にも大きな補正がでる。

Higgs 3点結合定数に対する量子補正 mh= 120 GeV Electroweak Baryogenesis がうまくいく場合には少なくとも ~6% MSSM のときは

ILC実験でのヒッグス3点結合定数の決定 電子陽電子リニアーコライダー実験 のdouble Higgs production 過程に より 10-20%の精度で決定できる。 Expected efficiency : 40 %, S.Yamashita et.al, LCWS 04. Y. Yasui, et.al. GLC report

まとめ バリオン数生成の問題は素粒子と宇宙論を結ぶ重要な課題。 電弱相転移でバリオン数生成をするシナリオが成功するためには、ヒッグスセクターに関連した新しい物理があるはず。    ヒッグスセクターの拡張    ヒッグスポテンシャルの変形    ヒッグス場と関わりのあるCPを破る相互作用 Electroweak baryogenesis は、これからのエネルギーフロンティア実験(LHC/ILC)で解明される物理と直接的な関連がある。