高齢者および医療的ケアに関する 倫理・法規及び多職種連携 講義の流れ 関係法規と倫理 途切れないケアを進めるために 他職種の連携が必要 医行為とは? 医業とは? 利用者の尊厳の保持・生活を 支える介護・看護 特養に於ける医療職の役割 医療行為の状況 違法性の阻却
高齢者介護に関する法規・倫理 老人福祉法 介護保険法 医師法 保健師助産師看護師法
老人福祉法 目的 老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老 人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のた めに必要な措置を講じ、もって老人の福祉を図ることを 目的とする
老人福祉法 基本理念 第二条 老人は多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、 かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されると ともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障さ れるものとする
介護保険法 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因す る疾病等により要介護状態となり、入浴、排泄、食事な どの介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その 他の医療を要する者などについて、これらの者が尊厳を 保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営む ことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉 サービスに係る給付を行う 介護保険 第二条 介護保険は、被保険者の要介護状態または要支援状態に関し、必要な保険給付を行うものとする。 2.前項の保険給付とは、要介護状態または要支援状態の軽減または悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行わなければならない(その人なりの自立した生活ということ)
介護老人福祉施設とは 指定介護老人福祉施設とは、施設サービス計画に基づ き、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭にお いて、入浴、排泄、食事等の介護、相談及び援助、社会 生活上の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機 能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことにより、 入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営 むことができるようにすることを目指すものでなければな らない
医師法 第十七条 医師でなければ、医業をなしてはなら ない 保健師助産師看護師法 第十七条 医師でなければ、医業をなしてはなら ない 保健師助産師看護師法 第一条 保健師、助産師及び看護師の資質を向 上し、もって医療及び公衆衛生の普及向上を図 ることを目的とする 第五条 看護師とは、傷病者若しくはじょく婦に対 する療養上の世話又は診療の補助を行うことを 業とする者をいう 医師、歯科医師、看護師などの免許を有さない者による医業は、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師奉代13条その他の関係法規によって禁止されている。此処にいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を反復継続する意思をもって行うことであると解している。 ある行為が医行為であるか否かについでは、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要がある。しかし、近年の疾病構造の変化、国民の間の医療に関する知識の向上、医学・医療機器の進歩、医療・介護サービスのあり方の変化などを背景に、高齢者介護や障害者介護の現場などにおいて、医師、看護師等の免許を有さないものが業として行うことを禁止されている「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されているとの声もきかれるところである。 原則として医行為で無いと考えられるものを別紙のように列挙しました。 (別紙参照してください)
介護職員による医行為の違法性の疑いはここ! 医業とは何か? 医業とは 医行為を反復継続する意思をもって行うこと 医師、歯科医師、看護師等の免許を有さない者 による医業は禁止されている 介護職員による医行為の違法性の疑いはここ!
医行為とは何か? 医行為とは 医師の医学的判断および技術をもってするのでなけれ ば人体に危害を及ぼし、 または危害を及ぼすおそれのある行為 看護職員の行う医行為 診療補助行為
医行為ではないと考えられるもの 体温計による検温 酸素飽和度の測定 軽微な傷処置 通常の爪切り 通常の耳垢の除去 通常の口腔内の清拭 など
特養における医療職の役割 治療ではなく、利用者の健康管理 健康管理 第十八条 指定介護老人福祉施設の医師又は看護職員 は、常に入所者の健康の状況に注意し、必要に応じて 健康保持のための適切な措置をとらなければならない 治療ではなく、利用者の健康管理
痰の吸引 胃瘻 褥瘡の処置 点滴 施設内で行われた医療行為の状況 合計 要介護3 以下 要介護4 要介護5 処置あり 827人 40人 103人 684人 割合 100% 4.8% 12.4% 82.8% 703人 14人 48人 641人 2.0% 6.8% 91.2% 557人 63人 135人 359人 11.3% 24.2% 64.5% 375人 87人 89人 199人 23.2% 23.7% 53.1% 痰の吸引 胃瘻 褥瘡の処置 2006「特養における健康管理、医療提供体制に関する調査研究」を参照に今回はわかりやすく割合を合計部分を100%として考えてみました。 表をご覧になっても一目瞭然ですが、やはり、要介護度が上がるに従い処置の割合がアップし、介護度5になると実施割合が急増しています。 点滴
介護職による処置対応の状況 痰の吸引 胃瘻 30.1% 41.4% 具体的な処置 63.6% 42.0% 処置後のケア 73.9% 器具・材料の準備 30.1% 41.4% 具体的な処置 63.6% 42.0% 処置後のケア 73.9% 64.1% 観察・チェック 86.7% 75.6 この表も前項同様、 2006「特養における健康管理、医療提供体制に関する調査研究」を参照にしてますが、 現状においても、介護職が処置対応に関わらざるを得ない状況が明らかになっています。
医療的ケアを要する利用者の増加 医療的ケアに対する体制整備の必要性 「看護職員と介護職員の連携によるケア」 高齢化の進展 介護療養型施設廃止による受け皿の不足 施設入所者の重度化 医師・看護職員の絶対数の不足 医療的ケアに対する体制整備の必要性 医療的ケアを必要とする要介護高齢者が多いこと、医師や看護師が不足していることを鑑みて、平成20年1月に「規制改革会議第二次答申」により 医師と医師以外の医療関係職の役割分担を見直す方向・業務範囲の見直しにより医師不足対策として即効性が見込めるとの見方があり ・看護師による薬の投与量の調整 ・性状分娩における助産師の活用 ・訪問介護員等による経管栄養の取り扱い ・介護施設内での介護福祉士やヘルパーによる痰の吸引 の4点を列挙。 また平成20年11月20日の「安心と希望の介護ビジョン」では 【医療と介護の連携強化「関係者間での連携」】 ①介護従事者が、質の高い総合的なケアを提供できるようにするため、将来的には、医師や看護師との連携の下に、介護の現場で必要な医療行為を行うことが出来るようにすることを含め、資格・研修のあり方を検討 ②当面、利用者の重度化が進み、夜間も含めた医療的なケアのニーズが高まっている施設において、必要な知識・技術に関する研修を受けた介護従事者が、医師や看護師との連携の下に、経管栄養や喀痰吸引を安全性が確保される範囲内で行うことが出来る仕組みの整備 看護職員と介護職員の連携によるケアが必要となりました。 「看護職員と介護職員の連携によるケア」
胃瘻や痰の吸引は、原則、医行為! 利用者にとって大きな不利益! 特養において、胃瘻や痰の吸引を医療職しかできないと したら・・・ ①医療的ケアが必要な人の特養入所が難しくなる ②看護職不在時は対応できない 利用者にとって大きな不利益!
この不利益を生じさせないためには 違法性は阻却される 医療職が適切に関与 家族の同意や研修などの要件を設定 医療的ニーズへの対応と安全性の確保 違法性は阻却される
「違法性の阻却」とは 法律上違法とされる行為について、その違法性を否定 すること ①目的の正当性 ②手段の相当性 ③法益衡量 ①目的の正当性 ②手段の相当性 ③法益衡量 ④法益侵害の相対的軽微性 ⑤必要性・緊急性
「違法性の阻却」としての運用 厚生労働省の見解 「盲・聾・養護学校における教員による痰の吸引等の実施に 関する法的整理と同様に一定条件の下であれば、無資格者 が痰の吸引などを実施しても、「違法性は阻却されるものとし て整理」 一定の条件とは ☆定められた指針等に従って実施 ☆有資格者との連携により実施 ☆前もって、安全性を確保するための「研修・訓練」を実施
実施する上で必要な条件 入所者への説明と同意 医療関係者による的確な医学的管理 対象行為の水準の確保 施設における体制整備 地域における支援体制の整備
具体的な進め方としては ①医療職との役割分担・継続的な連携協働等の安全確保のた めの条件 ②知識・技術の評価は指導を行う医療職が ③原則的に本人・家族の同意が必要 ④実施の可否については、患者の状態、職員側のレベルを考 慮し、個別に医師が判断
今回の目的は 老人福祉法・介護保険法の理念に基づき 「心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措 置」であり 「心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措 置」であり 「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生 活を営むことができるよう」 行う行為
尊厳の保持 人間らしく、個人として尊重される 尊厳を保持して生活を送る 高齢者への尊厳のあるケア
高齢者の出来ること(持てる力)に目を向け、 自立支援 今までの介護は、 高齢者が出来ないこと、 足りない部分を補うために、 お世話する、面倒をみる、画一的なケア 「お世話」によって 本人の出来ることを 奪ってきた 高齢者の出来ること(持てる力)に目を向け、 自分の意思(自分らしさ)で 生活を楽しめるように 機能維持、拡大を目指す個別的な生活支援 「自分で決める」 「自分でする」 ことは喜びであり、 次への意欲
介護とは 看護とは 高齢者の生活を支える介護・看護 生活を支える介護・看護とは 生活とは何か、 支援とは何かを 共に考えて 共に深く関わっていくこと 看護とは 特別養護老人ホームは、常時何らかの介護が必要な要介護高齢者の生活する施設です。医療施設とは違い、ケアを支えるのは介護福祉士をはじめとする介護職員で、その生活を24時間365日途切れなくケアを継続させることは容易なことではありません。途切れないケアを傍らからサポートするのが各種の専門職となる。特に看護職の関わる場面は他職種よりも圧倒的に多いのは言うまでもありません。
高齢者の生活を支える介護・看護 etc 生活とは 食事・排泄・睡眠・清潔など 生活面 医療面 咀嚼・嚥下 疾患、内服薬 姿勢・体調 食事・排泄・睡眠・清潔など 例) 「美味しく楽しく食事が出来るケア」とは 生活面 咀嚼・嚥下 姿勢・体調 環境etc 医療面 疾患、内服薬 etc 高齢者の生活を中心に、日常生活の支援を組み立てる業務を担うのは【介護職】です。毎日の食事・排泄・睡眠・清潔に関する業務が円滑にすすむためには、多職種がチームとなって支えることが大切です。 特に介護と看護はその行う業務が殆ど重なっているため、担う役割をしっかりと理解しないと行き違いやズレ・対立などが起こってきます。 食事という行為を例に述べると、咀嚼・嚥下が出来る高齢者は介護職が食事の環境整備と準備の中で安全に確実に介助と観察を行うが、体調が変化し誤嚥が頻繁になり発熱を起こすようになると、看護職が原因をアセスメントし医療へつなげる判断をしたり、予防的対応で回避し食事の実施が継続できるといったことになります。 通常の業務では、誰が行っても同じ内容でケアが実行できる介護業務については、その日の業務分担された介護職が行い、施設では配置人数の少ない看護師は、日常の介護業務を一緒になって安定的に担えないので、特別な変化し易いまたは危険度の高い人の食の援助に当たることになります。 看護職による「命を維持する」ための安全確保も管理栄養士による栄養の維持も重要だが、毎日の生活を支える介護職からみると「美味しい」や「また食べたい」などの高齢者自身の満足感の重視も同じ様に重要である。施設全体のケアも一人ひとりのケアも、各々特徴を持つ専門職間の連携で成り立っている。施設のケアは連携を行わずしてはなりえないと認識すべきである。
生活援助行為の領域 上から見れば 殆ど重なる 生活援助行為 同じ行為の深さを 断面図で見ると 介護の領域 つまり! 介護の領域よりも 看護の領域 同じ行為の深さを 断面図で見ると 上から見れば 殆ど重なる 生活援助行為 高齢者の生活の場での観察やケアを図で示してみました。 (左の囲みの内側は)高齢者の介護で毎日行う通常の生活援助を示しています。外側の少し大きめな囲みは看護の仕事の範囲が介護と看護で殆ど重なっていることを示していますが、断面図で行為の根拠の深さを表しています。表面的には安定した日常行われる行為は、安全に確実に実施されれば、介護職でも看護職でも行うことが出来るものです。これに対し、断面図の深い部分は、健康状態が変化し治療や医療の介入の可能性が予測される状態等の、看護判断に必要な知識の深さを表しています。医療とのボーダーラインや医療処置を伴うケアもこの範囲であり、この部分が看護職が受けもたなければならない領域です。 つまり! 介護の領域よりも さらに深い! 看護の領域 正常・異常の判断予測まで行う 介護の領域
多職種連携 介護老人福祉施設では、生活を支えるケアを途切れること なく継続させていくことになる 介護職 福祉職 途切れないケア 医療職 栄養
違う教育課程を経て、同じ 目的の中でお互いに役割を 果たすことになる 色々な面でズレが 始終存在する 多職種連携 福祉職 栄養職 介護職 医療職 違う教育課程を経て、同じ 目的の中でお互いに役割を 果たすことになる 色々な面でズレが 始終存在する
高齢者の生活を支える介護・看護 特別養護老人ホームでは、常時何らかの介護が必 要となる、要介護高齢者の生活する施設であり、そ の生活を24時間・365日途切れなくケアを継続させて いく 要介護高齢者=精神・身体疾患による生活のしづら さを抱えている 生活は多様で個人差がある 一人ひとりの利用者を中心に、介護・看護その他の 多職種で生活を支えていく
多職種連携 高齢者の生活を中心に、日常生活の支援を組み立てる 業務を行うのは『介護職』 担う役割をしっかりと理解しないと、行き違いやズレ・対 立などがおこる
介護職と支える他の専門職や チーム管理者が理解しておくこと 介護職と支える他の専門職や チーム管理者が理解しておくこと 介護職 サポートする専門職が行う専門業務の説明を受けるときは、「生活」にどのように関わるのかを、高齢者や家族と共に日常の言葉で理解できるまで質問することが必要 看護職 医療にかかわる専門業務について、介護チームが理解できるためには、専門用語で表現しない。日常の「生活」の状態に置き換えて説明し、本当に理解できないことはないかを自ら確認することが必要 他の 専門職 管理栄養士と栄養士の違い、理学療法士と作業療法士の違いなど、専門分野にかかわる違いはあっても『生活』では同じ表現でまとまってしまう。看護職と同じように「生活」の状態に置き換えて説明することが必要 チーム 管理職 チームの機能を上手く発揮できるように、それぞれの職種の言い分をしっかりと聞いて、何がズレているかを整理する役割を果たすことが必要
多職種が連携するのは 利用者の生活をより安全なものにする 利用者が自立した生活を送れるようにする 必要な健康管理をすることで、利用者の状態を安定 したものにする 情報の共有 実施 結果を話し合う
多職種が連携するのは 看護・介護ともに他の職種に理解してもらえる伝え方(報 告・連絡・相談・記録)が、いかに適切かが大きなカギと なります。