シラタマホシクサの地域文化の検証とフェノロジーの年変動 社会工学専攻 環境・防災分野 18518510 岩井貴彦
目次 背景 方法 発芽特性 開花特性 遺伝的多様性 結果 考察
背景 ・人口密集区域に多くの湧水湿地が分布
背景 開発による 消失 56% 第5回自然環境保全基礎調査 (環境省,1995) ・現在各種土木事業によって湿地が減少している.
背景 現在,愛知県,静岡県でシラタマホシクサの生育が確認されている自生地数は わずか26箇所. 今回は12集団をピックアップし,その中で各集団の 基礎生態と遺伝的多様性について調査した.
方法 ・発芽特性 ・開花特性 ・遺伝的多様性
・1集団につき(30親個体)×(温度条件①~③) 方法(発芽特性) 2006年11月に採取した種子を ・1集団につき(30親個体)×(温度条件①~③) を実験 温度条件① 温度条件② 温度条件③ 温度条件① 温度条件② 温度条件③ 4℃で1ヶ月間冷湿処理
方法(発芽特性) 1日目に発芽! 2日目に発芽! 温度条件①:30日間 温度条件②:23日間 温度条件③:16日間
方法(発芽特性) 温度条件① (5/15℃) 温度条件② (10/20℃) 温度条件③ (15/25℃) 5 15 25 10 20 カウント カウント
方法(発芽特性) 100 50 ・親個体ごとに温度条件①~③における 発芽率を(発芽数) / (播種数)でもとめる. ・親個体ごとに温度条件①~③における 発芽率を(発芽数) / (播種数)でもとめる. ・各親個体で発芽率をプロット. 3 1 2
方法(発芽特性) 各親頭花ごとに日ごとの発芽率をとり発芽曲線を示す. 温度条件① (5/15℃) 温度条件② (10/20℃) 温度条件③ (15/25℃) 100 発芽率 ・発芽曲線 (%) 日数
方法(発芽特性) 最終発芽率 地域文化の様子を比較 得られた発芽曲線より4つのパラメーターを求める. 20%発芽速度,40%発芽速度,50%発芽速度, を求めた. これを用いて基盤温度,積算温度の算出を行った. 発芽率 50 40 20 (%) 日数
方法(発芽特性) =10℃ ・基盤温度の算出 温度条件① (5/15℃) 温度条件② (10/20℃) 温度条件③ (15/25℃) 20 温度条件②’=15℃ 温度条件③’=20℃ 温度条件①’ =(5+15)/2 =10℃ (温度条件①’, 20%発芽速度), (温度条件②’, 20%発芽速度), (温度条件③’, 20%発芽速度)
方法(発芽特性) 基盤温度とは 植物が発芽の進行に利用できる最低温度のこと.
方法 個体ごとの基盤温度とした. 発芽速度 (hr-1) 温度条件 (温度条件①’, 20%発芽速度), 各親個体について40%発芽速度, (温度条件②’, 20%発芽速度), (温度条件③’, 20%発芽速度) 各親個体について40%発芽速度, 50%発芽速度においても算出し,その平均を 個体ごとの基盤温度とした. 20%発芽速度における基盤温度
発芽率50%を確認した時点での発芽個体数をMとし, 方法(発芽特性) 積算温度 発芽率50%を確認した時点での発芽個体数をMとし, Mを確認するのにかかった日数を用いて 積算温度(斜線部分の面積)を求めた.
結果 最終発芽率の分化(テューキー・クレーマーの検定) 有意水準1%以下を示した組み合わせに色をつける 温度条件① (5/15℃) 温度条件③ (15/25℃) 温度条件② (10/20℃)
天伯(A2),行人町(C3)で温度条件によらず 結果 最終発芽率の分化 天伯(A2),行人町(C3)で温度条件によらず 有意な差を得た.
50%発芽速度の分化(テューキー・クレーマーの検定) 結果 50%発芽速度の分化(テューキー・クレーマーの検定) 矢並(Y9),新池(T5),島田(T6), 東谷山(S6),天伯(A2),育種場(M3) で温度条件によらず有意な差を得た.
結果(基盤温度) 最小値は育種場(M3)の1.41℃,最大値は島田(T6)の5.66℃ 基盤温度の分化(テューキー・クレーマーの検定) 基盤温度では目立った分化は見られなかった.
結果(積算温度) 天伯(A2),矢並(Y9),東谷山(S6), 県芸大(S2)において温度域によらず 分化が認められた.
積算温度が低く基盤温度が低い個体群はなかった. 結果(基盤温度と積算温度) 積算温度が低く基盤温度が低い個体群はなかった. 生存に不適合である可能性.
開花期の調査(野外調査) 50cm 100cm 100cm×50cmの方形区を設置. 各集団で100~200頭花について 開花時期の地域分化 開花数と種子数の分布パターン ついて調査.
方法 開花パターンの調査 8月28日! 9月16日! 回収してきたすべての頭花について 開花開始日と開花終了日を記録. 個体ごとの開花期を記録する. たとえば上の頭花の開花期が 8月28日~9月16日 だった場合以下のようになる.
結果 (2007)
方法 開花数と種子生産の調査 たとえば方形区内で 8月28日に開花した 頭花の総数 平均種子数が 右の表のような場合.
結果 開花開始日 開花数が 最大となった日 中央値 地域分化が起こっているかの検証するために2007年の調査で全自生地中で初めて開花が見られた8月28日を0日とし,各自生地の 開花開始日,開花が最大となった日,中央値をとり, ノンパラメトリック検定,ステューデント・ドゥワフ検定を行った. 有意差は認められなかった.
結果(開花数と平均種子数) ピークなし 1ピーク型 2ピーク型
結果(開花パターン) (2006) (2007) 地域分化が起こっているかの検証するために2007年の調査で全自生地中で初めて開花が見られた8月28日を0日とし,各自生地の 開花開始日,開花が最大となった日,中央値をとり, ノンパラメトリック検定,マンホイットニー・U検定を行った. 有意差は認められなかった.
種子生産のパターンには一部について形状に差が見られた. 結果(開花個体数と平均種子数) 開花個体数 平均種子数 (2006) (2007) 開花パターンには差が見られなかった. 種子生産のパターンには一部について形状に差が見られた.
結果(自生地での発芽) 新たに発芽が確認された個体数
結果(自生地での発芽) ピークが1つ ピークが2つ ピークがなく長期的に発芽 発芽開始日,発芽数が最大となった日, 新たに発芽が確認された個体数 ピークが2つ ピークがなく長期的に発芽 発芽開始日,発芽数が最大となった日, 中央値をとり,ノンパラメトリック検定, ステューデント・ドゥワフ検定を行った. 有意差は認められなかった.
50%発芽速度の分化は遺伝的距離によらない. 遺伝的多様性の調査 50%発芽速度の分化は遺伝的距離によらない. 積算温度の分化は遺伝的距離によらない.
考察 自生地での開花と発芽の分化は有意な差が認められなかった 種子生産の分化は起こっていた 50%発芽速度の分化は遺伝的距離によらない. 環境要因に依存. 積算温度の分化は遺伝的距離によらない. 環境要因に依存. しかし,基盤温度と積算温度の関係のように 集団間に分化は起こっているのでむやみに集団を混在させてはいけない.