大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)の低温懸架系の研究 平成30年度東京大学宇宙線研究所共同利用研究成果発表会

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大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)の低温懸架系の研究 平成30年度東京大学宇宙線研究所共同利用研究成果発表会 山元 一広 富山大学 理学部 物理学科 2018 December 22 平成30年度東京大学宇宙線研究所共同利用研究成果発表会 @東京大学柏キャンパス, 柏市、千葉 1 1 1 1

概略 重力波検出器KAGRA(岐阜県神岡町)は低温という先端的な雑音低減技術を導入し、欧米の将来計画からも注目を集めている。 共同利用のご支援のおかげです。ありがとうございます(低温懸架系関連総額:2310千円)。 2

KAGRAは何を冷却するのか KAGRAは両腕にFabry-Perot共振器(3km)を 置いたMichelson干渉計 3km 光が共振器に共鳴する(定在波がたつ)ことによって重力波への感度を高める。 3km 3km 3 3 3 3 3 3 3 3

KAGRAは何を冷却するのか KAGRAは両腕にFabry-Perot共振器(3km)を 置いたMichelson干渉計 光が共振器に共鳴する(定在波がたつ)ことによって重力波への感度を高める。 共振器の4つの鏡が重力波を感じ、光で鏡の動きを測る。 4 4 4 4 4 4 4 4

KAGRAは何を冷却するのか 共振器の4つの鏡が重力波を感じ、光で鏡の動きを測る。 (1)鏡の熱的な振動(熱雑音)抑制のためにこの4つの鏡を冷却。 (2)光が共振器に共鳴(定在波がたつ)ためには鏡の位置と角度を制御(control)する必要がある(lockをかける) 5 5 5 5 5 5 5 5

KAGRAの防振系と低温系 14 m 防振系 (常温) 真空ダクト (レーザー光が通る) クライオスタット (ここに低温鏡) A. Hagiwara 14 m 防振系 (常温) 真空ダクト (レーザー光が通る) クライオスタット (ここに低温鏡) 6 6 6 6 6 6 6 6

KAGRAの低温懸架系 低温鏡は低温懸架系の 一番下 低温懸架系の役割 (1)さらなる防振性能 (2)鏡の位置や角度の制御 (3)懸架系の共鳴振動の抑制(damping) (2)(3)の目的はlock(共振器内の光の共鳴)。このため低温で動作するセンサーやアクチュエータを内蔵。 低温鏡 7 7 7 7 7 7 7 7

KAGRAのサファイア懸架系 低温鏡はサファイアでできており、サファイアのファイバで吊るす。 鏡とファイバの接続のために耳(サファイア)を鏡側面に接合。 サファイア ファイバ 低温 サファイア鏡 耳 8 8 8 8 8 8 8 8

KAGRAのサファイア鏡 22cm 15cm 23kg (密度は4g/cc) 9 9 9 9 9 9 9 9 9

すべての低温鏡をインストール 2018年1月26日から順次4つのサファイア鏡が富山大学に到着。クリーンルームで耳を接合。 10 10 10

すべての低温鏡をインストール 耳のついたサファイア鏡は KAGRA siteに運ばれ 低温懸架系が組み立て られる。 11 11 11 11

すべての低温鏡をインストール 組みあがった懸架系は真空槽(クライオスタット)の中に。 12 12 12 12 12 12 12 12 12

最後にインストールした低温懸架系の前で記念写真 すべての低温鏡をインストール 最後にインストールした低温懸架系の前で記念写真 2018/11/9 13 13 13 13 13 13 13 13 13

1台の低温懸架系をKAGRA siteで冷却 冷却試験 1台の低温懸架系をKAGRA siteで冷却 初期冷却時間は期待通り 14 14 14 14 14 14 14 14 14

サファイア鏡の制御 (2)光が共振器に共鳴(定在波がたつ)ためには鏡の位置と角度を制御する必要がある(lockをかける) 2段階の制御 (a)Local control(damping) 地面が基準     ->低温系のタスク (b)Global control 鏡の相対位置、角度が基準 15 15 15 15 15 15 15 15 15

サファイア鏡の制御 (2)光が共振器に共鳴(定在波がたつ)ためには鏡の位置と角度を制御する必要がある(lockをかける) 2段階の制御 (a)Local control(damping) 地面が基準     ->低温系のタスク たとえばlockをかけるためには鏡の角度揺れは800 nrad 以下にという要請 16 16 16 16 16 16 16 16 16

サファイア鏡の制御 Local dampingの 低温での試験 Yaw motion Local dampingで 200nrad程度の揺れに。 17 17 17 17 17 17 17 17 17

サファイア鏡の制御 Global control (低温系のタスクではないが) 現在片方のFabry Perot共振器のlockをかけることに成功 (常温) すみやかにlockがかかり4時間以上持続。Fabrry-Perot共振器に関する測定を行うのに十分な長さ。 18 18 18 18 18 18 18 18 18

今後の予定 2019/3までに4つのサファイア鏡を順次冷却 2019/4から干渉計全体の調整、雑音低減 LIGO, Virgoは2019年4月から1年間の観測。KAGRAもその観測に参加するため急ピッチで調整などを進める。 19 19 19 19 19 19 19 19 19

論文リスト 2018年にacceptされた査読論文 2018年に審査を通った修士論文 2018年度に提出予定の博士論文 (a)K. Hasegawa et al., “Molecular adsorbed layer formation on cooled mirrors and its impacts on cryogenic gravitational wave telescopes” Physical Review D 2018年に審査を通った修士論文 (a)越智 聡郎、”KAGRAサイトにおけるクライオスタットの振動解析”、東京大学 (b)山田 智宏、”大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおける極低温鏡懸架システムとその伝導冷却に関する研究”、東京大学 2018年度に提出予定の博士論文 (a)Takahiro Miyamoto, “Development of the control system for KAGRA cryogenic suspension”, The University of Tokyo 2018年度に提出予定の修士論文 (a)宍戸 高治、”大型低温重力波望遠鏡 KAGRA におけるサファイ ア懸架ファイバーの研究”、総合研究大学院大学 (b)福永 真士、”低温光変位センサーの開発とKAGRA 低温懸架装置の ダンピング制御への応用に関する研究”、東京大学 20 20 20 20 20 20 20 20 20

共同利用配分リスト KEK 都丸隆行 高性能極低温鏡制御系の開発 500千円 富山 山元一広 大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)の 低温懸架系の研究 400千円+500千円 (新任教員) ICRR 鈴木敏一 シリケート接合の固化環境制御による 工程短縮の研究 450千円 牛場崇文 高性能サファイア鏡懸架系の開発 460千円 総計:2310千円 ICRR(柏) 実験室 KAGRA Site Site,実験室での 物品購入、 神岡への旅費など KEK 実験室 富山大学 実験室 (クリーンブース) 21 21 21 21 21 21 21 21 21

まとめ 重力波検出器KAGRAは低温という先端的な雑音低減技術を導入し、欧米の将来計画からも注目を集めている。 共同利用のご支援のおかげです。ありがとうございます(低温懸架系関連総額:2310千円)。 22

ご静聴ありがとうございます 23

1. Introduction Thermal noise : Fundamental noise Suspension thermal noise : mirror position fluctuation (vibration of suspension for mirror) Mirror thermal noise : mirror surface fluctuation (elastic vibration of mirror itself) 24

サファイア鏡の制御 Yaw motion Pitch motion Damping result (RMS) Yaw motion : ~ 200nrad Pitch motion : ~100nrad 25 25 25 25 25 25 25 25 25

(T/Q)1/2. 1. Introduction Fluctuation-Dissipation Theorem Relation between thermal noise and mechanical loss in suspension and mirror Amplitude of thermal noise is proportional to (T/Q)1/2. In general, Q (inverse number of magnitude of dissipation) depends on T (temperature). KAGRA sapphire mirror is at 20K.

1. Introduction 3rd generation : 10 times better sensitivity Cryogenic techniques will be adopted. Einstein Telescope (Europe), Voyager (U.S.A.) Einstein Telescope 27

1. Introduction Outline of cryostat Cryogenic payload Mirror S. Koike to SAS Cryogenic payload Cryostat Stainless steel t20mm Diameter 2.6m Height ~3.6m M ~ 10 ton Mirror View ports 4 Low vibration cryocooler unit Cryo-coolers Pulse tube, 60Hz 0.9 W at 4K (2nd) 36 W at 50K (1st) Main LASER beam Remote valve unit S. Koike

1. Introduction Schematic view of cryostat and cryo-payload Sapphire suspension Pulse tube cryocoolers Pulse tube cryocoolers Sapphire fiber Cryo-payload Sapphire mirror (About 20K)

1. Introduction Schematic view of cryostat and cryo-payload Pulse tube cryocoolers Pulse tube cryocoolers Cryo duct for 300 K radiation

2. Cryostat installation Cryo ducts are connected to two cryostats in the center room.

3. Cryogenic payload Outline of vibration isolation and cryostat Vibration isolation, adjustment, control, damping, … Pulse tube cryocoolers Pulse tube cryocoolers Cryo-payload 32 32 32 32 32 32 32

3. Cryogenic payload Design Almost all parts were designed. A. Hagiwara 33 33

4. Sapphire suspension Sapphire lop-eared suspension “Sapphire monolithic lop-eared suspension” One of the most important parts of KAGRA : Main sapphire mirrors are included. All parts are made from sapphire. fiber break Hydroxide Catalysis Bonding Full size suspension as prototype 34

Acknowledgement Supported by Mechanical Engineering Center, KEK Machine shop, The Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo 35 35 35

36 36 36

37 37 37

38 38 38

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