Let‘s Study Biodiversity 生物多様性保全 経営層/トップ説明版 電機・電子4団体 生物多様性WG 2017年3月
本ツールの活用方法 電機・電子4団体生物多様性ワーキンググループでは、2011年度に活動を開始して以来、活動事例集や愛知目標との関係性の整理、生物多様性に関する教育資料「Let’s Study Biodiversity」、そして生物多様性データベースなど、会員企業の生物多様性保全活動において活用いただくためのツールを制作・提供してまいりました。 この度、毎年実施している会員企業向けアンケートの結果で多くのご要望を頂いている、「社内での生物多様性保全への取り組みへの理解の促進支援」の一環として、これまでのツール類のコンテンツを基に特にトップ層を意識した説明資料を作成しました。 生物多様性の概要から企業が生物多様性保全活動に取り組む必要性とそのメリット、また取り組まないことによるデメリットなどのポイントについてまとめてありますので、各社で作成される資料の補助パーツとしてご活用いただければと思います。 PPT形式ですので自由に編集の上ご利用ください。 *使用上のご注意 本ファイルは企業内での活用を前提として、電機・電子4団体生物多様性WGが提供する ものです。このデータをインターネットや頒布物上で外部に公開することや、有償の他資料への 転載、引用することを禁止します。
生物多様性が無ければ、私たちの社会は成り立たない 社会が持続するために生物多様性の保全が不可欠 生物多様性について 生物多様性とは 生態系の多様性 種の多様性 遺伝子の多様性 森林、里山、河川、湿原、サンゴ礁等 いろいろな場所の多様な生態系 動植物から細菌などの微生物まで 多様な種 同じ種でも多様な遺伝子を持ち 形や生態などに多様な個性 生物多様性の恵み 生態系サービス 供給サービス 調整サービス 文化的サービス 森林による自然災害の抑制、 空気や水の浄化等により 環境を制御 癒しなど精神的な充足、 美的・文化的な楽しみ等 食料、燃料、木材、繊維、水、 薬品等の生活に重要な資源を供給 企業の環境活動において需要なテーマの一つである生物多様性についてご説明します。 まず、生物多様性ですが、〝多様性″という言葉には3つのレベルがあります。1つ目は「生態系の多様性」で、森林、里山、河川、湿原、サンゴ礁等、いろいろな場所で様々な生態系が存在している状態です。そして、2つ目は「種の多様性」で、動植物から細菌などの微生物までいろいろな生きものがいる状態です。3つ目は「遺伝子の多様性」で、同じ種でも異なる遺伝子を持つことで、形や生態などに個性がある状態です。これらの多様性があることで、私たちは図で示しているような、いろいろなサービスを享受しています。言い換えると、生物多様性が無ければ、私たちは生きていけない、社会は持続できないのです。 つまり、私たちが地球で持続的に社会を形成していく上では、生物多様性の保全を第一に考えなければならないことなのです。 基盤サービス 光合成による酸素の生成、土壌形成、水や栄養の循環等 供給・調整・文化的サービスの基盤を提供 生物多様性が無ければ、私たちの社会は成り立たない 社会が持続するために生物多様性の保全が不可欠
これからは、企業の社会貢献活動の一環としてではなく、 事業活動のあらゆる場面で生物多様性保全に配慮することが重要 生物多様性の危機と企業との関わり 生物多様性の危機 企業と生物多様性との関係 開発、気候変動、侵略種、乱獲、汚染などにより 世界的に種の絶滅が急速に進んでいる 企業の事業活動は生態系サービスを必要としている 事業活動による環境負荷は生物多様性へ影響を及ぼす 事業活動を継続していくためには、環境負荷低減活動に 加え、より生物多様性保全を意識した取り組みが必要 事業活動 原材料調達 製造 物流 使用 回収・リサイクル・廃棄 享受 影響 生物多様性 生態系サービス 生物多様性の減少 劣化 影響 生物多様性保全に対する要求 今、生物多様性が危機に直面しています。これは人類の危機と言っても過言ではありません。その大きな原因の一つが、企業の事業活動です。企業は人々に価値を提供して対価を得ながら成長し、更に多くの価値を提供していくことを繰り返していますが、その過程の中で、地球上の様々な場所で資源を得るために豊かな自然環境を破壊したり、また事業活動の結果排出される廃棄物を捨てることで自然環境を汚染させ、地域の生態系を壊すなど、生物多様性を急速に劣化させています。つまり、企業が生物多様性を最優先に考えて事業活動を行わないと、企業が価値を提供する社会そのものが存続できないことになります。企業自身が社会の中で事業を継続するためにも、生物多様性に配慮することが重要なのだということを一人ひとりが十分理解しておいて下さい。 私たち[ 社名 ]では、このような考えに基づいて、生物多様性保全のために[ 活動事例 ]のような活動を積極的におこなっています。 2020年の愛知目標の達成に向けて日本を含む世界各国が生物多様性国家戦略を策定 2015年度に国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)においても多くの目標が生物多様性に関連 ISO14001:2015年版で規格本文へ「生物多様性」を盛り込み これからは、企業の社会貢献活動の一環としてではなく、 事業活動のあらゆる場面で生物多様性保全に配慮することが重要
既に生物多様性の保全は企業の当然の環境行動となっており、 生物多様性への取り組み動向 行動指針の策定状況 経団連: 2009年3月「生物多様性宣言」において、 企業に対する行動指針を提示 電機・電子業界:2015年3月「電機・電子業界における 生物多様性保全にかかわる行動指針」を策定 行動指針を策定している企業が3割を超し、 その割合が増加 ISO14001改訂を受けた動き 8割超が、自社の環境マネジメントシステム(EMS)で 生物多様性の保全に対して行動、又は検討 環境方針に生物多様性の取組みについて 言及している企業が増加 経団連は生物多様性が将来の持続可能な社会にとって重要な基盤であることをより深く認識し、国際社会の一員として、すべての人々との間で役割と責任を分かち合い、連携・協力して生物多様性に資する行動を一層推進する決意のもと、 2009年3月に「生物多様性宣言」を定め、行動指針を示しています。 電機・電子業界においては、業界として生物多様性の保全に貢献することを目的に、2015年3月に「電機・電子業界における生物多様性保全にかかわる行動指針」を策定しています。 電機・電子4団体各会員企業においても、生物多様性の保全に関する行動指針を策定している企業が3割を超し、その割合が年々増加しています。 電機・電子4団体生物多様性WGが2016年度に行った結果によると、会員企業の7割以上が既に生物多様性保全に関する活動を通じて「愛知目標」に貢献していることが分かっています。また、ISO14001の改訂への対応から、企業の取り組みが増えています。 8割を超す企業が、生物多様性の保全に関して、自社の環境マネジメントシステム(EMS)において何らかの行動、又は検討を行っています つまり、生物多様性への取り組みは企業活動において当たり前となりつつあり、各社が取り組みを行う中で今後問われるのはその活動内容から見た企業の本気度になってきていると言えます 出典:電機・電子4団体生物多様性WGの 2016年度会員企業向けアンケート調査結果 既に生物多様性の保全は企業の当然の環境行動となっており、 その取り組みの中身が問われはじめている
参考:企業と生物多様性との関わり 企業と生物多様性の関係性を、製品ライフサイクルや生態系への影響のよって整理したものに、電機・電子系の各企業で実施している生物多様性保全活動をマッピングしたものです。 これを見ると、全てのライフサイクルステージで生物多様性と関わりがあることが分かると思います。 SDGsに生物多様性に関わる課題が含まれていることから、多くの企業で生物多様性が経営に及ぼすリスクと機会を明らかにし、具体的な活動計画へと繋げる動きが出てきています。この一覧表を見ると、電機・電子業界としてどのような取り組みの可能性があるかが分かりますし、他にも活動事例がデータベースとしても提供されているので、活動する上で参考になると思っています。
生物多様性の損失によるリスクと生物多様性保全によるビジネスチャンス 当社の事業に関するリスクと機会 生物多様性の損失によるリスクと生物多様性保全によるビジネスチャンス リスク 概要 評判リスク 商品のブランドイメージや企業イメージの悪化 取り組み企業との相対的な競争力の低下 環境団体からの抗議運動・キャンペーンの標的 規制・法的責任リスク 政府が講じる新たな規制、罰金、使用料の賦課 生態系サービスを失うこととなった地域社会が起こす訴訟 生物多様性に損害を与えた企業に対する修復責任の要求 事業継続リスク、 損益への影響 生物多様性の損失による生態系サービス(淡水や生物資源の調達等)が不安定化 (操業、業務プロセスへの影響、資源枯渇によるコストアップ 等) 機会 地域社会からの 高い評価・信頼の獲得 地域と一体での活動による交流の活性化、評価・信頼の向上(評判リスクの回避) 取引先からの 高い評価・信頼の獲得 生物多様性活動を条件としたグリーン調達、投資への対応(評判リスクの回避) 事業への影響の予防 (事業継続の確保) 自然資源の利用について最適化に努め、依存度を下げる (資源の枯渇、コストアップのリスクを回避) 政府の助言・支援、 インセンティブ 規制リスクへの的確な対応 補助金を活用した低コストでの対策 企業は生物多様性と事業活動の関わりを良く理解し、しっかりと取り組む必要があります。 もし、事業活動によって生態系を破壊した事実が明らかになった場合、企業のイメージを著しく損なうことはもちろん、訴訟や生態系の回復のための費用に膨大な費用がかかることになります。また、水共有などの生態系サービスが無くなる可能性を評価し、いまから準備しておくことも重要になります。実際に生態系サービスの喪失が明らかになってから対策をしようとしても、直ぐには対策できず、事業の継続を困難にすることが考えられます。 一方で、生物多様性との関わりをよく理解し、保全活動へ積極的に取り組んでいれば、地域との関係性が良くなることはもちろん、投資家や取引先などのステークホルダー全体に対する評価と信頼を高めることに繋がります。特に、グリーン調達の要件に「生物多様性保全」への取り組みを条件とする企業も増えており、ビジネス機会を失わないためにも重要となっています。 また、国としても愛知目標の達成に向けて生物多様性保全への取り組みを強化することからも、企業の取り組みに対するサポートが増えると考えられます。補助金などを活用することで、少ない費用で取り組みができ、国の事業で取り組むことがステークホルダーへのアピールにも繋がります。
今後の生物多様性保全に向けた取り組み 当社の長期的な事業成長においては、生物多様性への影響を認識し、生物多様性保全に関するリスク/機会面からの影響評価を行った上で、速やかに必要な対策を取る必要がある。 そのために、まずは自社の従来からの環境負荷低減活動を生物多様性の視点から捉え、生物多様性への影響を把握し、活動をアピールしていくことが重要。 また、今後の対策の下地を作るためにも、まずは生物多様性に関する従業員の 理解促進に向けた取り組み(環境教育や情報発信等)を行いたい。 (電機・電子4団体が提供している、教育ツールや事例データベースを活用) 企業と生物多様性との関係と、機会とリスクなどを総合的にみると、まずは自社の事業活動と生物多様性との関わりを理解し、どのようなリスクや機会があるかを明らかにする必要があると思います。新たな取り組みをしなくても、従来からの環境活動を生物多様性保全という視点で評価するだけでも、対外的なアピールに繋がります。 電機・電子団体から同業他社での取り組み事例が多数提供されていますので、それらを参考に今後具体的な取り組みを検討することとし、並行して生物多様性という言葉もあまり浸透していない一般従業員への教育や啓発活動を行い理解の促進を行うことで将来的な対策の準備を進める必要があると考えます。