星の進化と元素の起源 -我々はどこからきたのか- 和南城伸也(上智大物理) wanajo@sophia.ac.jp www.ph.sophia.ac.jp/~shinya
「星の数ほど」とは言うけれど… www.nao.ac.jp 肉眼で見える星の数は、(たったの)2000個くらい
銀河系には、約2000億個の星がある
宇宙には、銀河系が「星の数ほど」ある この中に数千個の銀河が写っている。 hubblesite.org
ジェームズ ウェブ 宇宙望遠鏡 (2011年~)で 見れる範囲 遠くを見る=過去に遡る 最初の 銀河 宇宙の 晴れ 上がり 最初 の星 ビッグ バン 宇宙年齢(億年) hubblesite.org ハッブル 宇宙望遠鏡 で見れる範囲 ジェームズ ウェブ 宇宙望遠鏡 (2011年~)で 見れる範囲 現在の 宇宙 暗黒時代 9.5 3 0.004 137
元素はどこから来たのか? ビッグバンでは,水素,ヘリウム,リチウムのみが作られた その他の約100個の元素は星の中の核融合によって作られた Ds(ダルムスタチウム)1994年発見、2003年8月命名
我らは「星の子」? 我々の体を作る元素(炭素,酸素など)や生きるために必要な金属元素(鉄,亜鉛など)は,星の中の核融合でで作られた 酸素(65%) 炭素 (18%) 水素 (10%) その他(1.5%) -窒素(3%) - カルシウム(1.5%) -リン(1%) 「星の子」オスカー・ワイルド、Mg, Mn, Cu, Se, I, Mo, Cr, Co
元素の構成要素 全ての物質 (元素) は,陽子,中性子,電子からなる 電子 中性子 陽子 電荷 -1 電荷 0 電荷 +1 恒星(太陽など)の中心付近は高温 (数千万度) なので 電子が剥ぎ取られた原子核 (プラズマ) として存在する 陽子 電荷 +1 中性子 電荷 0 電子 電荷 -1 水素 (陽子1,中性子0) ヘリウム (陽子2,中性子2) 炭素 (陽子6,中性子6)
核融合 地球上では,原子核の電気の反発により,天然には核融合は 起こらない(加速器や原子炉では起こる) 星の内部は高温 (1千万度以上) なので,核融合が起こる すなわち,異なる元素を作ることができる(錬金術?) 星は核融合のエネルギーで輝いている(次世代のエネルギー) 水素 電荷 +1 水素 電荷 +1 ニュートリノ 陽電子 電荷 +1 重水素 電荷 +1 化学反応のエネルギーはeV,核融合のエネルギーはMeV程度 光エネルギー 炭素 電荷 +6 炭素 電荷 +6 マグネシウム 電荷 +12
太陽 プロフィール 年齢:47億歳 (寿命約100億年) 身長:140万 km (地球の109倍) sohowww.nascom.nasa.gov プロフィール 年齢:47億歳 (寿命約100億年) 身長:140万 km (地球の109倍) 体重:2×1030 kg (地球の33万倍) 体温:5800度 (中心は1500万度) 主食:水素 趣味:核融合
太陽は核融合炉 水素 中心温度: 1500万度 水素核融合のエネルギーで 輝いている 水素 (陽子) 我々は,100万年前に作られた光と 8分19秒前に作られたニュートリノを浴びている 水素 (陽子) 光 ニュートリノ ヘリウム (陽子2,中性子2)
50億年後… 水素 中心温度: 1億度以上 ヘリウム核融合で 炭素,酸素が作られる ヘリウム 炭素 酸素 ヘリウム ヘリウムが燃え尽きると,赤色巨星となり,やがて惑星状星雲となり,炭素と酸素からなる白色矮星が残される ヘリウム 炭素 酸素 ヘリウム 炭素 (陽子6,中性子6) 酸素 (陽子8,中性子8)
Helix Nebula (NGC 7293) hubblesite.org
Helix Nebula (NGC 7293) hubblesite.org
星の進化と元素合成 1 M = 1 太陽質量 = 2 x 1033 g 超新星爆発 O, Ne, Mg, Si, Fe等の起源 惑星状星雲 以上 1 M = 1 太陽質量 = 2 x 1033 g 8 M 以上 0.5 M 以上 0.1 M 以上 超新星爆発 O, Ne, Mg, Si, Fe等の起源 惑星状星雲 C, N等の起源 褐色矮星 0.1 M 以下 中性子星 ブラックホール 白色矮星
超新星爆発 ― 大質量星の死 ― 中心に中性子星またはブラックホールを残して 星の大部分を吹き飛ばす大爆発 太陽の約100億倍の明るさ(銀河系の明るさに匹敵) 元素の主要な起源と考えられている(爆発で撒き散らす)
超新星爆発直前の星(ベテルギウス)? www.nao.ac.jp hubblesite.org 地球の軌道の大きさ 木星の軌道の大きさ
鉄より重い元素は作れない? 温度を上げると(約100億度),核融合せずに バラバラになってしまう(光分解) 光 光のエネルギーが失われ,重力崩壊が始まる 光 鉄 (陽子26,中性子30) 中性子星上の重力:地上の1億倍
超新星爆発のメカニズム(Ⅰ) -コアバウンス- 超新星爆発のメカニズム(Ⅰ) -コアバウンス- 光分解により,鉄のコアの重力崩壊が始まる 中心に中性子星が形成され 重力崩壊が止まる さらに落ちてきた物質が 中性子星の表面で跳ね返る 衝撃波が外層に伝わり 爆発に至る? 衝撃波のエネルギーが 鉄の光分解で失われ 爆発に至らない?? 重力:地上の何倍か
超新星爆発のメカニズム(2) -ニュートリノ加熱- 重力エネルギーが熱に転化され ニュートリノの生成がが始まる ニュートリノの約1%が 中性子星付近の物質を温める 温められた物質が膨張し 衝撃波が復活する 衝撃波が外層に伝わり 爆発に至る 中性子星(またはブラックホール) が残される 重力:地上の何倍か
超新星爆発の コンピューターシミュレーション Burrows, Hayes & Fryxell (1995)
超新星爆発の記録 そして。。。。
1987年2月23日
超新星1987A ケプラーの超新星以来 383年ぶりに肉眼で 確認できる超新星が 大マゼラン星雲に出現!!
超新星からのニュートリノ カミオカンデがSN1987Aから放出されたニュートリノを検出! 13秒間に11個のニュートリノ 地球上に1cm2 あたり100億個のニュートリノが降り注いだ!! 超新星爆発の理論がほぼ正しいことが実証された!!! 東京大学宇宙線研究所 ニュートリノ測定装置 「カミオカンデ」
祝!小柴先生 「ニュートリノ天文学」という研究分野を切り開いた功績 により,小柴昌俊さんが2002年ノーベル物理学賞を受賞 特に,カミオカンデによる超新星1987Aのニュートリノ検出 が評価された
現在の姿
金はどこからきたのか‥‥
重元素の起源 星の進化では鉄までつくられる(周期表の3分の1) 重元素 (金,銀,プラチナ,…,etc.) はどこで作られた? (まだよく分かっていない)
中性子によって作られた? 中性子は電荷0なので電気の反発力がない (光分解を起こさない低い温度でOK) 超新星爆発の際に,中性子星付近で作られた? (現在,最も有力な説) 中性子 (電荷0) 原子核 (電荷+)
超新星の中の錬金術 原始中性子星付近では光分解により全ての元素が中性子と陽子に壊される 電子捕獲によりその大部分が中性子になる 元素が次々と中性子を捕獲し 数秒で重元素 (金,銀,プラチナ,ウラン等) が作られる!!
超新星爆発における核融合の 数値シミュレーション Wanajo et al. (2003)
金は星の最後の煌きの中で作られたらしい‥‥
星の輪廻転生 星の中で 元素が作られる 超新星爆発で 元素が撒き散らされる その周辺で 星が生まれる 星の輪廻転生によって 物質の豊かな宇宙になり 我々がここに存在する!!
残された謎… 暗黒物質 (23%) 暗黒エネルギー (73%) 元素(物質)は 宇宙の構成要素の 約4%にすぎない 物質(4%) 元素(物質)は 宇宙の構成要素の 約4%にすぎない 残りは,未知の 暗黒物質および 暗黒エネルギー 我々は,世界の 96%を知らない…