行政の福祉化の取組みに係る検証に関する調査報告書Ⅰ 概要版 資料1-1 行政の福祉化の取組みに係る検証に関する調査報告書Ⅰ 概要版 総合評価一般競争入札における障がい者就労の効果
①費用対効果の試算 (入札に係る経費と障がい者就労による利益の比較) ①費用対効果の試算 (入札に係る経費と障がい者就労による利益の比較) 「行政の福祉化」の取組みとして平成14年度から実施されてきた総合評価一般競争入札による庁舎の清 掃業務を通じた障がい者の就業支援機会の確保等について、その政策効果を費用対効果の面から検証し、 「行政の福祉化」の有効性の見える化を図った。 試算方法としては、総合評価一般競争入札にかかる経費【A】(総合評価一般競争入札による契約額と一 般競争入札による契約額との差額)と、障がい者が就労することによる利益【B】(社会保障給付費の削減 額及び税・社会保険収入の増加額)について比較を行った。 政策的 有効性 なし 総合評価一般競争入札に係る経費【A】 > 障がい者が就労することによる利益【B】 総合評価一般競争入札に係る経費【A】 ≒ 障がい者が就労することによる利益【B】 政策的 有効性あり 総合評価一般競争入札に係る経費【A】 < 障がい者が就労することによる利益【B】 総合評価一般競争入札にかかる経費【A】 →総合評価一般競争入札物件と一般競争入札物件の落札率を比較 →総合評価一般競争入札物件に一般競争入札物件の落札率を乗じた金額の差額 ※他自治体の同種業務と総合評価一般競争入札物件の落札率の比較を行ったが大きな差がなかった。 障がい者が就労することによる利益【B】 →就労移行支援事業・就労継続A・B型事業所・無業者・障がい者就労(総合評価物件)・ 障がい者就労(一般) の6類型で障がい者1人当たりの1か月の就労収入額、社会保障費、 税・社会保険料収入等を試算し、行政コストの差額を利益とした。 社会保障給付費 - 税・社会保険料収入 = 行政コスト
総合評価一般競争入札に係る経費【A】の試算 落札率の比較 ①総合評価一般競争入札物件の平均落札率 平成15~29年度 81.3% 平成18~29年度 82.8% ②一般競争入札物件の平均落札率 平成18~29年度 67.3% 大阪府提供資料より作成 大阪府提供資料より作成 一般競争入札との比較では、総合評価一般競争入札の方がより高い落札率となっており、行政支出は増加し ていることが確認された。これを総合評価一般競争入札にかかる経費(費用)とした。 総合評価一般競争入札の落札率は相対的に高いものの、平成23年度、24年度及び27年度については同水準となっており、平成26年以降は類似の増減傾向を示している。このことから、総合評価一般競争入札においても、取組みから年月が経過したことで、一般競争入札と同様の市場原理による価格競争が生まれつつあり、「行政の福祉化」の取組みにより障がい者雇用に関しての業界全体の取組みが進んでいる(清掃業務そのものの福祉化)とも考えらえる。
総合評価一般競争入札に係る経費【A】の試算 総合評価一般競争入札に係る経費【A】 平成18年から各年度の一般競争入札の落札率を「想定落札率」として、総合評価一 般競争入札における予定価格合計に掛けることにより「想定落札額」を試算し、実 際の落札価格と比較を行った。 12年間の経費 約6億5200万円 想定落札額合計 ー 実際の落札額合計 = 総合評価一般競争入札に係る経費 【想定落札価格試算表(単位円)】 1年間の平均経費 約5400万円 ■総合評価一般競争入札に係る 1年間の経費(算出イメージ) ①実際の落札額 ②一般競争物件の落札率で 割り戻した金額(想定落札額) 差額(当該年度の経費) 大阪府提供資料より作成
障がい者が就労することによる利益【B】の試算 社会保障給付費および税・社会保険収入の試算 障がい者が障害者総合支援法に基づくサービスを利用している場合又は一般就労している場合について、1 人1ヶ月当たりの就労収入額を算出し、それに基づき社会保障給付費、税・社会保険料収入を試算した。 ※社会保障給付費を試算する際の仮定条件 全員が単身世帯。障がいの程度によらず一律65,000円の障害基礎年金を受給。収入がない場合は生活保 護を受給。生活保護費のうち医療扶助費は考慮していない。 総合評価一般競争入札物件における障がい者が就労することによる利益(1人・1か月当たり)の試算 社会保障給付費【α】 ー 税・社会保険収入【β】 = 行政コスト 障がい者就労(府委託先)行政コスト - 各類型行政コスト = 行政コストの削減額/人・月 (障がい者が就労することによる利益) 「社会保障給付費」および「税・社会保険収入」の試案表(単位:円/月) 厚生労働省資料などから作成
障がい者が就労することによる利益【B】の試算 総合評価一般競争入札による就労者数 府有施設清掃業務に係る総合評価入札において、平成28年度1年間就労した 障がい者数54人(大規模:46人、中規模:8人)を効果算出の人数とした。 【大規模施設における就労者数】 【中規模施設における就労者数】 施設数(ヶ所) 10 知的障がい者雇用数(人) 61 当該現場 46 当該現場以外 15 施設数(ヶ所) 8 知的障がい者雇用数(人) B型事業所との比較による利益の試算 総合評価一般競争入札による就労者が総合評価一般競争入札がなければ、 就労継続B型事業所を利用していたと仮定し、1人1か月あたりの行政コスト削減額145,052円を用いて、 利益を試算した。 障がい者が就労することによる1年間の利益 約9,400万円 (145,052円/人・月×12か月×54人)
【試算結果】総合評価一般競争入札の費用対効果 1年間の平均経費【A】 約5,400万円 1年間の利益【B】 約9,400万円 1年間の費用対効果 約4,000万円 15年間の費用対効果 約6億円 政策的 有効性あり 総合評価一般競争入札にかかる経費【A】 < 障がい者が就労することによる利益【B】
②就労による障がい者の生活の変化(ヒアリング) ◆ヒアリング対象 エル・チャレンジの訓練を卒業後、10年以上就労している知的障がい者 8名 療育手帳B1所持者4名、B2所持者4名、年齢24歳から52歳 ◆ヒアリング項目 年齢、就労内容、障がい種別、通勤、家庭の状況、趣味、就労及び日常生活においてのプラスの変化 ヒアリング結果(具体的な変化) (1)収入が増えることによる変化 B型作業所等で月2万円前後の工賃であった障がい者が、月10万円を超える収入を得ることで、カラオケに行く、旅行に行くなどの頻度が増え、行動範囲、消費行動に大きく影響を与えていると考えられる。 また、おしゃれな服を買う機会も増加しているようである。 (2)友人が増えることによる変化 同僚と、電車に乗って訓練現場・仕事場まで行くようになることで、就労前後でのコミュニケーションも増加し、仕事帰りやプライベートを過ごすようになっている。また好きな人ができたなどの変化もみられる。 (3)家族との関係の変化 就労の話を家庭内ですることで会話の場が広がることに加え、仕事を学ぶことにより、家の手伝いなども積極的にかかわるようになったケースが見られた。 (4)表情、スタイルの変化 仕事を通じて、表情が豊かになり笑顔が出るようになってきた、おしゃれに気を使うようになった、大人っぽくなった、たくましくなったと周囲から評価されたなど、変化が起きているケースが見られた。