肺炎診断の最新知見と ガイドラインに基づく治療戦略 ~カルバペネム系抗菌薬を中心に~ 実践に役立つ感染症講座 1:呼吸器感染症 2015年5月28日(木) 19:00~20:00 肺炎診断の最新知見と ガイドラインに基づく治療戦略 ~カルバペネム系抗菌薬を中心に~ 迎 寛 産業医科大学医学部 呼吸器内科学 教授 先生 肺炎は、死亡者数が年間約12万人を超え、2011年には遂に本邦での死亡原因の第3位となった。今後も社会の高齢化に伴い肺炎の死亡率はさらに増加するものと予想される。現在、日本呼吸器学会から「市中肺炎」と「院内肺炎」、「医療・介護関連肺炎」の3つの診療ガイドラインが策定されている。 どのカテゴリーの肺炎においても、原因菌の把握が重要であり、各肺炎ガイドラインにおいてもこれまで行なわれてきたグラム染色、細菌培養、尿中抗原検索などが推奨されている。しかし、これらの既存の方法を用いても30-40%の症例では原因菌が不明であり、培養を中心とした既存法では満足いくものではない。我々は、本学微生物学教室と共同で16S rRNA遺伝子を用いた網羅的細菌叢解析法という新しい手法を用いて市中肺炎、医療・介護関連肺炎における原因菌調査を行ってきた。その結果、これまで既知の原因菌に加えて、嫌気性菌や口腔内細菌(特にレンサ球菌)がこれらの気道感染の原因として重要な役割を果たしている可能性が示めされている。また、耐性菌を考慮すべき医療・介護関連肺炎や院内肺炎では、喀痰からMRSAが検出された肺炎において、細菌叢解析の結果から約3分の2がコロニゼーションである可能性が示唆され、実際に抗MRSA活性を有しない抗菌薬で治療可能であった。治療に関しては肺炎の入院治療において特に重症例や院内肺炎例は、カルバペネム系抗菌薬を中心とした治療が多くなされているが、カルバペネム系薬のうち一剤に使用が偏ることは耐性菌出現率の上昇の問題もあり、注意が必要である。また、カルバペネム系抗菌薬では高用量投与が有効である症例も多い。 本講演では、細菌叢解析法のデータを含めて肺炎診断の最新知見を紹介し、カルバペネム系薬を中心にガイドラインに基づく治療戦略について概説する。 【略歴】 【学会活動 等】 1985年 長崎大学医学部卒業 長崎大学医学部第二内科医員(研修医) 1993年 宮崎医科大学第三内科助手 1997年 カナダブリティッシュコロンビア大学 Pulmonary Research Laboratory 留学 1999年 宮崎医科大学第三内科復職 2001年 長崎大学医学部第二内科併任講師 2003年 長崎大学医学部・歯学部附属病院 呼吸器内科講師 2007年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座 准教授 2009年 長崎大学病院呼吸器内科診療科長事務取扱 産業医科大学医学部呼吸器内科学 教授 日本内科学会(認定医) 日本呼吸器学会(代議員・専門医・指導医) 日本呼吸器内視鏡学会(評議員・専門医・指導医) 日本感染症学会(評議員・専門医・指導医) 日本結核病学会(理事・評議員・指導医) 日本肺癌学会(九州支部評議員) 日本化学療法学会(評議員・西日本支部幹事) 日本臨床生理学会評議員(評議員) 日本臨床微生物学会会員、日本環境感染症学会会員、 日本アレルギー学会会員、日本サルコイドーシス学会会員 European Respiratory Society(ERS)、American Thoracic Society(ATS)、The American College of Chest Physicians(ACCP) 開催場所: 徳島大学病院 がん診療連携センター会議室