生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.

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生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部

体の三大調節系 ホルモンによる制御 (生殖腺刺激ホルモンよる生殖腺の発達 のように生理状態の切り替え。放送に よる広範囲に届く命令) ●内分泌系 ホルモンによる制御  (生殖腺刺激ホルモンよる生殖腺の発達  のように生理状態の切り替え。放送に  よる広範囲に届く命令) ●神経系 ニューロンによる制御  (運動ニューロンによる骨格筋の収縮。  電話による直接命令) ●免疫系 B細胞、T細胞による制御(抗体による 防御) 

細胞間の情報交換 いずれの場合でも、情報を伝えるしくみが必要 ヒトの場合は、情報交換の主な手段は言語で、単語に意味がある。 生体では、この単語にあたるのが分子で、ここではこれを信号分子(signal molecule)と呼ぼう。 この講義では、情報分子がどのように情報を伝えるのかを学ぶことが主なねらいとなる。

細胞間の情報交換 ギャップジャンクション 膜表面上分子が直接 情報分子を分泌

信号分子による情報交換 神経軸索末端から 周囲の細胞間隙へ 血液中へ

ホルモンによる情報交換 細胞がホルモンによる情報を受け取ることができるのは、そのホルモンに対する受容体(receptor)を持つから。 標的器官(細胞)(target organ, target cell) ホルモンの分類 分泌器官による はたらきによる 化学的性質による

ホルモンを 化学的性質によって分類 ポリペプチドホルモン、アミン系ホルモン 細胞膜を通過できない ステロイド系ホルモン、甲状腺ホルモン  化学的性質によって分類 ●水溶性(hydrophilic) ポリペプチドホルモン、アミン系ホルモン 細胞膜を通過できない ●非水溶性(hydrophobic)、脂溶性(lipophilic) ステロイド系ホルモン、甲状腺ホルモン 細胞膜を通過できる

受容体のある場所 ポリペプチドホルモンに対しては細胞表面 ステロイドホルモンに対しては細胞質内

水溶性ホルモンの作用機構 細胞表面の受容体には ①イオンチャンネル連結型受容体(channel- linked receptors) ②酵素連結型受容体(catalytic receptors) ③Gタンパク質連結型型受容体(G protein-  coupled receptors、GPCR) ここではGタンパク質連結型受容体について 述べよう。

ここで復習 たとえばこれまで学習した視床下部-脳下垂体- 生殖腺系(hypothalamo-hypophysial-ganadal axis) GnRH: ゴナドトロピン放出ホルモン LH: 黄体形成ホルモン

Gタンパク質連結型受容体 たとえばこれまで学習したGnRHの受容体は ヒトGnRHは pEHWSYGLRPG-NH2 1 11 21 31 41 51   1 MANSASPEQN QNHCSAINNS IPLMQGNLPT LTLSGKIRVT VTFFLFLLSA TFNASFLLKL 60  61 QKWTQKKEKG KKLSRMKLLL KHLTLANLLE TLIVMPLDGM WNITVQWYAG ELLCKVLSYL 120 121 KLFSMYAPAF MMVVISLDRS LAITRPLALK SNSKVGQSMV GLAWILSSVF AGPQLYIFRM 180 181 IHLADSSGQT KVFSQCVTHC SFSQWWHQAF YNFFTFSCLF IIPLFIMLIC NAKIIFTLTR 240 241 VLHQDPHELQ LNQSKNNIPR ARLKTLKMTV AFATSFTVCW TPYYVLGIWY WFDPEMLNRL 300 301 SDPVNHFFFL FAFLNPCFDP LIYGYFSL ヒトGnRHは pEHWSYGLRPG-NH2

Gタンパク質連結型受容体 LHの受容体は ヒトLH受容体(赤い部分はシグナルペプチド、 青い部分は膜貫通ドメイン)   青い部分は膜貫通ドメイン)        1          11          21          31          41          51     1 MKQRFSALQL LKLLLLLQPP LPRALREALC PEPCNCVPDG ALRCPGPTAG LTRLSLAYLP    60   61 VKVIPSQAFR GLNEVIKIEI SQIDSLERIE ANAFDNLLNL SEILIQNTKN LRYIEPGAFI   120   121 NLPGLKYLSI CNTGIRKFPD VTKVFSSESN FILEICDNLH ITTIPGNAFQ GMNNESVTLK   180   181 LYGNGFEEVQ SHAFNGTTLT SLELKENVHL EKMHNGAFRG ATGPKTLDIS STKLQALPSY   240   241 GLESIQRLIA TSSYSLKKLP SRETFVNLLE ATLTYPSHCC AFRNLPTKEQ NFSHSISENF   300   301 SKQCESTVRK VSNKTLYSSM LAESELSGWD YEYGFCLPKT PRCAPEPDAF NPCEDIMGYD  360   361 FLRVLIWLIN ILAIMGNMTV LFVLLTSRYK LTVPRFLMCN LSFADFCMGL YLLLIASVDS  420   421 QTKGQYYNHA IDWQTGSGCS TAGFFTVFAS ELSVYTLTVI TLERWHTITY AIHLDQKLRL  480   481 RHAILIMLGG WLFSSLIAML PLVGVSNYMK VSICFPMDVE TTLSQVYILT ILILNVVAFF  540   541 IICACYIKIY FAVRNPELMA TNKDTKIAKK MAILIFTDFT CMAPISFFAI SAAFKVPLIT   600   601 VTNSKVLLVL FYPINSCANP FLYAIFTKTF QRDFFLLLSK FGCCKRRAEL YRRKDFSAYT  660   661 SNCKNGFTGS NKPSQSTLKL STLHCQGTAL LDKTRYTEC

Gタンパク質連結型受容体 7個の膜貫通ドメインをもつ

Gタンパク質連結型受容体

Gタンパク質連結型受容体 活性化したGタンパク質は、標的酵素である アデニル酸シクラーゼを活性化 活性化したアデニル酸シクラーゼはATPから 環状アデノシンモノリン酸(cAMP)を生成

Gタンパク質連結型受容体 cAMPは細胞質中にあるcAMP依存性タンパク質キナーゼ(Aキナーゼ)と結合して、この酵素を 活性化する 活性化された酵素は次の酵素を活性化 多段階カスケード反応によって増幅される

Gタンパク質連結型受容体

Gタンパク質連結型受容体 連結するGタンパク質が異なる場合もある

脂溶性ホルモンの作用機構

脂溶性ホルモンの作用機構 ステロイドホルモンのかたち テストステロン(Ball & Stick model)    赤:酸素、灰色:炭素、白:水素 右はテストステロン分子を横から見たもの

脂溶性ホルモンの作用機構 ラットアンドロジェン受容体(青い部分はDNA結合ドメイン、 赤い部分はホルモン結合ドメイン) 1 11 21 31 41 51  1 MEVQLGLGRV YPRPPSKTYR GAFQNLFQSV REAIQNPGPR HPEAASIAPP GACLQQRQET 60 61 SPRRRRRQQH PEDGSPQAHI RGTTGYLALE EEQQPSQQQS ASEGHPESGC LPEPGAATAP 120 121 GKGLPQQPPA PPDQDDSAAP STLSLLGPTF PGLSSCSADI KDILSEAGTM QLLQQQQQQQ 180 181 QQQQQQQQQQ QQQQQEVISE GSSSVRAREA TGAPSSSKDS YLGGNSTISD SAKELCKAVS 240 241 VSMGLGVEAL EHLSPGEQLR GDCMYASLLG GPPAVRPTPC APLAECKGLS LDEGPGKGTE 300 301 ETAEYSSFKG GYAKGLEGES LGCSGSSEAG SSGTLEIPSS LSLYKSGAVD EAAAYQNRDY 360 361 YNFPLALSGP PHPPPPTHPH ARIKLENPSD YGSAWAAAAA QCRYGDLASL HGGSVAGPST 420 421 GSPPATASSS WHTLFTAEEG QLYGPGGGGG SSSPSDAGPV APYGYTRPPQ GLASQEGDFS 480 481 ASEVWYPGGV VNRVPYPSPS CVKSEMGPWM ENYSGPYGDM RLDSTRDHVL PIDYYFPPQK 540 541 TCLICGDEAS GCHYGALTCG SCKVFFKRAA EGKQKYLCAS RNDCTIDKFR RKNCPSCRLR 600 601 KCYEAGMTLG ARKLKKLGNL KLQEEGENSS AGSPTEDPSQ KMTVSHIEGY ECQPIFLNVL 660 661 EAIEPGVVCA GHDNNQPDSF AALLSSLNEL GERQLVHVVK WAKALPGFRN LHVDDQMAVI 720 721 QYSWMGLMVF AMGWRSFTNV NSRMLYFAPD LVFNEYRMHK SRMYSQCVRM RHLSQEFGWL 780 781 QITPQEFLCM KALLLFSIIP VDGLKNQKFF DELRMNYIKE LDRIIACKRK NPTSCSRRFY 840 841 QLTKLLDSVQ PIARELHQFT FDLLIKSHMV SVDFPEMMAE IISVQVPKIL SGKVKPIYFH 900 901 TQ

脂溶性ホルモンの作用機構 ラットアンドロジェン受容体のホルモン 結合部分の構造模型 細胞質受容体 スーパーファミリー

DNAとタンパク質の相互作用

DNAとタンパク質の相互作用 結合する タンパク質 水素 結合

DNAとタンパク質の相互作用 ホメオドメインタンパク質 ロイシン ジッパー ジンク フィンガー

脂溶性ホルモンの作用機構 Znフィンガー ホルモン応答エレメント(HRE) 5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’

脂溶性ホルモンの作用機構 ステロイドホルモンが受容体に結合 HspがはずれてDNA結合部位が露出 ニ量体となってDNAのHREに結合 下流の遺伝子の転写を促進 タンパク質合成