LHC-ATLAS実験SCTシリコン 飛跡検出器のコミッショニング - II

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LHC-ATLAS実験SCTシリコン 飛跡検出器のコミッショニング - II 岡本敦志 岡山大学大学院自然科学研究科 岡山大,高エ研A,筑波大B,京都教育大C,阪大D  田中礼三郎,中野逸夫,池上陽一A,海野義信A,高力孝A, 寺田進A,原和彦B,高嶋隆一C,花垣和則D,他アトラスSCTグループ 2008年9月23日 日本物理学会 山形大学 2008/9/23

LHC-ATLAS実験SCTシリコン 飛跡検出器のコミッショニング-II 1. LHC実験 2. ATLAS検出器 3. SCT検出器 - デジタイゼーション  - クラスターサイズ - ホールアングル(ローレンツアングル) 4. 宇宙線データとシミュレーション 5. クラスターサイズの解析 6. まとめ 2008/9/23

1.LHC(Large Hadron Collider)実験 重心系のエネルギーが14TeVの陽子・陽子衝突型加速器。 2008年9月10日にビーム入射が開始された。 ヒッグス粒子、超対称性粒子、余剰次元の発見が主要な目的。 2008/9/23

2. ATLAS検出器 2Tソレノイド磁場 全長 43m 高さ 22m 質量 7000t 内部飛跡検出器 TRT SCT エンドキャップ 質量   7000t 2Tソレノイド磁場 内部飛跡検出器 TRT SCT エンドキャップ 2112台のSCT バレルモジュール SCTバレル 2008/9/23 Pixel

3. SCT飛跡検出器 信号読み出しまでの流れ 荷電粒子(MIP)が通過したとき 断面図 80e-h対/μm → 22800e(3.6fC) 1.逆バイアス電圧(150V)をシリコン半導体にかけることによって空乏層を作る。 2.荷電粒子が通過した時に電子正孔対を作る(80e-h/μm)。 3.p型半導体(Al電極)に電荷が収集され、信号が読みだされる。 80μm 荷電粒子(MIP)が通過したとき 80e-h対/μm → 22800e(3.6fC) シリコンの厚さ 285μm Threshold  1fC バイアス電圧   150Volts ストリップ間隔  80μm 位置分解能    d/√12=23μm 断面図 285μm 2008/9/23

デジタイゼーション Threshold 1fC 読み出される信号は0か1の情報(Thresholdを超えるか超えないか) アナログ デジタル アナログ          デジタル Threshold ABCDチップ   (読み出し、アンプ→デジタル変換) 電圧150V 読み出される信号は0か1の情報(Thresholdを超えるか超えないか) 2000年Beam Test アンプによってpeaking time (立ち上がりからピークまでの時間) が設定されている。  20~25ns 2000年 ビームテスト 2008/9/23

デジタイゼーション シミュレーションの時に重要なパラメータ これらのパラメータをクラスターサイズで評価。 シミュレーションの時に重要なパラメータ     ABCD Peaking time 21ns 隣のストリップへの電荷のロス 10% Back Planeへの電荷のロス                2% 放射線損傷による電荷のロス              未導入 ホールアングル   3~4(degrees)     本研究の目的 これらのパラメータをクラスターサイズで評価。 シミュレーションと実データで比較する。 クラスター:ビームが一度通過する際に複数のストリップが信号を出すこと。 2008/9/23

クラスターサイズ クラスターサイズは入射角に依存する。 クラスターサイズ: ストリップのヒットした数 磁場がないときの電荷収集 入射粒子 クラスターサイズ: ストリップのヒットした数 磁場がないときの電荷収集 入射粒子 角度をもって入射 入射角 θ ストリップ 80μm 電荷収集 285μm 入射角 0°の時、 クラスターサイズ 最小(1or2) 入射角が大きいとき  クラスターサイズ 大(>2) クラスターサイズは入射角に依存する。 2008/9/23

ホールアングル ホールアングル 磁場があるときローレンツ力により電荷がある角度をもって収集される。 磁場があるときの電荷収集 ローレンツ力 ΘH B:磁場(2T) E:電場 物質中を移動するホールの速度 Hall Mobility  (cm2/Vs) ホールアングル ホールアングルの効果によりクラスターサイズが最小になるときの入射角は0°からずれる 磁場があるときローレンツ力により電荷がある角度をもって収集される。 正確な飛跡を求めるためにはこれを補正する必要がある。 2008/9/23

4. 宇宙線データとシミュレーション 宇宙線データ (M6) 2008年3月測定 宇宙線trigger (all triggers -scintillator, RPC,TGC & Tile+ HLT selecting events with TRT tracks pointing to SCT volume) Threshold 1.0fC 磁場なし シミュレーション  磁場あり x=0, y=280(mm)でミューオンを発生させる。 Φ=一様  磁場なし 宇宙線シミュレーション y ここら辺でミューオンを発生させる Φ x 2008/9/23 SCTバレル断面図

宇宙線データ 2008.3 ソレノイド トラックに付随したクラスターサイズを調べる。 宇宙線データ  2008.3 ソレノイド 100 (cm) トラックに付随したクラスターサイズを調べる。 SCTモジュールに対する入射角(ローカル座標)とクラスターサイズの関係を調べた。 シミュレーションと比較した。 宇宙線を解析することによってさまざまな入射角を見ることができる。   50 TRT Pixel SCT バレル -50 -100 2008/9/23   -100  -50   50 100 (cm)

ローカルな入射角の計算 宇宙線 ローカルな入射角 さまざまな入射角とそれに付随したクラスターサイズを調べる。 y y 入射粒子 x SCTモジュール さまざまな入射角とそれに付随したクラスターサイズを調べる。 x 2008/9/23

5. クラスターサイズの解析 クラスターサイズが 最少のときの入射角 = クラスターサイズの平均 ホールアングル 入射角 入射角 最少のときの入射角   = ホールアングル 4 3 クラスターサイズの平均 2 Zoom 1 -80  -60 -40 -20  0 20 40 60 80 入射角 赤:宇宙線データ(磁場なし) 青:シミュレーション(磁場あり) 緑:シミュレーション(磁場なし) 2008/9/23 入射角

シミュレーションの結果 Hyperbolic関数 で Fit クラスターサイズの平均 入射角 黒:磁場なし 赤:磁場あり(2T) 磁場あり クラスターサイズの最小値 1.10±0.01 ホールアングル -3.46±0.22 (degree) Fit範囲      -30~20(degree) クラスターサイズの最小値 1.09±0.01 ホールアングル 0.08±0.32 (degree) Fit範囲       -25~20 (degree) 2008/9/23

実データの結果 クラスターサイズの平均 入射角 クラスターサイズの平均 入射角 2000年に測定されたBeamTest 宇宙線(磁場なし) フィット範囲 -30~30(degree) 赤:磁場あり(1.56T) 黒:磁場なし クラスターサイズの平均 クラスターサイズの平均 入射角 入射角 2000年に測定されたBeamTest 宇宙線(磁場なし) Beam Test (磁場なし) クラスターサイズの最小値 = 1.18±0.01 ホールアングル  0.27 ±0.19(degree)  クラスターサイズの最小値  約1.15ホールアングル  0.4 ± 0.2(degree) 2008/9/23

5.まとめ クラスターサイズの最小値は約1.15。実データとシミュレーションの差は0.1以下である。 (宇宙線データ) (2000 Beam Test) 磁場あり(2T) 磁場なし 磁場あり 磁場あり(1.56T) クラスターサイズの最小値 1.10 ±0.01 1.09 未解析 1.18 約1.17 約1.15 ホールアングル (degrees) -3.46 ±0.22 0.08 ±0.32 0.27 ±0.19 -3.30 ±0.30 0.40 ±0.20 クラスターサイズの最小値は約1.15。実データとシミュレーションの差は0.1以下である。 磁場なしではクラスターサイズが最小になるのは入射角0°、シミュレーション磁場あり(2T)ではホール角(Hall angle)は-3.46±0.22(degrees)になった。 磁場ありの宇宙線データを近々収集する予定。また、2008年に予定されている950GeVおよび10TeVでの衝突データを用いて解析する予定です。 2008/9/23