ハイパーカミオカンデ用 ハイブリッド光検出器の 開発と性能評価

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ハイパーカミオカンデ用 ハイブリッド光検出器の 開発と性能評価 立石 圭児 (京都大) 19th ICEPP Symposium 2013/2/18 岳美山荘

目次 イントロダクション HPDの開発状況 HPDの性能評価 全体のまとめ これから Hyper-Kからの要請 HPDの原理、利点(PMTとの比較) HPDの開発状況 HPDの性能評価 1光電子の検出 ゲインカーブ 1光電子分解能 P/V TTS ダークレート レート耐性 Saturation PMTとの比較まとめ 全体のまとめ これから

イントロダクション

Hyper-K(HK)からの要請 ハイブリッド光検出器HPDはHKの光検出器の候補 99000本の20-inch光検出器が必要(Super-Kは約1万本) 25000本の8-inch光検出器も必要(Super-Kは約2000本) 量産化しやすく、安価である必要がある 必要な性能 1p.e.の識別性能 1p.e.の時間分解能が優れている 数百p.e.まで検出可能 p.e. = photo electron (光電子) ハイブリッド光検出器HPDはHKの光検出器の候補 今回Super-K (SK)の20-inch PMTの性能と比較をする

Hybrid Photo-Detectorの原理 -SKの20-inch PMTとの比較- Avalanche Diode (AD) PMT HPD Hybrid e e Dynode HV ~2kV e HV ~8kV amp AD Bias ~300V 打ち込みゲイン ×~400 アバランシェゲイン ×~150 @300V SK 20-inch PMT 8-inch HPD HV ~2kV 8kV ゲイン ~107 ~104-105 HPDゲイン= 打ち込みゲイン × アバランシェゲイン

HPDの利点 PMTと比べて 8kVという高電圧をかけるので ダイノードではなくADを使うことで 1p.e.の分解能、時間分解能が優れる 収集効率が良い ダイノードではなくADを使うことで シンプルな構造となり、量産しやすく安価に作ることが出来る 時間分解能が優れる 軸対称なのでゲインの一様性がある

HPD開発状況 8-inch HPD

20-inch HPDの開発状況 電場や電子軌道、耐水圧などの設計、計算は完了している 2013年4月から試作管作製 収集効率 TTS(FWHM) SK PMT 80% 5.5ns HPD(計算値) 95% 1.1ns 電場や電子軌道、耐水圧などの設計、計算は完了している 2013年4月から試作管作製 試験、改良管の作製を繰り返していく 防水ケースのデザイン検討中 2014年には水中試験が出来るものを作製 HV : ~8kV 8-inch HPDと同じ AD : φ20mm 8-inchはφ5mm 光電面:高QE化(22%→30%以上)検討

8-inch HPDの開発状況 2012/5、神岡で8-inch HPDのR&D開始、開発・評価を始めた 放電対策 HVピン周りの放電対策、フィルター内絶縁、HPD周りのグラウンド強化 ノイズ軽減 低周波ノイズ(5kHz)の除去(フィルターの追加) アンプ改良 S/N比を良くするために差動アンプの採用、時定数・倍率の最適化 これらの改良と実用性評価(須田くんの発表)を経て、 水チェレンコフ検出器として使えるかどうかの実証試験を 行える段階まで来た

prototype of 8-inch HPD 30cm amp 8kV Signal AD LV HV Module ~300V 防水のためのハウジング amp 30cm Signal I-V conv. Diff. ~300V AD Bias ~300V Filter Filter AD LV 8kV +HV Signal LV HV Module AD φ 5mm

8-inch HPDの性能評価 レーザーダイオード 8-inch HPD オシロスコープ

1光電子の検出 1p.e., 2p.e., 3p.e.が綺麗に検出出来ている! 90ns 8mV 1p.e. 2p.e. 3p.e. ←w/ 70m信号ケーブル 90ns 8mV 1p.e. 2p.e. 3p.e. 実証試験では70m信号ケーブルを使用する ↓w/o 70m信号ケーブル Counts 1p.e. 2p.e. ped. 3p.e. 1p.e., 2p.e., 3p.e.が綺麗に検出出来ている! 20  30   40   50  60 波高 [mV]

ゲインカーブ HPD+amp+70m信号ケーブルのゲイン 10kVまで可能だが安全性等のためHVは8kVに固定 ADバイアスによって変化 HVを変えた時のゲインの変化 ADバイアスを変えた時のゲインの変化 ゲイン ゲイン ADバイアス:292V HV:8kV ADバイアス電圧 [V] HPD+amp+70m信号ケーブルのゲイン 10kVまで可能だが安全性等のためHVは8kVに固定 ADバイアス電圧を変えることでゲインを調整する

1p.e.分解能、pedestal幅、P/Vの定義 最適なADバイアス電圧(アバランシェゲイン)を決めるために以下を測定した 1p.e.の分解能 = (1p.e. Sigma) / (1p.e.のピーク位置) エネルギー分解能に繋がる pedestalの幅 = (pedestal Sigma) / (1p.e.のピーク位置) ノイズの指標 Peak to Valley ratio (P/V) = (1p.e.のピークの高さ) / (pedestalと1peの間の谷の高さ) ヒットトリガーのthresholdの決定に繋がる pedestal Counts これらの値が最も良くなる時が最適なADバイアス(アバランシェゲイン) 1p.e. 谷

1p.e.分解能、P/Vのバイアス依存性 1p.e. 分解能 pedestal Pedestal 幅 1p.e. P/V 1peの分解能、pedestalの幅、Peak to Valley (P/V)のバイアス依存(電荷の分布から求めた) ADバイアス~345V (アバランシェゲイン~225) どれもADバイアス~345V(アバランシェゲインが~225)の時が一番良い 1p.e. 分解能 Pedestal 幅 P/V 90 80 70 60 50 40 30 20 10 Sigma / 1p.e.のPeak [%] アバランシェゲイン225の時の分布 pedestal Counts 1p.e. ADバイアス345V(アバランシェゲインが225)の時 ゲイン(HPD+amp)  1p.e.分解能 P/V ~2.8×107 ~35% ~7 SKの20-inch PMT ~107 ~150% 1.9 SKのPMTより 優れている!

Transit Time Spread (TTS) トリガー 波高の25% 1p.e. TTS σ : 1.26±0.06 ns 1p.e.レベルの光量を入射し、波高の25%が通過した時間を測定 これで時間分解能がどのくらいなのか知ることが出来る 1p.e.のTTS (amp + 70mケーブル) : ~1.3 ns (Sigma) SKの20-inch PMTは~2.2ns (Sigma) HPD単体のTTSは0.62ns (Sigma) ampと70mケーブルで悪くなっている ampを変える/改良することで1.3nsより改善する可能性がある SKのPMTより良い結果!

ダークレート ~3kHz アバランシェゲイン225の時のシリアルEHD0057のダークレート @25℃ 光がない状態で出てくるノイズの数をthresholdを変えながらスケーラーで数えたもの ダークレートはヒットトリガーのthresholdを決める上で重要 1p.e.以下であること 数が少ないこと 大きく変動しないこと SKのタンクに入った20-inch PMTの場合、~4kHz @ 0.25p.e. (~13℃) 長期間安定後にさらに下がる見込み ~3kHz Threshold Threshold [p.e.] = Threshold [mV] / 1p.e.の波高[mV]

レート耐性 超新星爆発が起こった時などに高レートでの耐性が必要 光量は固定し、周波数を変えて波高の変化を見た アバランシェゲイン225の時のレート耐性 (w/o 70mケーブル) 超新星爆発が起こった時などに高レートでの耐性が必要 光量は固定し、周波数を変えて波高の変化を見た 今回は110mVのみで測定 拡大 緑:5%以内 橙:10%以内 500kHzまでは5%以内のふらつき 700kHzまでだと10%以内 500kHz 700kHz

波高のsaturation HKでは数百光電子を検出する必要がある物理も取り扱う 飽和はampによるもの アバランシェゲイン225 HKでは数百光電子を検出する必要がある物理も取り扱う 飽和はampによるもの HPD自体は~104光子程度まで線形性がある(打ち込みゲイン:250, アバランシェゲイン:140) ~840mV 飽和し始めている 飽和し始める点 : ~840mV 1p.e.の波高が~8.6mVなので~100p.e.にあたる 数百p.e.までは見えない 20-inch HPDの場合にはダイナミックレンジを広げたamp設計を行う

PMTとの比較まとめ ~107 ~7 1.9 ~35% ~150% ~1.3 ns ~2.2ns ~4kHz (~13℃) 8-inch HPD 20-inch PMT ゲイン 104~105 (ampありだと~107) ~107 1p.e. P/V ~7 1.9 1p.e. 分解能 ~35% ~150% 1p.e. TTS (Sigma) ~1.3 ns (amp+70mケーブル) ※HPD単体では0.62ns ~2.2ns ダークレート(@0.25p.e.) ~3-40kHz (~25℃) ~4kHz (~13℃) 1p.e.のTTSはampを変える/改良することで改善する可能性がある ダークレートはHPDではまだ安定後の測定が行われていないのでふらつきがある

レート耐性、温度・磁場依存性、一様性など これから 年 2013 2014 2015 2016 8-inch HPD 水中試験(200tタンク) 詳細な性能評価 HKの 光検出器 決定 20-inch HPD 性能評価 水中試験 (200tタンク) レート耐性、温度・磁場依存性、一様性など ?

まとめ 開発状況 性能評価 将来の展望 20-inch PMTよりも優れた分解能が8-inch HPDで得られた 2016年にHKの光検出器が決定する それに向けて8-inch HPDの開発を続けていく 性能評価や実証試験の結果をフィードバック 20-inch HPDは8-inchの開発を元に開発を進めて行く 2014年に水中での実証試験を行う

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フォトセンサ(HPD)部 SK: 32uA/Lm Ik5: 4.9uA/Lm-b 項目 値 単位 感度波長範囲 300 ~ 650 nm 光電面 バイアルカリ - 面板材質 硼珪酸 QE max: 16.4% @ 380nm SK: 32uA/Lm Ik5: 4.9uA/Lm-b *)分光カーブはSK: 31, Ik5: 4.9と同程度の感度を持つ別のチューブのもの

1pe波高分布 Counts pedestal 1p.e.

HK全体のスケジュール 光検出器開発