金属欠乏星の亜鉛組成 ~亜鉛組成の中間報告~

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金属欠乏星の亜鉛組成 ~亜鉛組成の中間報告~ 齋藤雄二(東海大学 理学研究科) 2004年5月20日 HDS seminar

Zinc Z=30 鉄族元素 Volatile elements: Sulfur,Oxygen       Feに比べてDust depletion が小さい DLAsでは金属量の指標 起源は明確ではない Si-burningが有力 (Umeda & Nomoto2002,Cayrel et al.2004) 中性子捕獲(s-process)?

過去の観測データ(1) Sneden et al.(1991) McDonald & ESO-CAT, R~50000 [Zn/Fe]=0.04±0.02 Sneden et al.(1991) McDonald & ESO-CAT, R~50000 -2.9<[Fe/H]<-0.1 の40 disk and halo Zn & Cu を解析 Nissen et al.(2004) VLT/UVES R~60000 34Halo Dwarf & subgiants Zn & S を解析 我々とほぼ同様の手法で  大気パラメーターを決定 [Zn/Fe]=0.03±0.08

過去の観測データ(2) Johnson (2002) KeckⅠ/HIRES(R~45000) [Fe/H]<-2で一定の傾きで増加 Johnson (2002) KeckⅠ/HIRES(R~45000) Lick Shane 3m/Hamiltonian spectrograph(R~60000) -3.2<[Fe/H]<-1.7  の23Giants 30 elements(NaI,ZnI,EuII,etc) Cayrel et al.(2004) VLT/UVES(R~45000) -4.1<[Fe/H]<-2.7 の35星 15 elements(C to Zn) Cayrel et al.(2004)

過去の観測データ(3) 太陽値的(?) [Fe/H]<-2 増加 -2.5<[Fe/H]<0 太陽値 Mishenina et al.(2002) OHP/ELODIE(R~42000),データベース -3<[Fe/H]<-0.5 の90星 Zn(3line) & Cu を解析 σavg=0.16 (0.08~0.26) Teff:Hαのwing, log g:電離平衡 再解析を行う予定 太陽値的(?) [Fe/H]<-2 増加 Blake et al.2001 Johnson 2002 Honda et al.2004 Cayrel et al.2004 -2.5<[Fe/H]<0 太陽値 Sneden et al.1991 Mishenina et al.2002 Nissen et al.2003

過去の観測データ(4):まとめ [Fe/H]の減少に伴い [Zn/Fe]は 減少⇒-1.5⇒増加 か? 減少 増加   どこから増加するのか? -2.0<[Fe/H]<0  [Fe/H]<-1.5は増加傾向?  -1.5<[Fe/H]<-1.0で極小値? データが希薄 減少 増加 [Fe/H]の減少に伴い [Zn/Fe]は 減少⇒-1.5⇒増加 か?

各元素の鉄に対する組成 Goswami & Prantzos (2000)

目的 [Zn/Fe]の振る舞いの確証を得る [Fe/H]=-1.5付近で[Zn/Fe]の振る舞いは変化するのか 一定⇒増加 減少⇒増加 一定 他元素との相関:Cu、S、Mn

観測 2003年10月15‐19日 ⇒5夜(53時間) 2004年1月5‐12日 ⇒8夜(50時間)   2004年1月5‐12日 ⇒8夜(50時間) 岡山天体物理観測所 188cm/HIDES 分解能 約50000 SN比 100-500 大部分は200-400 波長域 4650-5820Å    ZnⅠ:4722.16, 4810.54Å    CuⅠ:5105.54, 5218.20, 5782.13Å    MnⅠ:4754.03, 4783.43, 4823.53Å 金属度 -2.9<[Fe/H]<0 mainは[Fe/H]=-1.5付近 22星(うち矮星7)

大気パラメーター Effective Temperature Teff : (V-K)よりIRFM(Alonso et al.1996,1999)    Reddening補正:Schlegel et al.(1998) Dust mapを使用 K等級:2MASS* σtotal>0.03 ⇒ KTCSを採用(4星)   System間の系統誤差:δK(2MASS – TCS)=0.019   Nissen et al.2003                   補正は行わない                                                                *Two Micron All Sky Survey     例) θeff(V-K)=0.5558+0.2105(V-K)+0.001981(V-K)2           -0.009965(V-K)[Fe/H]+0.01325[Fe/H]-0.002726[Fe/H]2 Surface Gravity log g : 質量、Luminosity、Teff     質量M-Evolutionary tracks 〈Girardi et al.(2000,1994)〉 Luminosity-Mv,BC(V),Mbol    log g=log(M/M。)-log(L/L。)+4log(Teff/Teff。)+log g。 Microturbulence Vt:文献値を採用(無い星は1.5(km/s)) 金属度 [Fe/H]: 文献値

Log g: BC(V),質量 Giants V0=V-3.1E(B-V) Mv=V0-5log(D/10) Mbol=BC(V)+MV Alonso et al.(1999) V0=V-3.1E(B-V) Mv=V0-5log(D/10) Mbol=BC(V)+MV      Teff,[Fe/H]より決定⇒ Mbol-Mbol(solar)= -2.5 log(L/Lsolar) Dwarfs Alonso et al.(1995) Girardi et al.による恒星のEvolutionary tracksをもとに質量を決定 経路からはずれた星は0.6太陽質量と推定 [Fe/H]=1.024 logZ+1.739

微小乱流速度 Vt(km/s) 〈決定法〉 測定したFeⅠ吸収線の等価幅と組成値との間に相関がない、という条件をもとに決定 〈 Edvardsson et al.(1993)の経験則〉         ξ(km/s)=1.25+8×10-4(Teff-6000)                 -1.3(log g-4.5) 5550<T<6800 3.8<log g<4.5 -1.1<[Fe/H]<0.3 矮星のみに適用可

Vtの決定例

採用した大気パラメーター

解析 IRAFを用いて一次元化 等価幅測定: IRAF splot にて 主にGaussian profile fitting 一部、直接積分(e,e) & Voigt profile fitting 使用コード: ATLAS9(Model Atmosphere) WIDTH9(Abundance Analysis) gf 値 ZnⅠ: Biemont & Godefroid (1980) CuⅠ: Kurucz CDROM#23       MnⅠ: Westin et al.(2000), Martin et al.(1988) LTE解析

ZnⅠ 等価幅は10~120mÅ 大半は40~60mÅ 全22星で2本とも検出 4722.16Å 4722.16Å 4722.16Å 4810.54Å 4810.54Å 4722.16Å 4722.16Å 4810.54Å

CuⅠ 20星 18星 19星 EW:20~70mÅ EW:2~40mÅ EW:1~30mÅ 5105.54Å 5218.20Å 5782.13Å 20星 EW:20~70mÅ 18星 EW:2~40mÅ 19星 EW:1~30mÅ

結果. Zinc Abundance

Zinc Abundance

Zinc all

Copper Abundance(Z=29)

Copper Abundance

Zinc & Copper

[Zn/Cu] vs [Fe/H]

This study vs Mishenina et al.  Δ[Zn/Fe]avg=0.028, Δ[Cu/Fe]avg=0.104 (HD6833は除外)

Zinc & Sulfur Nissen et al.(2004) HIDESで観測したTakada-Hidai et al.のSulfurとは7星が重複しているが、   -2<[Fe/H]<-1のデータが不足 Nissen et al.(2004)はSとZnを同時に検出 Nissen et al.(2004)

[S/Zn] vs [Fe/H] Sulfurの方が系統的に大きい(-2.8<[Zn/H]<-0.5)

Manganese Abundance(Z=25)

[Zn/Fe] vs [Mn/Fe]

まとめ 減少⇒増加の可能性アリ [Zn/Fe]~0.06 [Fe/H]=-1.5±0.2 [Zn/Fe]:0±0.25 の分散                 太陽値以下の星もある Copperとの比較:     -1.5< [Fe/H]<-1.0 ZnとCuはほぼ同様の傾きで減少     [Fe/H]<-1.5  Zn:増加、 Cu:減少 減少⇒増加の可能性アリ Sulfurとの比較:   Sの方が系統的に大きい(0.3dex) Manganeseとの比較:        -1.5<[Fe/H]<0 傾向としては似ている・・・同じ振る舞いを示すならSNⅠaの寄与を                         考慮する必要がある

今後の課題 サンプルを増やす(特に -1.5<[Fe/H]<-1) 現時点の倍(40星)以上を目指す Microturbulence(FeI)、[Fe/H](FeII)の決定 Kinematicsとの関連の調査 他元素との相関:α、鉄族、中性子捕獲元素 ELODIEスペクトルの解析    Mishenina et al.より小さい分散で