翼型の非定常キャビテーションにおけるRe-entrant Jet現象に関する研究

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翼型の非定常キャビテーションにおけるRe-entrant Jet現象に関する研究 応用流体工学研究室 修士課程2年 96309  薬師寺 涼

Sheet Cloud Cavitationとは? シートキャビティ(sheet cavity) (透明な気膜状のキャビティ) クラウドキャビティ(cloud cavity) (大規模な気泡群の渦) Flow 数10Hz周期でcloud cavityの放出がくり返される

研究の背景(1) 翼型に発生するsheet cloud cavitationはその振動現象が様々な害を引き起こす。 その発生原因は翼面上を進行する液相の逆流    (re-entrant jet)が原因であるとされているが詳細な メカニズムについてはそのシナリオが十分に描けていない。

研究の目的(1) re-entrant jetの特性を解明することにより、sheet cloud cavitation現象の発生原因のシナリオを詳細化する。 昨年度卒論ではre-entrant jetの流速、発生位置に多様性があることを見出した。 この多様性を根底で支配するcloud cavitation発生のメカニズムは何か? re-entrant jetの振る舞いに関する更なるデータの蓄積 re-entrant jet現象自体の実態のさらなる解明

Re-entrant Jetの特性解明に関する実験的アプローチ: 昨年度卒論のまとめ シートキャビティの後端 流れ キャビティ底面の様子 鏡 流れ 透明なアクリル翼 高速度ビデオカメラ キャビティ 流れとは反対側に進む「白い筋」 re-entrant jetの先端

re-entrant jetの多様な振る舞い 昨年度卒論で得られたこと re-entrant jetの性質 ・「白い筋」はほぼ等速で進行する。 ・「白い筋」は2本以上見られることもある。 ・「白い筋」は様々な位置から発生する。 ・「白い筋」は翼後縁側から発生したものほどその進行速度が大きい。 re-entrant jetの多様な振る舞い

昨年度卒論で得られたこと シートキャビティ後端から発生するre-entrant jet程流速が大きい しかし、sheet cavityの切断、cloud cavityの放出のシナリオが完全に描けたわけではない。

本年度の研究 1、高速度ビデオによる上下両面からの同時観察 2、熱線相関流速計を用いた実験 実験のまとめ 3、汎用CFDコードを用いたCavitation計算 Cloud Cavitation放出のメカニズムの比較 結論

1、高速度ビデオによる上下両面からの同時観察

sheet cavityの切断には様々なパターンが存在する。 しかし、その周期は一定 Flow 7~8割 「白い筋」が前縁に到達して切断 透明なsheet cavity中を逆流する白い筋 sheet cavityの白濁 2~3割 sheet cavityの切断 cloud cavityの放出 途中から崩壊 突然切れる 翼型の上下両面から現象を観察することで、sheet cloud cavitaiton状態での現象の因果関係を考察し、整理する。

観察例と考察 -「白い筋」の確認- 1本目の「白い筋」も2本目の「白い筋」も翼面下側からの画像にくっきり現れている。

sheet cavityの切断には様々なパターンが存在する。 しかし、その周期は一定 Flow 7~8割 「白い筋」が前縁に到達して切断 透明なsheet cavity中を逆流する白い筋 sheet cavityの白濁 2~3割 sheet cavityの切断 cloud cavityの放出 途中から崩壊 突然切れる 翼型の上下両面から現象を観察することで、sheet cloud cavitaiton状態での現象の因果関係を考察し、整理する。

観察例と考察 -sheet cavityの途中からの崩壊-

観察例と考察 -sheet cavityの途中からの崩壊- 白濁部 sheet cavityの気膜構造が途中から上流側に向かって崩壊して、小さな渦cavityになってゆく。 re-entrant jetの進行に従ってその上側で起こっている。 しかし、cavity全体がcloud cavityとして放出されるのは  re-entrant jetが前縁に到達してからである。

観察例と考察 -sheet cavityの途中からの崩壊- 白濁部 re-entrant jetの進行の途中で、sheet cavityの気膜構造が崩壊し、渦cavityに分裂する様子が見られた。 sheet cavityが薄いと、re-entrant jetの進行によって気膜構造が不安定になるという研究(1998.Callenaereら) sheet cavityの厚さに比べて、re-entrant jetの厚さが大きいために気膜構造が崩壊したのでは?

sheet cavityが途中から崩壊するものは Flow 1本目の「白い筋」の到達によってsheet cavityが切断される周期 2本目以降の「白い筋」の到達によってsheet cavityが切断される周期 sheet cavityが途中から崩壊するものは 上の2種類の亜種として考えられる。 前縁付近に停留している液相の先端から突然sheet cavityが切断される周期 後に詳しく説明

本年度の研究 1、高速度ビデオによる上下両面からの同時観察 2、熱線相関流速計を用いた実験 実験のまとめ 3、汎用CFDコードを用いたCavitation計算 Cloud Cavitation放出のメカニズムの比較 結論

2、熱線相関流速計を用いた実験

2、熱線相関流速計を用いた実験 液相 気相 翼面上に平行に張られた熱線の抵抗値が、周りの流れによって変化する性質を利用。 その性質から、翼面上が気相・液相の変化が推定可能 翼面の多点に生じる様相を同時に捕らえるには適した方法 2本の熱線の信号値の相関から流速を求めるのが本来の利用法。 液相 気相

実験の概要 翼面上15%C,25%C,35%C,45%Cの各位置に直30μmのステンレス線(幅約20mm)を 合計4本設けた。 実験の概要   翼面上15%C,25%C,35%C,45%Cの各位置に直30μmのステンレス線(幅約20mm)を         合計4本設けた。 翼面 ステンレス線 翼面上各位置の熱線からの出力波形と同期した高速度ビデオ画像を翼下側から撮影 NACA0015 下から高速度ビデオにより観察

熱線の出力波形と高速度ビデオ画像の比較(パターンA) 主流速5m/s:迎角8deg キャビテーション数1.2 (最大シートキビティ長さ70%C) 明確な「白い筋」の進行が見られた場合 E 高速度ビデオの画像では

熱線の出力波形と高速度ビデオ画像の比較 (パターンA) 明確な「白い筋」の進行が見られた場合 熱線の出力波形と高速度ビデオ画像の比較 (パターンA) Flow シートキャビティ最大状態において、翼面上の35%Cまでの熱線位置は気相になっている。 その後re-entrant jetが上流側に逆流する。 最大sheet cavity長さ約80%C

2本目以降の「白い筋」は厚さの違うre-entrant jetの先端ではないか ・また、1本目の「白い筋」が通過すると翼面は液相になったままで、2本目以降の「白い筋」の通過に伴う出力波形の変化は見られなかった。 2本目以降の「白い筋」は厚さの違うre-entrant jetの先端ではないか

熱線の出力波形と高速度ビデオ画像の比較(パターンB) 明確な「白い筋」が見られなかった場合 高速度ビデオの画像では E

熱線の出力波形と高速度ビデオ画像の比較(パターンB) 翼面上の殆どの部分は液相になっている。 それでもcloud cavitationは発生する。 液相が流れ込めば必ずsheet cavityが切断されるわけではない。 突然sheet cavityが切断されるパターン Flow

波形ピークの統計値 各chord位置において気相への変化が見られたか? σ=1.4(Lmax=60%C) σ=1.2(Lmax=80%C) 変化あり 気相への 変化なし 最大sheet cavity長さよりいくらか上流側においては、 気相への変化をほとんどしない。

Re-entrant jetの発生位置について σ=1.2で最大sheet cavity長さ=80%Cに対して40%Cの位置 σ=1.4で最大sheet cavity長さ=60%Cに対して30%Cの位置

Re-entrant Jetの流速分析 無次元時間: 1周期の中でどの時間にre-entrant jetが通過したか 速度の予測値:

Re-entrant Jetの流速分析(σ=1.2の時) 昨年度卒論と同様の結果。

Re-entrant Jetの流速分析(σ=1.4の時) 25-35%C位置では推定値に対して小さな値 この位置より後縁側ではほとんどの場合液相のまま

昨年度卒論の画像解析ではre-entrant jetの発生直後は観察できなかった。

本年度の研究 1、高速度ビデオによる上下両面からの同時観察 2、熱線相関流速計を用いた実験 実験のまとめ 3、汎用CFDコードを用いたCavitation計算 Cloud Cavitation放出のメカニズムの比較 結論

実験のまとめ:sheet cavity切断のメカニズム 大きく3つのパターンに分けられる Flow 1本目の「白い筋」の到達によってsheet cavityが切断される周期 2本目以降の「白い筋」の到達によってsheet cavityが切断される周期 前縁付近に停留している液相   の先端から突然sheet cavityが切断される周期 sheet cavity切断の原因は?

実験のまとめ:sheet cavity切断のメカニズム 2本目以降の「白い筋」は厚さの違うre-entrant jetの先端ではないか

観察例と考察:もう一度 -sheet cavityの途中からの崩壊- 白濁部 re-entrant Jetの進行の途中で、sheet cavityの気膜構造が崩壊し、渦cavityになる様子が見られた。 sheet cavityが薄いと、re-entrant jetの進行によって気膜構造が不安定になるという研究(1998.Callenaereら) sheet cavityの厚さに比べて、re-entrant jetの厚さが大きいために気膜構造が崩壊したのでは?

実験のまとめ:sheet cavity切断のメカニズム 十分な厚さを持ったre-entrant jetの流入が必要

観察例と考察:sheet cavityの切断のメカニズム 周期の初めから液相が翼面上を覆っている。 液相の厚さが段々と厚くなるのでは?

実験のまとめ:re-entrant jetの性質

本年度の研究 1、高速度ビデオによる上下両面からの同時観察 2、熱線相関流速計を用いた実験 実験のまとめ 3、汎用CFDコードを用いたCavitation計算 Cloud Cavitation放出のメカニズムの比較 結論

3、汎用CFDコードを利用したCavitation計算

研究の背景(2) sheet cloud cavitationを対象とした数値計算が様々なモデルを用いて行われている。 その中には、re-entrant jetの発生やcloud cavitationの放出が再現できた例 これまで単純に考えられてきたre-entant jetのモデルに比べて実験的には非常に複雑な現象であることが示されつつある。 これらの新しい知識をもって計算結果を評価し、その解釈と、現象自体の解明の視点を持つことが必要である。

研究の背景(3) これまで、cavitation流れに対する計算は2次元形状を中心とした研究の段階であった。 複雑な形状をもつ流体機械に対するシミュレーションへの応用が期待されている。 簡便化されたcavitaton modelを組み込んだ汎用CFDコードの利用が開始された。 しかし、現状では十分な評価がなされておらず、cavitaton流れの特徴を表しているのか十分に検討されていない。

研究の目的(2) STAR-CDに採用された簡便なcavitation modelの評価 re-entrant jetの振る舞いを含め、近年蓄積されてきた様々な実験データ(本研究も含む) sheet cloud cavitationを対象とした他の数値計算 sheet cloud cavitationの発生機構を理解する一助に? STAR-CDに採用された簡便なcavitation modelの評価

汎用CFDコードSTAR-CDの概要 汎用流体解析ソフト 有限体積法を利用 非構造格子、完全不連続格子に対応 Version3.1からキャビテーションモデルが付加された。(使用実績は少ない) キャビテーションを表現するモデルとして、Barotoropic Model ,Bubble Two Phase Flow Model

Bubble Two Phase Flow Model Macroな現象:流場構造 シートキャビティ:安定な気膜構造 クラウドキャビティ: 渦を取り巻く気泡群 連続の式 N.S.方程式 ボイド率: 密度: 粘性: Rayleighの式の変形 Microな現象:気泡の成長収縮

STAR-CDにおける Cavitation Model C; VOF(流体体積率)=(1-ボイド率) 自由表面計算の拡張 左辺のsource termがcavitationにより誘起される。 流れ場とシーケンシャルに解かれる。 流れ場は非圧縮解析

計算の概要 NACA0015 主流速8m/s (Reynolds数 ) 迎角8deg Non Cavi,Cavi状態 (キャビテーション数1.2) 計算モデル PISO法による非定常計算 差分スキーム: U,V -----一次上流、QUICK VOF-----CICSAM Cavitation状態非定常計算 Non Cavitation定常計算 SIMPLE法による定常計算 差分スキーム: U,V -----一次上流 乱流モデルにはk-εmodelを利用

Non Cavitation計算の結果 境界層の影響を考慮した境界要素法による計算結果との比較 前縁部での負圧のピーク 圧力分布 境界層の影響を考慮した境界要素法による計算結果との比較 前縁部での負圧のピーク cavitationの初生に影響する領域

Non Cavitation計算の結果 L.D.V.によって計測した、 翼面上における流速と の比較 実験値とほぼ一致 翼面上各chord位置における流速分布 L.D.V.によって計測した、 翼面上における流速と の比較 実験値とほぼ一致 これらの結果をcavitation計算の初期値として代入。

Cavitation計算の結果 U,Vの移流fluxに対する差分スキームをQUICKにした場合は流速ベクトルに異常値が見られた。 計算の初期ではBTF modelを使った計算では粘性の有無などに関わらず、cloud cavitationの放出が見られた。 U,V移流fluxの差分スキームの違いなどにより収束時の様相が異なる。

Cavitation計算の結果 計算A (U,V:一次上流 粘性あり) 第1周期:Non Cavi計算における大きな負圧ピークの影響から巨大なcavityが見られる 第2周期:sheet cavityの成長とcloud cavityの放出が見られる。 計算A:time step 120000 キャビティ長さと放出周波数によるStrouhal数=0.23? 第3周期:安定なsheet cavityのまま 低次精度の差分スキームによる数値粘性の影響?

Cavitation計算の結果 計算B (U,V;QUICK 粘性あり) 流速ベクトルに異常値:安定な計算を行えなかった。 翼面近くの格子間隔 マルチブロックによる問題 etc… 計算B:time step 100000 cloud cavityの連続的な放出が続いたまま収束 cavityの体積は縮小していく傾向は同じ

圧力分布の妥当性 cavity形状に対しては妥当な圧力分布を示している 計算A 第2周期t/T=0.5における比較 sheet cavity 長さは 15%C程度に収束 実験でのsheet cavity長さは 80%C程度

Cloud Cavitation放出のメカニズムについて 粘性の有無、U,Vの移流fluxに対する差分スキームの精度によらず、計算の初期ではcloud cavityの放出が見られた。 翼面上に液相が入り込むことなく、(re-entrant jetが見られないのに)cloud cavityが放出されている。 その原因は? 計算A(U,V:1次上流 粘性あり)の結果を詳しく見てみると。。

計算A:第2周期(t/T=0.2) cloud cavity sheet cavity cavity内部に4m/s程度の逆流が存在する VOF+流速ベクトル 流速ベクトル cloud cavity sheet cavity cavity内部に4m/s程度の逆流が存在する 圧力コンター sheet cavityの後部に存在する逆圧力勾配により逆流が誘起される。

計算A:第2周期 (t/T=0.8) 逆流の範囲の拡大と渦中心の移動が見られる。 逆圧力勾配の領域は拡大 sheet cavity VOF+流速ベクトル 流速コンター sheet cavity 圧力コンター cavity内翼面上の逆流の強さはほとんど変わらない。 逆圧力勾配の領域は拡大 逆流の範囲の拡大と渦中心の移動が見られる。

Cloud Cavitationの 放出メカニズム (STAR-CD) cloud cavityの流出 逆圧力勾配領域の拡大 渦サイズの拡大 渦中心の移動 cloud cavityの放出

Cloud Cavitationの 放出メカニズム (Kubotaの計算 ) sheet cavity内部に逆流が存在する傾向は本来のBTFモデルであるKubotaの計算にも見られる。

Reboudによる計算結果(1994)との比較 Euler解析+Barotoropiy性を仮定したcavitation modelによるE.N.翼型周りの計算 re-entrant jetによるcloud cavitationの発生が表現されている。 sheet cavity内には強い逆流が存在せず、re-entrant jetによって初めて逆流が流れ込む。

Cloud Cavitationの 放出メカニズム (Reboudの計算) sheet cavity内部に逆流が存在せず、re-entrant jetの侵入によって初めて渦が形成される。

Cloud Cavitation放出のメカニズムの比較 re-entrant jetの再現が行われている点でReboudらによる計算に妥当性があるように見える。 BTFmodelであらわされるsheet cavity内部の逆流と液相の逆流に何らかの関係がある可能性も。 re-entrant jetの運動量およびsheet cavity内部の流れを解明する必要性がある

本年度の研究 1、高速度ビデオによる上下両面からの同時観察 2、熱線相関流速計を用いた実験 実験のまとめ 3、汎用CFDコードを用いたCavitation計算 Cloud Cavitation放出のメカニズムの比較 結論

sheet cavity切断のパターンを3つに分けてそのシナリオを推定した。  結論 アクリル製の翼型に発生するsheet cloud cavitationを上下から同時に高速度ビデオで観察する実験 翼面上4箇所に設けた熱線相関流速計を用いた実験 sheet cavity切断のパターンを3つに分けてそのシナリオを推定した。 Flow 1本目の「白い筋」の到達 2本目以降の「白い筋」の到達 突然切れる

結論

結論 また、re-entrant jetの性質について以下の新たな知見を得た。 結論   また、re-entrant jetの性質について以下の新たな知見を得た。 re-entrant jetはある限界位置より上流側からしか発生しない。 re-entrant jetは発生直後は加速し、その後等速に移行する。

計算の結論 汎用CFDコードSTAR-CDを用いて2次元翼のCavitation計算を行った。 ・BTFモデルを利用した計算ではその収束の様相は異なるものの、過渡的な段階ではcloud cavitationの放出が見られた。 ・本計算におけるcloud cavitationの発生にはre-entrant jetは見られなかった。 ・re-entrant jetの見られたReboudの計算結果との比較から、 cloud cavitationの発生のメカニズムに違いがあることを指摘した。 ・実験との対応から、今後、re-entrant jetの運動量(厚さ)および sheet cavity内部の流れを解明し、 モデルの妥当性を考察する必要性がある。

以下は補足資料です。

計算A(U,V:一次上流:粘性あり)での収束状態での流場比較 計算A:time step 120000 Lengh of sheet cavitation=20%C :σ= 2.49

計算A(U,V:一次上流:粘性あり)での収束状態での流場比較 計算A:time step 120000 Lengh of sheet cavitation=20%C :σ= 2.13

計算A(U,V:一次上流:粘性あり)での収束状態での流場比較: at 10%chord position

計算A(U,V:一次上流:粘性あり)での収束状態での流場比較: at 50%chord position

計算A(U,V:一次上流:粘性あり)での収束状態での流場比較: at 100%chord position

川並によるStrouhal数の整理(1998)