APDを用いた放射線計測 P6 γ班 池田英樹 中村祥吾
目的 MeV領域のガンマ線から重要な情報を得られる 超新星残骸での元素合成 不安定な同位体からの崩壊 → MeVガンマ線 元素合成の過程の解明 宇宙線起源問題 高エネルギー陽子の相互作用によってπ中間子が生成 π0(137MeV)の崩壊により、静止系で約70MeVのガンマ線が2本 カットオフの識別 陽子由来のγ 電子由来のγ GeV TeV MeV領域のガンマ線から重要な情報を得られる
実際の観測 MeV領域では 分解能が低い バックグラウンドに埋もれてしまう フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡 LAT 20MeV~300GeV 観測数 2000個 MeV領域では 分解能が低い バックグラウンドに埋もれてしまう コンプトンガンマ線観測衛星 COMPTEL 0.8MeV~30MeV 観測数 30個
COMPTEL ガンマ線の到来方向が円周でしか分からず、 方向特定にガンマ線が複数必要 散乱の起こる位置 反跳電子のエネルギーKe 散乱ガンマ線の位置とエネルギーEγ’ を測定 ガンマ線の到来方向が円周でしか分からず、 方向特定にガンマ線が複数必要 星以外(他の検出器や地球)からのバックグラウンドも観測される
電子飛跡検出型コンプトンカメラ Electron Tracking Compton Camera(ETCC) micro-TPC(ガス)で反跳電子の 飛跡とエネルギーKe シンチレータで散乱ガンマ線の 吸収点とエネルギーEγ’ micro-TPC を測定 幾何学的に α 運動学的に 到来したガンマ線の エネルギーと方向が分かる バックグラウンドと区別できる
ETCCの問題点 ? γ ETCCではKeを確実に測定したいが、 電子がTPC外へ逃げてしまう ↓ 電子の運動量が決まらず ガンマ線の到来方向が分からない TPC γ’ シンチレータ
プラスチックシンチレータをTPC内に まずはAPDの性能を確かめる プラスチックシンチレータ TPC シンチレータ 光電効果の反応断面積は 原子番号Zの5乗に比例 プラスチックシンチレータ(C12、H1)は 電子を吸収(電離) ガンマ線を通過 ガンマ線はシンチレータ(Gd64)で吸収 プラスチックシンチレータの増倍には スペースの関係から サイズの小さいAvalanche Photodiodeを使う TPC γ シンチレータ APD まずはAPDの性能を確かめる
Avalanche Photodiode (APD) 半導体検出器で電子なだれを発生させる γ p 半導体検出器に逆電圧をかけ 空乏層を広げる 入射してきた光によって電子・正孔対が生じる 一次ホール 空乏層 バイアス電圧 一次電子 高い逆電圧をかけていると 電子が増倍領域(高い電界)で加速され 二次電子・正孔対を生成 二次ホール 二次電子 増倍領域 一次電子 なだれ増幅を起こし(アバランシェ増幅)、 一次電子に比例した数の電子が検出される n 検出
実際のAPD 写真 APD プリアンプ 1cm 1cm 図の左にある1cm四方の素子がAPD
実験装置 τ 1ms 1GΩ 400V ×11 1pF 70μs GAIN 20×0.5 τ 0.5μs 1.8μs 1.8μs
Amの線源を照射して、APDからの信号をプリアンプにバイアス電圧400Vをかけてオシロで観測した時の写真。 196mV 488mV 左はpreampから直接取った写真、右はさらにshaperを通して取った写真。 100μs 100μs 1.00μs
実験のセットアップ HV(高圧電源) APDを入れた遮蔽箱 Am線源(APDの真上に配置) preampにAPDを接続してHVを供給している。(図でAPDを遮蔽箱で覆っているのは外部からの余計な電磁波を遮断するため) APDを入れた遮蔽箱 Am線源(APDの真上に配置)
Cd109とAm241のスペクトル 22.2keV、24.9keV 59.5keV 88.0keV
キャリブレーション及びエネルギー分解能 88.0keV 59.5keV 48.1±16.0(%) 23.1keV 52.6±6.9(%) 分解能はFWHMから計算したもの。 23.1keVはCd109の二つのピークの過剰平均を取ったもの。 66.4±7.5(%)
解析 ・分解能が非常に悪かった。 ↓ ・考えられる原因 ・はんだ付けがしっかり行われていなかった ・ケーブルを無駄に長く取ってしまっていた ・グラウンドをしっかり取っていなかった
自作プリアンプについて 市販のclear pulse社のプリアンプを壊してしまったので、改めて自作することにした。 ・使用したオペアンプ:ADA4627-1 低オフセット電圧:200μV(max) オフセットドリフト:1μV/℃(typ) 低入力バイアス電流:5pA(max) 拡張温度範囲:-40℃~+125℃ 電源電圧:±5V~±15V→両電源 GB積:19MHz ・このオペアンプを採用した理由 電源電圧の範囲が使用しているオペアンプ電源に適している。 ノイズが小さい
プリアンプの出力電圧 Ci、Cfに溜まる電荷をそれぞれQi、Qf、 オペアンプのゲインをAとする。
APDに線源を当てた場合 SiのW値=3.62eV Am241⇒59.5keVのX線 ・ APDの増倍率を1000と仮定 ↓ ↓ 発生する一時電子=1.64×107 (個) →3.1(pC) Cf=10pFとすると、Cfにかかる電圧V=Qi/Cf=0.31(V)となり、 ノイズより十分大きい出力電圧になると考えた。 ・よって、オペアンプに並列に繋ぐ抵抗RfとコンデンサーCfはこの前使用していたclear pulse社と同じ時定数τ=CfRf=1msに設定するように、Rf=100MΩ、Cf=10pFとした。
APDとプリアンプ 300kΩ 0.01μF 300MΩ 100MΩ 10pF +10V 10000pF 51Ω 10pF -10V
プリアンプ TEST端子 写真 オペアンプ オペアンプ電源電圧 OUTPUT端子 INPUT端子 ピッチ変換基板 BIAS端子
解析 テストパルスをプリアンプに通してみるとちゃんと波形が観測された。 ・ しかし、線源を照射した場合は観測できなかった。それは、Rfの値が大きすぎて出力側にpA単位の電流としてしか信号が流れなかったというのが考えられる一つの原因である。
まとめ ETCCを改良するためにプラスチックシンチレータを考え、APDを使うことにした。 APDを使い放射線測定をした。 ノイズ落としを極力行いながらAm等の線源をAPDに照射して、その信号をプリアンプ、shaperを通して観測した。 Cd,Amの線源のピークをヒストグラムとして観測して、エネルギー分解能等を求めたが、ノイズのために良い結果が得られなかった。 次に、新たにプリアンプを、以前使用していたclear pulse社と同じような性質になるように主に増倍率に気を付けながらオペアンプ、抵抗、コンデンサー等を選び、自作した。 残念ながら、現時点ではまだ出力信号を観測することが出来ていない。
今後の課題 Cfを1pF、Rfを1MΩまたは10MΩに変えてみる。 分解能の良い信号が見え、 線形性を確認できたら、 線形性を確認できたら、 プラスチックシンチレータにつけてみる
終わり
エネルギー分解能 Cd@23.1keVの場合、 よって、エネルギー分解能=ΔE/E=FWHM/p1=66.4±7.5(%) 標準偏差σ=p2=706.8±8.0(ch)より、 半値全幅=FWHM=2.35σ=1661.0±18.8(ch) よって、エネルギー分解能=ΔE/E=FWHM/p1=66.4±7.5(%) ・Cd@88.0keVの場合、 分解能=48.1±16.0(%) ・Am@59.5keVの場合、 分解能=52.6±6.9(%) ・このように、分解能が非常に悪いため、いくつかのピークが一つの大きなピークに乗っかってしまったと考えられる。
ETCCの問題点 そこで、TPCとシンチレータの間に プラスチックシンチレータを挟む プラスチックシンチレータ(CやH)は ガンマ線を通し 電子を吸収(電離) ガンマ線はシンチレータ(Gd64)で吸収 ETCCの問題点 ETCCでは反跳電子と散乱ガンマ線のエネルギーを区別する必要がある プラスチックシンチレータの増倍には スペースの関係から サイズの小さいAPDを使う プラスチックシンチレータをTPC内に プラスチックシンチレータの増倍には スペースの関係から サイズの小さいAPDを使う 反跳電子をTPC内で止め、 ガンマ線のみシンチレータに吸収させる 光電効果の反応断面積は 原子番号Zの5乗に比例 そこで、TPCとシンチレータの間に プラスチックシンチレータを挟む
・Am241の場合 ピークエネルギー 13.9keV---42.0% 26.3keV---2.4% 33.2keV---0.13%
Avalanche Photodiode (APD) 半導体検出器で電子なだれを発生させる γ p 半導体検出器に逆電圧をかけ 空乏層を広げる 入射してきた光によって電子・正孔対が生じる 一次ホール 空乏層 バイアス電圧 一次電子 高い逆電圧をかけていると 電子が増倍領域(高い電界)で加速され 二次電子・正孔対を生成 二次ホール 二次電子 増倍領域 一次電子 なだれ増幅を起こし(アバランシェ増幅)、 一次電子に比例した数の電子が検出される n 検出
先ほどの信号をshaperを通してオシロで観測した時の写真 488mV 1.00μs