遺 伝 的 ア ル ゴ リ ズ ム を 用 い た 風 車 翼 形 状 の 最 適 設 計 法 に 関 す る 研 究

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遺 伝 的 ア ル ゴ リ ズ ム を 用 い た 風 車 翼 形 状 の 最 適 設 計 法 に 関 す る 研 究 4 6 2 8 9 橋 本 崇 史 指導教官 川村隆文助教授・山口一教授

研究の背景 風車はその構造や設置場所の風況によって最適な翼形状が異なる 高性能翼型の開発に遺伝的アルゴリズムを用いる試みが見られるようになった 空力性能評価に用いる数値計算ツールの精度に関する調査が不十分であり世代交代の手法は初歩的なものしか使用されていない これらの点を改善した翼形状最適化システムを作成する 研究の背景

既 存 の 研 究 Kristian S. Dahl ら(1998) パネル法による性能評価に基づき、勾配法で風車用翼型シリーズを開発 (RISO-A-XX シリーズ) 計算精度の保証範囲が限定的、局所解収束の可能性 刈込 ら(2003) NS方程式ソルバーによる性能評価に基づき、GAで風車用翼型(翼厚比30%)を開発 →64個体×6世代 世代交代数が過小の可能性、CFD精度検証が不十分 Obayashi ら(2000) NS方程式ソルバーによる性能評価に基づき、多目的GAでカスケード翼型を開発 →64個体×100世代 初歩的な世代交代システムを使用 既 存 の 研 究

本 研 究 の 目 的 効率的かつ信頼性の高い風車翼形状の最適化システムを作成し、高性能翼型を開発する 具体的には以下のアプローチをとる: ①性能評価の高精度化 →CFDの導入・計算パラメータの最適化 ②最適化アルゴリズムの高効率化 →GAの世代交代オペレータに新しい交叉手法を    導入、効果を検証

G A の 構 成 要 素 N a v i e r – S t o r k e s solver 翼 形 状 の 遺 伝 子 化 Main PC Workstations 進化アルゴリズム 計 算 機 シ ス テ ム

“ 風 車 翼 用 に 特 化”と は 空力学的特徴: 遺伝学的特徴: 計算科学的特徴: 主に失速角直前の迎角で運転 航空翼に比べ厚翼 →後縁剥離型失速 遺伝学的特徴: 既に多くの形状研究がなされており 劇的な形状変化はないと考えられる → 親世代の形状を反映した世代交代 計算科学的特徴: 1形状あたり15分弱の計算時間 個体評価に大量の延べ時間が必要 → 並列計算システムの構築

GAを構成する要素① N S – E q . s o l v e r

N S – E q . S o l v e r 計 算 格 子 翼面上第1層の厚さは C型格子 翼弦長×10-5 計 算 格 子 inflow outflow C型格子 格子数 256×64 = 16,384 翼面上第1層の厚さは 翼弦長×10-5 →各種乱流モデルおよびコードを使用し計算精度の調査を行った

N S – E q . S o l v e r 調査パラメータ: ・乱流モデル ・格子点数 ・翼面上格子厚さ ・乱流遷移点位置 ・前後縁格子間隔 →当研究室開発コードの乱流 kw-SST モデルを使用 Pentium4 3.8GHz CPU 使用の場合収束まで10分程度

N S – E q . S o l v e r 刈込ら(2003)の研究例で用いられたCFDの精度と比較 →精度向上が確認された exp MHI30% RISO -A30 S818 exp 刈込ら 本研究 exp 刈込ら MHI 30% RISO -A30 S808 刈込ら(2003)の研究例で用いられたCFDの精度と比較 →精度向上が確認された

GAを構成する要素② 翼 形 状 の 遺 伝 子 化

世 代 交 代 オ ペ レ ー タ 翼 形 状 の 遺 伝 子 化 1つの翼形状を13個のBスプライン制御点y座標で表現(うち2点は固定)

GAを構成する要素③ 世 代 交 代 オ ペ レ ー タ

世 代 交 代 オ ペ レ ー タ 交叉 : crossover 既 存 の 研 究 例 に よ る 手 法 (Obayashiら,2000) base offspring sub 交叉 : crossover 親個体の y1 ~ y11 に対しそれぞれ乱数を与える 20%の確率(初期値)で対応する染色体同士を交換

世 代 交 代 オ ペ レ ー タ + u = 突然変異 : mutation 既 存 の 研 究 例 に よ る 手 法 base offspring + u = 突然変異 : mutation 親個体の y1 ~ y11 に対しそれぞれ乱数を与える 20%の確率で -0.01 ≦ u ≦ 0.01 の一様乱数 u を加算する

世 代 交 代 オ ペ レ ー タ 新 た に 導 入 す る 交 叉 手 法 U N D X – m (喜多ら,2000) ( Unimodal Normal Distribution Crossover ) m+1個の親が張るm次元部分空間内に正規分布に従い子を作成 parent offspring 一つの子個体により多くの親情報が含まれる 多峰性の評価関数に向くと言われている

世 代 交 代 オ ペ レ ー タ 新 た に 導 入 す る 交 叉 手 法 S P X (樋口ら,2001) (Simplex Crossover) m+1個の親が張る単体内に一様分布に従い子を作成 parent offspring 一つの子個体により多くの親情報が含まれる UNDX、SPXともに突然変異は Standard を踏襲

GAを構成する要素④ 並 列 計 算 シ ス テ ム

並 列 計 算 シ ス テ ム START END 計算負荷分散にバッチキューシステムを使用 本研究では1台の master と最大40台の slave を用いた以下のような最適化システムを作成した。 Workstations Main PC Main PC Main PC START 初期個体作成 格子等作成 各 slave に数値計算ジョブを分担 繰り返し Main PC END 世代交代 計算負荷分散にバッチキューシステムを使用 直列計算ならば約150時間必要 → 最短6時間で30世代完了

最 適 化 の 前 に 計 算 の 各 種 条 件

設 定 条 件 ・一世代あたり個体数は30 ・初期世代個体群は既存の翼型15種×2 ・第30世代まで世代交代を行う 設 定 条 件 ・一世代あたり個体数は30 ・初期世代個体群は既存の翼型15種×2 ・第30世代まで世代交代を行う ・評価関数は迎角α=9.65°における揚抗比 ・生成される翼形状は翼厚比0.18以上とする ・GAアルゴリズムとしてStandard,UNDX-m,SPXを検討

試 験 的 最 適 化 最適解からかけ離れた形状をあえて初期世代に投入する 初期世代:翼厚比0.18の楕円等 世代交代は既存手法のオペレータを使用

試 験 的 最 適 化 進 化 の 歴 史 a n i m a t i o n . . .

試 験 的 最 適 化 第100世代の最良形状 現状ではback面側後縁の凸形状がとれていない→局所解

試 験 的 最 適 化 局 所 解 の 脱 出 事 例 x/C = 0.7 付近で下面が凹むことで局所解を脱出した 第50世代の最良形状 第70世代の最良形状 x/C = 0.7 付近で下面が凹むことで局所解を脱出した →局所解から脱するというGAの長所が生かされている

最 適 化 の 結 果

調 査 パ ラ メ ー タ

最 適 化 結 果 Standardオペレータ適用時 三回平均 揚抗比 73.37 → 77.17 (+5.19%) 前縁 back 面側の丸みがとれた ケース1の結果(Cp,形状)

最 適 化 結 果 UNDXオペレータ適用時 揚抗比 73.37 → 75.48 (+2.88%) 後縁キャンバーがより顕著に 三回平均 揚抗比 73.37 → 75.48 (+2.88%) 後縁キャンバーがより顕著に ケース1の結果(Cp,形状)

最 適 化 結 果 SPXオペレータ適用時 揚抗比 73.37 → 74.22 (+1.16%) 形状的にはほとんど変化がない 揚抗比 73.37 → 74.22 (+1.16%) 形状的にはほとんど変化がない SPX-6の結果(Cp,形状)

最 適 化 結 果 の 比 較 主な形状変更点は後縁キャンバーと前縁上部の曲率 UNDX-6の収束力が効きすぎて局所収束した可能性 SPX-6の結果(Cp,形状)

研 究 の ま と め

研 究 の ま と め 本研究では、風車用翼型を対象に特化した最適化システムを作成した。 各種パラメータ調査の結果、風車翼に対してはkw-SSTモデルによる乱流近似が有効と分かった。 本研究で開発したシステムにより平均で揚抗比5%増の結果を得ることができた。 狭い範囲の解探索においても収束力が強いと局所解に陥る恐れがある。 風車翼形状問題により適したアルゴリズムの構築が課題である。