レーザーシーロメーターによる 大気境界層エアロゾル及び 低層雲の動態に関する研究 * 07/16/96 レーザーシーロメーターによる 大気境界層エアロゾル及び 低層雲の動態に関する研究 交通電子機械工学専攻 2002316 仲尾 龍馬 *
発表内容 研究の背景と目的 観測原理及び観測装置について 雲底データの統計的解析 混合層について まとめと今後の課題
研究の背景 雲の放射収支に対する影響・不確定要因の解明 大気境界層構造の大気汚染との関係 雲及び大気微粒子(エアロゾル)の連続モニタリングの必要性
研究の目的 対流圏下部における雲底高度の日・季節変化の把握 シーロメーターの境界層観測への応用 シーロメーターのエアロゾル観測に関する性能・特性評価
雲とは 小さな水滴や氷の結晶の塊 大半の雲は対流圏で発生 降水現象や熱の放射過程を担う 大気汚染物質や海塩粒子を核として発生するものもある
大気境界層とは 地表面から力学的摩擦や機械的な乱れ・熱交換を直接に受ける 日中晴天時に地表面が強く熱せられ、大気の対流が強い時に大気エアロゾルや水蒸気が一様に混合される「混合層」が形成される 夜間では熱的に安定することが多く、「接地逆転層」が観測
混合層の発達過程の概念図
観測原理について ライダー(LIDAR)LIght Detection And Ranging 光波を大気に向けて照射、測定対象粒子に対しての後方散乱光を受信 し、距離などを計測する手法
観測装置概要 Vaisala社製シーロメーター「CT25K」 レーザー パルスダイオード InGaAs MOCVDレーザー パルスパワー 1.6μJ±20% 波長 905±5nm (25℃において) 光検出器 シリコンアバランシュフォトダイオード 測定範囲 7.5kmまで 三層の雲底まで検出 光学方式 1レンズ(単レンズ) 直径15cm サンプリングタイム 15秒~2分 (可変) 距離分解能 雲底:15m 後方散乱プロファイル:30m
CT25K模式図
観測装置の特徴について メンテナンスフリー PCとのRS-232Cインタフェース接続で付属ソフト「CT-VIEW」により連続データ収集及びリアルタイムデータ表示が可能(表示例.ppt) 観測時のスケールファクターを1~100まで変えられる機能(アルゴリズムスケール)を付加することによりエアロゾルの記録感度を上げることができる 得られる後方散乱係数は更正され距離二乗補正された値
観測 新2号館9階にシーロメータを設置 鉛直から5度傾けての連続観測
観測システム概要
鉛直分布時系列データの可視化例 本学2002年10月8日~14日
雲底高度100m毎の月別統計 2002年度
雲底高度100m毎の月別統計 2003年度
高度2kmまでの雲出現頻度と 地上相対湿度の日変化 2002年8・9月
高度2kmまでの雲出現頻度と地上 相対湿度の日変化 2002年11・12月
検出した最低雲底高度と地上 相対湿度の例 2003年3・4月 検出した最低雲底高度と地上 相対湿度の例 2003年3・4月
持ち上げ凝結高度について 未飽和の空気塊が高度の上昇に伴う温度の減少により飽和する高度 雲の高度にほぼ一致する へニングの公式から計算できる(露点温度と気温から計算)
へニングの公式について 露点温度・・・気塊を圧力と水蒸気圧、含有量などを一定にして冷却し、水に対する飽和に達した温度 露点温度における水の飽和蒸気圧が水蒸気圧 地上相対湿度 f =露点温度Tdにおける水蒸気圧/気温における飽和蒸気圧 e 温度Tcにおける水の飽和蒸気圧はテテンの公式から計算
へニングの公式について 地表付近の空気塊は混合比、温度減少が一定で上昇すると仮定し、クラジウジウス-クラペイロンの式と静力学平衡の式を用いる 気温T、露点温度Tdにおける持ち上げ凝結高度 LCL≒125(T-Td) (m)
持ち上げ凝結高度の計算例
混合層について
まとめ 観測の自動処理・更新システムを構築 雲の出現は夜間、夏季に多い傾向にある 持ち上げ凝結高度から雲の最低高度のデータは持ち上げ凝結高度とほぼ同じ曲線を描く 相対湿度と低層雲の出現頻度の相関関係 混合層について
今後の課題 モデムを用いたシーロメータの通信遠隔操作環境の構築 通常のライダー観測や水平方向観測による後方散乱係数との定量的比較