生物・毒素兵器: 潜在的効果の評価 講義 その5 本講義に関する追加の情報は、以下のスライドに設けられた右の各リンクボタンより参照可能です。

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生物・毒素兵器: 潜在的効果の評価 講義 その5 本講義に関する追加の情報は、以下のスライドに設けられた右の各リンクボタンより参照可能です。 講義 その5 注釈:この講義の目的は、公開文献において入手可能な数的データを検証することで、攻撃的生物兵器計画が復活した場合に伴う危険を受講者に的確に伝えることである。 本講義に関する追加の情報は、以下のスライドに設けられた右の各リンクボタンより参照可能です。 追加情報

1. 目次 生物兵器剤の軍事的特徴 大量破壊兵器/戦略的生物兵器の攻撃シナリオ 生物兵器剤の生産 異なる生物兵器の攻撃シナリオ スライド 2 - 5 大量破壊兵器/戦略的生物兵器の攻撃シナリオ スライド 6 - 12 生物兵器剤の生産 スライド 13 - 16 異なる生物兵器の攻撃シナリオ スライド 17 - 20 注釈:講義の大部分は Dando, M.R. (1994) Biological Warfare in the 21st Century: Biotechnology and the Proliferation of Biological Weapons. Brassey’s, Londonによるが、関連文書が使用される場合には参考文献が示される。 Ref: Dando, M.R. (1994) Biological Warfare in the 21st Century: Biotechnology and the Proliferation of Biological Weapons. Brassey’s, London 追加情報

2. 軍事的特長 (i) 潜在的な生物兵器攻撃の多様性 異なる標的 (人、動物、植物) 異なる生物剤 (細菌、病原体、糸状菌、毒素、 生体制御剤) 異なる規模 (暗殺、 戦術軍事、戦略軍事、大量破壊兵器) 異なる目的 (戦争、紛争・内戦若しくはテロ) 注釈: 国家レベルの攻撃的生物兵器計画には多くの潜在的なシナリオが存在する。この講義は生物兵器の戦略規模での攻撃シナリオを集中的に取り扱うことを最初に強調しておく。

3.軍事的特長 (ii) 生物兵器剤の軍事的分類 第一被害者から潜在的感染型 第一被害者から非感染型 正常能力を失わせるもの(例、インフルエンザウイルス) 致死的なもの (例、ペスト菌 – ペスト) 第一被害者から非感染型 正常能力を失わせるもの (例、コクシエラ・バーネッティ - Q-熱) 致死的なもの (例、炭疽菌– 炭疽病) 注釈:攻撃において身体能力を不能化させる生物剤が効果的に使用された場合、(相手側の)軍事的効果を大きく損ねる可能性は明白であり、実際にそのような生物剤は前世紀の攻撃的計画において兵器化された。多くの関心は致死剤に向けらるが、それは(生物兵器の)可能性の幅を誤認することになる。繰り返すが、非感染性の生物剤のみが兵器化されると理解されがちであるが、例えばペストは旧ソ連において兵器化された。

4.軍事的特長 (iii) 軍事において望まれる生物兵器剤の効果 生物剤が特定の効果を継続的に生み出せること 少量の投与で効果を発揮できること 効果発症までの潜伏期が短いこと 標的とされた人口が免疫を欠いているか若しくは皆無に等しい状態であること 注釈:これより先のスライドは、人間に対する生物兵器攻撃に必要な生物剤の投与量に関する議論を、本講義の後半で行うための導入となる。

5.軍事的特長 (iv) 軍事において望まれる生物兵器剤の効果(続) 標的とされた人口において疾病の治療ができない状態であること 攻撃側の軍隊及び市民にたいする防御措置が整っていること 生物剤の大量生産が可能であること 効果的に生物剤の散布が可能であること 生物剤は軍需における貯蔵や輸送の際に安定性を保てるものであること

6. 大量破壊兵器/戦略的攻撃 (i) 国連による1969年度の研究報告書 一機の爆撃機による10トンの生物剤使用の場合 100,000km2の地域が影響を受ける 疾病率50%、 治療無しでは致死率25% 1メガトン級核兵器が使用された場合 300km2の地域が影響を受ける 15 トンの神経ガスが使用された場合 60km2の地域が影響をうける 注釈:生物兵器禁止条約の採択に向けた最終交渉に際して、国連事務総長より「化学・生物兵器と使用の影響」に関する報告書が提出された。スライドの例は同報告書による。 適切な条件下においては生物兵器は疾病と死亡の発生に関し核兵器よりも危険な存在となりうる事が明らかである。本報告書の編纂委員は例えば、第二次世界大戦期及び、戦後の英国攻撃的生物兵器計画における全ての実験に携わりその実験結果を熟知していた英国政府主任科学顧問のソリー・ザッカーマン卿 (Sir Solly Zuckerman) を含む。 追加情報

7.大量破壊兵器/戦略的攻撃 (ii) ストックホルム国際平和研究所による1973年の研究 一機の爆撃機による5-6トン爆弾を装填した場合 50%の確立で被害者を出すことのできる被害地域(km2計算)の規模は、 高性能爆弾の場合 0.22 km2 VX 神経ガスの場合 0.75 km2 10キロトン核兵器の場合 30 km2 生物剤の場合 0 -50 km2 (気象状況の影響による) 注釈:スライドの内容はストックホルム国際平和研究所による1970年代の代表的な研究として知られている「化学・生物兵器の問題」の第二巻に記載されたものである。他の兵器に比べて、生物兵器剤の使用による大きな潜在的影響力が非常に明確である。 Ref: SIPRI (1973) The Problem of Chemical and Biological Warfare: CB Weapons Today. Vol. II. Stockholm: Almqvist & Wiksell. 追加情報

8.大量破壊兵器/戦略的攻撃 (iii) 1991年、雑誌International SecurityにおけるFetter’s の研究 投下重量1トンのミサイルによる、1ヘクタール毎人口30人の大都市を攻撃した場合 20キロトンの核兵器の殺傷数は 40,000人 300キログラムのサリンでは 200 - 3,000人 30キログラムの炭疽菌では 20,000 - 80,000人 注釈: Fetterは大量大量破壊兵器と巡航ミサイルに関する研究を行った。何が脅威なのか? 何がなされるべきなのか? 冷戦期の末期に公表されたInternational Security 16, (1) 5-42 は、UN1969年報告書とSIPRI1970年代の研究から20年後ということになるが、他の兵器との比較検証による生物兵器の脅威に関する大まかな結論はそれら先例研究と変わっていない。 参考文献: Fetter, S. (1991). ‘Ballistic Missiles and Weapons of Mass Destruction: What is the Threat? What should be Done?’, International Security 16(1): 5-42. Available from http://www.mitpressjournals.org/is 追加情報

9.大量破壊兵器/戦略的攻撃 (iv) 米技術評価局による1993年報告書: シナリオ 1 米技術評価局による1993年報告書: シナリオ 1 弱風の曇り空もしくは夜間、1km2毎人口3,000人から10,000人の無防備の都市部をミサイルにより下記の装備で攻撃した場合、 12.5キロトンの核兵器は7.8 km2を破壊し、23,000-80,000 人を殺傷すると考えられる 300キログラムのサリンは 0.22 km2において60-200人を殺傷すると考えられる。 30キログラムの炭疽菌をタバコ形に詰め弾頭に搭載した場合、10 km2において30,000-100,000人を殺傷すると考えられる。 注釈:米技術評価局は非常に知名度の高い機関であり、その報告書は世界的な権威を有する。この1993年8月の報告書「大量破壊兵器の拡散:危機の評価」 Document No. OTA-ISC-559はその後の多くの著者によって引用されている。同報告書での異なる種類の兵器の影響に関する比較の評価は、前述の諸研究の結論と重なる。 Ref: U.S. Congress, Office of Technology Assessment. (1993). Proliferation of Weapons of Mass Destruction: Assessing the Risks (Document No. OTA-ISC-559). Washington, DC: U.S. Government Printing Office. At p. 53 追加情報

10.大量破壊兵器/戦略的攻撃 (v) 米技術評価局による1993年報告書: シナリオ2 10キログラムの炭疽菌を風上より一直線にワシントンDC規模の都市に放出した攻撃の場合、 軽風の晴天下、 46 km2が攻撃の影響を受け、130,000 から460,000人が殺傷されうる。 Ref: U.S. Congress, Office of Technology Assessment. (1993). Proliferation of Weapons of Mass Destruction: Assessing the Risks (Document No. OTA-ISC-559). Washington, DC: U.S. Government Printing Office. At p. 54.

11.大量破壊兵器/戦略的攻撃 (vi) 米技術評価局による1993年報告書: シナリオ2(続) 弱風の曇り空もしくは夜間であれば140 km2が攻撃の影響をうけ、420,000人から1,400,000人が殺傷されうる。 快晴日の夜間では、300 km2が攻撃の影響をうけ、1,000,000人から3,000,000人が殺傷されうる。 「理想的な」条件 (例えば、炭疽菌芽胞を速やかに殺傷する紫外線の無いような状態)の下で、そのような生物剤を線源的に使用した場合、被害者の救急態勢が整っていないため、被害は壊滅的になると考えられる。 注釈:本スライドで示されたOTAの非常に精通した分析によって発展されたシナリオは重く受け止められるべきである。炭疽菌は早期であれば抗生物質を用いた治療が可能であるが、いかなる公衆衛生制度であってもこのシナリオのような規模に対処するのは困難である。 Ref: U.S. Congress, Office of Technology Assessment. (1993). Proliferation of Weapons of Mass Destruction: Assessing the Risks (Document No. OTA-ISC-559). Washington, DC: U.S. Government Printing Office. At p. 54. 追加情報

12.大量破壊兵器/戦略的攻撃 (vii) 米生物兵器計画における軍需品 1967年に開発途中であった、(M143型)小型爆弾を搭載したM210型誘導ミサイル用の弾頭 1965年に開発途中であった、高速戦術攻撃機に使用された、液状剤(A/B45Y-1)のスプレー用タンク 注釈:SIPRI 第二巻の著者達は米国の計画において開発された多くの軍需品に関する表を提供した。それによるとその後25年間継続した研究と開発努力により軍需品の効率の高まりは明白であった。実際に、前世紀が進むにつれて生物兵器による攻撃は慎重な(使用効果)算出の対象となった。これより先のスライドで確認するように、特定の地域で一定の条件が確認されている場合、50%の人々を感染させるために必要な投与量の算出が可能である。

13. 生物兵器剤の生産 (i) 醗酵による微生物剤の成長は以下の段階を必要とする 病原体の種培養 小型醗酵槽における初期増殖 生産規模の醗酵槽における成長 醗酵槽からの生物剤の回収 冷凍乾燥といった最終処理 注釈:1993年にOTAは別の背景報告書「大量破壊兵器の基礎となる技術」(OTA-BP-ISC-115)を公表した。この報告書は細菌及びその他の生物剤を生産しうる方法を概説した。スライドの内容は同報告書による。しかし、効果的な生物剤の生産が容易であるとは理解すべきではない。伝染性の強いウイルス株の獲得と最終処理に関する問題を別にして、生物剤の潜在性を損なわせうる汚染や遺伝子変異によって細菌発効は損傷しうる。 Ref: Office of Technology Assessment. (1993). Technologies underlying Weapons of Mass Destruction (Document No. OTA-BP-ISC-115). Washington, DC: U.S. Government Printing Office. At p. 87 追加情報

14生物兵器剤の生産 (ii) ライン攻撃に必要とされる生物剤の量的概算 被害者への投与基準(D)の計算は 固体強度(固体/ヒト)Qを呼吸数(量/分)bに乗算し、気層の深度hを平均地上風力速度ūと乗算したものにより除算する ゆえに D=Q.b となる    h.ū 注釈:この単純化された計算モデルは、必要とされる生物剤量とそのような生産を発見できる可能性を議論するために必要な生産規模を算出するために、1996年の北大西洋条約機構(NATO)「上級研究ワークショップ」で英国職員によって使用された。 Ref: Annex A produced in Bartlett, T. B. (1996) The Arms Control Challenge: Science and Technology Dimension, Paper presented at the NATO Advanced Research Workshop, The Technology of Biological Arms Control and Disarmament Budapest, 28-30 March. 追加情報

15.生物兵器剤の生産 (iii) 投与基準・量の算出 (続) 固体強度Qの算出は この基準式を以下の数値を使い計算すると Q=投与基準D×気層深度h×平均地上風力速度ū÷呼吸数bとなる この基準式を以下の数値を使い計算すると B=20 litres/min (2.10-2 m3min-1); h=1km (103m); ū= 5m/s ( 3 × 102mmin-1) となり この投与基準・量を10乗るすと感染量 (ID50)は以下となる Q=10 × 103 × 3 × 102 ÷ 2.10-2 = 1.5 × ID50 ゆえに、攻撃には 108ID50/m が必要となる

16.生物兵器剤の生産 (iv) 10km規模のライン攻撃に必要とされる生物剤量は 108 ID50 × 104 =1012ID50 となる 醗酵槽において、1ml 中の108細菌性細胞の濃縮が可能であるとすると、攻撃には次の生産量が必要となる 1012 ×(1ID50に相当する数の細胞数×/108×1000) リットルの懸濁液 もしID50に必要な炭疽菌の量が104である場合、攻撃に必要な量は、100リットル規模の10機の醗酵槽を10ライン稼動させられる場合、100,000リットルであると考えられる   注釈: このスライドはによる計算式は、攻撃者は1012 ID50を大気中に放出する必要があるという合理的予測を立てている。これは「一兆投与基準」 とよばれており、同様の数値は別のシナリオモデルでも算出可能である。 Ref: Annex A produced in Bartlett, T. B. (1996) The Arms Control Challenge: Science and Technology Dimension, Paper presented at the NATO Advanced Research Workshop, The Technology of Biological Arms Control and Disarmament Budapest, 28-30 March. 追加情報

17. その他の種類の生物兵器攻撃 (i) 対農業生物兵器 低技術、重大な結果の生物テロリズム 専門知識の不要性、高い感染性(ヒトに対してではない) そして農業にもたらす甚大な損失コスト 例えば、ある研究は次のように述べた 「口蹄疫、牛疫、アフリカ豚コレラ、大豆錆、トウモロコシのフィリピンべと病、じゃが芋疣贅そして柑橘緑化(体)といった病原体がアメリカ大陸に上陸すると、米国経済にとって深刻な被害を与えかねない。」 注釈:頻繁に認識されないが、近い将来において最も可能性の高い破壊的なテロリズム在り方として同スライドで示された形式の攻撃は特別な注意を払う必要がある この引用はWheelis, M.L., Madden, L.V. and Cassagrande, R. (2002) Biological attacks on agriculture:low tech, high impact bioterrorism. Bio-Science, 52, 569-76.による。 追加情報

18.その他の種類の生物兵器攻撃 (ii) 対人テロリスト攻撃 米国議会調査部(CRS)による2004年の報告書は、(生物テロの脅威に関して)国家による生物兵器計画から直接的な類推を行うことにたいして警鐘をうながす。 「他の枠組みにおいて高い脅威をもたらすと考えられた化学・生物剤は小規模な攻撃においては低い脅威をもたらすことが判明した。反対に、大規模な攻撃シナリオにおいてその脅威が低いとみなされていた化学・生物剤は、小規模な使用においては(大規模な攻撃シナリオで想定される技術・環境的)障壁が無いために、より高い脅威として格付けが可能である」。 注釈:Shea, D.A. and Grotton, F. による米国議会調査部報告書は「生物・化学兵器剤の使用によるテロリストの小規模攻撃:評価の枠組みと事前的比較」と題された。同報告書はDando, M.R.(2006) Bioterror and Biowarfare, Oxford: Oneworld Publicationsの第七章において議論された。重要な点は小規模攻撃を実施する際に何がテロリストにとって可能であるかを想起することである。次のスライド19と20が示すように、たとえ人間を攻撃する場合であっても、国家計画との比較においてクリアする技術的障壁に関して大きな違いが存在するということである。 追加情報

19.その他の種類の生物兵器攻撃 (iii) 世界保健機関の1970年度の報告書は異なるタイプの大量破壊兵器及びその他の生物兵器攻撃シナリオを考察した。 2次的感染が無く、致死的及び無能力化をもたらす抗生物質耐性生物兵器 (野兎病) 2次的感染が有り、致死的及び無能力化をもたらす抗生物質感受性生物兵器 (ペストの蔓延) チフス菌及びA型ボツリヌス毒を用いた給水システムの汚染 注釈:また、生物兵器禁止条約の締結交渉直前の1970年、世界保健機関は 「化学・生物兵器の健康への影響」に関する報告書の初版を発行した。付属書の4は「化学・生物兵器の医療と公衆衛生効果」を考察した。この付属書は多くの異なる大量破壊兵器攻撃シナリオとその結果を検討した。 付属書の5はしかしながら、異なる種類と規模の攻撃として給水システムに対する破壊工作を考察した。 Ref: World Health Organization (1970) Health Aspects of Chemical and Biological Weapons, Geneva: WHO. Available from http://www.who.int/csr/delibepidemics/biochem1stenglish/en/index.html [Annexes from 1 to 7 are not available as online version] 追加情報

20.その他の種類の生物兵器攻撃 (iv) 高気温地帯の発展途上国における100万人規模の都市部の給水システムを、1kgのチフス冷凍乾燥培地を使用して攻撃したシナリオ。攻撃は警告無しで実施されるため、関係当局により特別な警戒態勢は取られていないものとする。 非処理水の摂取量は1人あたり2リットルと想定され、125,000人が100,000の細菌を摂取し、多くが罹患すると考えれれる。 もし大規模な治療のための医療施設が利用不可能な場合、約4,500人が攻撃の結果死亡する可能性がある。 注釈:給水管内での生物剤の死滅により、WHO は95%の培地量が削減されると予測した。感染率は既知の人間データから算出され致死率は治療の無い場合10%になると計算された。そのような分析から明らかなことは、ここ数十年間に渡り他の多くの種類の効果的な攻撃が生物剤を使用して実施可能であると結論された点である。前述のスライド18で示されたように、チフスが国家レベルの計画においては高い懸念の対象とされていないことは(テロリストと国家計画における生物剤とその使用方法の違いを確認する上で)記述しておく必要がある。

参考文献と質問 参考文献 例題