2週目の気温予測情報の 農業情報への翻訳 農業分野において利用しやすい情報作成のために

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2週目の気温予測情報の 農業情報への翻訳 農業分野において利用しやすい情報作成のために 2週目の気温予測情報の 農業情報への翻訳 農業分野において利用しやすい情報作成のために 気象庁気候情報課  野津原昭二、宮脇祥一郎、大澤和裕

季節予報について 時間スケール 短い 長い

天気予報・週間予報と季節予報の違い 天気予報・週間予報との違い ⇒ 季節予報が利用しにくい原因? □広い範囲を対象 □数日以上の平均した期間を対象 □平年とのずれを予測 □確率を用いて予測 ⇒ 季節予報が利用しにくい原因?

予測の不確実性 アンサンブル平均値で平均的な傾向を それぞれのメンバーのばらつきで 予測の幅を見積もる アンサンブル予報(1か月予報は50メンバー) アンサンブル平均1.0℃ 横軸:気温 縦軸:確率密度 アンサンブル平均値で平均的な傾向を それぞれのメンバーのばらつきで 予測の幅を見積もる アンサンブル平均値が同じ1.0℃でも、 予測の幅が違うと確率は異なる。        青線:0℃以下の確率17%        緑線:0℃以下の確率 6%

東北農研・東北大学との共同研究の概要 気候の予測情報の利活用の先進的な取り組みとして 東北農研センター、東北大学とともに    「気候予測情報を農業分野に利活用するための 応用技術に関する研究」を実施(~平成23年度) <目的> 気候の予測情報の利活用の成功事例を作るために、東北地方を対象として ・気候の予測情報(2週目の予測)を利用した ・農業分野での利用に適した                         予測情報を作成し実用化する       *東北地方の夏の稲作を対象(ヤマセによる冷害、高温障害・・) ヤマセ研究会においても発表 (第2回 野津原 第3、4回 宮脇 など)  2011年夏(7-8月)に東北農研・岩手県立大が運営する 「Google Mapによる気象予測データを利用した農作物警戒情報」ページを通じ試験的な情報提供を行った。 *毎週火・金曜日に情報更新 

共同研究:2011年夏の試行:メッシュ図 2週目の気温予測(アンサンブル平均) 低温(高温)確率メッシュ <目的> 低温(高温)障害の目安である20℃以下(27℃以上)になる確率を伝えたい ⇒通常数%のメッシュが15%であればリスクはそれだけ大きい <目的> 最も起こりうる 可能性の高い気温を伝えたい ⇒大まかな傾向を把握

共同研究:2011年夏の試行:警報メール 警戒メールの例 ****** 2週目の予測:低温確率(試行) ****** 低温に注意して下さい. 7月31日から1週間程度,7日平均気温が22℃を下回る可能性が高く, 20℃以下となる確率は46.2%となっています. ****** 2週目の予測:高温確率(試行) ****** 高温に注意して下さい. 8月14日頃からの7日平均気温が26℃を上回る可能性が高く, 27℃以上となる確率は33.4%となっています.

共同研究:2011年夏の試行の課題 ○情報が孤立 ・2週目だけ天気予報。 ・2週目だけ単独で存在しても使いづらい。 対策)既存の情報(深水管理、高温障害情報)と連続的な情報として提供 ○情報の形態 ・しきい値以上の気温になる確率で表現 ⇒利用回数が多くないので慣れるのに時間が・・・ 対策)利用者(農業従事者)にとってわかりやすい表現での提供 ○情報の精度 ・オオカミ少年にならないように(空振り、見逃しの頻度) ・気温で全てが決まるとは限らない? (気温予測と農業被害との関係を実証?) 対策)既存の情報の性質、気温予測の精度などを十分に検証

○確率の値と凡例の表現との対応の注意深い検討が必要 共同研究:2012年夏の試行に向けた取り組み 低温確率メッシュ図の凡例の表現を従来の表現と似たものに 2011夏の試行(2週目) 現在の深水管理情報(7日先まで)      具体的な表現 20℃以下の確率 2012夏では例えば以下のように 20℃以下になる確率との対応が              要深水管理 40%以上    ⇒ 要深水管理準備 30~40%未満 ⇒ 深水管理準備推奨 20~30%未満 ⇒ 深水管理検討           気温(1~7日先の平均)との対応 6:要深水管理  17℃以下 5:要深水管理  17~20℃以下 4:深水管理推奨 20~22℃以下 ○実際の営農に合わせた表現の検討が必要 ○確率の値と凡例の表現との対応の注意深い検討が必要

確率のしきい値と凡例との表現との対応の検討の案 共同研究:2012年夏の試行に向けた取り組み 確率のしきい値と凡例との表現との対応の検討の案 (1)過去の気温の予測を元に決定 20℃以下になれば被害が起きるとみなす (2)過去の気温の予測と過去の実際の農業被害との関係を元に決定 20℃ 以下確率 空振り 見逃し 10%以上 74% 17% 20%以上 63% 35% 30%以上 52% 50% 40%以上 45% 62% 50%以上 39% 72% <例> 過去の気温予測の見逃し、空振りの値を参照して、もっとも有効と思われる確率のしきい値を決定 <課題> ・気温で全てが決まるのか? ・青森の20%と福島の20%は同じくらい危険なのか? <例> 2003年7月10日に予想した 7月19~25日の平均気温が20℃を下回る確率のメッシュ図 どのくらいの確率のときにどのくらいの被害が出たかを比較して有効と思われる確率のしきい値を決定 <課題> ・農業被害のデータが必要 ・十分な事例数がない? 1981-2010年の7月中旬-8月上旬において7日間平均気温が20℃以下になると予想した確率と見逃し・空振りとの関係。 *過去予測実験を利用 見逃し:20℃以下と予想しなかったが20℃以下になった場合 空振り:20℃以下と予想したが20℃以下にならなかった場合 *ともに小さいほどよい

共同研究:2012年夏の試行に向けた取り組み(2) 警報メールについて ○2週目の情報は付加情報的な位置づけ 例えば低温確率情報は深水管理情報の・・・ ケース1 目先1週深水警戒 2週目も警戒 「深水管理をしてください。なお、この低温は翌週にかけても継続する見込みです。」 ケース2 目先1週深水警戒 2週目は警戒なし 「深水管理をしてください。この低温は翌週には収まる見込みですが、 数日は最新の情報に特にご注意ください。」 2週目の表現は低温確率の値に応じて変化させる 文面は1週目と2週目の予測の組み合わせで生成 <利点> ・目先予測されている極端現象が持続するかの見通しがわかれば対策がたてやすい。 ・現象の持続の予測は得意?(要検証) ・情報が連続的なので利用者が受け入れやすいのでは。 <欠点> ・安心情報になってしまう?

共同研究:2012年夏の試行に向けた取り組み(2) 警報メールについて ○確率の値を用いてメッシュにおけるリスクの程度を伝える ・平年との比較 2週目において、20℃以下となる確率は24%です。 なお、平年においては20℃以下になる確率は8%です。 ・過去の顕著事例との比較 2週目において20℃以下となる確率は28%です。 なお過去予測実験では顕著な低温となった93年においては35%、 03年においては30%の確率でした。 <利点> ・確率の基準を示すことで、リスクの程度を伝えることができる。

まとめと質問 <まとめ> ○2011年夏に続き、 2012年夏にも2週目の気温予測を用いた農業予測情報の試行を行う。 ・農業従事者に利用しやすい形式での提供を考案中 ・予測の持つ不確実性をどう伝えるか? ・ GoogleMapシステムを利用している方はよろしくお願いします <質問> ・農業従事者にとって利用しやすい情報とは? ・見逃し、空振りどちらが罪か? ・極端な気候によるリスクを軽減する方法とは?