CMIP3マルチモデルアンサンブルで 再現されたNAOとENSO/WPの関係性および、ユーラシア大陸の積雪偏差がモデルの再現性に与える影響

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Presentation transcript:

CMIP3マルチモデルアンサンブルで 再現されたNAOとENSO/WPの関係性および、ユーラシア大陸の積雪偏差がモデルの再現性に与える影響 日本気象学会北海道支部研究発表会 2012年12月12日 CMIP3マルチモデルアンサンブルで 再現されたNAOとENSO/WPの関係性および、ユーラシア大陸の積雪偏差がモデルの再現性に与える影響 中村 哲 (極地研/北大) 原 政之 (JAMSTEC) 大鹿美希 (三重大) 立花義裕 (三重大)

大鹿(2012):観測データ(再解析)の統計解析 12月NAO-(+)⇒1 year⇒ENSO(+)-/WP(+)- “CMIP3大気海洋結合モデル(CGCM)で検証” 個々のモデルのくせやバイアスによるバラつき・・・現実とのズレ (CMIP3 performance of ENSO: Ohba et al., 2010 and NAO: Nube 2010) ↓ 現実とのズレを多少許容しつつ、物理情報の伝播プロセスを 抽出するための客観的な指標、CIの開発と伝播プロセスを検証

20C3M run 100yr (1901-2000) with 5yr high pass filter CMIP3 models Full use (7) bccr_bcm2_0 csiro_mk3_5 giss_aom inmcm3_0 ipsl_cm4 mpi_echam5 mri_cgcm2_3_2 Partial use (9) cnrm_cm3 csiro_mk3_0 gfdl_cm2_1 iap_fgoals1_0_g miroc3_2_medres ncar_ccsm3_0 ncar_pcm1 ukmo_hadgem1 ingv_echam4 Non use (5) cccma_cgcm3_1_t63 gfdl_cm2_0 giss_model_e_h giss_model_e_r ukmo_hadcm3 ・WWB-ENSO good models ・Good but 1-month lag ・In-phase                by Seiki et al., 2011 CMIP3の16のモデルで20世紀ラン100年分に5年のハイパスフィルターをかけたmonthly meanのデータを使った。 20C3M run 100yr (1901-2000) with 5yr high pass filter

Definition of model’s NAO  EOF1 Ps(60W-30E, 20N-90N)(Nov, Dec, Jan, Feb) ※Nube, 2010(RPCA)と若干異なる。 Definition of model’s ENSO  EOF1 SST(160E-270E, 10S-10N, Jul-Jan) ※モデル間のバラつきはOhba et al., 2010とも良い一致 SVD 1st mode Ps(Nov -1yr)-- SST(Jul-Jan) Ps(Dec -1yr )-- SST(Jul-Jan) Ps(Jan -1yr )-- SST(Jul-Jan) Ps(Feb -1yr )-- SST(Jul-Jan) member (16) x NAO month (4) = 64 pairs 11、12、1、2月の4ヶ月分、個別に北大西洋域のPsのEOF第一モードを計算し、NAOの定義とした。 ENSOは7月から翌年の1月までの赤道太平洋SSTのEOF第一モードで定義した。 またNAO、ENSOの定義と同様の領域で、約1年先行する北大西洋のPsと熱帯太平洋のSSTのSVDを計算した。 モデルが16メンバーで、NAOがそれぞれに4ヶ月定義されるので、64のペアができる。

CIの概要 EOF Positive CI: NAO-(+) ⇒ El nino (La nina) Negative CI: NAO-(+) ⇒ La nina (El nino) 内積の積: ここでCoherency indexはEOF1の固有ベクトルと対応するSVD1の特異値ベクトルの内積同士の積をとる事で得られる。 得られたCIの意味するところは、ポジティブであれば、観測事実と同じようにNAOの負位相の1年後にエルニーニョピークが発生する。 ネガティブの場合は逆位相の関係、つまり、NAOの負位相の1年後にはラニーニャピークとなる事を意味する。 64個のペアのCIのヒストグラムをみると、ポジティブに偏っていて、多くのモデルで、現実と同じ位相でNAOとENSOの関係が再現されていることがわかる。 +1yr 21/64=33% SVD CI >= 0.5 OBS: 0.62

Barnett et al. (1989), Yasunari (1987)などで指摘される SVD1スコアへの 回帰場の重み付け R: SVD1スコア(Ps homogeneous)に対する回帰係数 オーバーバー: アンサンブル平均 m: アンサンブルメンバー M: アンサンブル数 W: モデルの重み(=CI) σ: アンサンブル標準偏差 NAOとENSOをつなぐプロセスを抽出するために、SVD1スコア(二つの特異ベクトルのうち、北大西洋のPs場がhomogeneousとなるほう)への回帰場を見る。 これにあたって、64ペアのうち、Ciが0.5以上となるものを、CIの大きさで重み付アンサンブル平均した。 はじめにNAOとENSOの関係を繋ぐものとしてYasunari et al.で示唆された、ユーラシア大陸の積雪との関係をみた。 Barnett et al. (1989), Yasunari (1987)などで指摘される ユーラシア大陸の積雪との関係

Ensemble composite w/ weighting +12 mon +10 mon Regressed on SVD1 score = +0 mon -10 mon Shadings: < -2σ, < -1 σ, < 0, > 0, > +1 σ, > +2 σ Z500 T850

Snow amount/melting in the western Russia Cold advection Snow amount/melting in the western Russia 積雪量 NAO +0mon NAO +1mon NAO +2mon 上の段が積雪量、下の段が融雪量の回帰係数であり、左から順にNAOと同時、1ヶ月後、2ヶ月後である。 NAOが負位相のとき、東欧から西ロシアにかけて積雪が多く、季節が真冬から初春に向かうにつれてその偏差は持続しながらも北へ移動している。 融雪量

東欧・ロシア西部の積雪と NAO-ENSOコネクション 積雪量 vs. CI 融雪量 vs. CI NAOと1ヵ月後の積雪量のCorr. NAOと1ヵ月後の融雪量のCorr. NAOと1ヶ月後の東欧・西ロシア領域平均した積雪量の相関係数を縦軸に、 CIを横軸にとった64ペアのscatter diagramをみると、明瞭な正相関がある。 これは融雪量でも同じ。 つまり、NAO負位相時に積雪が多いモデルでは、NAOとENSOの関係が現実と良い一致をしている。 逆にNAO負位相時に積雪が少ないモデルでは、NAOとENSOの関係は現実と逆である。 CI CI

Responses to the cooling anomaly Idealized GCM (NLBM) run Z500 V lon120 積雪が多いと融雪のために大気から熱を奪うので、冷却アノマリーとなる。 実際に簡単化されたGCMに理想的な冷却を与えた時の応答を見てみた。 Z500とZ850をみると、冷却域で順圧的な低気圧偏差が現れ、その下流のチベット周辺に順圧的な高気圧偏差ができる。 緑線で書いた断面の南北風、東西風の応答をみると、大気最下層で東南アジアから赤道へむけての寒気の吹き出しを強める偏差、 また赤道太平洋上ではwarm pool域で西風偏差が見られる。 Z850 U EQ.

CMIP3および観測との比較(大気場) NAO +1mon (CMIP3 multi models) NAO +3mon (NCEP/NCAR) T1000 Z500 Ps Us:Vs

Summary 現実(観測データ)との多少のズレを許容することで、多くのCMIP3モデルでNAO⇒ENSOの関係が再現できていることがわかった。 独自に開発した指標(CI)で物理プロセスの抽出および理想化されたGCMでの応答実験を行った結果、  - NAO(負/正)に関連した東欧西露地域の積雪偏差(多/少)に伴う大気応答が東南アジアの寒気の吹き出しを強(弱)め、   - ENSO(El nino/La nina)のトリガーとなる西風バーストを強(弱)化する。    (※寒気の吹き出しと西風バーストの関係については、Nakamura et al., 2006     Yu et al., 2003などと整合的)  - 約1年後にENSO (El nino/La nina) がピークとなり、   (※ Seiki et al., 2011によれば観測:WWB→0-10mon→ElNino     CMIP3 good models:generally less months than OBS)  - WP(正/負)-likeなパターンを東アジアにもたらし日本が暖冬/寒冬となる。  これらの解析をすべて再解析データ(NCEP/NCAR、ERA interim)に適用した結果、同様の偏差が見られた。

A schematic diagram of a possible propagation process of the physical information NAO(-) Cold advection Cyclonic anom. snow(+) Anticyclonic anom. Transport of - cold and dry air - high vor. anom. High Ps Intensified WWB ENSO(+)

22/64=33% CI >= 0.5 NAO months

観測データへの適用 CI for obs. (NRA1_PS vs HadISST) NAO month CI Ts (EOF1*SVD1) Ps (EOF1*SVD1) November -0.508 0.757 -0.671 December 0.622 0.810 0.769 January 0.278 0.795 0.350 February -0.495 0.819 -0.605

Overview of the regression fields 正の渦度輸送 正の渦度供給 Bjerknes feedback

観測との比較(積雪) Snow amount (CMIP3 multi models) NAO +0mon NAO +1mon Snow cover (NOAA) Snow depth (JRA25) NAO +3mon