京都大学原子炉実験所 中性子イメージング専門研究会 2012/1/5-6 P1

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京都大学原子炉実験所 中性子イメージング専門研究会 2012/1/5-6 P1 花崗岩石材に浸透する水 -中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- Visualization of water permeation into granite by neutron radiography, 2 : anisotropy 長 秋雄   (産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門) 松林 政仁  (日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門) 長谷川 正一 (羽黒石材商工業協同組合) 発表内容   1.茨城県産の花崗岩  2.建築石材の劣化事例 ・ 劣化メカニズム 、花崗岩石材の力学異方性と「石の目」  3.試験方法  4.2007年RADAトライアルユースの成果(0.01g前後の浸透水の可視化に成功した。)  5.2008年と2010年JAEA施設供用課題での成果 (浸透および乾燥での異方性を可視化・確認した。)                                     ★本研究は、(財)茨城県中小企業振興公社委託事業 産・学・官共同研究「石材の劣化メカニズムの研究」 (平成19年度~平成21年度)の一環として行った。 ★中性子ラジオグラフィ試験は、(財)放射線利用振興協会2007年「中性子利用技術移転推進プログラム」および日本原子力研究開発機構2008年および2010年「施設共用利用課題」により実施した。

「臨時議院建築局編纂 本邦産建築石材」より ●が花崗岩採石地 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P2   茨城県産の花崗岩   ・稲田石     「白みかげ」とも呼ばれる。大きな材料が採れるのが特徴。笠間市稲田~桜川市岩瀬で採掘。   ・羽黒糠目石  きめの細かさ・青みがかった深みのある色合いが特徴。桜川市岩瀬上城地区で採掘。   ・真壁石     小目石は青みが強く粒度が細かい。中目石はややグレー系の色調。桜川市真壁で採掘。   ・やさとみかげ 淡い青みをおびた色合い。石岡市八郷で採掘。   ・坂戸石     稲田石よりやや黒味をおびている。桜川市西飯岡(坂戸)で採掘。 国会議事堂建築当時(1921年)の石材産地 「臨時議院建築局編纂 本邦産建築石材」より ●が花崗岩採石地 茨城県産花崗岩の使用例 最高裁判所 広島平和都市記念碑  (原爆慰霊碑) 庭燈籠

花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P3 建築石材の劣化事例 建築石材の劣化メカニズム 石材中に浸透する水と溶解物との緩慢な化学反応 地質標本館(竣工1980年、2007年現在) 韓国産花崗岩(コリアンセピア) 鉱物の脱落・白色化 変色 building granite water (rain) granite ・Alteration ・Dissolution ・Oxidation ・Precipitation ・Recrystallization mortar ground water

花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P4 花崗岩石材の力学異方性:「石の目」  微小クラックや液粒面などの選択的配向性 工藤ほか(1986)より 微小クラックの電子顕微鏡写真(二次電子像) 長・島田(1987)より 石目のよる弾性波速度と圧裂強度の異方性 工藤ほか(1986)より

供試体の展開写真 稲田石(上)と真壁小目石(下) 40mm角・切り面・濡れ肌 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P5   中性子ラジオグラフィ試験 (2007年RADAトライアルユース) 目的: 花崗岩石材に底面から毛管力で浸透する水を可視化する。 用いた中性子ラジオグラフィ装置:  日本原子力研究開発機構 研究用原子炉 JRR-3のTNRF装置 供試体  稲田石    (茨城産 粗粒 ・ 間隙率 0.6 %)       真壁小目石 (茨城産 細粒 ・ 間隙率 0.6 %)      G614     (中国産  細粒 ・ 間隙率 0.6 %)      G623      (中国産 粗粒 ・ 間隙率 0.7 %) 試験手順 1.供試体の乾燥重量を測定する。        2.供試体を湿潤スポンジの上に載せる。        3.中性子ラジオグラフィ画像を10分間隔で撮影する。          (撮影回数12回)        4.放射化量の低下を待ち、供試体の重量を測定する。          (重量増加量=浸透した水の重量) その他 ・供試体の形状は、40mm角の立方体       ・面は切り面のまま ★予備試験の結果 1.厚さ40mmでの中性子透過率は、乾燥状態・湿潤飽和状態のいずれも、   約40%であった。 2.湿潤飽和状態では、中性子透過率が乾燥状態より   約0.02(%)ポイント低下した。 供試体の展開写真  稲田石(上)と真壁小目石(下) 40mm角・切り面・濡れ肌

2007年RADAトライアルユースでの成果 : 浸透フロントを可視化できた。 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P6   2007年RADAトライアルユースでの成果 : 浸透フロントを可視化できた。 稲田石 G614 浸透開始約2時間後の直接画像 G614  10分ごとの差分画像 ★直接画像では水の浸透箇所を可視化できなかった。   約150分後の吸水量は、稲田石:0.06g、真壁小目石:0.17g、   G614:0.13g、G623:0.07g ★差分画像で、水の浸透フロントを可視化できた。 真壁小目石  10分ごとの差分画像 G623  10分ごとの差分画像

2008年JAEA施設供用課題での成果1 : 浸透過程での異方性を確認した。 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P7  2008年JAEA施設供用課題での成果1 : 浸透過程での異方性を確認した。 4種の花崗岩石材サンプルでの2時間後の中性子透過率の変化量の上下方向ラインプロファイル 水が浸透すると中性子透過率が低下する。グラフの肩が水の浸透フロント(到達点)を示す。 黒線:側面2方向での結果  赤線:黒線の場合と直交する方向で浸透させ、側面2方向での結果 浸透フロントの上面を、矢印       で示す。浸透フロントの高さが、方向により異なっている(異方性)。

茨城県産花崗岩5種類 と 中国産花崗岩3種類 について、 各2供試体の各2方向での浸透試験を行い、 浸透過程での異方性を再確認した。 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P8  2010年JAEA施設供用課題での成果1 茨城県産花崗岩5種類 と 中国産花崗岩3種類 について、 各2供試体の各2方向での浸透試験を行い、 浸透過程での異方性を再確認した。

1.浸透フロントの高さ と 吸水重量 の相関図を作成できた。 2.浸透フロントの高さ と 弾性波速度 の相関図を作成できた。 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P9  2010年JAEA施設供用課題での成果2 1.浸透フロントの高さ と 吸水重量 の相関図を作成できた。 2.浸透フロントの高さ と 弾性波速度 の相関図を作成できた。

2008年JAEA施設供用課題での成果2 : 乾燥過程での異方性を確認した。 花崗岩石材に浸透する水-中性子ラジオグラフィ試験による可視化 その2:異方性- P10  2008年JAEA施設供用課題での成果2 : 乾燥過程での異方性を確認した。 A方向 B方向 乾燥過程での中性子ラジオグラフィ試験結果(面平均解析処理像、直交2方向) 飽和湿潤状態から自然乾燥させてから3分後と125分後での中性子透過率の変化量の、供試体上の1mm平方での面平均を求めてグラフ化した。 青<赤<黄の順に変化量が大きくなる。すなわち、この順に水分乾燥量が多くなる。 直交する2方向(A方向 と B方向)の像に、違いが認められた。 すなわち、乾燥過程においても異方性があることを、確認できた。