海洋GNSS観測点の実装と, それによる新たな地球観測の実現

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第8週 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
※今後、気象台や測候所が発表する最新の防災気象情報に留意してください。
国際海運における温室効果ガス削減技術に関する研究開発
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第6回 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
3.ヴァリアブルバージョンの応用例 3.1 五ヶ所湾の海域浄化装置の効果に関する 数値シミュレーション
○○○○○○○○○○○○○○○○○○ の要素技術開発
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背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
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デジタル情報学概論 2004年11月24日 第9回資料 担当 重定 如彦.
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海洋GNSS観測点の実装と, それによる新たな地球観測の実現

海洋ブイの将来ビジョン 北西太平洋にブイアレイを構築し,GNSSその他の観測機器を搭載してデータをブイ上で解析あるいは地上に伝送して解析することにより,地球科学に新たなデータを供給して関連研究の新たな展開をもたらすと共に様々な自然災害軽減のための総合防災ブイアレイとしての活用をはかる. (EEZ内に81点;Tsugawa et al. (2012)を改変)

CRESTにおける達成目標 海洋ブイの有効性を検証するために,クリアすべき課題を抽出し,それを解決するための基礎的な研究開発を実施する. 海洋ブイアレイを構築した場合の関連する地球科学分野へのインパクトを検証すると共に,アレイ構築のための必要な仕様,ロードマップを作成する.

現状と背景 陸域のGEONETの整備による地球科学・防災への多大な貢献 〔Displacement vectors for 2001-2002〕 GEONET 現状と背景 陸域のGEONETの整備による地球科学・防災への多大な貢献 GNSSブイによる波浪観測網NOWPHAS(沿岸20㎞以内)による津波観測への貢献 GNSS-音響システムによる海底地殻変動観測の重要性の認識と船舶を用いた間欠観測からブイを用いた連続観測への期待 気象・海洋・電離層研究における海洋ブイを用いた新たな観測データの取得の期待

GPSブイを活用した総合的防災システムのアイデア 波浪・津波観測 津波早期警戒システム 波浪観測・高潮警報 海底地殻変動 地震・津波早期警戒システム 水蒸気量測定 天気予報への活用 台風の進路予想,等 電離層電子密度測定 電離圏擾乱の監視と研究 “宇宙天気予報”への活用 ブイへの各種センサー搭載による様々な大気・海洋監視と新たな研究への展開 気圧,風向,風速等 波向,潮流等 海水温,塩分濃度等 条件:衛星データ通信とブイ技術が必要 一つのブイで様々な応用ができる! 海のGEONETを! (現在科学研究費補助金にて基礎的な研究開発を実施中;H28-H32年度)

解決すべき課題:システム 数千m深度の海洋における長期安定運用可能なブイの仕様の策定 低廉なリアルタイム・大容量のデータ伝送を実現する通信衛星の仕様の検討 ブイの揺動等による衛星通信の阻害確率を低減する方法の研究 次世代通信衛星の基本コンセプト 設計した衛星による西太平洋のカバレージの一例 (現在科研費で開発中のシステム図) (平成25-26年度宇宙科学技術推進調整委託費による成果報告書より)

解決すべき課題:津波・波浪 GNSS測位精度の低下を防ぐための技術開発 ブイの波浪による傾きによる衛星通信効率低下の防止 ブイの傾きによる海面高の精密計測への影響 GNSSデータ解析ソフトウェアの高機能化(解の収束時間の短縮化など衛星の補正状況の効率的活用) 通信衛星を介した波浪・長周期波データ.通信エラーによるデータ断が見られる.データ断が長く続くと再開した時の解の収束時間が長くかかることが問題. アンテナの揺動防止のためのジンバル機構(山本氏資料)

解決すべき課題:海底地殻変動 船舶を用いて年数回実施する方式からブイを用いて計測を自動化することによる1日一回程度の測定を実現する方法の開発 測定精度を確保するための係留系の開発 キネマティックGPS測位 音響測距 GPS基準局 観測船 船上局 海底局 海底 ベンチマーク 通信衛星 仁淀川町ベース (田所氏資料) 科研費で開発中のシステム 現状

解決すべき課題:気象学 海洋ブイによって日本から離れた地点の水蒸気量を観測することにより,数値予報や豪雨の予測等にどの程度のインパクトがあるかの検証. 海洋ブイから得られるデータの可降水量の精度の評価と高精度化の研究 韓国・中国のGNSS可降水量データを同化した場合の予報へのインパクト検証(瀬古氏提供資料) ブイを用いた実験の事例.ブイデータのほうがノイズが大きい (小司:日本気象学会2010年度春季大会)

解決すべき課題:電離層 海洋ブイによって取得できる視線方向の総電子数(Total Electron Content: TEC)を陸上データと組み合わせることでどの程度グローバルな電離層モデルの改善ができるかの検討. 海洋ブイから得られるTECデータの精度の評価と高精度化の研究 (NICT西岡氏提供資料) GEONETデータの活用による電離層擾乱の研究事例(左),世界のGNSS TECにおける海洋観測の欠如(右)

3次元的な水塊輸送により、表層より高い酸素濃度 解決すべき課題:海洋学 期待される研究分野の事例 ①海洋表層~中層の熱・物質輸送過程の解明 ②温暖化に伴う深層水の変化のモニタリング ③係留ブイによる波浪観測(現業波浪予報への貢献と海難事故防止) ② ① 1990年代から2000年代にかけての深層の昇温 (Kawano et al., 2010) 3次元的な水塊輸送により、表層より高い酸素濃度 ブイ係留点 400m深 600m深 200m深 船舶観測による溶存酸素断面 (Nagano et al., 2016) 渦の通過による酸素濃度の変化 酸素が非常に濃い数10km程度の水塊 ③ 係留ブイで連続測定した海中溶存酸素の時系列 (川合氏資料)

「海のGEONET」実現に向けて:ロードマップ 必要予算(大雑把) 設置  数百億円 運用  10億円程度/年 科研費基盤研究S(加藤代表;H28-H32年度) 2016年11月から観測開始:GNSSのみ,衛星通信(商用) 2017年6月頃から海底地殻変動観測 技術的課題の克服と関連分野へのインパクトの検証 検討会の設置:安心・安全防災フォーラム海洋GNSSブイWGを利用 日本学術会議大型研究計画への提言を目指して 2017年度 国際WS 2018年5月JpGU特別セッション 2018-9年JST等大型予算の獲得(CREST) 2020年大改訂予定の学術会議大型研究マスタープラン重点課題を目指す. (81 sites in the Japanese EEZ; Modified from Tsugawa et al., 2012)