研究開発課題(原子核分野)の紹介 東京大学 大塚孝治
多粒子数値シミュレーションによる核反応と 元素起源の解明 宇宙 基本課題: 基本原理から物質へ 多粒子数値シミュレーションによる核反応と 元素起源の解明 原子核 核力、ハドロン力から構築される エキゾチック原子核 スケール 量子色力学に基づく物質構造の究極的解明 素粒子
量子色力学に基づく物質構造解明のフロンティアを拓く事を目標とする 研究開発課題(3) 量子色力学に基づく物質構造の究極的解明 研究開発課題責任者 初田 哲男(東京大学) ① 格子量子色力学シミュレーションによるバリオン相互作用の全解明と新粒子探索 担当者 石井 理修(東京大学) 保坂 淳(大阪大学) ② 少数粒子系精密計算による軽い原子核およびハイパー核構造の解明 担当者 肥山 詠美子(理化学研究所) ③ 有限密度格子QCDの挑戦的研究 担当者 中村 純(広島大学) 量子色力学に基づく物質構造解明のフロンティアを拓く事を目標とする テーマ: ○ 格子QCD計算による核力、ハイペロン力、3体力の大規模計算 (次世代スパコン:10Pflops級) QCDによる原子核の直接計算(課題(2))と密接に連携 原子核構造(課題(4))、天体現象や元素合成(課題(5))の基礎を提供 少数ハドロン系厳密計算 (各研究機関後継機:1Pflops級) J-PARCにおける実験との比較 ○ 高密度QCDの新しい計算法の開発
Image Bank (ph004), School of Science, University of Tokyo Graphical Image of NN force Image Bank (ph004), School of Science, University of Tokyo by T. Hatsuda
これまでの実績: ○ BlueGene (KEK), PACS-CS, T2K上での大規模計算を実行 ○ 世界で初めて核力ポテンシャルをQCDから導出(2007) ○ Nature誌が選ぶ2007年自然科学全分野21件の ハイライト研究に選出 ○ 世界で初めてハイペロンポテンシャルをQCDから導出(2008) ○ 世界で初めてテンソル力をQCDから導出(2009) 次世代スパコンでの計算規模: 前期(H23.10-H26.9) 1.4 PFlops*year バリオン間ポテンシャルの精密決定 中期(H24.10-H28.3) 2.3 PFlops*year バリオン間ポテンシャルの精密決定 後期(H.28.4以降) 2.0 PFlops*year 3バリオンポテンシャルの計算
核力、ハドロン力から構築されるエキゾチック原子核 東京大学・理学系研究科 大塚 孝治 研究開発課題(4) 核力、ハドロン力から構築されるエキゾチック原子核 東京大学・理学系研究科 大塚 孝治 軽-中重核の解明に関する研究 担当者 東京大学 阿部 喬 中重-重核に関する研究 担当者 日本原子力研究機構 宇都野穣 モンテカルロ殻模型 による大規模計算 重い核に関する研究 担当者 東京大学 清水則孝 スピンアイソスピンへの応答に関する研究 担当者 日本大学 鈴木俊夫 有効核力の研究 担当者 千葉大学 中田 仁
核図表と主要な研究課題 超新星爆発で生成される 不安定核の道筋(理論的予想) ⇒ Rプロセス 次世代ペタコンで開拓する研究課題: 存在が実験で確認 された不安定核 安定核 安定核以外は不安定核 極めて短寿命 →加速器で作る エキゾチックな性質 地球上の原子核 RIBFの到達領域 理論予想 中性子数(同位元素の種類) 陽子数(元素の種類) 超新星爆発で生成される 不安定核の道筋(理論的予想) ⇒ Rプロセス 次世代ペタコンで開拓する研究課題: 1.陽子数と中性子数のアンバランスからくる新しい量子構造 新たな魔法数、殻構造、クラスター構造 2.超新星爆発などによる物質創成の道筋 元素創成の連鎖の道の解明 3.超重元素や物質存在限界の探求 物質の存在限界と核力(2体力、3体力) 宇宙の初めに出来るのは ごく軽い原子核だけ
What simple regularity can we imagine from such a complexity ? Graphical Image of NN force One of the objectives : What simple regularity can we imagine from such a complexity ? Image Bank (ph004), School of Science, University of Tokyo by T. Hatsuda
Monopole effect from the tensor force Artistic Picture by Carin Cain From Viewpoint by J.P. Schiffer, Physics 3, 2 (2010) テンソル力、特にその短距離成分の研究は格子QCDで進行中
補助場量子モンテカルロ法に ヒントを得た、重要な多体基底 ベクトルの生成法を独自に提唱 原子核構造計算におけるモンテカルロ殻模型(MCSM)の概要 量子多体系を解くための 元々のハミルトニアン行列 ******* ..... N次元 *** n次元 n=30~50 補助場量子モンテカルロ法に ヒントを得た、重要な多体基底 ベクトルの生成法を独自に提唱 (1995年本間、水崎、大塚) N ~ 旧来の方法では最大10億次元 (鉄やニッケルのあたりで、 シェルが壊れていない場合) これを対角化 現在までに行われたMCSM計算で最大のものは、 N で言えば1028次元に相当 不安定核で現れる新たな構造解明に寄与 論文数(共同研究含む) 50以上 citation (共同研究含む) 2000以上 計算のサイズは活性粒子数とともに緩やかに増大 ウランのような原子核をやるには10ぺタ級が必要
原子核における量子多体問題 : 大規模計算(モンテカルロ殻模型)による予言と計算のサイズ 原子核における量子多体問題 : 大規模計算(モンテカルロ殻模型)による予言と計算のサイズ モンテカルロ殻模型(MCSM)計算: 旧来型計算ではハミルトニアンの行列の次元が1020次元を越えるような場合でも量子 モンテカルロ的方法と対角化を組み合わせて数十次元の問題に帰着させて解く MCSM 励起エネルギー [MeV] 計算の後に得ら れた実験データ 対角化すべき元々のハミルトニアン 行列の次元 (N) の増大 計算以前から あった実験データ E2遷移確率 [e2fm4] 中性子数
不安定核で起こる魔法数のパラダイムシフトとその大型計算による検証 N=20近くでの異常な 四重極能率 中性子過剰なナトリウム(Na)アイソトープの 電気四重極能率 実験値 モンテカルロ殻模型による大型数値計算 (Utsuno et al., 2004年) 旧来型殻模型による小規模計算 基本理論を大規模計算で検証 雑誌パリティ、2008年12月号、大塚 N=20 のライン 安定核 (β安定線) 核力によるN=20ギャップの変化 テンソル力の 効果を含んだ値 Na
D エキゾチック核での3体力の効果 (D-hole excitation) D particle p m=1232 MeV エキゾチック核での3体力の効果 (D-hole excitation) D N p D particle m=1232 MeV S=3/2, I=3/2 ハドロンが「基本粒子でない」ために 必然的に起きる
D Ground-state energies of oxygen isotopes m m’ 2体力 + 3体力(藤田-宮沢力) 2体力 + 3体力(藤田-宮沢力) 3体力の真の姿はまだ未解明 → 課題(3) 格子QCD 中性子物質、中性子星の物理 現象論 3体力を考慮 2体力まで
Ca ground-state energy 3体力を含む 2体力のみ SPE : GXPF1 f7:-8.62 f5: -1.38 p3: -5.68 p1: -4.14
MCSM Ab initio MCSM Nuclear Chart ペタコンでの計算へ向けて UNEDF SciDAC Collaboration: http://unedf.org/ ペタコンでの計算へ向けて MCSM Ab initio MCSM Nuclear Chart
Current Status of ab-initio Monte Carlo Shell Model Calculations T. Abe, P. Maris, T. Otsuka, N. Shimizu, Y. Utsuno, J. P. Vary Current Status of ab-initio Monte Carlo Shell Model Calculations Comparison of MCSM (solid symbols) w/ FCI (open symbols w/ curves) calculations of the ground-state energies for some light nuclei 4He (0+) 6He (0+) 6Li (1+) 12C (0+) モンテカルロ殻模型による軽い核における基底エネルギーの第一原理計算の現在の進行状況。12Cで1点、すでに現在のFull Configuration Interaction(FCI)計算(厳密対角化計算)を超える計算結果も得られ始めている。 Beyond the current computational limitation of the FCI calc.
Benchmark for new MCSM code (hot spot) N. Shimizu, Y. Utsuno, T. Abe, T. Otsuka Benchmark for new MCSM code (hot spot) Benchmark test for codes (56Ni in pf-shell) Scalability benchmark for parallel computation Quad core Opteron 2.3GHz (T2K) 4He in Nshell=5 Scalability (~103 procs) Twice performance 左の図はコードのパフォーマンスが2倍になったこと、右の図は1000プロセッサーまでスケーラビリティがあることをT2Kでチェックしたもの。 清水さんのスライドに赤字でコメント+右上に担当者を追加 Fortran 77 => 95 30% improve New algorithm 50% improve Totally, 100% improve
研究開発課題(5) 多核子数値シミュレーションによる 核反応と元素起源の解明 研究開発課題(5) 多核子数値シミュレーションによる 核反応と元素起源の解明 研究開発課題責任者: 中務孝(理研・仁科センター) 目標 ①異なる核種を普遍的に扱える量子多体系のシミュレーション法の開発・実施 ②得られた最新の原子核の微視的計算データを用いた天体現象・元素起源の解明 大規模数値シミュレーションによる核子多体系ダイナミクスの解明 (担当:小野) 低エネルギー核反応・多核子共鳴機構の解明 (担当:八尋) 高密度核物質の性質と爆発的天体現象・元素合成過程の解明 (担当:大西)
主要な内容 現時点における次世代スパコンの有望なアプリとして、①の課題の以下の2つを紹介。 ①核子多体系ダイナミクス (担当者:小野[東北大]) 密度汎関数アプローチによる核応答計算(中務) 反対称化分子動力学的アプローチによるEOS計算(小野) 反対称化分子動力学的アプローチによる核構造計算(延与) ②低エネルギー核反応 (八尋[九大]) 少数核子系の第一原理計算(青山) 連続離散化結合チャネル(CDCC)計算(八尋) ③高密度核物質と爆発的天体現象 (大西[京大基研]) 多体系変分計算、強結合格子QCD計算(大西) 流体計算と組み合わせた元素合成ネットワーク計算(梶野) 現時点における次世代スパコンの有望なアプリとして、①の課題の以下の2つを紹介。 時間依存密度汎関数法による核応答計算 反対称化分子動力学による有限温度・有限密度EOS計算
シミュレーションで原子核の構造・反応を調べる 密度汎関数理論を用いて、コンピュータ上 に存在可能なあらゆる原子核を作り出し、 その性質を調べる。現在世界最高レベル の加速器を用いても合成が難しい原子核 の性質を解明。宇宙進化、物質の創生に 深く関わり、また原子炉シミュレーション、 核変換シミュレーションの基礎データとして も利用できる。 基底状態の系統的計算 n 光吸収断面積の系統的計算 時間依存コーン・シャム方程式 n 中性子過剰核の光吸 収過程の実時間応答
反対称化分子動力学による有限温度・有限密度EOS計算 古田・Hasnaui・小野(東北大) 重イオン衝突の多重破砕反応の数値シミュレーションにより実験データを再現した上で、数千核子を扱うペタスケールの数値計算で、様々な温度・密度・陽子/中性子比にある核物質の状態方程式を確定する。
核図表と主要な研究課題 超新星爆発で生成される 不安定核の道筋(理論的予想) ⇒ Rプロセス 次世代ペタコンで開拓する研究課題: 存在が実験で確認 された不安定核 安定核 安定核以外は不安定核 極めて短寿命 →加速器で作る エキゾチックな性質 地球上の原子核 RIBFの到達領域 理論予想 中性子数(同位元素の種類) 陽子数(元素の種類) 超新星爆発で生成される 不安定核の道筋(理論的予想) ⇒ Rプロセス 次世代ペタコンで開拓する研究課題: 1.陽子数と中性子数のアンバランスからくる新しい量子構造 新たな魔法数、殻構造、クラスター構造 2.超新星爆発などによる物質創成の道筋 元素創成の連鎖の道の解明 3.超重元素や物質存在限界の探求 物質の存在限界と核力(2体力、3体力) 宇宙の初めに出来るのは ごく軽い原子核だけ