岡田安弘 (KEK) シンポジウム「物質の創生と発展」 2004年11月4日

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岡田安弘 (KEK) シンポジウム「物質の創生と発展」 2004年11月4日 SUSY/Higgs 岡田安弘 (KEK) シンポジウム「物質の創生と発展」 2004年11月4日

現代物理学(20世紀の物理学) 新しい力学的枠組み(相対論、量子力学) 物質の階層構造の発見(原子、原子核からクォーク・レプトンへ) 新しい力(強い相互作用、弱い相互作用) 時空・宇宙と素粒子物理の融合(一般相対論、ビッグバン宇宙)

素粒子標準模型 強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用の三つの基本相互作用の統一的記述。 物質の基本単位はクォーク・レプトン 二つの原理、ゲージ原理とヒッグス機構 ゲージ理論  力はゲージ粒子によって運ばれる ゲージ粒子 SU(3) グルーオン SU(2)XU(1) W粒子、Z粒子、光子

ヒッグス機構 弱い相互作用がなぜ弱いのかの理解。   物質から放出されたゲージ粒子は背景にたまっているヒッグス場との相互作用によって質量を持つので、短距離力になる。 Fermi定数と真空期待値の関係

ヒッグス物理の課題 (1) ヒッグス場の量子であるヒッグス粒子を発見すること。 ヒッグス物理の課題 (1) ヒッグス場の量子であるヒッグス粒子を発見すること。 ヒッグス粒子とほかの素粒子の結合常数を測定し、素粒子の質量生成の機構を明らかにすること。

ヒッグスポテンシャル 素粒子の質量公式 ヒッグス粒子 トップクォーク W粒子 Z粒子 ヒッグス場の真空期待値

LHC実験におけるヒッグス粒子の探索 LHC 実験: CERNで2007年に実験開始される最高エネルギー実験。 重心系のエネルギーが14TeV(14000GeV)の陽子・陽子衝突加速器。 ヒッグス粒子の発見が主要な目的のひとつ。 ヒッグス粒子探索はヒッグス粒子の質量領域によって異なる。 生成過程: gluon fusion, WW fusion 崩壊過程: できるだけ重い粒子に崩壊 陽子 陽子 W粒子 グルーオン ヒッグス粒子 ヒッグス粒子 W粒子 陽子 グルーオン 陽子

標準模型のヒッグス粒子の崩壊分岐比 LHC実験(ATLAS)での ヒッグス粒子発見 LHC実験では標準模型で予言される 生成確率と分岐比をもったヒッグス粒子は その質量によらずに発見できる。

リニアコライダー(LC)実験におけるヒッグス物理 → ヒッグス ファクトリー   → ヒッグス ファクトリー LC実験におけるヒッグス粒子シグナル 10万個のヒッグス粒子生成 スピン、パリティーの決定 質量の精密測定 分岐比、生成断面積の精密測定 ヒッグス粒子 Z粒子 崩壊過程

LC: 結合常数自身を数%の精度で決められる。 ヒッグス粒子の結合常数の測定 質量と結合常数の関係 LHC: 結合常数の比が0(10)% LC:  結合常数自身を数%の精度で決められる。 LHC LC ヒッグス生成過程 GLC Project The Precision Higgs WG of Smowmass 2001

ヒッグス物理の課題(2) 電弱対称性の破れのダイナミックスを明らかにすること。 そのためにヒッグスポテンシャルを決める。

ヒッグス自己相互作用の測定 ヒッグスポテンシャルについての最初の 情報はヒッグス粒子を2つ生成する過程 から得られる。 LC実験では10%程度の精度で決められる。 Y.Yasui, et.al. GLC Project

ヒッグス物理の課題(3) ヒッグス粒子は基本粒子か複合粒子か。 重力との統一のスケール(プランクスケール)まで、基本粒子(基本的な場)としてふるまうか。 いままでにそのようなスカラー場は見つかっていない。 もし、基本的なスカラー場が存在すれば宇宙論的な意味は大きい。(たとえば、Inflaton) 理論的には大きな問題がある。(階層性の問題)

電弱相転移でのバリオン数生成とヒッグス粒子の自己相互作用 宇宙のバリオン数 ヒッグス場を2種類入れた模型(2HDM)では、 電弱相転移が強い一次相転移となる条件は ヒッグス自己相互作用が大きな量子補正を 受けることに対応。 電弱相転移でバリオン数生成が起こる ためには強い一次相転移となることが必要。 S.Kanemura,Y.Okada,E.Senaha

階層性の問題 基本的なスカラー場はプランクスケールに比べて質量を小さく保つことを保証するもっともらしい理由が無い。(ゲージ場やフェルミオンにはその理由がある。) 具体的にはスカラー場の質量のくりこみに2次発散が生じることが問題。

ヒッグス場の自己相互作用定数のエネルギー依存性 ヒッグス粒子の質量 ヒッグス場の自己相互作用定数のエネルギー依存性 LEP EW Working Group ヒッグス粒子が重ければ(180GeV以上) プランクスケールまで基本的な場ではありえない。 しかし、電弱対称性の精密測定は軽いヒッグス粒子 の存在を示唆している。

超対称(SUSY)模型 超対称性はボソンとフェルミオン間の対称性。 超対称性があれば基本的なスカラー場を導入しても問題はない。(2次発散は相殺する) もし超対称性が存在すれば、相対論の導入に匹敵するぐらいの物理の大変革になる。   (ポアンカレ群の拡張)

SUSYと標準模型を超える物理 標準模型を超える物理のヒントとして (1)ニュートリノ質量 (2)大統一理論 (3)暗黒物質 (4)宇宙のバリオン数 超対称模型はこれらをうまく解決する 枠組みをあたえる。 超対称大統一理論 → (1)(2) 安定な LSP → (3) Leptogenesis → (4) L.Verde, LP03

SUSY の探索 SUSY粒子があるか。 SUSYの対称性を満たしているか。 SUSYの破れの機構は何か。 SUSY の探索 SUSY粒子があるか。 SUSYの対称性を満たしているか。 SUSYの破れの機構は何か。 力の統一や宇宙物理にとっての意義は。

SUSY粒子の直接探索 LHC LC 陽子 電子 陽電子 陽子 LHCはスクォーク・グルイーノからのカスケード崩壊。 LCは低バックグランドで精密測定可能。 たとえば、LHCで暗黒物質の候補が見つかり、LCでその質量や結合常数を決定して暗黒物質になるかどうかを確定する。

LHC実験におけるSUSY探索 2TeVのグルイーノ、スクォークまで探索可能 軽いヒッグス粒子(135GeV以下)が必ず存在 SUSY 粒子の探索によって 探れるパラメーター SUSY ヒッグス粒子の探索 ~gluino 2 TeV m1/2(GeV) mSUGRA MSSM

LCにおけるSUSYの研究 エネルギースキャン、ビーム偏極を使って様々な重要な測定ができる。(質量、スピン、量子数の決定) チャージノ、ニュートラリーノ混合 超対称性の関係式の検証 ゲージノの質量のGUT関係式 暗黒物質の決定 レプトンフレーバーの破れ

LHC+LCによるSUSY breaking mass の universality の検証 超対称性の関係式の検証 Right-handed selectron production M.M.Nojiri, K.Fujii, and T.Tsukamoto LHC+LCによるSUSY breaking mass の universality の検証 G.A.Blair, W.Porod,P.M.Zerwas

暗黒物質とLHC/LC SUSY Seesaw 模型における レプトンフレーバーの破れの探索 Focus point SUSY Seesaw 模型における レプトンフレーバーの破れの探索 暗黒物質とLHC/LC H.Baer, A.Belyaev, T.Krupovnickas, X.Tata J.Hisano, M.M.Nojiri, Y.Shimizu, M.Tanaka Focus point Stau coannihilation ニュートリノ混合 -> スレプトン混合 ->LFV スレプトン生成と崩壊

様々な過程のSUSYの探索 新しい物理の解明には標準模型の範囲では独立して見える側面がどのように 関連しているかを明らかにしなければならない。  エネルギーフィンテアの物理 LHC LC クォーク フレーバーの物理 Bd  Bs K charm ニュートリノ物理 レプトンフレーバーの破れ ミュー粒子異常磁気能率 電気双極子能率(EDM) 核子崩壊

SUSY GUT たとえば 超対称大統一理論の場合は、スクォーク、スレプトンの質量行列を 通じてほとんどすべての側面が関連している。 たとえば 超対称大統一理論の場合は、スクォーク、スレプトンの質量行列を 通じてほとんどすべての側面が関連している。  squark search エネルギーフィンテアの物理 LHC LC クォーク フレーバーの物理 Bd  Bs K charm slepton search squark CPV muon physics ミュー粒子異常磁気能率 SUSY GUT 電気双極子能率(EDM) ニュートリノ物理 レプトンフレーバーの破れ 核子崩壊

シーソーニュートリノを含むSU(5)超対称 大統一理論の例 T.Goto, Y.Okada,Y.Shimizu,T.Shindo, and M.Tanaka ニュートリノ振動に関与する右巻きニュートリノの 相互作用がb-sクォークの転換やレプトンフレーバー の破れの過程を引き起こす。 B ->f Ks モードの時間依存CP非対称が標準模型からずれていればグルイーノ、 チャージーノはLHC/LCの探索範囲。 m -> e g もMEGの範囲。

まとめ ヒッグス物理の意味は1世紀前に発見された弱い相互作用の本質を明らかにすること。 理論的には、ヒッグス場がプランクスケースまで基本的な場と考えられるかどうかが重要。その場合は、ヒッグスの質量は軽いはず。(200GeV以下) SUSYは基本的なスカラー場の存在を保証する対称性。もしこの対称性が存在すれば物理学の大変革になる。 大統一理論や暗黒物質の存在という標準模型を越える物理へのヒントはSUSY理論の枠組みで理解できる。 SUSY理論の様々な面を解明するにはいろいろな実験の情報を必要とする。