北大MMCセミナー 第77回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2017年11月24日(金) 16:30~18:00 ※通常と曜日が異なります Speaker: 泉典洋(北海道大学) Norihiro Izumi (Hokkaido University) Place: 電子科学研究所 中央キャンパス総合研究棟2号館 5F北側講義室(北12条西7丁目) Title: 海底峡谷を形成する線源/面源混濁流の発生プロセス The generation process of line/surface source turbidity currents forming submarine canyons アブストラクト: 等高線法を用いた結晶のスパイラル成長の数理モデルを用いて、共回転対と呼ばれる、 同じ回転方向を示すらせん転位の対による結晶表面の成長速度について考察する。 Burton-Cabrera-Frankによると、対の距離がある臨界距離より遠い場合は 単独のらせん転位による結晶表面の成長と見分けが付かないとされる。 他方その臨界距離より近い場合は、対を限りなく近づけた時の成長速度が 単独のらせん転位の2倍になるとされるが、その中間の距離において 成長速度がどうなるかという評価式は与えられていない。 そこで上記の事実について数値計算実験を行った結果、臨界距離にずれがあることを発見した。 そこで共回転対による成長速度の評価を行い、その観点から臨界距離の新しい定義とその数値を与え、 これが数値計算実験の結果と非常に良く合うことを報告する。 評価と臨界距離の改善において重要な役割を果たしたのは単独のらせん転位により 与えられるスパイラルステップの回転速度で、Burton-Cabrera-Frankはこれを アルキメデスのらせんによる近似から計算していた。この結果をより精度の良いものに 改めることによりある程度の指標となる成長速度の評価式を得ることができた。 Abstract: 混濁流は,浮遊砂を巻き上げることで周囲の海水より重くなり海底面上を流下する重力密度流である.混濁流は,大きな侵食力と土砂輸送能力を持っており,大陸棚上に堆積した陸域由来の土砂や有機物を深海底に運ぶという海底地形の形成や石油の生成に重要な役割を担っている.話題提供では,混濁流による海底峡谷の形成理論について解説する.理論から,世界各地の大陸縁辺部に実際に見られる海底峡谷の形成には,大陸棚上において広範囲に発生する線源/面源混濁流の存在が不可欠であることが結論される.では,線源/面源混濁流はどのようにして発生するのであろうか.2011年の東日本大震災津波では大規模な線源/面源混濁流が発生したことが,現地の状況から明らかとなってきた.線源/面源混濁流の発生原因が大地震によって発生する大津波だとすれば,混濁流の堆積岩であるタービダイトから大地震の発生頻度などの重要な情報が得られる可能性がある. 連絡先: 北海道大学電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター 人間数理研究分野 長山 雅晴 内線: 3357 nagayama@es.hokudai.ac.jp