岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学) 2007年11月12日 研究会「SuperKEKBが拓く物理」 秋葉原ダイビル

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岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学) 2007年11月12日 研究会「SuperKEKBが拓く物理」 秋葉原ダイビル これからのBファクトリーが目指すもの 岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学) 2007年11月12日 研究会「SuperKEKBが拓く物理」 秋葉原ダイビル

これからのBファクトリーが目指すもの TeV領域の新しい素粒子像の解明に フレーバー物理の側面から寄与すること。 1.なぜTeV領域に新しい素粒子像が期待されるのか 2.B ファクトリーで探る新しい物理の例

1.なぜTeV領域に新しい素粒子像が期待されるのか 素粒子像=基本粒子と力 (1) 現代的な素粒子物理の始まり。 1930年代の初め 中性子の発見=原子核は陽子と電子ではなく 陽子と中性子でできてる。 新しい二つの力の導入 強い相互作用 核力 弱い相互作用 粒子の変換

+ (2)素粒子標準模型の提唱 1970年代 クォーク、レプトン、ゲージ粒子(W, Z, グルーオン) (2)素粒子標準模型の提唱 1970年代 強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用はゲージ理論の 枠組みで理解できる。 電弱対称性の破れがおこるなら。(そのメカニズムの詳細には依らない) クォーク、レプトン、ゲージ粒子(W, Z, グルーオン) 電弱対称性の破れを引き起こすセクター + いろいろな可能性あり。 いろいろな粒子と力がありうる。

LHC実験は新しい素粒子像を探る最初のステップ。 (3)現在のフロンティア TeV領域の物理 TeV = 電弱対称性の破れのエネルギースケール d u W e v~246 GeV: 電弱対称性の破れの物理を 特徴付けるスケール。 TeV スケールに新しい粒子や新しい力があるはず。 =TeV 領域の新しい素粒子像 LHC実験は新しい素粒子像を探る最初のステップ。

One Higgs doublet model 最も簡単な電弱対称性の破れを起こす模型。 新粒子として中性スカラー粒子(ヒッグス粒子)がひとつだけでてくる。 この模型は理論的には不満。 10TeVのエネルギースケールに行く前に別の 形に書き換えられるはずと思っている。 (超対称性、余次元、複合ヒッグス、など) 過去の類似の例  π中間子(湯川中間子)とクォーク模型

(1)力の統一 TeV とPlanck スケールを結ぶ? (2)宇宙論との関連 暗黒物質、バリオン数生成 (3)ニュートリノの質量の起源 現在の標準模型に関する見方は1970年代当時とはちがう。 よりambitious になった。 標準模型の枠を超えるヒントや必要性が認識された。 (1)力の統一    TeV とPlanck スケールを結ぶ? (2)宇宙論との関連   暗黒物質、バリオン数生成 (3)ニュートリノの質量の起源 超対称大統一理論の例 宇宙のエネルギー組成

TeV領域で何が基本粒子で何が基本的な 力か明らかになれば、これらの問題がどの ように関連し、どれが解決し、どれが未解決 のままで先送りになるかわかるはず。 新しい素粒子像の全貌を明らかにするには、 LHC, ILC, Super B  とそれらの次の世代の 加速器まで必要。(30-40年のプログラム)

2.Bファクトリーで探る新しい物理 Super B Factory の物理の意義の検討いろいろなところで行われてきた。 Super KEKB LoI (hep-ex/0406071) SLAC Super B workshop (hep-ph/0503261) Super B CDR (arXiv:0709.0451) CERN workshop “Flavour in the era of the LHC” 様々な新しい物理の模型に関して、B,D,タウ崩壊の物理で標準模型からのずれをどの程度測定することが出来るか。

新しい物理を探る例 超対称大統一理論とB/タウ崩壊の物理 荷電ヒッグス粒子とBからタウ粒子への崩壊 余次元模型とB崩壊物理

超対称性とフレーバー物理 squark quark slepton lepton gluino gluon neutralino, 超対称模型ではクォーク、レプトンの超対称パートナーを導入する。 スクォーク、スレプトンの質量行列は新たなフレーバーとCPの破れの原因となる。 Super partners SM particles neutralino, chargino gluino slepton squark W,Z,g, H gluon lepton quark Spin 1/2 Spin 0 Spin 1 Spin 1/2 Spin 1 Spin 1/2 Spin 0 Quark mass Squark mass 超対称性の破れ

超対称性の破れ 超対称性の破れは、重力を含む統一理論の枠組みで超対称性の自発的な破れによって生じる。  自発的な対称性の破れ=>真空のダイナミックス さらに、スクォークやスレプトンの質量行列はGUTスケールにある粒子の相互作用により、くり込み効果を受ける。 理論の基本に係わる情報を担っている。

スクォーク、スレプトンの質量行列は粒子の直接生成とフレーバー物理の両方合わせて 決められる Quark flavor changing processes Off-diagonal Diagonal LHC/ILC SUSY mass spectrum Lepton flavor violation

SU(5) 超対称大統一理論 GUT interactions 超対称大統一理論の場合、クォーク湯川結合定数がレプトンフレーバーの原因に なり、ニュートリノ湯川結合定数がクォークフレーバーシグナルの原因になる。 Quark Yukawa coupling Neutrino Yukawa coupling GUT interactions Quark flavor signals Time-dep CP asymmetries in B->fKs B -> K*g Bs->J/yf Lepton flavor violation in m->eg t->mg t->eg

フレーバーシグナルの例 DS(fKs)=S(B->fKs)-S(B->J/yKs) T.Goto, Y.O., T.Shindou and M.Tanaka, 2007 DS(fKs)=S(B->fKs)-S(B->J/yKs) B-> fKs と B->J/yKs の CP非対称性の違いは  b-s 転換の振幅に新しい位相 が含まれることを意味する。 SuperB

Mixing-induced CP asymmetry: S(B->K*g) 非対称性が大きいことは、 標準模型とカイラル構造が 異なった b->sg 振幅が存在 することを意味する。 たとえば right-handed sdown diagram in SU(5) GUT with right-handed neutrino. SuperB

LFV ( t ->mg, m->eg) レプトンフレーバーを破る過程 t->mg が大きくなる。 Super B factory の探索領域に 入る。 t->mg m->eg t->eg

S(Bs->J/yf) Bs mxing amplitude の新しい 位相とBd のCPVのシグナルが 相関する。 LHCb Bs mxing amplitude の新しい 位相とBd のCPVのシグナルが 相関する。 LHCb 実験で決められる。

いろいろな超対称模型でのフレーバーシグナルのパターン. T.Goto, Y.O., T.Shindou and M.Tanaka, 2007 Promising signals Possible deviations for some points 今の例 超対称模型でもフレーバーシグナルの現れ方はいろいろなパターンがありうる。

Bからタウへの崩壊 (B->tn, B->Dtn, B->D*tn) 最近のBファクトリーのホットトピックス。 終状態にニュートリノ2つ含むためハドロンコライダー  で測定するのは難しい。e+e- B ファクトリーにユニーク。 荷電ヒッグスの相互作用を探ることができる。  Bの物理からヒッグスセクターへの手がかりが得られる。 

Tauonic B decay 超対称模型や2ヒッグスダブレット模型に存在する荷電ヒッグス粒子 の新しい相互作用を探ることができる。 b u W B(B->tn) Belle+BABAR H- b u t n Charged Higgs exchange contribution depends on

B->tn と B->Dtn 過程の相関 MSSM with minimal flavor violation (MFV) B(B->tn) Belle+BABAR B(B->Dtn)/B(B->Dmn) 両方決まると2重の不定性が解ける。. H.Itoh, S.Komine, Y.O. 2005

LHCにおける荷電ヒッグス探索との比較 3つの過程を全部測れれば荷電ヒッグス相互作用のユ二バーサリティーのテストが出来る。 K.A.Assamagan, Y.Coadou, A.Deandrea 2002 B->Dtn 50ab-1 3つの過程を全部測れれば荷電ヒッグス相互作用のユ二バーサリティーのテストが出来る。 B->tn: H-b-u coupling B->Dtn : H-b-c coupling gb->tH: H-b-t coupling

余次元模型とBの物理 余次元模型は超対称性によらずに階層性の問題を解決するとして提唱された。 いろいろなタイプの模型がある。 余次元が平坦か曲がっているか。   どの粒子が余次元に伝播するか。 フェルミオンの質量の階層性を幾何学的に説明しようとするとKKモードの結合にフレーバーの変化が現れる。

KK graviton の交換 b->sll forward-backward asymmetry Kaluza-Klein graviton の交換でフレーバー チェンジグニュートラルカレントが生じる。 1.5TeV b->sll 過程の角分布に影響 を与える。 Spin 2の性質も 確かめられる。 M=1TeV (Flat large extra dim case) T.Rizzo

ワープした余次元模型におけるKK gluon, KK Z-boson の交換 ワープした余次元の模型ではフェルミオンを5次元空間のどこに局在させるかによって、質量の違いを出すことが出来る。 Kaluza-Klein gluon やKaluza-Klein Z-boson tree-revel フレーバー チェンジグニュートラルカレントが生じる。 S(fKs) vs KK gluon mass 1st KK gluon mass G.Burdman

いろいろな模型どのような過程に標準模型からのずれが期待できるか SUSY Large Extra Dimension model 2003 SLAC WS Proceedings

まとめ これからのBファクトリーが目指すものは、TeV領域の新しい素粒子像をフレーバー物理の側面から解明すること。 LHCで新しい物理の方向が決まった場合には、Bファクトリーではいろいろな測定量を組み合わせることで正しい模型の選択に寄与することができる。 エネルギーフロンティアとフレーバー物理とをあわせることで新しい素粒子像の全貌がわかり、統一理論や宇宙論へインパクトが決まり、フェルミオンの質量の起源の解明への手掛かりが得られる。