平成26年4月22日(火) 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之 形式言語とオートマトン2014 -No.2- 平成26年4月22日(火) 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
今日の学習目標 有限オートマトンFAを知る。 FAのイメージをつかみ、定義と動作を知る。 FAに慣れ親しむ。 FAの動作を理解する。
今日のクイズ 次の内、オートマトンではないものはどれか? 自動販売機 からくり人形 自転車 弓曳童子 (http://digimoba.com/products/yumihiki/yumihiki.html)
第1部
今日は有限オートマトンの話 automaton (複数形は,automata) 敢えて訳せば「自動機械」でしたね。 内容は教科書の第2章です。 「計算の原理」を理解するための基礎ですので、じっくりと学びましょう。 もっと詳しく学びたい人へ [1] 言語理論とオートマトン,ホップクロフト・ウルマン,サイエンス社 [2] 形式言語の理論,西野・石坂,丸善 など
オートマトンとは オートマトン = 自動機械 (automaton, pl. automata) もっと具体的には… いったいどんなものなのかなぁ
まずは有限オートマトンから Finite Automaton(FA) 何がfinite(有限)か? もっと詳しく見ていきましょう! => 内部状態数が有限 もっと詳しく見ていきましょう!
有限オートマトンのイメージ FAの概観 a1 a2 ai-1 ai an ・・・ ・・・ ・・・ qk ハードウェア構成
有限オートマトンのイメージ FAの概観 入力記号 セル an ai a1 a2 ai-1 ・・・ 入力テープ qk 内部状態 ヘッド
有限オートマトンのイメージ qk FAの概観 a1 a2 ai-1 ai an セル 入力記号 入力テープ ヘッド 内部状態 ・・・ ・・・
このようなハードウェア構成の自動機械が、入力記号を読みながら順次内部状態を変化させていく、といったもの。 言葉で表現すると次のようになる。
有限オートマトンの定義 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( qi , a ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K ) なるほど そうですか でも、よくわからないなぁ
有限オートマトンの定義 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( qi , a ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K ) なるほど そうですか でも、よくわからないなぁ
それでは、具体例をみてみましょう。
有限オートマトンの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( qi , a ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
有限オートマトンの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { r, s, t } 状態の集合 Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( a, qi ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
有限オートマトンの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { r, s, t } 状態の集合 Σ : { a, b }入力アルファベット δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( a, qi ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
有限オートマトンの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { r, s, t } 状態の集合 Σ : { a, b } 入力アルファベット δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( qi , a) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
δ : 状態遷移関数 δ(r, a)=s, δ(r, b)=r, δ(s, a)=t, δ(s, b)=r, δ : 状態遷移関数 δ(r, a)=s, δ(r, b)=r, δ(s, a)=t, δ(s, b)=r, δ(t, a)=t, δ(t, b)=r 状態 入力 次の状態 r a s b t
δ : 状態遷移関数 δ(r, a)=s, δ(r, b)=r, δ(s, a)=t, δ(s, b)=r, δ : 状態遷移関数 外部入力 δ(r, a)=s, δ(r, b)=r, δ(s, a)=t, δ(s, b)=r, δ(t, a)=t, δ(t, b)=r 状態 入力 次の状態 r a s b t 内部入力
有限オートマトンの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { r, s, t } 状態の集合 Σ : { a, b }入力アルファベット δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( a, qi ) → qj ∈ K q0 : r 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
有限オートマトンの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { r, s, t } 状態の集合 Σ : { a, b }入力アルファベット δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( a, qi ) → qj ∈ K q0 : r 初期状態 F : { t } 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
つまり
有限オートマトンの例 K = { r, s, t} , Σ= { a, b }, q0 = r, F ={ t }, δ : 状態 入力 δ : 状態 入力 次の状態 r a s b t
このFAを動作させてみよう! 入力文字列 abaa bababa aabbaabb (自分で好きな文字列を入力して見よう)
以上のFAは決定性FAともいう 決定性有限オートマトン (Deterministic FA; DFA) ??? この後で、 非決定性オートマトン(Non-deterministic finite automaton; NFA) が出てきます。
分かりましたか?
分かりましたか? 「有限オートマトン」というものがあるらしい。 FAと書いたりするようだ。 FAは入力テープとヘッドから構成されている。 入力テープはセルに分かれていて、入力記号が並んでいる。 ヘッドには内部状態があり、状態には、初期状態と最終状態がある。 初期状態は1つだが、最終状態は複数個あってもいいようだ。 そして、...
FAの視覚的表記法 言葉よりも図の方が分かりやすいこともある。 (情報を視覚化してみよう!) 便利なので覚えましょう。簡単です! よかったぁ
有限オートマトンの定義 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋( qi , a ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K ) 理論的形式的 定義だとこうなる
これを視覚的に表記すると…
初めに内部状態ありき s r t
δ:状態遷移関数をみながら… δ(r, a)=s, δ(r, b)=r, δ(s, a)=t, δ(s, b)=r, δ(t, a)=t, δ(t, b)=r 状態 入力 次の状態 r a s b t
遷移の条件と行き先を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a r t
遷移の条件と行き先を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a r t b
遷移の条件と行き先を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a a r t b
遷移の条件と行き先を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a a b r t b
遷移の条件と行き先を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a a b r t a b
遷移の条件と行き先を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a a b r b t a b
初期状態と最終状態を記入 状態 入力 次の状態 r a s b t s a a b r b t a b
もう一度動作させてみよう 入力文字列 abaa bababa aabbaabb bbaabbaa
練習問題
自習問題1 本パワーポイントの21ページのオートマトンに対して、入力文字列 abbaa を与えた場合の一連の動作を、教科書34ページ下に書いてある記号 |- を用いて記述せよ。
確認問題2 M = ( K, Σ, δ, q0, F ) の各記号は何か。 K:________ Σ:________ δ:________
練習問題3 M1 = ( K, Σ, δ, q0, F ) を状態遷移図表示せよ。 ただし、 K = { q0, q1, q2, q3 } Σ = { 0, 1 } δ: δ(q0,0)=q2, δ(q0,1)=q1, δ(q1,0)=q3, δ(q1,1)=q0, δ(q2,0)=q0, δ(q2,1)=q3, δ(q3,0)=q1, δ(q3,1)=q2 q0 F = { q0 }
発展問題4 問題3で定義されるオートマトンM1が受理する文字列および受理しない(拒否する)文字列をそれぞれ5つずつ例示しなさい。 (注)受理する:accept 拒絶する:reject これらは専門用語です。
以上のFAを決定性FAという 決定性有限オートマトン (Deterministic FA; DFA) 次に、非決定性有限オートマトン (Non-deterministic Finite Automaton; NFA)
第2部
有限オートマトンFAとの違い分かりますか? 非決定性有限オートマトンの定義 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 K×Σ∋( qi, a ) → (qk, ql,…,qm)∈ 2K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K ) 有限オートマトンFAとの違い分かりますか?
非決定性有限オートマトンの定義 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 K×Σ∋( qi, a ) → (qk, ql,…,qm)∈ 2K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
例(教科書p.40 例2.4) M22=< Q, Σ, δ, q0, F> Q = { r, s, t } Σ = { a, b } δ:Q×Σ → 2Q δ(r,a) = { r, s }, δ(r, b) = { r }, δ(s, a) = { t }, δ(s, b)=φ, δ(t, a) = φ, δ( t, b) =φ Q0 = r F = { t }
ε非決定性有限オートマトン 空動作を許容する非決定性有限オートマトン (non-deterministic FA with ε; ε-NFA)
ε非決定性有限オートマトンの定義 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 K×(Σ∪{ε})∋ → 2K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K )
ε-NFAの例 FA = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { p, q, r} 状態の集合 Σ : { 0, 1 }入力アルファベット δ : 状態遷移関数 δ: K×(Σ∪{ε})∋ → 2K q0 : p 初期状態 F : { q, r } 最終状態の集合
δ:状態遷移関数 δ(p,ε)={ q, r } δ(q,0)={ q } δ(r,1)={ r },
状態遷移図にすると… (自分で書いてみよう) 検討:このオートマトンはどんな文字列を 受理するのだろうか?
練習問題 (今回はなし。次回授業でやりましょう。)
注意事項 DFA -> NFA -> ε-NFA 「条件を順次緩めた」 ということは、より多くの文字列を受理できる? つまり、より大きな言語・より多様な言語を受理することができる?
No! 本当なの?! あら、残念…
DFA, NFA, ε-NFA は同等の能力 (言語の生成・受理の能力として) ε-NFAをDFAに、それも状態数が最小のFAに変換する方法について学ぼう! (教科書のp.51あたりに書いてあります。) 次回は、復習をしながら正規表現との関係を話します。
宿題(提出不要) 教科書の例題等を確認しておくこと。 例2.1 問2.1 問2.2 問2.3 例2.4 例2.5 問2.5
今日のクイズ 次の内オートマトンではないものはどれか? 有限オートマトンに関する記述として正しいのはどれか? 自動販売機機械 からくり人形 自転車 有限オートマトンに関する記述として正しいのはどれか? 状態が無限個ある。 入力記号が無限個ある。 初期状態がある。
宿題 q2 q1 q3 提出日時:平成26年4月29日(火)15:00 ・学籍番号 __________ ・氏名 ______________ 課題:図の有限オートマトンについて、問いに答えよ。 初期状態はどれか。 q1 q2 q3 最終状態はどれか。 q1 q2 q3 決定性、非決定性どちらか。 決定性 非決定性 次の入力文字列の内、 どれが受理されるか。 0010100 0101011 01 1111111111 0100 011010100 01110111 q1 q2 q3 1 0, 1 図.有限オートマトン
付録 オートマトンの動作イメージ 動作の初めの部分のみ 興味のある人は続きを自分で作ってみてください。
有限オートマトンの動作 FAの概観 a1 a2 ai-1 ai an ・・・ ・・・ ・・・ qk
有限オートマトンの動作 FAの概観 a b a a q X q’ r a s b t r s