γ線衛星GLASTの概要とサイエンス October 08, 2005 日本天文学会秋の年会 水野 恒史ほか 広島大学理学部

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γ線衛星GLASTの概要とサイエンス October 08, 2005 日本天文学会秋の年会 水野 恒史ほか 広島大学理学部 mizuno@hirax6.hepl.hiroshima-u.ac.jp        目次 GLAST衛星の概要 これまでの日本の貢献 GLASTで期待される成果(一般) 超新星残骸と粒子加速 銀河面拡散ガンマ線放射 まとめ

GLAST衛星の概要 GLAST:2007年打ち上げ予定の、米国、日本、欧州の国際協力からなる、宇宙ガンマ線衛星 日本の誇るSiストリップ検出器の採用により 広視野 (~2sr、全天の20%) 高位置分解能 (10’ in E>10 GeV) 大有効面積 (~10000 cm-2) を実現。EGRETを数10倍上回る感度を持つ。 角度分解能 EGRET 有効面積 チェレンコフ望遠鏡 0.1 1 10 100 GeV

これまでの日本の貢献 ~2.5 nA cm-2 (low noize) さらに、 日本はこれまで、Siストリップ検出器の製造、気球実験などを通じ、ソフト、ハード両面から貢献を行ってきた。 気球実験のシミュレーション、バックグラウンドモデル、データ解析 (Mizuno et al. 2004) GLASTの核となるSiストリップ検出器の製造、性能評価(Ohsugi et al. 2005) バックグラウンド事象の、実験データとシミュレーションの比較 フライト品の暗電流分布 count/s muon gamma ~2.5 nA cm-2 (low noize) upward downward e-/e+ secondary proton primary proton alpha Siレイヤーの番号 高品質かつ安定した性能 0.01%以下のdead strip率(出荷時) 高カウントレート下での動作実証 バックグラウンドモデルの構築 フライトタワーの動作試験、キャリブレーションパラメタの測定(2005年物理学会秋の年会 高橋ほか、本年会 河本他) さらに、

GLASTで期待される成果(一般) 0.1 1GeV 10 100 170あまりの、EGRET未同定天体の同定(特に銀河面天体)。 EGRETによる7つのガンマ線パルサー->GLASTにより、数10のサンプル パルサーの進化の解明 スペクトルから、放射機構の特定 AGN(Blazar):GeVガンマ線天体の最大勢力 多波長観測、フレアの時間発展による、ジェットの放射メカニズムの特定 ガンマ線と赤外光との相互作用(対生成)->初期宇宙の星生成の研究 銀河、銀河団からのガンマ線放射 銀河毎の宇宙線量の測定 銀河団の合体による衝撃波加速:最高エネルギーの宇宙線の源? HESS、Suzakuとの連携 HESS未同定天体(新種の天体?)、SNRでの粒子加速、銀河面拡散放射 硬X-GeVγ-TeVγでの観測で正体に迫る 電子成分と陽子成分(GeVγ)の分離測定 可視光との連携(広島大学1.5m望遠鏡) GRB、トランジェント天体 偏光(可視)とγ線スペクトルからジェットの構造に迫る Vela pulsarからのガンマ線スペクトル Outer gap model Polar cap model E2*Flux 0.1 1GeV 10 100

超新星残骸と粒子加速 超新星残骸:knee(1015 eV)までの宇宙線の加速限 硬X、GeVガンマ、TeVガンマによる観測:シンクロトロン、逆コンプトン散乱(電子成分)、pi0崩壊(陽子成分) HESSによるRXJ1713-3946のイメージ+X線コントア(S. Funk 2005) 多波長スペクトル (Reimer & Pohl 2002) X線 GeVγ TeVγ EGRET/GLASTのPSF(@10GeV) EGRET CANGAROO HESS GLAST 5sigma感度 (1year、銀河中心方向) 分子雲(Fukui et al. 2003, Moriguchi et al. 2005) Pi0ガンマ? 空間分解 :粒子加速の現場 GeV領域のスペクトル:電子成分か陽子成分か? PSF 多波長観測 GLASTでは

銀河面拡散ガンマ線放射(1) ガンマ線源:点源+銀河面拡散放射 拡散ガンマ線放射の放射機構: 宇宙線と物質分布を探るプローブ EGRETによる全天マップ(E>100MeV) ガンマ線源:点源+銀河面拡散放射 拡散ガンマ線放射の放射機構: 宇宙電子線と物質(制動放射)、CMB(逆コンプトン)との相互作用 宇宙陽子線と物質との相互作用(pi0ガンマ) 宇宙線と物質分布を探るプローブ SAS-IIおよびCOS-Bによる銀河中心からの拡散ガンマ線放射 EGRETによる銀河中心からの拡散ガンマ線放射(Hunter et al. 1997) GeV excess 硬い陽子スペクトル? 電子成分(IC)の寄与? 制動放射(EB) E2*Flux Pi0崩壊(NN) E2*Flux IC EB NN 逆コンプトン(IC) Extragalactic diffuse 0.1 1 10 (GeV) 0.1 1 10 (GeV)

銀河面拡散ガンマ線放射(2) Deconvolution 0.1 1 10GeV 従来より硬い(べき~0.05)な陽子成分を予想 (1)最新の実験、理論に基づいた陽子-陽子反応を用いたガンマ線スペクトルの計算 (2)EGRETデータのDeconvolutionによる、仮定によらない拡散ガンマ線分布の復元により、GeV excessおよび拡散ガンマ線の解析を行っている。 EGRET銀河面拡散ガンマ線の銀緯分布(銀河中心方向) 銀河中心方向の拡散ガンマ線スペクトルのモデル計算(Preliminary) Kamae et al. (2005)の反応モデル (diffractive反応およびスケーリング則の破れ)に基づくスペクトル 実データ 30-50MeV 150-300MeV E2*Flux 従来の物理モデルに基づくスペクトル 銀緯 -20 0 20度 Deconvolution 復元像 0.1 1 10GeV 従来より硬い(べき~0.05)な陽子成分を予想 GLASTでは、、、 点源の寄与を取り除いた、精度の高いスペクトル 銀河の場所による違い(宇宙線分布の研究) RXTE, Suzakuによる電子成分の分布との相関 PSF 有効面積 多波長観測 放射が銀河面に集中していることを確立。スケールハイト~4度 (Kamae & Elweによる)

Summary GLASTは2007年打ち上げ予定の宇宙ガンマ線衛星で、広視野・高空間分解能・大有効面積により、EGRETの数10倍の感度を持つ。 日本グループは、GLASTの核となるSiストリップ検出器の製造、評価試験や気球実験を通し、ソフト、ハード両面から貢献してきた。 GLASTにより、様々なサイエンスが可能となる。 EGRET未同定天体の同定 パルサーの放射機構、AGNにおけるジェットのメカニズム、初期宇宙の星生成、銀河・銀河団からの宇宙線、などなど。 HESS/Suzakuとの連携、可視光観測との連携 HESS未同定天体の正体 SNRでの粒子加速(陽子か電子か?) 銀河面拡散放射(宇宙電子、陽子線の分布と相関) GRB/トランジェント天体(ジェットの構造)

GLAST Large Area Telescope GLAST (Gamma-ray Large Area Space Telescope)=LAT+GBM LAT: Large Area Telescope 2007年打ち上げ予定 4X4=16 towers 3000kg, 650 W, 1.8x1.8x1m3 (30MeV-300GeV) TKR(U.S.A., Japan, Italy): Si-Strip Tracker with Lead converter 18 X-Y tracking planes, 228um pitch, 8x105 channels γ線のidentification、到来方向の測定 Siストリップを用いることで、高分解能を達成 e+ e–  ACD(U.S.A.): Segmented 89 plastic scintillator tiles 荷電粒子backgroundの除去 セグメント化で高エネルギーでのself-vetoを減らす CAL(U.S.A., France, Sweden): Hodoscopic array of 1536 CsI(Tl) scintillators (8 layers in each tower) Showerの発達を追い、エネルギーを測定

Sensitivity of GLAST LAT(1) Integral Sensitivity 10-8 E^-2(integralならE^-1)なるスペクトルを持つ点源に対する5σ検出感度 Crab Nebula 1-year observation (galactic center region) 10-9 1-year observation (high galactic latitude) ~10 photons will be detected in one year Flux above E (c/cm^2/sr) 10-10 Morselli et al. 5-year observation (high galactic latitude) http://www-glast.slac.stanford.edu/software/IS/glast_lat_performance.htm 中の図を元に作成 10-11 1GeV 10 0.01 0.1 100

More about GeV excess GeV excess is observed from the outer Galaxy as well as the inner Galaxy regardless of galactic latitude. 6deg<|b|<10deg 0.1 1 10 (GeV) Possible Solutions: harder proton spectrum pp-interaction model contribution of electron radiation etc. 2deg<|b|<6deg We need tools to study GeV excess/diffuse emission galprop + up-to-date pp-interaction model -2deg<b<2deg toward Gal. center anticenter

PP-interaction model pp-interaction cross section Based on up-to-date knowledge, pp-interaction model update was proposed by Kamae et al. (2005 ApJ). This model was intended to be used to calculate gamma-ray emission (galactic diffuse, AGN, SNR, GRB, etc.) without uncertainty. Hereafter we call this “TK model” Thee features; rising cross section, diffractive dissociation and scaling violation pp-interaction cross section Spectrum of generated gamma-rays Rising cross section in high energy Add diffractive dissociation process Scaling violation

Parameterization of pp-interaction Under development by N. Karlsson and T. Kamae (see Niklas’s lunch talk) to replace time-consuming Monte Carlo simulations. One update; add the Delta resonance (1232) and the other resonance (1600) to reproduce pp-interaction cross section and inclusive pi0 cross section in lower energies. Immediate application: incorporate into galprop! Inclusive Pi0 cross section Gamma Spectrum for diffractive dissociation Gamma Spectrum for non-diffractive dissoc. 512TeV 512TeV 1TeV 1TeV