宇宙γ線衛星GLAST搭載LAT検出器の開発試験

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宇宙γ線衛星GLAST搭載LAT検出器の開発試験 水野恒史、大杉節、深沢泰司、吉田勝一、川端弘治、河本卓也(広島大)、釜江常好、田島宏康(SLAC)、 河合誠之、片岡淳(東工大)、高橋忠幸(JAXA) 要旨:  GLAST (Gamma-ray Large Area Space Telescope) は2007年度打ち上げ予定の宇宙γ線衛星で、米国、日本、イタリア、フランス、スゥエーデンなどの国際協力からなるミッションである。主検出部であるLAT (Large Area Telescope) は、飛跡検出部にシリコンマイクロストリップ検出器を、カロリメーター部にCsIシンチレーターを用いたタワーと呼ばれるモジュールを16個並べ、周りをプラスチックシンチレーターで囲んで荷電粒子事象を反同時係数で落とす。LATは30MeV-300GeVもの広いエネルギー帯に感度を持ち、CGRO衛星搭載EGRETの30倍もの感度でγ線宇宙の探査を行うことで、高エネルギー宇宙物理学の分野で新境地を開こうとしている。  このLATの開発において、これまで日本グループはシリコン検出器の開発およびその性能試験、2001年の気球実験のシミュレーションやデータ解析、宇宙線バックグラウンドモデルの開発、フライトモデル試験プログラムの開発などで貢献を行ってきた。またフライトモデルの組み立てが本年から始まっており、その試験にも参加している。本講演では、ハードウェア開発を中心に、GLAST衛星の概要とこれまでの日本の貢献の紹介を行う。 GLASTで期待される成果: GLAST衛星の概要: 角度分解能 有効面積 有効面積の入射角依存性 エネルギー分解能 (b) (a) 5sigma検出限界 TKR(U.S.A., Japan, Italy): Si-Strip検出器とWのコンバーター 16Tower x 36層 x 1536 = 9x105channels γ線のidentification、到来方向の測定 Siストリップを用いることで、高分解能を達成 (a) GLAST衛星は2007年打ち上げ予定の宇宙γ線検出器である (Fig. a)。主検出器であるLAT (Large Area Telescope) の飛跡検出部には、日本の誇るSi検出器が用いられ (Fig.b)、出荷時で0.01%以下という極めて低いdead strip率を達成した。また暗電流、全空乏層化電圧なども良い値でそろっており、安定した製造がなされている(Fig. c, d)。 ACD(U.S.A.): セグメント化された89枚のプラスチックシンチレーター 荷電粒子backgroundの除去 セグメント化で高エネルギーでのself-vetoを減らす GLAST =LAT+GBM LAT: Large Area Telescope 2007年打ち上げ予定 4X4=16 towers 3000kg, 650 W, 1.8x1.8x1m3 (30MeV-300GeV) CAL(U.S.A., France, Sweden): Hodoscopic arrayによる全1536本の CsI(Tl)シンチレーター。(各Tower 8層) Showerの発達を追い、エネルギーを測定 PDによる両側読み出しで位置の測定 EGRET (3rd Catalogue) : ~271 sources pulsars LMC AGN - blazars unidentified (c) EGRET/GLASTの95% エラーサークルの比較 Cygnus Regionにおける巨大分子雲からのγ線放射 (f) (e) 広島大学と浜松ホトニクスで共同開発したSi-Strip検出器 暗電流の度数分布 全空乏化電圧の度数分布 (c) (d) (b) ~65 V = 9 kWcm (high resistivity) ~2.5 nA cm-2 (low noize) GLAST: ~10000 sources (2 year) (d) 様々な工夫により、GLASTは1990年代に大活躍したEGRETをはるかに上回る性能をもち (Fig.a)、その感度は数10倍に達すると予想される (Fig. b)。これにより、検出されるγ線天体の数は飛躍的に増え (Fig. c,d)、γ線天文学は新時代を迎える。広いエネルギー帯と高い位置分解能を生かし、銀河系内の宇宙線や物質の分布を調べたり(Fig. e)、広い視野を生かしたトランジェント天体のモニタが行われる。X線、電波、可視光との比較で、天体の同定も可能となる(Fig.f)。 15cm これまでの開発試験: 開発スケジュール Beat Test Engineering Model: single tower composed of TKR/CAL/ACD PSF vs. Energy (W. Atwood et al., 2000, NIMA) # of hit strips per layer (Hit multiplicity) =shower development in TKR (do Couto e Silva et al., 2001, NIMA474) 0deg. Incident middle layer lower layer 30deg. Incident 1997/1999 ビーム試験 1997年、1999年にスタンフォード線形加速器センターでビーム試験を行い、角度分解能、エネルギー分解能など基本性能の確認や、シャワーの発達のシミュレーションとの詳細な比較などを行った。日本人では、平山(UCSC)、半田(SLAC)などが参加した。(所属は当時) Beam Test: 1997 and 1999 LATの基本性能の確認。モンテカルロシミュレーションのvalidation Balloon Flight: 2001/8 高い放射線環境下での動作確認。宇宙線事象(バックグラウンド)の取得 Engineering Model: 2003/10~ 宇宙線、バンデグラフを用いた、小型タワーの試験。フライトモデルに向け、試験方法、解析方法の確立 Flight Model Integration and Test: 2005/1~ Environmental testing: 2006/1~ Delivery to Observatory Integration: 2006/5 Launch: 2007 Calendar Years Build & Test Flight Units Observatory I&T Final Design Engr’g Models LAT I&T Prelim. & Sys. Design Ops. 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2011 2000 Launch Begin LAT I&T Critical Design Review Preliminary Design TKR & CAL FM A/B Scheduled LAT Delivery 1997/1999 Beam test EM test hardware tests reviews Balloon Flight Environmental testing 2001年気球実験 赤道 磁極 AMSによる陽子スペクトルのデータとモデル関数 1kHz 1 10 100 大気深さとトリガレートの関係 g cm-2 3.8g cm-2 (38km) 500Hz in level flight 1.2kHz maximum (~500Hz is predicted for each tower of LAT) Balloon Flight Engineering Model (BFEM) (b) (c) (a) EM: mini-tower(3 x-y layers) 14.6MeV 17.6MeV Energy measured by CAL TOT (time over threshold): 低消費電力でエネルギー情報を得て粒子を弁別し、対生成を起こした場所を特定 gamma(e-+e+): 2MIP cocmic Ray(muon): 1MIP (Courtesy of E. do Couto e Silva) Engineering Modelの試験 フライトモデルに向け、小型タワーを用いて、試験方法、解析方法を確立した。 primary proton secondary proton upward downward e-/e+ gamma muon 荷電粒子事象による、各Siレイヤーでのカウントレート(データ vs. シミュレーション) alpha 実データ ビーム試験と対になる実験として、高い放射線環境下での動作確認のため2001年に気球実験を行った。この実験のため、日本からは広島大学、宇宙研が中心となり、検出器の一部および検出器シミュレーターの開発(Fig. a)、宇宙線フラックスモデルの開発(Fig. b)を行うとともに、実験とデータ解析に参加した。1kHzを超える高いカウントレート下で装置、DAQが動作することを確認するとともに(Fig. c)、バックグラウンドフラックスモデルとシミュレーターを用いて、得られたデータを10%内で再現することに成功した。(Fig.d: T. Mizuno et al. 2004, ApJ 614) (d) フライトモデルの試験: γ線事象の候補 MIPによるTOTの分布 最初のフライトTracker (Tracker A) 本年1月より、フライトモデルの組み上げおよび試験がSLACにおいて始まっており(Fig. a)、宇宙線事象(主にmuon)やcharge injectionを用いて、装置の動作確認、スレッショルドやゲインの調整を行っている (Fig. b)。TrackerのHit効率(正常なstripの割合)は、初号機であるTracker Aで98.6%、Tracker Bにおいては99.6%という高い値を達成している (Fig. c)。またCalorimeterは、Trackerと組み合わせることで位置分解能の測定などを行っている(Fig. d)。この他、宇宙線との反応でできたγ線と思われる事象が多数捕えられている。(Fig.e) (e) (a) TKR Takuya Kawamoto (広島大) Hiro Tajima (SLAC) (b) CALの各層での位置分解能 TOT ( fC単位で電荷量に変換) (d) Trackerの各planeでのHit Efficiency (Calorimeter team) (c) Tracker A: 平均98.62% Tracker B: 平均99.64% CAL Johann Cohen-Tanugi(SLAC) Micheal Kuss (Pisa)