ディラック電子系分子性導体への静電キャリア注入を目的とした電界効果トランジスタの作製および物性評価

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2005/5/25,6/1 メゾスコピック系の物理 (物理総合) 大槻東巳 (協力 : 吉田順司, 2003 年 3 月上智大学理学博士 )  目次 1 )メゾスコピック系とは 2 )舞台となる 2 次元電子系 3 )バリスティック系の物理 コンダクタンスの量子化 クーロン・ブロッケード 4 )拡散系の物理.
Advertisements

Solid-in-oil(S/O®)化技術を利用した医薬品・化粧品に関する研究
導波路放出光解析による量子細線の光吸収測定
分子・物質合成プラットフォームにおける利用成果
セラミックス 第4回目 5月 13日(水)  担当教員:永山 勝久.
実習B. ガンマ線を測定してみよう 原子核・ハドロン研究室 永江 知文 新山 雅之 足立 智.
単一分子接合の電子輸送特性の実験的検証 東京工業大学 理工学研究科  化学専攻 木口学.
内部導体装置Mini-RT 真空容器内に超伝導コイルを有する。 ポロイダル方向の磁場でプラズマ閉じ込め。 ECHでプラズマを加熱。
CRL 高周波磁界検出用MOインディケーターの合成と評価 1. Introduction 3. Results and Discussion
第1回応用物理学科セミナー 日時: 5月19日(月) 15:00ー 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 Speaker:鹿野豊氏
有機りん系化合物とカーボンナノチューブとの特異的相互作用に関する研究(課題番号:S-13-NR-0025)
第23回応用物理学科セミナー 日時: 6月23日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
東北大学工学部・工学研究科 知能デバイス材料学専攻 量子材料学分野
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流 -アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
次世代半導体材料による 省エネルギーエレクトロニクス
TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一.
分子・物質合成プラットフォームにおける利用成果
平成14~18年度科学研究費(学術創成研究費) 高度界面制御有機・無機複合構造による 量子物性の発現と応用
半導体 N型半導体 P型半導体.
セラミックス 第4回目 5月 7日(水)  担当教員:永山 勝久.
電子回路Ⅰ 第3回(2008/10/20) バイポーラトランジスタの動作原理.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
担当: 松田 祐司 教授, 寺嶋 孝仁 教授, 笠原 裕一 准教授, 笠原 成 助教
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
支援課題名 フッ素化合物の合成(課題番号:S-13-NI-21)
電界効果トランジスタの動作原理 トランジスタを用いた回路のバイアス
電界効果トランジスタの動作原理 トランジスタを用いた回路のバイアス
佐藤勝昭研究室 OB会2003年11月22日  磁性MOD班.
リチウムイオン内包フラーレン修飾体の13C NMR測定
分子・物質合成プラットフォームにおける利用成果
Fig. Crystal structure of Nd2Fe14B
電力 P ( Power ) 単位 ワット W = J / sec
量子凝縮物性 課題研究 Q3 量子力学的多体効果により実現される新しい凝縮状態 非従来型超伝導、量子スピン液体、etc.
半導体デバイスの基本構成要素 pn junction diode
担当: 松田祐司 教授, 笠原裕一 准教授, 笠原成 助教
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
Cr-アセチリド-テトラチアフルバレン型錯体による
Chemistry and Biotechnology
原子層の電子物性、量子輸送および光物性の理論
自己集積的手法による 原子膜複合体の形成と評価 法政大学 生命科学部 マイクロ・ナノテクノロジー研究センター 高井 和之
半導体の歴史的経緯 1833年 ファラデー AgSの負の抵抗温度係数の発見
n型熱電変換材料Nd2-xCexCuO4の結晶構造と熱電特性
生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
Mini-RT装置における 強磁場側からの異常波入射による 電子バーンシュタイン波の励起実験
ATP合成酵素の分子進化と活性制御 久堀 徹 博士 (東京工業大学資源化学研究所附属資源循環研究施設)
第8回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム 「機能性材料の最前線」
GW space-timeコードの大規模な有機-金属界面への適用に向けた高効率化
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
担当: 松田 祐司 教授, 寺嶋 孝仁 教授, 笠原 裕一 准教授, 笠原 成 助教
大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第5回 -磁気光学効果の電子論(1):古典電子論-
原子膜積層化により形成した超伝導システム の物性探索
B4 「高温超伝導」 興味深い「協力的」現象 舞台としての物質の重要性 固体中の現象: 電子や原子が互いに影響を 及ぼしあうことで生じる
キャリヤ密度の温度依存性 低温領域のキャリヤ密度                   ドナーからの電子供給→ドナーのイオン化電圧がわかる                              アクセプタへの電子供給→アクセプタのイオン化電圧がわかる             常温付近                            ドナー(アクセプタ)密度で飽和→ドナー(アクセプタ)密度がわかる.
B4報告会 拡散対を用いた銅系金属間化合物の生成挙動
若手研究者・学生向けに,最新技術をわかりやすく紹介する講演会 確率的情報処理としての移動体通信技術
アモルファスSiO2による結晶構造制御と磁気特性(S-13-NI-26)
La及びY添加した層状熱電変換酸化物Ca349の結晶構造と熱電特性 H.Nakatsugawa and G.Kametani
水素の室温大量貯蔵・輸送を実現する多孔性材料の分子ダイナミクスに基づく解明と先導的デザイン
プラズモニック構造付シリコン光検出器のHPC援用設計に関する研究
高プロトン伝導性ポリイミド薄膜の配向構造解析(S-13-NU-0012)
3.ワイドギャップ半導体の オーム性電極材料開発
強結合プラズマ 四方山話 − 水素とクォーク、高密核融合、 クーロンクラスター、そして粘性 −
Pb添加された[Ca2CoO3]0.62CoO2の結晶構造と熱電特性
ガスセンサーの製作 [応用物理研究室] [藤井新太郎]
固体中の多体電子系に現れる量子凝縮現象と対称性 「複数の対称性の破れを伴う超伝導」
電子物性第1 第10回 ー格子振動と熱ー 電子物性第1スライド10-1 目次 2 はじめに 3 格子の変位 4 原子間の復元力 5 振動の波
セラミックス 第3回目 4月 30日(水)  担当教員:永山 勝久.
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
微細流路中に合成したナノワイヤ構造体を用いた DNA解析(S-13-NU-0041)
Presentation transcript:

ディラック電子系分子性導体への静電キャリア注入を目的とした電界効果トランジスタの作製および物性評価 分子・物質合成プラットフォーム (分子科学研究所) 【別紙1】 Molecular & Material Synthesis Platform/ Institute for Molecular Science 平成25年度トピックス 分子・物質合成プラットフォームにおける利用成果 ディラック電子系分子性導体への静電キャリア注入を目的とした電界効果トランジスタの作製および物性評価 (課題番号:S-13-MS-0005) a東邦大学,b理化学研究所, c分子科学研究所 田嶋尚也a,b,山内貴弘a,山口達也a,須田理行c,川椙義高b,山本浩史b,c,加藤礼三b,,西尾豊a,梶田晃示a 【研究目的】  高圧力下にある2次元層状構造の有機導体-(BEDT-TTF)2I3がゼロギャップ電子系である。世界で最初にバルク(多層構造)で実現した2次元ゼロギャップ電気伝導体である。最近、わずかに負に帯電したPEN(Polyethylene Naphthalate)基板に試料を固定しただけで、接触帯電法で正孔を注入することに成功したのである。本研究では、バルクな(多層状)ディラック電子系の物理を展開することを目的に、PEN基板デバイスを作製して明瞭な量子磁気抵抗振動と量子ホール効果観測を行った。 【成   果】  基板としてPENを用いたところ、基板と-(BEDT-TTF)2I3との仕事関数の違いによる電荷移動が起きることによって、自然に界面キャリアドープが起きることを明らかにし、明瞭な量子ホール効果とシュブニコフ・ドハース振動の観測に成功した。量子振動現象の指数解析から、 -(BEDT-TTF)2I3は傾いたディラックコーンを有するマスレスディラック電子系であることを直接実証した。さらに、このデバイスのエネルギーダイアグラムを明らかにし、多層系における量子ホール状態の特徴を見出した。今回の成果は、分子性ゼロギャップ伝導体を用いた電子デバイス開発に向けた大きな第一歩である。今後この成果を基にして、この系へのキャリア注入制御を確立することで新たな分子性電子デバイスの展開が期待される。 0.5 Kにおける電気抵抗Rxxとホール抵抗Rxyの磁場依存性。Rxxに見られる振動はシュブニコフ・ド・ハース振動である。 Rxxが極小になるところでRxyのプラトー(3.5 Tと5.5 T近傍)が見られるが、これが量子ホール効果の特徴である。 PENデバイスのキャリア濃度分布とエネルギーダイアグラムの略図(挿入図)。図1に示したBEDT-TTF分子層とI3-アニオン層のペアを1組の層として、キャリア濃度はPEN基板からの層数に対してプロットしてある。エネルギーダイアグラムは、キャリア濃度分布を基にそれぞれの層に関するエネルギースペクトル(ディラックコーン)が描かれてある。 有機導体a-(BEDT-TTF)2I3の結晶構造とプラスチックPENデバイス。負に帯電したPEN基板上に試料を固定することで、正孔を注入することに成功した。このキャリア注入方法を接触帯電法という。