直線炭素鎖アルコールHC4OH:星形成領域L1527と暗黒星雲TMC-1での探査

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教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
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直線炭素鎖アルコールHC4OH:星形成領域L1527と暗黒星雲TMC-1での探査 ○荒木光典1、高野秀路2、工藤沙紀1 、茅根彩華1 、梅木博也1 、山辺裕倫1 、越川直洋1 、 築山光一1、中根綾3、岡林利明3、國松亜利沙4、久世信彦4 1東京理科大学、2国立天文台野辺山、3静岡大学、4上智大学 要旨 観測 HC4OHの探査 日程 2009/04/11-17 L1527, TMC-1 2010/01/15-21 L1527 2011/03/04-05 L1527 望遠鏡 NRO 45m 積算時間 1~2 h (アンテナ温度:数mK) 検出器 T100V 80-90 GHz S40V 35-50 GHz H28/32 26-30 GHz HC4OHは、直線炭素鎖アルコールであり、これまで星間空間でも実験室でも知られてこなかった新しい分子類に属す分子種である。低質量星形成領域L1527と暗黒星雲TMC-1において、その柱密度の上限値が決定できた。また、HC5NとC4Hの柱密度と比較も行った。 はじめに 宇宙の化学組成・どんな分子があるか? □ 新しい星間分子:直線炭素鎖アルコールHC4OH検出 □ 分子雲の化学組成の究明 どこで探査したらよいか?  炭素鎖分子が豊富・酸素を含む分子が豊富な分子雲  → L1527でのHC4OH探査  → L1527の化学組成を探査(昨年報告) L1527で観測された分子 HC4OHの実験室マイクロ波分光 HC4OH 未検出 直線炭素鎖分子 + アルコール                 → 新しい分子類:直線炭素鎖アルコール 天文学でも化学でも、考えられてこなかった(HC2OH生成困難) 2007年~ 上智大学、シュタルク変調型マイクロ波分光器 HC4OH、DC4OH、 HC4OD Araki & Kuze, ApJ, 680, L93, 2008. 2010年~ 静岡大学、フーリエ変換型マイクロ波分光器 HC4OH, Kuze et al. to be submitted. L1527において HC5Nの分布からHC4OHの分布を仮定 L1527 野外製図2000 Galactic Longitude [degree] Galactic Latitude [degree] TMC-1 VLSR(kms-1) TA*(K) HC5N J = 16-15 42.6 GHz NRO 仮定: HC4CN (HC5N) の分布 = HC4OHの分布 積分強度 0.422 Kkms-1 GBT 100 m 17.5" Sakai et al. 2009 Light Extinction NRO 45 m 38.9" Tokyo Gakugei University, http://darkclouds.u-gakugei.ac.jp/ 0.585 Kkms-1 33" 観測天体座標 天体 R.A. (J2000) Decl. TMC-1 4h 41m 42.49s 25d 41' 27".0 L1527 4h 39m 53.89s 26d 03' 11".0 同じラインをビームサイズの異なる望遠鏡で観測したときの積分強度の違いから、分布サイズを推定した。 HC4OHの柱密度の上限値 Ka = 1 L1527 TMC-1 Column Density   HC4OH(S/N=3) < 2.0  1012 < 5.6  1012 cm-2 C4H 1.01  1014 2.9  1014 * cm-2 HC5N 6.8  1012 * 6.3  1013 ** cm-2 Excited Temperature HC4OH 12.3 fix(C4H2*) 3.8 fix(C4H2*) K C4H 14.3 6.7 * K HC5N 14.7* 6.5** K (Local Thermal Equilibrium) * Sakai et al., 2008&2009, ** Takano et al. 1990. HC4OHの予想相対強度 (Ka = 0) 6K TMC-1 10K L1527 ○○:観測したライン S40 H30 H22 シュタルク Intensity ma = 1.65 D 柱密度の比較 L1527 TMC-1 [HC4OH]/[HC5N] <0.3 <0.1 [HC5N]/[C4H] 1/15 1/5 [HC4OH]/[C4H] <1/52 <1/52 観測を行ったライン GHz HC4OH JKa,Kc = 50,5 – 40,4 21.3 JKa,Kc = 70,7 – 60,6 29.7 JKa,Kc = 90,9 – 80,8 38.2 JKa,Kc = 100,10 – 90,9 42.5 JKa,Kc = 110,11–100,10 46.7 C4H NJ = 44.5 – 33.5 38.049617 NJ = 43.5 – 32.5 38.088398 NJ = 99.5 – 88.5a 85.634004 NJ = 98.5 – 87.5a 85.672579 まとめ HC4OHの柱密度の上限値を決定 C4HとHC5Nの柱密度と比較検討 アルコールの多い分子雲での検出の可能性が残る (他の検出分子については昨年度の本ミーティングで紹介) HC5N J = 16 – 15 a 42.602153 a Sakai et al., 2009.