第 4 回.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
火星の気象と気候 2004 年 11 月 10 日 小高 正嗣北海道大学 地球惑星科学専攻. 講義の概要 太陽系の惑星概観 太陽系の惑星概観 地球型惑星と木星型惑星 地球型惑星と木星型惑星 地球と火星の比較 地球と火星の比較 火星の気象と気候 火星の気象と気候 探査衛星による最新の気象画像 探査衛星による最新の気象画像.
Advertisements

過去の気温変化. Newton ムック 2005 地球大変動 pp.114 Newton ムック 2005 地球大変動 pp.115.
気候 - 海・陸炭素循環結合モデルを用い た 地球温暖化実験の結果 吉川 知里. 気候 - 海・陸炭素循環 結合モデル.
宇宙の「気温」 1 億度から –270 度まで 平下 博之 ( 名古屋大学・理・物理 U 研 ).
オーロラの話. NZL でのオーロラ 北海道 ミネソタミネソタ 2015 年 10 月 7 日- 8 日.
地球環境史(地球科学系) 現代地球科学(物理系学科)
地球環境史(地球科学系) 現代地球科学(物理系学科)
第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)
三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
富永 貴良 松村 優佑 宮坂 勇樹 浜田 亮司 佐藤 ちはる 有田 俊介
高橋研究室 惑星大気 中層大気 化学モデリング 気象力学
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
資源の空間的不均一性がプランクトン群集の共存に与える影響: 格子モデルシミュレーションによる予測
クイズ早押し環境グランプリ 社団法人 未踏科学技術協会.
「地学b」 第4回 地球大気の構造と熱収支 ~地球の気候の概要~
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
国立環境研究所 温暖化リスク評価研究室長 江守 正多
第 2 回.
地球温暖化 のしくみ 木庭元晴さく.
大きな数と小さな数の 感覚的理解 北村 正直.
*大気の鉛直構造 *太陽放射の季節・緯度変化 *放射エネルギー収支・輸送 *地球の平均的大気循環
放射線(エックス線、γ線)とは? 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
温暖な地球と温室効果 生命を育む惑星になるために・・・.
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
香川晶子 (富士通FIP/情報通信研究機構)
地球惑星物性学1 ( ~) 参考文献: 大谷・掛川著 地球・生命 共立出版
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2013年4月 .
大気の構造とオゾン層             紫外線 酸素分子(O2)    →   オゾン(O3) オゾン層: 紫外線Bの 99%を吸収して熱に変える 20-40km 地表.
生命起源への化学進化.
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
Ver 地球温暖化と気候変動.
地球情報論Ⅰ 第2回:太陽系と惑星大気.
水の災害について学ぶ 国土交通省 北海道開発局 事業振興部 防災課.
紫外線とは 紫外線の影響 UVA(紫外線A波)の肌への影響 UVB(紫外線B波)の肌への影響
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
中学校理科・社会・総合的な学習の時間  環境問題について .
緩衝液-buffer solution-.
第 3 回.
地学b 第5回雲と降水 Koji Yamazaki (山崎孝治)
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
オゾン層破壊による生物への影響 東 正剛  高緯度で紫外線を増加させる 南極海に異変 南極オゾンホールの発見 忠鉢 繁(1984)
地球惑星物性学1 ( ~) 参考文献: 大谷・掛川著 地球・生命 共立出版 島津康夫著・地球の物理 基礎物理学選書 裳華房
~系外短周期スーパー地球シリケイト大気に関する研究~
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
現在の環境問題の特色 ● 環境問題の第一の波: 1960年代の公害 (水俣病、イタイイタイ病、四日市・川崎喘息など)
北海道大学 理学院 惑星宇宙グループ 成田 一輝 / 村橋 究理基
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
レーザーシーロメーターによる 大気境界層エアロゾル及び 低層雲の動態に関する研究
地球温暖化と京都議定書 E020303 豊川 拓生.
クイズ早押し環境グランプリ 社団法人 未踏科学技術協会.
地球環境と気象.
Johnson et al., 1999 (Journal of Climate)
回収フロンの再利用 新聞発表 6月25日 上野 雅史 坂中 遼平 松崎 翔太朗 河原塚 裕美.
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2015年4月 .
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
第 4 回.
2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣
惑星と太陽風 の相互作用 惑星物理学研究室 4年 深田 佳成 The Interaction of The Solar
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
生物多様性条約とは何か 森林を取り巻く様々な国際的取り決めと生物多様性条約 生物多様性条約の課題 藤原敬
オゾン層破壊のしくみ (2) 地球環境科学研究科 長谷部 文雄.
PowerPoint Viewer の使用方法は簡単です      ① この画面は、プレゼンテーション 今これから何をやりたいかの最初のスライドです。 ② 画面が小さかったら、画面の中で右クリックし、[全画面表示] をクリックします。 ② 画面をクリックするたびに、プレゼンテーションが1段ずつ進行します。
地球科学概論Ⅱ 担当:島田浩二.
従来研究 本研究 結果 南極大型大気レーダーPANSYで観測された大気重力波の数値モデル再現実験による力学特性の解明
Presentation transcript:

第 4 回

この回の講義の要点 大気の鉛直温度構造の理解. その構造を決定する過程の理解.

地球大気の鉛直構造 温度で区分 熱圏 :90 km ~ 中間圏:50~90 km 成層圏:10~50 km 対流圏:0~10 km 雲ができる層 90km 熱圏 中間圏 50km 成層圏 地球型惑星の大気の厚みは惑星半径に比べて小さいが, 鉛直構造は重要. 水平よりも温度差が大きい. 10km 対流圏 0km 200k 280K (温度[k]) Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1.

火星大気の鉛直構造 一応、温度で区分 熱圏 :120 km ~ “中層大気”:~120 km “対流圏” :0~5-10 km 変動が激しい 成層圏 10km 対流圏 0km 200 (温度[K]) Seiff and Kerk, 1977: JGR, 30, 4364, Fig.15.

地球と火星の鉛直構造 (高度[km]) 90km (高度[km]) 熱圏 熱圏 中間圏 120km 50km 成層圏 成層圏 10km 対流圏 10km 0km 対流圏 0km 200k 280K (温度[k]) 200 (温度[K]) Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1. Seiff and Kerk, 1977: JGR, 30, 4364, Fig.15.

今日のキーワード 放射平衡 (radiative equilibrium) 対流 雲 オゾン オゾン層 オゾンホール

対流圏

対流圏の鉛直温度構造の特徴 高度とともに温度が低下. 備考 ざっと ~6-7 K/km. 身近な気象現象 のほとんどが対流圏で起こっている. 温帯低気圧 台風 … のほとんどが対流圏で起こっている. 90km 熱圏 中間圏 50km 成層圏 10km 対流圏 0km 200k 280K (温度[k]) Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1.

考える順序 まずは放射平衡に基づいて温度を考える 運動 (対流) を考える

放射平衡温度分布 さらに仮定を緩めて, 温度の高さ分布を考える. 前の仮定:ガラスモデル 今度の仮定 一層の大気 太陽放射は大気を素通り 惑星放射は大気に吸収・射出される 今度の仮定 惑星放射は大気に一部吸収・射出される N 層(多層) の大気

温室効果 温室効果が働く場合(一番簡単な例) 大気

放射平衡温度分布 さらに仮定を緩めて, 温度の高さ分布を考える. 前の仮定:ガラスモデル 今度の仮定 一層の大気 太陽放射は大気を素通り 惑星放射は大気に吸収・射出される 今度の仮定 惑星放射は大気に一部吸収・射出される N 層(多層) の大気

大気 2 大気 1

放射平衡温度分布 さらに仮定を緩めて, 温度の高さ分布を考える. 前の仮定:ガラスモデル 今度の仮定 一層の大気 太陽放射は大気を素通り 惑星放射は大気に吸収・射出される 今度の仮定 惑星放射は大気に一部吸収・射出される N 層(多層) の大気

大気 3 大気 2 大気 1 大気の鉛直構造を考えられる.

大気 3 大気 2 大気 1

放射平衡 太陽からエネルギーを受ける面積と惑星がエネルギーを出す面積を考えると, エネルギーのつりあいは, 大気3 大気2 大気1 地面

放射平衡温度 先程の式を解くと以下の温度が得られる 有効放射温度

放射平衡温度 先程の式を解くと以下の温度が得られる 有効放射温度 上空ほど大気の温度は低い. 上空ほど低温になる原因の一つ.

なぜ上空ほど低温か? 大気 3 大気 2 大気 1

実際には? 大気は 3 層 / 有限の数の層ではない. 切れ目があるわけではない. 大気は太陽からの放射を吸収.

詳細な数値計算の例 対流圏における実際の温度減率は, 放射平衡から予想されるものよりも小さい. 放射平衡 実際の温度分布 10 km 150 200 250 300 温度 (K) (小倉 (1999): 「一般気象学」 より引用)

対流の発生・雲の生成 重たい流体が軽い流体の上に乗ると不安定. 言い換えると, 冷たい流体が暖かい流体の上に乗ると不安定 対流の発生. 暖かい流体と冷たい流体が混ざることで安定な温度(簡単な場合には等しい温度)になる. さらに, 雲ができることによる加熱が重要.

対流の発生 日常生活で経験があるはず. 例えば, 味噌汁の対流 鍋を火にかけたとき. 下から熱せされた水, 味噌汁, などなどなどの対流. http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/handmade2002/ryutai/miso/miso.htm 対流の例って何だ!

対流圏では, これと同じ種類のことが起こっている. ただし, 注意が必要. … の対流は, 温度が一様になると止まる. 現実的には, 暖かい流体が冷たい流体の上になると安定している. しかし, 大気の場合には, 高さが高いほど密度が薄い効果が働き, 上空の方が寒くても安定になる.

大気の中の「見える」対流. 雲の生成 積乱雲 (新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)

雲のでき方 (新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)

小まとめ 対流圏の温度構造 高度に対する温度減少は, これらの要因によって決まっている. 地表面からの放射に“あぶられ”, 放射平衡分布に基づき高度とともに温度が減少 放射平衡による, 高度に対する急激な温度減少によって不安定となり, 対流が発生. 雲の生成による加熱の寄与も重要. 高度に対する温度減少は, これらの要因によって決まっている.

成層圏

成層圏の鉛直温度構造の特徴 高度とともに温度が上昇. (高度[km]) 90km 熱圏 中間圏 50km 成層圏 10km 対流圏 0km Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1.

成層圏の温度構造 対流圏よりも上空は温度が下がり続けると思われていた. 実際には, 温度は高度とともに上昇する. 放射平衡 実際の温度分布 50 km 放射平衡 実際の温度分布 10 km 0 km 150 200 250 300 温度 (K) (小倉 (1999): 「一般気象学」 より引用)

成層圏の温度構造 対流圏よりも上空は温度が下がり続けると思われていた. オゾンを考慮した 放射平衡 実際には, 温度は高度とともに上昇する. オゾンの紫外線吸収によって温度が上昇 50 km オゾンを考慮した 放射平衡 放射平衡 実際の温度分布 10 km 0 km 150 200 250 300 温度 (K) (小倉 (1999): 「一般気象学」 より引用)

地球と火星の鉛直構造 (高度[km]) 90km (高度[km]) 熱圏 熱圏 中間圏 120km 50km 成層圏 成層圏 10km 対流圏 10km 0km 対流圏 0km 200k 280K (温度[k]) 200 (温度[K]) Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1. Seiff and Kerk, 1977: JGR, 30, 4364, Fig.15.

オゾン・オゾン層 オゾン : O3 高度 25 km を中心として形成されている層. O オゾンの混合比のプロファイル (環境科学解説, 環境研, http://www.nies.go.jp/escience/ozone/ozone_01.html, より引用)

オゾン・オゾン層 混合比(空気分子数に対するオゾンの割合) ~10-6 つまり, 空気分子 100 万個に対してオゾン分子が 1 つ. よく言うお話 「オゾン層を 1 気圧(地面付近)に持ってきたら, 厚さはたった 3 mm」 (ある意味)とても量が少ない. オゾンの混合比のプロファイル

オゾン・オゾン層 しかし, 非常に良く知られたお話 「オゾンは太陽からの紫外線を吸収することで, 地表に届く有害な紫外線を和らげている」 (新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)

(新訂 地学図表, 浜島書店, より引用) 太陽の光は電磁波の1種 μm は 10-6 m

(新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)

http://www. data. kishou. go. jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion.html

オゾン層の維持機構 紫外線により酸素分子からオゾンが生成. 一方オゾンは酸素原子と反応することにより消滅. 上空のオゾンはこれらの生成・消滅のバランスを保ちながら存在. (http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion.html)

オゾンの生成 今から約35億年前, 海の中で生命が誕生. やがて, 光合成により二酸化炭素(CO2)を酸素(O2)に変える働きを持つラン藻類が登場し, 地上に酸素を供給. 大気中の酸素濃度が高まり, 成層圏にまで達するようになると, 成層圏の強い紫外線によってオゾンが形成. 生命が誕生し, 光合成を行ったことで, 生物を守るオゾン層が形成された. ラン藻とは? ラン藻は、植物と同じタイプの酸素 発生型光合成を行う原核生物で、30~25億年前に地球上に出現し、初めて酸素発生型光合成を始め、地球上に大繁殖し、それまでの嫌気的な大気を現在に近 い酸素を豊富に含む好気的大気に変えていったと考えられています。この数億年の間にラン藻は、実に多様な進化を重ねて、形態的にも代謝的にもきわめて多彩 な能力を有する原核生物の一グループとなったようです。また、他の細胞との内部共生によって現在の葉緑体の祖先となったと考えられており、原核生物から植 物に至る光合成の進化を考える上で、非常に重要な生物です。 (環境科学解説, 環境研, http://www.nies.go.jp/escience/ozone/ozone_01.html, より抜粋)

オゾンホール 1979年、2007年それぞれの10月の月平均オゾン全量の南半球分布 米国航空宇宙局(NASA)提供のTOMSおよびOMIデータをもとに作成。灰色の部分がオゾンホール http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/diag_o3hole.html 1979年、2007年それぞれの10月の月平均オゾン全量の南半球分布 (http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/diag_o3hole.html)

オゾンホールの規模を示す要素の一つであるオゾンホールの面積(オゾン全量が220m atm-cm以下の領域の面積)の推移。左図は2007年の日別の値(赤丸)と過去10年(1997~2006年)の日別の最大値・最小値(破線)の推 移、右図は1979年以降の年最大値の経年変化。なお、横線は南極大陸の面積を示す。米国航空宇宙局(NASA)提供のTOMSおよびOMIデータをもと に作成。 http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/diag_o3hole.html

フロンによるオゾン破壊 上部 40 km 以上での反応. 現在、人造物質であるクロロフルオロカーボン(CFCs;フロンとも呼ばれています)等に起因する塩素、臭素によるオゾン 層破壊が熱帯地域を除くほぼ地球全体で進行しています。そのオゾン層破壊は、特に南極域の春季に発生するオゾンホールに顕著に表れています。このようなオ ゾン層の破壊に伴って有害紫外線(UV-B)の増加が懸念されています。  上空40km付近では、紫外線によってクロロフルオロカーボン等から解離した塩素原子がオゾンを次々と破壊しています。 http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion.html クロロフルオロカーボン(CFCs;フロンとも呼ばれる)等に起因する塩素によるオゾン破壊反応. (http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion.html)

極成層圏雲によるオゾン破壊 下部成層圏での反応. 高度30kmより下の成層圏では、塩素原子は通常、オゾンを破壊しない化合物に姿を変えて存在しています。ところが、南北両極、特に南極上空の高度 15~20km付近では冬に著しく低温の状態となり、極域成層圏雲(PSCs)と呼ばれる雲が発生します。この雲粒子の表面及び太陽からの紫外線による光 化学反応によって、塩素が活発化してオゾンを破壊します。オゾンホールはこれらの反応によりオゾンが急速に破壊されて形成されます。火山噴火による硫酸粒 子の表面でも、同じようにオゾンを破壊する反応が起こります。 http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion.html 高度 30kmより下の成層圏では, 塩素原子は通常, オゾンを破壊しない化合物に姿を変えて存在する. ところが, 南北両極, 特に南極上空の高度 15~20km付近では冬に著しく低温の状態となり, 極域成層圏雲(PSCs)と呼ばれる雲が発生する. この雲粒子の表面で塩素が活発化してオゾンを破壊する. (http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/3-10ozone_depletion.html)

オゾンホールの今後 オゾン層の保護に向け, 国際的な協調の下でオゾン破壊物質(フロンなど)の生産や使用の規制が進められてきた. モントリオール議定書 モントリオールギテイショ   【英】Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer   [同義] オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書   解説 | 正式名称は「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」。1987年に採択、1989年発効。日本は採択時に署名。2006年2月現在の締約国数は188カ国+EC。事務局はナイロビのUNEPに置かれている。 ウィーン条約に基づき、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、該当する物質の生産、消費及び貿易を規制することをねらいとしている。具体的には、成層圏オゾン層破壊の原因とされるフロン等の環境中の排出抑制のための削減スケジュールなどの規制措置を定めている。 議定書の発効により、特定フロン、ハロン、四塩化炭素などが1996年以降全廃となり、その他の代替フロン、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)なども順次、全廃となった。さらに、毎年同議定書の締約国会議が開かれ、1990年のロンドン改正、1992年のコペンハーゲン改正、1997年モントリオール改正、1999年北京改正により規制強化が図られている。 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%A5%E2%A5%F3%A5%C8%A5%EA%A5%AA%A1%BC%A5%EB%B5%C4%C4%EA%BD%F1 フロン類は混合冷媒の400、500番台を除き容易に構成元素がわかるように3桁を 基本とする番号がつけられている(100の位が0の場合は10の位から呼ぶ) 例 R12(CFC-12)   これは元々R012である 100の位が0 10の位が1 1の位が2 100の位は炭素数-1であるため この例では炭素数=1となる 10の位は水素数+1である   同様に水素数=0 1の位はフッ素数         同様にこの場合F=2 炭素数1であるため化学名称は○○メタンである(基本構成CH4) フッ素2個、水素0個であるため残り2個を塩素が結合しCCl2F2となる (化学名称 ジクロロジフルオロメタン) [編集] (http://www.nies.go.jp/whatsnew/2006/20060519.pdf)

オゾンホールの今後 (http://www.nies.go.jp/whatsnew/2006/20060519.pdf)

オゾンホールの今後 化学気候モデルを用いた予測によると, オゾンホールの面積は 2050 年頃には 1980 年頃の大きさに回復すると考えられている. ただし, これは今後もフロンなどのオゾン破壊物質が使用されなかった場合. (http://www.nies.go.jp/whatsnew/2006/20060519.pdf)

小まとめ 成層圏(高度約 10 km から 50 km)では, 上空ほど温度が高い. 温度上昇はオゾンが紫外線を吸収することに起因している. 一方, オゾンは紫外線を吸収することで地面に届く有害な紫外線を和らげている. フロンガス, 極成層圏雲などに関わる化学反応によってオゾンホールが広がってきた. 現在の予測では, 今後オゾンの量は回復していくと考えられている.

中間圏・熱圏

中間圏・熱圏の鉛直温度構造の特徴 中間圏では高度とともに温度が低下. 熱圏では, 高度とともに温度が上昇. (高度[km]) 中間圏では高度とともに温度が低下. 地球の大気中で最も低温となる高度. ~180 K (-90 ℃ 以下) 熱圏では, 高度とともに温度が上昇. 高度 500 km 付近では, 1000 K 以上の温度に達する. 90km 熱圏 中間圏 50km 成層圏 10km 対流圏 0km 200k 280K (温度[k]) Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1.

(高度[km]) 90km 熱圏 400km 中間圏 300km 50km 成層圏 200km 10km 100km 対流圏 0km Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1. 273K 773K (新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)

熱圏の温度構造の原因 太陽からの紫外線・極端紫外線を酸素 (O) や窒素 (N) が吸収する (電離される) ことで高温となる. 熱圏が吸収される紫外線は, 太陽エネルギーの 10 万分の一程度. 熱圏の密度は非常に少ないので, 少ないエネルギーでも高温になる.

(新訂 地学図表, 浜島書店, より引用) 太陽の光は電磁波の1種 μm は 10-6 m

(新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)

中間圏の温度構造の原因 以下の 2 つの効果によって低温となっている. 波長の短い紫外線は, 熱圏でほとんど吸収されてしまって, 中間圏まで残っていない. 一方, 大気は自分の温度に対応して放射することで冷えている. 大気が薄いことも重要.

まとめ 地球の大気の鉛直温度構造 対流圏 成層圏 中間圏 熱圏 放射によって温かい地面から“あぶられる” 対流によって混ぜられる (高度[km]) 対流圏 放射によって温かい地面から“あぶられる” 対流によって混ぜられる 雲ができることによって加熱 成層圏 オゾンによる紫外線の吸収 中間圏 赤外線の放射による冷却 熱圏 太陽紫外線による加熱. 90km 熱圏 中間圏 50km 成層圏 10km 対流圏 0km 200k 280K (温度[k]) Andrews et al., 1987: Middle atmosphere dynamics, Academic Press, Fig. 1-1.

おまけ:他の惑星の温度構造 これまでは地球のことを考えてきた. 他の惑星の大気はそれぞれの特徴を持っている.

火星大気の鉛直構造 一応、温度で区分 熱圏 :120 km ~ “中層大気”:~120 km “対流圏” :0~5-10 km 変動が激しい 成層圏 10km 対流圏 0km 200 (温度[K]) Seiff and Kerk, 1977: JGR, 30, 4364, Fig.15.

特徴的な現象:ダストストーム

火星の温度構造: ダストの大気構造への影響 大気中のダストによる太陽光吸収によって温度は 5-20 K 上昇 安定度が増加 大気循環にも影響

木星大気の鉛直構造 3種類の雲の存在が予想 温度がわかっているのは成層圏と対流圏上部のみ NH3, NH4SH, H2O 土星にも存在 圧力 1 気圧 温度 http://www.seed.pro.or.jp/~kin/jupiter/yuseijin/

おまけ:まとめ 火星 木星 成層圏をのぞくと, 温度構造は地球のそれと同様のプロセスで説明. しかし, 火星においてはダストの存在が, 温度構造にも大きな影響を及ぼしている. 木星 温度構造は地球と同様のプロセスで説明. しかし, 水以外の成分が雲を作る原因になっている. 成層圏の温度上昇にはダストの効果が無視できないようだ.

火星の温度 (Schofield et al., 1997)

この講義の要点 大気の鉛直温度構造の概説 対流圏 対流によって温度現象が決定 成層圏 オゾンがあることで高温