原子核物理学 第9講 二重ベータ崩壊.

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原子核物理学 第9講 二重ベータ崩壊

 二重ベータ崩壊の寿命が測定されたら ニュートリノが Majorana 粒子であることがわかる   二重ベータ崩壊は,ニュートリノが Majorana 粒子であるか Dirac 粒子であるかを区別する,現在のところ唯一の現実的方法 ニュートリノが質量をもつことがわかる   既に,ニュートリノ振動の実験結果から明らか ニュートリノの質量の絶対値についての情報が得られる   ニュートリノ振動から得られるのは質量の2乗の差

1.二重ベータ崩壊とは

二重ベータ崩壊が観測され得る核種 48Ca, 76Ge, 82Se, 100Mo, 128Te, 130Te, 136Xe, 150Nd   質量数が等しい中で2番目に質量が小さい核種で 通常のベータ崩壊がエネルギー的に許されない 例: A = 100 (100Mo)      48Ca, 76Ge, 82Se, 100Mo, 128Te, 130Te, 136Xe, 150Nd

2つの崩壊モード 2n 崩壊モード と 0n 崩壊モード 2n 崩壊モード 電弱相互作用の標準模型の枠内で起こる 約 10 の核種で崩壊寿命が既に測定されている 測定された最も短い半減期で T1/2 = 1019 年

0n 崩壊:レプトン数非保存過程 0n 崩壊は未だ観測されていない 観測されたという報告はあるが,??? 電弱相互作用の標準模型では許されない過程   二重に禁止 レプトン数非保存 ヘリシティの不一致 中性子から放出されるのは左巻き(ニュートリノ) 中性子に吸収されるのは右巻き(反ニュートリノ)

0n 崩壊モードが起こる条件 条件1 : Majorana 粒子である 中性子から放出された反ニュートリノは中性子に吸収されるニュートリノに等しい 条件2 : 質量をもつ 中性子から放出された(反)ニュートリノは左巻き成分が主であるが,右巻き成分ももつ 同時に,弱い相互作用の右巻き成分も(存在するなら) 0n 崩壊に寄与する

二重ベータ崩壊寿命の測定 地球化学的方法 例:128Te  13 億年前にできた天然テルル      の鉱石中の 128Xe を測定(107 個) 0n 崩壊と 2n 崩壊を区別できない 放射化学的方法(238U) 直接測定 0n 崩壊と 2n 崩壊を分離可能(右図参照)     2つの電子のエネルギーの和 電子のエネルギーだけ測定 例:76Ge 電子が放出される方向も測定

2n 崩壊核行列要素 半減期の寿命から得られた核行列要素 原子核の構造を強く反映

2n 崩壊モードは 核行列計算のテスト しかし、現状では、 原子核構造計算は 2n 崩 壊モードの核行列要素に 対して予言能力がほとん   崩壊寿命を計算して   実験値と直接比較できる しかし、現状では、 原子核構造計算は 2n 崩 壊モードの核行列要素に 対して予言能力がほとん どない

2.核行列要素の計算

2n 崩壊の核行列要素 弱い相互作用の2次の摂動 中間状態(1+)が virtual である点を除くと Gamow-Teller 型ベータ崩壊が引き続いて2度起こるのと同じ

0n 崩壊の核行列要素 (1) ニュートリノポテンシャル 2つの核子のあいだでニュートリノが交換される ニュートリノポテンシャル  2つの核子のあいだでニュートリノが交換される ニュートリノ運動量についての積分から得られ,2つの核子の距離の関数 到達距離の長い Yukawa ポテンシャルに似ている   質量にして 10 MeV 程度の粒子の交換に対応   ニュートリノの質量に依らない 核行列要素に大きな寄与を与えるのは q ~ 100 MeV/c

0n 崩壊の核行列要素 (2) Closure 近似(誤差は数%) 0n 崩壊では良い近似 ニュートリノポテンシャルは原子核の中間状態のエネルギーにほとんど依存しない(摂動のエネルギー分母でニュートリノの運動量の寄与が大きい)   ニュートリノポテンシャルの多重極展開 多重極遷移演算子

0n 崩壊の核行列要素 (3) 二重 Gamow-Teller 行列要素 二重 Fermi 行列要素

Quasiparticle RPA Models (QBA) QRPA Renormalized QRPA Fully Renormalized QRPA Extended QRPA Self-Consistent QRPA Fully Self-Consistent QRPA BCS + RPA models BCS で対相関を取り入れ RPA で陽子-中性子相関を取り入れる

対相互作用と対相関 対相互作用: 同一軌道を占める2つの同種粒子(中性子,または陽子) を角運動量 Jp = 0+ の対 に結合させる 核力の最も著しい特徴(singlet-even の強い短距離引力) 対相関:対相互作用による相転移

BCS BCS 基底状態 異なる粒子数(核子数)をもつ状態の重ね合わせ 粒子数(核子数)が保存しない 拘束条件(粒子数)付き変分    は一粒子軌道の占有確率を表す

BCS (続き) Bogoliubov 変換による準粒子の定義 BCS 基底状態は準粒子の真空 準粒子は Fermi 粒子 (fermion の反交換関係を満たす)

RPA (運動方程式の方法) 励起演算子 の運動方程式 期待値としての運動方程式(変分) この段階まで近似はない 励起演算子   の運動方程式 期待値としての運動方程式(変分) この段階まで近似はない 励起演算子に対する仮定(近似)

RPA (続き-1) RPA 方程式( を運動方程式に代入) Quasi-boson 近似 (核子対に boson の交換関係を仮定)

RPA (続き-2) RPA 方程式(quasi-boson 近似)

遷移振幅 (例:Gamow-Teller 遷移)

Key Parameter gpp QRPA を用いた核行列要素の計算結果

gpp を相互作用の行列要素にかけて人為的に強さを調整 Jp = 1+ に結合した陽子-中性子相互作用に大きな不定性 gpp を相互作用の行列要素にかけて人為的に強さを調整

Renormalized QRPA 交換関係を厳密に計算 振幅と行列の renormalization 準粒子基底状態相関を RPA 方程式にフィードバック

Self-Consistent QRPA BCS + RPA を self-consistent に 準粒子基底での RPA 一粒子エネルギーの補正(renormalized QRPA) 上の効果を考慮に入れて BCS を再定式化 eg. 相関のある RPA 基底状態に対して      粒子数の拘束条件を課す

核行列要素の典型的な振る舞い

0n 崩壊核行列要素の不定な成分 Jp = 1+ 中間状態を経由する成分    2n 崩壊核行列要素とよく似た振る舞い

QRPA 模型の枠内で 0n 崩壊核行列要素を信頼性高く予言するには 2n 崩壊の実験値(半減期から得られる核行列要素)を用いて gpp を決める

QRPA 模型の問題点 例:3つの状態が関与する3つのGT型遷移強度が 同時に再現できない B(GT-) 100Tc(g.s.1+) → 100Ru(g.s.0+) B(GT+) 100Tc(g.s.1+) → 100Mo(g.s.0+) M2n 100Mo(g.s.0+) → 100Ru(g.s.0+)

B(GT‐) と B(GT+) の負の相関 (1)

B(GT‐) と B(GT+) の負の相関 (2) 48Ti → 48Sc 48Ca → 48Sc 殻模型計算

QRPA Model ? or Shell Model ? Various correlations 1-major-shell calc. Good for 2nbb Insufficient model space for 0nbb QRPA model Much simplifed 2-major-shell calc. Easy to handle Crucial assumption by 2qp operators Quasiparticle Shell Model