電気回路学Ⅱ コミュニケーションネットワークコース 5セメ 山田 博仁
ラプラス変換による過渡現象の解析 3. RLC直列回路の過渡現象 図に示すRLC直列回路において、任意の電圧 e(t) で励振した時の電流を i(t) とすると、閉路方程式は、 C R L E(s) i(t) e(t) I(s) q(0) i(0) で与えられる。 この式をラプラス変換すると、 となる。 ただし、 とした。 従って、I(s) について解くと、 となる。 全ての初期条件を 0 とすると、 となり、 Z(s) は回路のインピーダンスを表わす。
ラプラス変換による過渡現象の解析 例 6.3.1 i(t) I(s) q(0) i(0) C R E0 S t = 0 L 左図の回路で、t = 0 でスイッチを閉じて直流電圧 E0 を印加する。 かつ としてよいから、 より、 となる。 この式をラプラス逆変換するには、 と変形し、 ラプラス変換表(教科書の表5.2)の(32)の関係 を用いて、 とみなすと、 となる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 (a) 臨界減衰( R2 = 4L/C )の場合には、 ロピタルの定理より、 であるから、 となる。 (b) 過減衰( R2 > 4L/C )の場合には、 であるから、 の関係を用いると、 となる。 (c) 振動減衰( R2 < 4L/C )の場合には、 であるから、 となる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 例 6.3.2 RLC直列回路で、時刻 t = 0 にスイッチを閉じて、正弦波電圧 Emsinω1t を印加する。 そのとき であり、かつ簡単のために q(0) = 0, i(0) = 0 とすれば、 電流は、 で与えられる。 この式のラプラス変換は、表5.2(36)の表関数 f(t) を微分した df(t)/dt に、 を代入し、係数 を乗じたものに等しい。 ラプラス変換表5.2の(36)の関係式は、
ラプラス変換による過渡現象の解析 この表関数を微分すると 従って、 ただし、 また と置いて、
ラプラス変換による過渡現象の解析
ラプラス変換による過渡現象の解析 i(t) の式 励振周波数 ω1 で 振動を続ける定常項 過渡項 自由振動周波数は β i(t) の時間変化を以下の図に示す。(ただし、ω12 = 1/LC、かつ ω1 ≈ β の場合)
ラプラス変換による過渡現象の解析 教科書第2章の章末問題2.2の解答に誤りがあります。ラプラス変換を用いて、正しい答えを導いてみよう。 RC直列回路の場合 閉路方程式は、 C R E(s) i(t) e(t) I(s) q(0) となり、 両辺をラプラス変換すると、 I(s) について解くと、 ここで、 時定数 CR = τ と置くと、
ラプラス変換による過渡現象の解析 従って、表5.2のラプラス変換表の式(18)と式(4)の関係を用いてラプラス逆変換すると、 と求まる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 同様にRL直列回路の場合、閉路方程式は、 R E(s) i(t) e(t) I(s) L i(0) となり、 両辺をラプラス変換すると、 I(s) について解くと、 ここで、 時定数 = τ と置くと、
ラプラス変換による過渡現象の解析 従って、表5.2のラプラス変換表の式(17)と式(4)の関係を用いてラプラス逆変換すると、 と求まる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 教科書第6章の章末問題6.6 スイッチを閉じた後の閉路方程式は、 であり、 ラプラス変換は、 となる。 I(s) について解くと、 ラプラス逆変換すると、 となる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 教科書第6章の章末問題6.7 スイッチを閉じた瞬間、キャパシタ C1 からキャパシタ C2 に無限大の電流が流れて、キャパシタ C2 が瞬間的に充電され、キャパシタ C1 とキャパシタ C2 の電圧が等しくなる。その時、スイッチを閉じる前後で電荷量は不変である。その後は、両キャパシタから R に電流が流れ、蓄えられた電荷は放電される。スイッチを閉じた直後の両キャパシタの電圧 V0 は、 である。 その後は単に、並列接続されたキャパシタ C1 とキャパシタ C2 と R からなる CR 直列回路であるから、 となる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 教科書第6章の章末問題6.8 (a)の場合の回路は下図のようになる。 Rl E0 S i2(t) C R1 i1(t) 表記の簡単化のために、R1 = Rl = R と置く、 (i) 定常電流 定常状態では、キャパシタ C は完全に充電或いは放電された状態にあり、電流は流れないので、無いものと考えてよい。従って Rl に流れる定常電流 i2 は、 (ii) 過渡電流 電流 i1, i2 に対して、以下の関係式が成り立つ。 このラプラス変換は、C の初期電荷が 0 であるから、 となる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 これを I2 に対して解くと、 この逆ラプラス逆変換は、 (b)の場合の回路は下図のようになる。 Rl S i2(t) t = 0 C R1 i1(t) C0 q0 表記の簡単化のために、R1 = Rl = R, C0 = C と置く、 (i) 定常電流 定常状態では、キャパシタ C0 に蓄えられていた電荷は完全に放電された状態にあるので、電流は流れない。従って定常電流 i2 は 0 である。 (ii) 過渡電流 電流 i1, i2 に対して、以下の関係式が成り立つ。
ラプラス変換による過渡現象の解析 このラプラス変換は、 C0 の初期電荷が q0、C の初期電荷が 0 であるから、 となり、これを I2 に対して解くと、 となる。 表5.2の(14)の関係式を変位定理を用いて加工すると、 という関係が得られる。 従って上式で、 と置くと、 I2 のラプラス逆変換より電流 i2 は、 と求まる。これが電流 i2 の過渡電流である。
ラプラス変換による過渡現象の解析 (c)の場合の回路は下図のようになる。 Rl S i2(t) t = 0 C R1 i1(t) e(t) 表記の簡単化のために、R1 = Rl = R と置く、 (i) 定常電流 となる。ただし、 (ii) 過渡電流 e(t) のラプラス変換は、 従って、電流 i2 のラプラス変換は、 となる。
ラプラス変換による過渡現象の解析 表5.2の(27)の関係式を用いて、 と置くことにより、 従って、電流 i2 のラプラス逆変換は、 となる。 左辺の第1項が過渡電流である。