原子核・ハドロン物理学研究室 オープンキャンパス 霧箱の製作と実験 ~目で見る放射線~ 2009/8/7
研究室訪問 予定 1回目 予定 2回目 研究室についての簡単な説明 霧箱 放射線の話 現在の研究 (時間があれば)質問タイム 加速器の説明 予定 1回目 研究室についての簡単な説明 霧箱 説明 製作 放射線の話 観察 現在の研究 (時間があれば)質問タイム 予定 2回目 加速器の説明 タンデム加速器見学 研究紹介
原子核・ハドロン研究室 原子、原子核、ハドロン、クォークと広い物質の階層を対象に、 相互作用と多体系の基本的な性質の探究を主眼として研究を行っています。
原子核とは?ハドロンとは? 原子は物質の最小構成要素ではない! 原子核 ハドロン レプトン 原子の中心にある小さな粒子の集まり 原子核を構成している陽子や中性子などの粒子(バリオン)や、π中間子などの粒子(メソン) p n 例:ヘリウム原子の場合(概念図) e- p : 陽子 n : 中性子 e- : 電子 ちなみに レプトン 電子やニュートリノなどの粒子(計6個)
ビー玉と東京ドームの大きさの関係と同じくらい 原子と原子核の大きさの比較 例えば鉛の場合、 原子の半径 : ~160 pm ≒ 1 x 10-10 m 原子核の半径 : ~7.2 fm ≒ 1 x 10-14 m 原子核は原子の10000分の1の大きさ! 原子の質量の99.9%以上が原子核の質量! ビー玉と東京ドームの大きさの関係と同じくらい
現代の素粒子像 e μ τ νe νμ ντ d s b u c t W Z g γ クォーク レプトン 力の伝達粒子 u d 陽子 u d ハドロンはさらにクォークと呼ばれる粒子から構成されていることが知られている。 現在、6種類のクォーク・6種類のレプトンが知られている。 e μ τ νe νμ ντ d s b u c t W Z g γ クォーク レプトン 力の伝達粒子 クォークとレプトンの他に力の媒介粒子が存在する u d 陽子 u d 中性子
私たちの研究と放射線 でも放射線って危なくないですか? まずは放射線を知ってください! 原子核やハドロンを研究する際には、原子核などを加速して別の原子核に当て飛び出してくる粒子の種類や質量や速度を調べることをよく行う。 飛び出してくる粒子は放射性元素などからの放射線とよく似た性質をもっているので、放射線を見ることは実験でとても大事になる技術である。 今日は、普段全くなじみが無いであろう放射線を観測してみる。 でも放射線って危なくないですか? まずは放射線を知ってください!
放射線の種類と特性 電離作用:反応することで物質をイオン化すること α(アルファ)線 β(ベータ)線 γ(ガンマ)線 中性子線 電離作用:強 実体:ヘリウムの原子核 β(ベータ)線 電離作用:中 実体:電子 γ(ガンマ)線 電離作用:弱 実体:光・電磁波 中性子線 実体:中性子
放射線と人体への影響 人が浴びた放射線の量を測るには、しばしば「シーベルト(Sv)」という単位が用いる。 200mSv未満の場合には、臨床症状は確認されていない。 ちなみに、 最近宇宙から戻った若田宇宙飛行士は、4ヵ月半の宇宙生活の間に約90ミリシーベルトの被曝をしたそうである。 一般的な人の約30~40年分の量に相当する。 放射線作業従事者である私も確認していますが、毎月0.1mSv以下である。(測定限界以下です)
霧箱の製作 身近な素材で放射線を見ることができる。(家でも作れる) 放射線は目に見えない。しかし、放射線が通った跡(軌跡)は見える。 「マントル」を使う。 非常に弱い放射線源 完成した霧箱
マントルとは キャンプなどに用いられるランタンの芯に使われるもの ホームセンターなどで購入可能 ごくごく微量の放射線源を含む(トリウム) ホームセンターで誰でも買えるようなもの。キャンプ用品。 最近は含まないものもある。 人体に害はない。 但し、食べたり触った手をなめたりするのはあまりよくない。 ランタン マントル
霧箱の仕組み 温 冷 エタノールが蒸発し、ビンの底近くで冷やされる。 液体になる温度まで冷えても“きっかけ”が無いと液体になりにくい(過飽和) 放射線が通ったことにより液体になり、霧ができる。 冷 温 β線 α線
霧箱と似た検出器 ~粒子の軌跡の観測~ 泡箱 原子核乾板(エマルション) 過飽和ではなく、液体(液体水素など)を過熱状態にする 荷電粒子が通ると激しい沸騰が起き、軌跡にそって泡ができる 粒子が通過した時間に合わせて写真を撮る 原子核乾板(エマルション) 特殊な写真乾板を用いて、その中を通過した荷電粒子の軌跡を記録する 実験後に現像し、軌跡を3次元で解析する
電流と磁界の相互作用 中学校で学んだように(合ってます?)磁界があるところを電流が流れるとある決まった方向に力を受ける(フレミング左手の法則) 電流は、電荷を帯びた粒子の運動により生じる つまり、電荷を帯びた粒子が磁界の中を通ると、粒子が持っている電荷の符号によって力を受ける向きが違う。 曲がり方で粒子の電荷の符号がわかる + - 進行方向 磁場:画面垂直下向 力の向き
新粒子の発見と物理の進展 1-1 1940年、宇宙線を霧箱で観測して不思議な軌跡が発見された ストレンジ粒子の発見 新しい自由度の存在と、ハドロンが複合粒子であることの示唆 ローレンス・バークレー研究所による泡箱写真
新粒子の発見と物理の進展 1-2 s u d d u s s K- Ξ-(グザイマイナス) Λ(ラムダ) ストレンジ粒子とは? 陽子や中性子、π中間子には無かった新たな自由度“ストレンジネス”を持つ粒子のこと。 後のクォークモデルでは、s(ストレンジ)クォークを含む粒子。 s d Ξ-(グザイマイナス) u d s Λ(ラムダ) s K- u
新粒子の発見と物理の進展 2 ある対称性(SU(3)対称性)を仮定したときに理論的に予想される新粒子Ω-(オメガマイナス)が泡箱で初めて発見された。 質量、寿命ともに理論の予想通りであった。 この成功に刺激されて、クォークモデルが提唱された。 1964年ブルックヘブン国立研究所(アメリカ)
新粒子の発見と物理の進展 3 2つのΛ(ラムダ)粒子を含む原子核が、初めて明確に確認された。(原子核乾板) ΛΛ間の相互作用についての情報が得られた。 2001年発表の論文
現在の私たちの研究 ストレンジネス核物理 スピン核物理 不安定核物理学 低速中性子を用いた基礎物理 アクシオン探索 sクォークを含む原子核 陽子の内部構造 不安定核物理学 N/Zの偏った原子核 低速中性子を用いた基礎物理 AC効果の精密測定に向けて アクシオン探索 暗黒物質候補の探索
おわり