基礎商法2_07 2015/11/18 基礎商法2 第10回 基礎商法2.

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基礎商法2_07 2015/11/18 基礎商法2 第10回 基礎商法2

本日のお題 他人による手形行為 代理方式―無権代理―表見代理 代行(機関)方式―偽造―表見偽造 会社による手形行為(代表権との関係) 手形の変造 白地の補充 ※今日も、基本的に債務負担の話 基礎商法2

他人による手形行為 ―総論 基礎商法2

他人による 手形行為 他人による署名 代理方式 有権代理 無権代理(手8) 表見代理 代行方式 有権代行 偽造 表見偽造 他人による内容の変更 権限者による変更 変造(手69) 白地の補充 権限内の補充 不当補充(手10) 他人による 手形行為 署名 署名以外 基礎商法2

他人による署名 基礎商法2

他人による署名の方式 代理方式:「A 代理人B B」(署名者はB) 代行(機関)方式:「A A」(署名者はB) 代理方式:「A 代理人B B」(署名者はB) 代行(機関)方式:「A A」(署名者はB) ※代理方式の署名の代行もありうる。「A代理人B B」(署名者はC) 代理方式 代行方式 権限者による場合 代理人による署名 署名の代行 無権限者による場合 無権代理 署名の偽造 基礎商法2

方式の不明な署名 事案:「合資会社安心荘 斉藤シズエ ㊞」(最判S47.2.10百-4) 判旨 「合資会社安心荘 (代表社員)斉藤シズエ」の意(法人) 「(合資会社安心荘勤務の)斉藤シズエ」の意(個人) 判旨 法人振出は代理方式によらなければならない 法人、個人いずれの振出かを手形外の証拠で決することはできない。 手形記載からは個人・法人いずれの振出とも解しうる場合には手形所持人が請求の相手方を選択できる 手形所持人が悪意の場合には人的抗弁を対抗できる 基礎商法2

代理方式の手形行為 基礎商法2

代理人の手形行為 署名の方式 手形振出と非顕名代理 民法上の組合名義の手形振出(最判S36.7.31百3) 手形の文言証券性から、手形行為には商法504条は適用がない(通説) 民法上の組合名義の手形振出(最判S36.7.31百3) 事案:「A漁業組合 組合長理事 Y1[Y1]」名義の手形について、A組合の組合員に支払を求めうるか 多数意見:組合名義=各組合員名義と考えてよい →標記の記載によって各組合員は手形債務を負う 基礎商法2

会社における手形行為 会社代表者の代理権の制限(または支配人の支配権の制限)と手形行為 取締役会決議を欠く専断的手形行為(会362Ⅳ) 権限の制限を善意の第三者に制限を対抗できない(会349Ⅴ、商21Ⅲ) 取締役会決議を欠く専断的手形行為(会362Ⅳ) 判例は民93類推適用で、善意・無過失の相手方との間では有効。悪意・無過失の相手方との間では、(民法では無効になるはずだが)人的抗弁にとどまる ※手形行為には意思表示の瑕疵の規定の適用がないことに注意 学説は会349Ⅴ類推または一般悪意の抗弁説で処理し、相手方が善意であれば有効。悪意であれば手形行為は無効(ただし権利外観理論で処理) 基礎商法2

権限濫用 承認のない利益相反取引になる手形行為 判例は民93類推適用。学説は一般悪意の抗弁説。処理そのものは会362Ⅳの場合と同じ ※会社・取締役間の取引の決済手段としての振出を想定 会社―取締役間の手形の振出・裏書については、(原因関係とは別個に)取締役会の承認が必要(判例・多数説。最判S46.10.13百-38、会社百-57) 〔理由〕 手形債務の負担は、証明責任、善意取得、抗弁の切断、手形訴訟制度といった面で、会社により重い責任を負わせる 承認は原因関係についてのもので足りる(少数説) 〔理由〕 手形は債務の履行手段であり、原因関係の履行について別途の承認は不要 ※判例・多数説に立っても、たとえば会社振出の手形に取締役が隠れた手形保証を行うような場合には会社に損害が生じるおそれがないため利益相反取引規制には服さない 基礎商法2

利益相反取引 振出人 裏書人 受取人 被裏書人 裏書人 原因関係 原因関係 約束手形 振出 裏書 利益相反取引? 相対的無効 →Yes(判例・多数説) 基礎商法2

無権代理 手形法8条の趣旨 無権代理人の責任 成立要件 無権代理人の行為責任ではなく特別な法定責任 本人が責任を負う旨の虚偽の外観を表示したことを原因とする一種の外観責任 民法の議論とは無関係に、無権代理人の責任は本人の責任と併存するとするのが通説 無権代理人の責任 成立要件 無権代理人が代理方式で署名したこと 代理権がないこと(代理人に証明責任) 本人の追認がないこと(同上) 相手方が無権代理につき善意(民117Ⅱ参照) ※相手方の無過失は要求しない 基礎商法2

手8の効果(責任の内容) 本人と同一の責任を負う ①から、本人が所持人に対して有する抗弁を対抗可能 ⇒有権代理であれば本人に生じる責任と同一の責任を負うとの意 ①から、本人が所持人に対して有する抗弁を対抗可能 ただし、本人が手形債務を負わない以上、相殺の抗弁は対抗できないし、制限能力の抗弁といった本人の属人的な物的抗弁も主張できない(基本的には原因関係についての抗弁が対抗可) 無権代理人が所持人に対して有する抗弁も対抗可 手8によって責任を負う場合には民117による損害賠償責任は負わない 越権代理の場合は全額(踰越額ではない)について責任を負う 表見代理が成立する場合であっても、無権代理人の責任は消滅しない(最判S33.6.17百-11) 基礎商法2

表見代理 趣旨 内容 成立要件 手形法には表見代理に関する規定はないが、民法の表見代理の規定が適用される 民法109、110、112に準ずる ※民110の「正当事由」の解釈に争いがあるが、判例は民法と同じと解する(最判S39.9.15百-14) 基礎商法2

表見代理の成立と「第三者」 判例・民法の通説 第三者=無権代理人と直接に取引をした者 商法の通説 第三者には転得者を含む 判例・民法の通説  第三者=無権代理人と直接に取引をした者 商法の通説  第三者には転得者を含む 最判S36.12.12百-10 Y寺 (経理部長A) B C X ゴム印・印章 別件前渡金 受領権限 振出 裏書 約束手形 Y寺経理部長A 判旨:約束手形が権限踰越により振り出された場合に民110が適用されるには「受取人が右代理人に振出の権限あるものと信ずべき正当の理由あるときに限る」  ⇒第三者は直接の相手方に限られる 基礎商法2

判旨:表見代理が成立する第三者は取引の直接の相手方に限られるのであって、手形行為の場合は、手形の記載ではなく実質的な取引の相手方をいう。 最判S59.3.29総則・商行為百-28 Y福岡営業所 所長B X D Y株式会社 白地式裏書 交付 振出 約束手形 ※手形面上は、Bが直接Xに交付したように見える C 判旨:表見代理が成立する第三者は取引の直接の相手方に限られるのであって、手形行為の場合は、手形の記載ではなく実質的な取引の相手方をいう。 基礎商法2

代行方式の手形行為 基礎商法2

手形の偽造 意義 偽造者の責任 被偽造者の責任 偽造=無権限者による代行(機関)方式の手形行為 判例・通説 手形法8条類推適用 判例・通説  手形法8条類推適用 少数説  偽造者行為説 ・・・相手方悪意の場合に偽造者が責任を負うかどうかが異なる 被偽造者の責任 原則として責任は負わないが 追認は可能(最判S41.7.1百-16) 相手方が、偽造者が代行権限を有すると信ずることについて正当な事由があれば民110類推(=表見偽造。最判S43.12.24百-13) 基礎商法2

名板貸と手形行為 名板貸人 名板借人 振出 許諾 約束手形 名板貸人が営業を許諾し名板借人が営業のために手形振出 名板貸人が営業を許諾したが名板借人は営業をせず手形振出 (類推適用) 最判S55.715判時982-144 名義貸与者が手形行為のみを許諾し借用者が手形振出 最判S42.6.6百-12 基礎商法2

手形の変造 基礎商法2

総論 署名の改変とそれ以外の改変 手形要件の改変の意義 権限者による改変 無権限者による改変 署名の改変=債務者の交代 それ以外の改変=債務の内容の変更 ⇒ 両者を区別して考える必要性 手形要件の改変の意義 権限者による改変 債権者・債務者の合意によって債権の内容を変更することは適法 ただし、手形の場合には、裏書によって複数の債権・債務関係が併存して手形に表章される点に特徴 無権限者による改変 「変造」 基礎商法2

手形の変造 意義 変造=無権限者による手形の内容(署名は含まない)の改変 ※権限者による改変は有効な債権債務関係の変更(改変の権限は債権者・債務者の合意がなければ与えられない点に注意) ※署名の改変は偽造の一種 基礎商法2

変造と手形債務者の責任 原則(手69) 例外 変造前の署名者は変造前の文言に従った責任を負う 変造者・変造後の署名者は変造後の文言に従った責任を負う ※手形債務者が変造のリスクを負わないのは、手形債務者には原則として帰責性がなく、債務者の意思表示に従った債務以上のものを負わせる根拠がないから 例外 振出人等が、変造が容易な記載を行った場合には、白地手形と同様に、善意・無重過失の相手方に対しては変造後の文言に従った責任を負う(手10類推または権利外観法理) ※手形債務者に帰責性がある場合には手69の原則で処理するのは債権者とのバランスを欠き不適当 基礎商法2

原文言の立証責任 判例・多数説 ・・・債権の内容の証明責任は債権者にあるから、所持人が原文言を証明しなければならない(最判S42.3.14百-22) ⇒ 真偽不明の場合は常に所持人がリスクを負う 有力説 ・・・変造を主張する者が原文言を証明しなければならない ⇒ 真偽不明の場合は、変造を主張する者(債務者の場合も所持人の場合もある)がリスクを負う 折衷説 ・・・手形の外観に異常がなければ債務者が原文言が異なること及び原文言の段階で署名したこと、異常があれば所持人が債務者が現在の文言のもとで署名したことの証明責任を負う 受取人欄の変造 通常の変造と同様に扱うが、裏書の連続(手16Ⅰ)との関係では、変造後の文言に従った連続で足りる   基礎商法2

変造の相対性 遡求 振出人A 受取人Y B 所持人X 振出 白地式裏書 約束手形 S49.2.13支払呈示 満期 S48.4.7 S49.2.12 A 満期 S48.4.7 最判S50.8.29百-20: Yの同意がない以上、Yは、訂正前の満期(S48.4.7)に従って遡求義務を負うのであって、遡求権保全手続が取られていない以上、XはYに遡求できない ⇒同意のあるAX間では有効な満期の変更がなされているが、同意のないYX間(BX間も)では満期は変造されていることになる 基礎商法2

白地手形の不当補充 基礎商法2

白地手形 意義 白地手形の成立要件 手形要件の一部が欠けている未完成の手形で、事後の補充が予定されていて無効手形ではないもの 振出人の署名があること 手形要件の一部が欠けていること 欠けている要件が後日補充される予定であること 手形法は白地手形の存在を予定している(手10)ので、白地手形の存在自体は許容される(実務上の必要性もある) 基礎商法2

白地手形と無効手形の区別 主観説(多数説?) 手形外の契約によって発生する白地補充権の授与の有無で区別する(補充権があれば白地手形) 主観説(多数説?)  手形外の契約によって発生する白地補充権の授与の有無で区別する(補充権があれば白地手形) 客観説  外観上補充を予定して署名したと認められれば白地手形 折衷説  外観上補充を予定して署名したと認められれば白地手形。外観上補充を予定したかどうか不明の場合は補充権授与の有無(=主観)による ⇒判例は当初主観説に立つことを明示していたが(大判T10.10.1)、その後補充権が欠けていても白地手形の成立を認める(最判S31.7.20百-41。どの立場かは不明) ※主観説は白地手形と無効手形の区別が困難で流通の安全を害するとの批判がある。これに対しては、補充権授与の推定や手10類推で所持人保護がはかれるとする見解(弥永)、権利外観理論と組み合わせる見解(田邊)が出されている。 基礎商法2

白地補充権 補充権の成立 補充権は当事者の合意(補充権授与契約)で成立する(主観説からの立論) ●補充内容は補充権授与契約成立時に決まる(当事者の特約で決定を先送りにしたり所持人に一任してもよい) 抽象的な白地補充権は白地手形作成時に成立する(折衷説、客観説からの立論) ●補充内容は別途、当事者間の合意で定める ※補充権を手形外の合意と考えない方が取引の安全には資するが(たとえば主観説は当事者の合意でいつでも補充権を撤回できる)、意思理論からは遠くなる 基礎商法2

白地の不当補充 意義 手10の趣旨 類推適用 当事者の合意(補充権授与契約または別途の合意)に反した内容の補充=不当補充 不当補充がなされても手形債務者は、善意・無重過失の所持人に対しては合意違反を主張できない(手10) 手10の趣旨 手形所持人を保護した規定(主観説) 本来保護されない所持人を保護した 手形債務者を保護した規定 本来手17で処理されるところを手10で処理している 類推適用 不当補充された手形を取得した場合だけでなく、白地手形を合意と異なる補充権があるとして取得した場合にも類推適用される(最判S36.11.24百-45) 基礎商法2

白地の不当補充と変造の区別 この記載は白地の不当補充? 変造?     ¥11,000,000円※ 金額 1000000円 この記載は白地の不当補充? 変造? 不当補充 ・・・振出人は、取得者が悪意・重過失でない限り1100万円の責任を負う(手10) 変造 ・・・振出人は原則として100万円の責任のみを負う(手69) 基礎商法2

統一手形用紙の手形用法は、金額欄はチェックライタで記載することを要求 ⇒手書き(特に鉛筆書き、小さな記載、欄外の記載)が変更された場合をどう考えるか ・・・判例は「欄内なら記載として有効で変造」「欄外なら記載はメモであって白地の不当補充」と考えているらしい。百-23事件は手形用法に従うかどうかで判断 ※欄内か欄外かを問わず、空白を多く残した記載であれば、いずれにせよ振出人は善意・無重過失の所持人に対して現在の文言に従った責任を負う(白地手形と考えるなら手10適用、変造と考えるなら振出人に帰責性があるので手10類推) チェックライタと印字 基礎商法2

(a) 手形用法を遵守しない記載はメモ書きで金額記載とは見ない     ¥11,000,000円※ 金額 1000000円 (a) 手形用法を遵守しない記載はメモ書きで金額記載とは見ない (b) 手形用法には法的根拠はなく手形金額の記載と考える (c) (b)説を基本としつつ、鉛筆書きを抹消した場合は白地 ⇒裁判例は(a)説に立つと解されている(福岡高判S55.12.23百-23) ※仮に変造と解する場合であっても、容易に変造できる金額欄の記載として、手10類推適用または権利外観法理で、善意・無重過失の第三者に対しては記載金額通りの責任を負うと考えるべき(スライド26参照。→結局、(a)~(c)のどの説でも結論はかわらない) 基礎商法2