地方公務員災害補償基金 富山県支部 平成30年6月4日(月) 認定請求手続 地方公務員災害補償基金 富山県支部 平成30年6月4日(月)
本日の説明内容 次第 1 公務災害認定の基本的な考え方 2 認定請求手続について
1 公務災害認定の基本的な考え方
公務災害認定の要件とは? 以下の2つの要件が認められることが必要 1 公務遂行性 2 公務起因性
☆公務遂行性とは…? =通常又は臨時に割り当てられた職務を行っていること。ただし、職務遂行に伴うと認められる合理的な行為や準備・後始末行為を行っている場合も含まれる。 認められる場合は? ■負傷の場合 ①任命権者の支配下にあり、かつ、施設管理下にあって公務に従事している場合 (1) 通常職務を行っている、または合理的行為を行っている場合 (2) 休憩時間中に施設内で自由行動をしている場合 ②任命権者の支配下にはあるが、施設管理を離れて公務に従事している場合
☆公務遂行性とは…? 「疾病」の場合は、任命権者の支配下において疾病が発生することを意味するのではない! 疾病の場合は…? ■疾病の場合 任命権者の支配下において公務遂行に伴う有害因子の暴露を受けることを意味している。(例 針刺し事故による急性C型肝炎の発症) ⇒たまたま仕事時間中に発症した私傷病の疾病の公務遂行性は認められない。 (例 脳梗塞等)
公務災害認定の要件とは? 以下の2つの要件が認められることが必要 1 公務遂行性 2 公務起因性
☆公務起因性とは…? 災害の発生が公務又は公務の遂行そのものに起因すること。 すなわち、災害の発生と公務との間に相当因果関係が存在することをいう。 ■負傷の場合 外面的に公務起因性の判断がわかりやすい。 ⇒このため、公務に従事している限り、特段の反証がなければ公務起因性はあり! ■疾病の場合 外面的に公務起因性の判断がわかりにくい。 (∵疾病は、様々な原因又は条件が複雑に絡み合って発症することが多く、職員の素因や基礎疾患が発症に大きくかかわっている場合が多いから。) ⇒このため、①公務と発症原因との因果関係、②発症原因と結果(疾病)との因果関係の2つの因果関係を立証していく必要がある。
公務災害認定の要件とは? 以下の2つの要件が認められることが必要 1 公務遂行性 2 公務起因性
公務災害の認定基準(負傷の場合) 1 自己の職務遂行中の負傷 2 職務遂行に伴う合理的行為中の負傷 3 職務遂行に必要な準備行為又は後始末行為中の負傷 4 救助行為中の負傷 5 防護行為中の負傷 6 出張又は赴任期間中の負傷 7 出勤又は退勤途上の負傷 8 レクリエーション参加中の負傷 9 設備の不完全又は管理上の不注意による負傷 10 宿舎の不完全又は管理上の不注意による負傷 11 職務遂行に伴う怨恨による負傷 12 公務上の負傷又は疾病と相当因果関係をもって発生した負傷 13 その他公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな負傷
公務災害の認定基準(負傷の場合) ただし、上記1から13に該当する場合であっても以下の場合は、公務外の災害となります。 ①故意又は本人の素因によるもの ②天災地変によるもの(地震、落雷、水害など) ③偶発的事故(私的怨恨を含む。)によるもの (∵上記①から③の場合には、公務起因性が認められないから)
公務災害の認定基準(疾病の場合) 1 公務上の負傷に起因する疾病 何ら素因を有していなかった者が負傷により発病した場合だけでなく、疾病の素因があって早晩発病する程度であった者が負傷によって発病時期が著しく早まった場合などでも認められる。 2 規則別表第1第2号から第9号までに掲げる疾病(いわゆる「職業性疾病」) 当該疾病にかかるそれぞれの業務に伴う有害作用の程度が当該疾病を発症させる原因となるに足るものであり、かつ、当該疾病が医学経験則上当該原因によって生ずる疾病に特有な症状を呈した場合は、特に反証のない限り公務上として認められる。 3 その他公務に起因することが明らかな疾病 上記1及び2の場合と異なり、疾病が公務に起因して発症又は増悪したものであることが積極的に証明される必要がある。
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) 通勤災害とは… 〔趣旨〕公務遂行性がない通勤行為に対して特別な保護を加えようとするもの。 (∵職員の通勤は勤務の提供と密接不可分の関係にあることや通勤にはある程度不可避的な危険を伴うことがあるため、これらの危険についてもすべて職員に負担させることは適当ではないから。)
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) 通勤災害とは… 職員が、勤務のため、(1)住居と勤務場所との間の往復、(2)勤務場所等から他の勤務場所への移動、(3)(1)の往復に先行し又は後続する住居間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことに起因する災害をいう。 したがって、その移動の経路を逸脱し、又はその移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって総務省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、当該逸脱又は中断の間に生じた災害を除き通勤災害とされる。
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) ■「勤務のため」とは… 移動が全体としてみて、勤務と密接な関連をもって行われるものをいう。 (1)「勤務のため」と認められる場合の例 ・ 途中で勤務又は通勤に関係あるものを忘れたことに気付き、取りに戻る場合 ・ レクリエーション(公務災害と認定される場合)に参加する場合 ・ 遅刻して出勤、あるいは早退する場合 (2)「勤務のため」と認められない場合の例 ・ 途中で自己都合により引き返す場合 ・ 任意参加の親睦会等に参加する場合 ・ 勤務終了後、勤務場所で相当時間にわたり私用をした後、帰宅する場合
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) ■「合理的な経路及び方法」とは… 社会通念上、移動に用いられる経路及び方法のうち、一般に職員に用いられると認められる経路及び方法 (1)「合理的な経路」と認められる場合の例 ・ 交通事情によりやむを得ず迂回する経路 ・ 自動車通勤者が燃料補給及び修理のためガソリンスタンド等へ立ち寄る経路 ・ 共稼ぎの職員が子どもを保育所等に連れていく(迎えにいく)経路 (2)「合理的な方法」と認められる場合の例 通常公共交通機関を利用している者が、 ①勤務終了後の私用のため、自動車 を利用して出勤する場合 ②遅刻状態にあるため、間に合うようにタクシーを利用した場合 ③雨天のため、妻に自家用自動車で送らせた場合
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) 通勤災害とは… 職員が、勤務のため、(1)住居と勤務場所との間の往復、(2)勤務場所等から他の勤務場所への移動、(3)(1)の往復に先行し又は後続する住居間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことに起因する災害をいう。 したがって、その移動の経路を逸脱し、又はその移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって総務省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、当該逸脱又は中断の間に生じた災害を除き通勤災害とされる。
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) ■「逸脱又は中断」とは… 逸脱=通勤とは関係のない目的で合理的な経路からそれること 中断=合理的な経路上で、通勤目的から離れた行為を行うこと 逸脱中又は中断中の災害及びその後に発生した災害は、原則として通勤災害とはならない! 逸脱又は中断すると… ただし… 逸脱・中断が日用品の購入、その他これに準ずる日常生活上必要な行為であり、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、経路に復した後の災害については通勤災害として取り扱う。
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) ■「逸脱又は中断」の具体的事例について
公務災害の認定基準(通勤災害の場合) ■通勤災害認定基本図 通常事案 中断・逸脱
2 認定請求手続について
認定請求手続きについて
認定請求手続きについて 任命権者の意見が書かれていないことが多いので注意!
認定請求手続きについて ■認定請求添付書類早見表(P1)
認定請求手続きについて ■認定請求添付書類早見表(P2)
認定請求手続きについて 被災を目撃した者又は所属長 本人が作成
認定請求手続きについて ■その他の添付資料の記載例 地方公務員災害補償基金 富山県支部HP http://www.pref.toyama.jp/sections/1104/koumusaigai/top.html ■その他諸注意事項 1 公務上と認められるか判断がつかない場合はあらかじめご相談願います。 2 被災した場合は後日の紛争を避けるために痛めた箇所を正確に医師に伝えて受診してください。(自己診断はしないこと。) 3 地方公務員災害補償法の対象職員であるか、各団体の条例適用職員であるかをあらかじめ確認して提出してください。
終わりです。ご清聴ありがとうございました。
具体的事例
具体的事例の紹介について(事例1 :負傷事案) 被災職員 : A消防署消防係 消防士 男性 25歳 診断書病名 : 左母指関節靭帯損傷 災害発生の状況 : 救助訓練として障害突破訓練を実施していたところ、人ていの姿勢をとった際、登はん者が足を掌に乗せた際に右手拇指を蹴り上げられて負傷したもの。 特記事項 : 特になし
具体的事例の紹介について(事例1 :負傷事案) 結論 : 本件災害は公務上の災害と認められる。 理由 : 職員がその職務遂行上必要な研修又は訓練(例えば、警察官の柔剣道練習)中に発生した事故による負傷は、自己の職務遂行中の負傷として公務上の災害と認められる。(『補償実施の手引』P24の8行目参照) 特記事項: 特になし。
具体的事例の紹介について(事例2 :負傷事案) 災害発生の状況 : 平成24年5月24日の午前9時30分頃、児童に提供する給食を調理するため、給食室で野菜裁断機を使用して人参を裁断していたところ、素手で人参を裁断機に入れた際、誤って左手が裁断機の刃に触れて負傷したもの。 被災職員 : A市立B小学校 調理員 女性 35歳 診断書病名 : 左母指皮膚欠損創 特記事項 : 学校では日頃から野菜裁断機の奥深くまで野菜を投入する際には、素手ではなく、専用の棒を使用することにより、怪我がないよう注意して取り扱うよう安全衛生管理上の注意喚起が行われていた。
具体的事例の紹介について(事例2 :負傷事案) 結論 : 本件災害は公務上の災害と認められる。 理由 : 給食調理を職務内容とする調理員が勤務時間内において、人参を裁断機により調理して負傷を負ったことは、自己の職務遂行中の負傷であり、公務遂行性及び公務起因性が認められる。また、被災職員の故意又は素因により負傷した事案ではないことから、公務上の災害と認めることができる。 特記事項: ただし、被災職員は、学校において日頃から喚起されていた安全衛生管理上の注意事項を遵守しておらず、当該注意事項を遵守していれば事故は発生しなかったという特段の事情があれば補償等(休業補償、傷病補償年金又は傷害補償)の制限を考慮する余地があります。(地方公務員災害補償法第30条参照)
具体的事例の紹介について(事例3:負傷事案) 被災職員 : A市環境センター 清掃作業員 男性 40歳 診断書病名 : 左足首捻挫 災害発生の状況 : 被災職員は、炎天下でのゴミ収集作業終了中にのどが渇いたので休息をとろうと思い、通常の搬送経路から約10mほど離れたところにある自動販売機で缶ジュースを買い、車両に乗り込もうとしたところ、道路の段差につまずき転倒し負傷した。 特記事項 : 勤務公署内には、水飲み場があるが、被災時は屋外においてゴミ収集作業中であったため、あらかじめ定められた休息場所はなかった。
具体的事例の紹介について(事例3 :負傷事案) 結論 : 本件災害は公務上の災害と認められる。 理由 : 職員が職務遂行中に、トイレに行く行為や水を飲みに行く行為等の生理的行為それ自体は、私的行為であるが、これらの行為は、職務遂行に通常伴うと認められる必要かつ合理的な行為であるため、勤務場所を離れてその行為を行うための往復中の災害については、職務遂行に通常伴うと認められる合理的行為として公務遂行性が認められる。 しかしながら、勤務公署内に水飲み場があるにもかかわらず、勤務公署を離れて自動販売機等へジュース等の飲料品を購入しに行く行為は、嗜好的要素が強いと考えられるので、このような行為は必要最小限の生理的行為として取り扱うことはできない。 一般に自動販売機で飲料品等を購入する行為は、嗜好的要素の強いものとされているが、本件の場合には、被災職員の通常の勤務場所は屋外であり、勤務公署内のように身近に水飲み場が設置されている場合とは事情が異なっており、また、被災時に缶ジュースを購入した自動販売機が設置されていた場所は、通常の勤務経路とは異なるものの、時間的及び距離的にみても通常の勤務経路から著しく離れているとまでは言えない。
具体的事例の紹介について(事例4 :疾病事案) 被災職員 : A市民病院 看護部(手術室) 看護師 女性 30歳 診断書病名 : C型慢性肝炎(慢性活動性肝炎) 災害発生の状況 : HCV陽性患者に対する手術に使用した器材を片付ける際、吸引に使用していたワイヤーを誤って右手人差し指を指した。被災直後の血液検査では、HCV抗体陰性であった。 その後、災害6か月後の経過観察での血液検査において、HCV抗体陽性と判明し、さらに精密検査でHCV-RNA抗体陽性となり、肝生検で「C型慢性肝炎(慢性活動性肝炎)」と診断され、インターフェロンの投与を受けている。 特記事項 : 被災職員は過去においても肝疾患に罹患したことはなく、家族の中にHCV陽性である者はいなかった。
具体的事例の紹介について(事例4 :疾病事案) 結論 : 本件災害は公務上の災害と認められる。 理由 : 本事案はHCV陽性患者に対する手術看護中の事故である。被災職員の被災直後の血液検査ではHCV抗体陰性であったが、6ヶ月後の経過観察中に行った血液検査により、HCV抗体陽性、HCV-RNA抗体陽性と認められ、さらに、肝生検を行った結果、慢性活動性肝炎と診断された。 疾病の感染経路については、針刺し事故によるものと断定できるものではないが、被災直後の血液検査により、 HCV抗体陰性であったことから、針刺し事故以前には、感染していなかったことが明確である。 さらに、被災職員は肝疾患・輸血の既往がなく、家族にもHCV患者はないことなどから、公務以外の事実による可能性も認められない。 本事案は、看護師が手術看護業務に従事したために発症した災害であり、上記のとおり特段の反証事由もないことから、いわゆる「職業病」として公務上の災害と認められる。(『補償実施の手引』P33(5)①参照)
具体的事例の紹介について(事例5:通勤災害) 被災職員 : A市B課 男性 50歳 診断書病名 : 左足関節開放骨折 災害発生の状況 : バイクにて通勤途中、道沿いのコンビニエンスストアのトイレで用をたし、その駐車場から道に出ようとしたところ、左から来た乗用車と衝突し転倒し負傷したもの。 特記事項 : 被災職員は勤務のため住居と勤務場所を合理的な経路及び方法によって通勤をおこなっていた。
具体的事例の紹介について(事例5 :通勤災害) 結論 : 本件災害は通勤上の災害と認められる。 理由 : 本事案は勤務のため住居と勤務場所を合理的な経路及び方法によって通勤をおこなっていたため、コンビニエンスストアが逸脱・中断に該当するかがポイントとなる。 この点について、通勤経路上でタバコ、雑誌を購入するなどのささいな行為は逸脱又は中断に該当せず、当該行為後及び当該行為中についての事故も通勤上の災害として認められる。(『補償実施の手引』P40 5参照) よって本事案は逸脱又は中断に該当せず、通勤上の災害として認められることとなる。