原子核物理学 第7講 殻模型.

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原子核物理学 第7講 殻模型

積波動関数による近似 多体問題( A 核子系) 次のように一粒子波動関数の積の和で近似する 最も単純な積波動関数は Slater 行列式 反対称化されている, 展開すると A! 項になる

殻模型計算の手法(1) 2重閉殻の芯(core)  陽子も中性子も閉殻をなす芯を仮定する 例:16O, 40Ca  芯の中の核子数 Ac   例: 16O の場合 Ac = 16 模型空間  芯の上の有限な数の1粒子状態を選び,  Av = A – Ac 個の核子を入れる       例: 16O の芯の上の d5/2, s1/2, d3/2           18O のを計算する場合には,   上の3つの1粒子軌道に   2つの中性子を入れる       

殻模型計算の手法(2) 1粒子ポテンシャル(1粒子エネルギー) Hamiltonian 芯の中の核子との相互作用を1粒子ポテンシャルとする

殻模型計算の手法(3) 有効相互作用 原子核内で核子のあいだにはたらく相互作用は, 自由空間における相互作用とは異なる ⇒ 有効相互作用 原子核内で核子のあいだにはたらく相互作用は, 自由空間における相互作用とは異なる  ⇒ 有効相互作用 現象論的(phenomenological)相互作用 簡単な形のポテンシャルを仮定する(例:Gauss 型,Yukawa 型) 行列要素をパラメータとして,多体系のエネルギーを再現するように最小2乗法で決める     例: USD 相互作用,Cohen-Kurath 相互作用 現実的(realistic)相互作用 有効相互作用理論に基づいて,自由空間での2核子散乱を再現するポテンシャルから計算する G行列の方法 UMOA

殻模型計算の手法(4) 基底関数 最も簡単な基底関数は Slater 行列式 j j - 結合1粒子状態を用いる 具体的な例: 18O 1粒子状態   2粒子状態 しかし,Hamiltonian は M = m + m’ を変えない(保存する) あ

  M = 0 の場合

殻模型計算の手法(5) 固有値方程式 固有状態を基底関数で展開( n は基底状態の数) 基底関数の直交性を用いて

固有値方程式を解いて(行列を対角化して), エネルギー固有値と 波動関数(基底関数による展開の展開係数)を求める 右は 18O の例   USD相互作用を用いた計算:   14 ×14 の行列を対角化 エネルギー固有値を実験値と比較   固有状態では J は良い量子数             の状態が得られる

J-scheme Slater 行列式の線型結合で, 角運動量を良い量子数としてもつ基底状態がつくれる このような基底関数に対して, Hamiltonian 行列は block diagonal になる ⇒ 小さな行列の対角化 さらに,アイソスピンを良い量子数と してもつ基底関数を用いることも可能 あ 対称性の利用 あ

Lanczos 法 大次元行列を対角化する便利な方法 ある手順に従って基底関数の線型結合を順次つくる これらの基底関数に対して Hamiltonian 行列は三重対角になる 絶対値が最大の固有状態から順次収束する 数少ない基底関数で固有状態をよく表す

Davidson 法 エネルギーが最も小さい(絶対値は最大)固有状態とその近くの数個の固有状態だけを求めたい場合に,Lanczos 法より 更に効率の良い対角化法

大次元殻模型の困難 1粒子状態の数,核子の数が増えると,殻模型計算の基底関数の数が飛躍的に増大する 下の例は次の殻模型計算における最大次元数 sd-殻核〔8 < Z,N < 20 (sd)n 配位〕, pf-殻核〔20 < Z,N < 40 (pf)n 配位〕

殻模型による回転バンドの再現 48Cr の基底状態回転バンド 40Ca を芯とした (pf)8 配位計算 左図はエネルギースペクトル 右図は慣性モーメントの変化による Back-bending 現象 1粒子軌道として f7/2 に加えて p3/2 を取り入れているのが本質的

Self-consistent な方法 殻模型計算では,多くの場合,2体相互作用の行列要素が与えられ,1粒子波動関数の動径部分の形を仮定しない(あるいは調和振動子波動関数) ⇒ 1粒子波動関数と2体相互作用の self-consistency がない Self-consistent な殻模型計算はない !! Hartree-Fock 計算は self-consistent な計算方法であるが,多体系のは導関数を1つの Slater 行列式で近似する(下の図は 40Ca と 48Ca)

Gauss 基底 11Li の中性子密度分布(Gauss 基底) 1粒子波動関数の動径部分を,たとえば,Hartree-Fock 計算で求めるとき,基底となる関数系で展開し,展開係数を代数的に求めることができる 関数系として,調和振動子基底,Gauss 基底が用いられる 数値的な安定性では,Gauss 基底が良い 11Li の中性子密度分布(Gauss 基底)