危害の発生: 調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 Robert V Tauxe, M.D., M.P.H. 病原体低減のための意見交換

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危害の発生: 調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 Robert V Tauxe, M.D., M.P.H. 病原体低減のための意見交換 第一班 2002年6月6日 Georgetown University Conference Center 危害の発生:  調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 Robert V Tauxe, M.D., M.P.H. Foodborne and Diarrheal Diseases Branch, DBMD, NCID Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, GA <註>は、教材検討委員会が付け加えたものです

これらを防止することは、農場から食卓までの全ての段階において、食品の汚染を減少させる努力に掛かっている。 食品媒介性疾患の公衆衛生上の負担 毎年 7,600万人が罹患している。 ○ アメリカ人の 4人に 1人が毎年食品媒介性疾患に罹っている ○ それによって、アメリカ人の 1,000人に 1人が毎年病院に掛かっている ○ 65億ドルが医療費等の出費になっている  これらを防止することは、農場から食卓までの全ての段階において、食品の汚染を減少させる努力に掛かっている。

食品媒介性疾患の特徴 ○ 様々な異なった病原体による感染 ○ 一つの大事故で罹患することもある ○ 様々な異なった病原体による感染 ○ 一つの大事故で罹患することもある ○ 大半の症例は「散発的」である: 1人だけの場合や   確認できない分散した事例 ○ 病原巣(リザーバー) ・ ある種の病原体では保菌者(ヒト): 赤痢、   A型肝炎、ノーウォーク・ウイルス ・ ある種の病原体では保菌動物: サルモネラ、   カンピロバクター、大腸菌O157、リステリア、   腸炎ビブリオ、エルシニア、トキソプラズマ ○ いくつかの異なった経路で、しばしば感染が起きる ・ 特定の食品、飲用水、動物との直接接触、   患者との直接接触

食品を媒介とする主な病原体 ○ 細菌: プリオン ○ 寄生虫: ○ ウイルス: 米国で2002年に確認されたもの 赤痢菌 黄色ブドウ球菌 ○ 細菌: 赤痢菌 黄色ブドウ球菌 連鎖球菌 コレラ菌 ビブリオ・バルニフィカス その他のビブリオ (腸炎ビブリオ等) エルシニア セレウス菌 ブルセラ菌 カンピロバクター ボツリヌス菌 ウェルシュ菌 大腸菌O157:H7 O157以外の   毒素原性大腸菌 (STEC)   病原性大腸菌 リステリア菌 チフス菌 サルモネラ菌 * プリオン * * ○ 寄生虫: ○ ウイルス: * クリプトスポリジウム シクロスポラ ジアルジア トキソプラズマ 旋毛虫 * ノーウォーク ロタ アストロ A型肝炎 *: この30年の間に食品媒介性が確認されたもの

食品を媒介とする主な病原体 人畜共通 感染症 米国で2002年に確認されたもの ○ 細菌: ビブリオ・バルニフィカス エルシニア 赤痢菌 黄色ブドウ球菌 連鎖球菌 コレラ菌 ビブリオ・バルニフィカス その他のビブリオ (腸炎ビブリオ等) エルシニア * プリオン プリオン ブルセラ菌 カンピロバクター 大腸菌O157:H7   毒素原性大腸菌 (STEC)   病原性大腸菌 リステリア菌 サルモネラ菌 セレウス菌 ブルセラ菌 カンピロバクター ボツリヌス菌 ウェルシュ菌 大腸菌O157:H7 O157以外の   毒素原性大腸菌 (STEC)   病原性大腸菌 リステリア菌 チフス菌 サルモネラ菌 * 人畜共通 感染症 * ○ 寄生虫: ○ ウイルス: * クリプトスポリジウム シクロスポラ ジアルジア トキソプラズマ 旋毛虫 クリプトスポリジウム トキソプラズマ 旋毛虫 * ノーウォーク ロタ アストロ A型肝炎 *: この30年の間に食品媒介性が確認されたもの

食品を媒介とする 新たな人畜共通感染症 ● 感染している家畜は見かけ上健康である ● 動物では、持続性感染または再感染を繰り返す 食品を媒介とする 新たな人畜共通感染症 ● 感染している家畜は見かけ上健康である ● 動物では、持続性感染または再感染を繰り返す ● 汚染された食品は、見た目は正常と変わらない ● 現在の検査手順では見逃される ● 病原体は通常の処理や準備過程で生き残る ● 地球全体に静かに広がっている ● 新たな制御手順が必要とされている ● 新たな病原体が発見されるかもしれない

農場から食卓までのフードチェーン: 一般的筋書き  一般的筋書き 生産 農場、牧場、養殖場 食肉センター、缶詰工場、包装出荷業者、食品工場 処理・加工 最後の調理場: 営業施設、公共施設、家庭 最終準備と調理

調理場で何が起きているのか? ● 1993-1997: CDCに報告された2,751件の 食中毒事故の内、43%は食堂、販売店などである   食中毒事故の内、43%は食堂、販売店などである ● 調理場における事故発生原因 73% : 加熱不足 38% : 調理人の不衛生 21% : 不適切な料理法 ● 1980-1995: ニューヨーク州で1806件発生した 32% : 材料の汚染 24% : 生または加熱不足の料理を摂食 23% : 無認可店で購入 23% : 調理人が病気

事故は複合的原因によって起こる ● 食中毒事故の調査で、食品取り扱い上の問題点がしばしば報告されている ● 食中毒事故の調査で、食品取り扱い上の問題点がしばしば報告されている ● 事故が起きていない調理場でも、おそらく、頻繁にあることだろう ● 食品の適切な取り扱いに絞った訓練が重要、とくに手洗い ● 病原体が調理場に入り込むのを減らすこともまた重要である

最終準備の過程で病原体が食品に入る: 汚染源は何か? ● 食材は汚染状態で搬入される とくに、生の動物性食品 <註> 米国では、乳、肉、卵、魚介類などを「潜在的危害性食品(Potentially Hazardous Food)」とし、輸送、保管における温度管理や取扱いの基準を法律によって定めている(食品輸送衛生法など)。 ● 食品取扱者が病原体に感染している ● それ以外の、施設環境の汚染源

汚染している生の動物性食品が 調理場に搬入され時 ● 取り扱いによって、リスクがさらに大きくなる ● 容易に、他の食品に交差汚染を起こす 手、調理器具、調理台の表面を介して ● 不十分な調理による直接的リスク(FoodNet 2000による調査) ○ 生の牡蠣(カキ): 2.5% ○ 生焼けの牛ひき肉: 25% ○ 半生の卵料理: 27% ● 3%しかハンバーガーに温度計を使っていない <註> 中心温度を測るために、利用を指導している

病気の食品取扱者が調理場に入った時 ● 彼らは働く、病気が治るまで無給ではいられないから ● 彼らは糞便や嘔吐物に病原体を出す ● 彼らは働く、病気が治るまで無給ではいられないから ● 彼らは糞便や嘔吐物に病原体を出す ● 個人衛生の間違いによって、食品を汚染させる ● とくに、ヒトが病原巣となる病原体 ノーウォーク・ウイルス、赤痢菌、A型肝炎 ● 時には、動物が病原巣である病原体 サルモネラ、大腸菌O157、カンピロバクター

食品は、それ以外の 施設環境の汚染源によっても汚染される ● 周囲に動物がいる中で、食品が調理され、食べられる ○ 伴侶動物、カウンティーフェア(共進会)、   「バーンダンス(祭りの踊り)」 ○ ウイスコンシンで2001年に起きた大腸菌O157に   よる34名もの大規模事故は、家畜品評会での   朝食だった ● 汚染した水を使って調理した食品 ● ネズミ、昆虫、その他の害獣や害虫が交差汚染させる

調理場での汚染を減らすための 公衆衛生上の予防策 <註> 1988年のO157事故から10年経った1997年の調査では、 ● 基本的な食品衛生教育 ● リスクが多い食習慣を止める 34%が生焼けハンバーガー(Pink hamburgers)を好み、高学歴、高収入の者ほど高率であった。 ● 生肉の取り扱いと幼児の世話を同時にしない ● 安全に処理された食品を購入する: ○ 殺菌された牛乳やジュース ○ 殺菌された殻付卵 ○ 放射線殺菌された牛挽肉 ● レストランには、有給の病気休暇制度について 問い合わせる

調理場での汚染を減らすための 食品取り扱い施設での予防策 ● 基本的な食品衛生訓練とその証明 ● 有給の病気休暇制度 <註> 定期健康診断と毎日の始業時健康チェックは、従業員の衛生管理に欠かせないが、自覚症状があっても出勤する事情を「有給休暇」で解消することが大切である ● 手洗いを容易にできるようにし、回数を増やす ● 調理済み食品に触る機会を減らす ● 購入契約において、病原体低減基準を導入する

ハイリスク集団に給仕する 施設調理場において、 現在利用できる安全に処理された食品 ● サルモネラ・エンテリティディス感染を防ぐための、 殺菌された殻付卵と液卵 ● 大腸菌O157:H7とサルモネラ感染を防ぐための、 放射線照射殺菌された牛挽肉 ● カンピロバクター感染のリスク少なくするための、 凍結鶏肉と七面鳥肉

食品安全性の教育は重要であるが、 公衆衛生を護るためには十分ではない ● 生の動物性食品は、しばしば汚染されている ● 重い感染症であり、重大な合併症を起こす ● 伝統的料理は、制限された料理法を求める ○ 生牡蠣(カキ)、レア(生焼け)の牛挽肉、   半熟卵、オランダ風ソース ● 完全に料理された食品には、なんら問題がない ○ 固く茹でた卵、ラザーニャ(薄い板形のパスタ)   「こんがり焼いた」ハンバーガー ● 生肉や卵を料理する人は、それ以外の食品を料理する人と分ける ● 生鮮農産物は、洗っただけで料理せずに食べる

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか 飼料、飲水、糞尿、野生動物、新規導入家畜 生産 係留場所、生体洗浄場所、糞尿、衛生設備、交差汚染 処理・加工 時間、温度、交差汚染、従業員の健康、衛生 最終準備と調理

病原体の基本的出所 病原体 出所(汚染段階) ○ カンピロバクター ○ 家禽(生産段階) ○ 大腸菌 O157:H7 ○ 牛(生産段階) ○ カンピロバクター ○ 家禽(生産段階) ○ 大腸菌 O157:H7 ○ 牛(生産段階) ○ サルモネラ ○ 家禽、牛、豚、 農産物(生産段階) ○ エルシニア ○ 豚(生産段階) ○ リステリア ○ 調理済み肉製品 (処理・加工段階) ○ ノーウォーク・ウイルス ○ ヒト(生産および準備段階) ○ A型肝炎 ○ ヒト(生産および準備段階)

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか 腸炎ビブリオ 養殖場における魚介類 生産 家畜 作物 魚介類 処理・加工 交差汚染 最終調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか ノーウォーク・ウイルス 生産 家畜 作物 魚介類 患者 糞便汚染 処理・加工 最終調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか サルモネラ 家畜の保菌 生産 家畜 作物 魚介類 糞便汚染 処理・加工 最終調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品

"Good Agricultural Practices" "Good Manufacturing Processes " 農場から食卓までのフードチェーン: 多くのポイントで制御が可能です 農場における衛生: 飼料の安全性と飲料水の消毒、その他の「適正な農場衛生管理」 "Good Agricultural Practices" 生産 食品工場の衛生: 品質管理、HACCP、微生物学的検証、監視、その他の「適正な製造工程」 "Good Manufacturing Processes " 処理・加工 病原体殺滅工程 殺菌、滅菌缶詰製造法、放射線照射 食品取扱者: 訓練、手洗い励行、病気休暇 食品製造業: 食堂の監視 消費者教育 最終調理

食品製造業の模式図 家畜 作物 魚介類 生産 輸送/ 繋留施設 HACCP HACCP 処理・加工 流通 調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品 消費(付随する食中毒)

HACCPによるモニタリング検体(FSISのデータ) 牛ひき肉におけるサルモネラ陽性率の推移 (食肉センターの規模別) <註> 規模により、 実施時期をずらした 着実に減少してきた 陽性率(%) 1998 1999 2000 2001 8 7 6 5 4 3 2 1 基準 大規模施設 ● 中規模施設 ● ● 小規模施設

ブロイラー、七面鳥ひき肉、豚肉における サルモネラ陽性率の推移 HACCPによるモニタリング検体(FSISデータ) ブロイラー、七面鳥ひき肉、豚肉における サルモネラ陽性率の推移 <註> HACCPにより、 サルモネラ汚染率は減ってきた 40 30 20 10 1998 1999 2000 2001 ● 七面鳥ひき肉 陽性率(%) ブロイラー ● ● 豚肉

ヒトの疾病監視データ(CDC-FoodNet) <註> 農場・食肉センターでの衛生対策にもかかわらず、サルモネラ食中毒の発生は止まらない! 1996を基準とした食中毒発生数の減少割合 <註> 農場・食肉センターでの衛生対策にもかかわらず、サルモネラ食中毒の発生は止まらない! 1996 1997 1998 1999 2000 2001 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 ● ● ● ● 増減率 減少割合 ● : サルモネラ 15% ● : カンピロバクター 25% ● : リステリア 31% ● : エルシニア 49%

近未来の食品媒介性疾患の制御ポイント (微生物学的検証を伴った) 家畜 作物 魚介類 生産 QAP 輸送/ 繋留施設 HACCP HACCP 処理・加工 流通 E、HW、SL 調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品 消費(付随する食中毒)

まとめ ● 食品媒介性病原体は、フードチェーンの種々のポイントで食品を汚染する。 ● 食品媒介性病原体は、フードチェーンの種々のポイントで食品を汚染する。 ● 病原体を減らす対策によって、それぞれの段階でリスクを減らすことができる。 ● 微生物学的モニタリングによって、制御手段の有効性を検証できる。 ● 調理場では: ○ 調理者の教育が重要であり、同様に、 ○ 手洗いの励行 ○ 病気のヒトを調理場に入れない、そして、 ○ 調理場に持ち込む前に、食材の汚染を減らす。 ● 購入の際に、商品表示されている微生物学的基準が役立つ。 ● ハイリスク者は、安全性がより高い食品を用いる。