<近赤外線多天体分光撮像装置MOⅠRCSの全体像と開発状況>

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<近赤外線多天体分光撮像装置MOⅠRCSの全体像と開発状況> Multi-Object InfraRed Camera and Spectrograph MOIRCS 小西 真広, 市川 隆, 鈴木竜二, 東谷千比呂, 勝野 由夏 ( 東北大学 ) 山田 亨 ( 国立天文台三鷹 ), 小俣 孝司, 西村 徹郎 ( 国立天文台ハワイ観測所 ) http://www.astr.tohoku.ac.jp/~tokoku/moircs/index.html MOIRCS とは MOS交換機構(Multi-Slit Mask Exchange Unit) ◆スリットマスク交換手順◆ スリットマスク 1.観測に必要なスリットマスクを用   意してカルッセルに収納し、予   め真空・冷却しておく。 マスクデュワー (カルッセルデュワー) ゲートバルブ 直線導入器 2.カルッセルが回転し、目的のマ   スクが直線導入器の前に来る。 Feature 3.ゲートバルブが開き、直線導入   器がマスクをつかむ。 ◎スリットマスク ・・・ 直径180mm、厚さ50~70μmのアルミニウムの板 ◎カルッセルには1回の観測に十分な、24枚のスリットマスクが収納可能.                          → 観測中に任意のスリットマスクを選択. ◎               を可能にするため、スリットマスクを冷却. ◎カルッセルと本体デュワーは、切り離し可能で、独立した真空・冷却構造.             → 本体デュワーの中を真空・冷却に維持したまま、マスクデュワーだけ              を大気圧に戻し、加工したマスクの入れ替えをする事が可能. ◎マルチスリットマスクは1枚当たり最大50スリットの加工が約1時間.             → 前日の撮像観測を基に分光観測計画を立て、昼間のうちに必要なマ              スクを準備してカルッセルに入れ、真空・冷却する、というスケジュー              ルが可能. Kバンドでの分光 すばる望遠鏡 (国立天文台提供) 4.直線導入器がマスクをカセグ   レン焦点面まで引きずり出す。 近赤外線多天体分光撮像装置 すばる望遠鏡第2期共同利用観測装置 東北大学と国立天文台ハワイ観測所の共同プロジェクト 5.ゲートバルブが閉まったら、   観測開始。 所要時間約3分 !! Specification ★有効波長域 : 0.85 ~ 2.5 um ★波長分解能 : 500, 1000, 2000 ( 0.3” slit ) ★回折素子 : グリズム ★フィルター : z, J, H, K’, K +狭帯域フィルター ★検出器 : 2K x 2K pixels HgCdTe(HAWAII-2) x 2枚 18 μm/pix ★サンプリングレート : 0.117 ″/pix ★収納できるマスク数 : ~24 枚 ★スリット数 : ~50 スリット/マスク ★大きさ : 2m x 2m x 2m 総重量 : 約 2 t ★有効視野  : 4′ x 7′ ★観測モード : 広視野撮像モード マルチスリット多天体分光モード ★限界等級 撮像(積分時間 1 時間,S/N = 10 ) : J=23.8mag, H=23.1mag, K=22.3mag 分光 (積分時間 1 時間, S/N = 5, R= 500 ) : J=21.3mag, H=20.8mag, K=20.0mag ★広視野撮像 として  ◎ 赤方偏移 5-10 の天体の発見・探査     Drop-out 法を用いる事により,赤方偏移が5を超える天体の発見を目指す.MOIRCSを    用いる事で,これまでにない大きな体積での探査が可能となり,その数密度に強い制限    がつけられる.  ◎ 高赤方偏移における銀河(z = 2-5 ) の質量分布     広視野撮像観測により,z=2–5 の高赤方偏移宇宙において、銀河の恒星質量分布を求    め,宇宙における高赤方偏移の銀河形成史に迫る.さらにはMOIRCSによる多天体分     光により,十分に明るい銀河では全体の力学質量を,また暗い銀河ついては相対的な     力学質量と恒星質量分布の関係について明らかにすることが出来る. ★多天体同時分光 として  ◎高赤方偏移における星形成と化学進化     赤方偏移2 – 5以遠の天体からの輝線を,MOIRCSを用いてこれまでの10倍以上の効     率で観測することで,高赤方偏移宇宙の,おそらくは形成期にある若い銀河の一般的な     性質を明らかにしてゆくことが出来る. MOIRCSでの天文学(Motivation) 検出器系(Detectors&Control System)  HAWAII-2 ( HgCdTe Astronomical Wide Area Infrared Imager –2 ) の略. HAWAII-2 2048 x 2048 pixels という現在世界最大のフォーマットを持つ近赤外線アレイセンサーである。 Cassegrain F.O.V (φ6 ′) HAWAII-2 HAWAII-2 image!! HAWAII-2 Science grade 1999年からHAWAII-2 を駆動するためのコントロールシステム(TUFPAC) を開発. ウィンドウ すばるカセグレン焦点面 視野分割鏡 コリメータ(3 群 4 枚) フィルター&グリズムターレット, コールドストップ カメラレンズ(2 群 6 枚) 分光は光路に挿入されるグリズムによって行われるので,撮像と分光を簡単に切り替えることができる。 ◆F 値 : 3.926 ( 0.117″/pix ) ◆Ensquared Energy : 80 % ( 2 x 2 pixels ) ◆レンズ材には赤外線を透過する材質 (CaF2, ZnSe,      Fused Silica, BaF2) を使用. ◆Kバンドでの観測のために全体が 77 Kまで冷却される. Feature 現在,ミラーマウントとグリズムの設計・製作中である. 全視野・全波長域において 0.117”/pix という高い結像性能を達成 !! 光学系(Optics) = Collimator+Camera HAWAII-2の性能とすばる望遠鏡の集光力を最大限に活かすための仕組みで,1光路の場合より最大2倍程度多くの天体の分光を行うことができる。 Why ? Zoom up! 駆動試験の結果TUFPACを用いて,ついに2001年9月、HAWAII-2 による画像取得に成功 !! Spectral images TUFPAC & Feature ( TUFPAC = Tohoku University Focal Plane Array Controller ) 一連の動作制御をLINUXマシーンとDSPボードで行う. HAWAII-2 は読み出し時間を短縮するために、それぞれが独立した output port を持つ4つの1024 x 1024 pixels の象限から成っている。 フロントエンド回路は、4象限を同時に読み出すために、1つのHAWAII-2につき、プリアンプ、ADコンバータをそれぞれ4つ用いた構成となっている。 Operation パソコンからDSPボードにプログラム開始の命令を送る. DSPボードはフロントエンド回路にクロック信号を送る. 4つのデータはプリアンプで同時に増幅されて,ADC でディジタル化される. DSPボードのメモリに保存される. パソコンがDSPメモリからデータを読み出す. クロックが HAWAII-2 に送られると,HAWAII-2 の4領域からデータ が送られる. <4チャンネル読み出しの場合> 現在、すでに基本的なシステムは完成しており、さらに読み出し時間を短縮するために、“32チャンネル読み出し”用にプリアンプ、ADCボード、コンフィギュレーションボードの改良を行っている。 開発状況と今後の予定(Status & Schedule) 2003年 春 : First Light !! ☆デュワー真空・冷却実験 ☆光学素子アラインメント・低温実験 ☆HAWAII-2 Science Grade 駆動・性能評価実験 ☆MOSの冷却駆動実験 ☆装置全体の制御ソフトウエアの整備 ☆各部のハウスキーピングデザイン ☆光学系の設計・製作終了 ☆MOS機構の設計・製作終了 ☆デュワー設計・製作・真空実験終了 ☆HAWAII-2 Engineering Grade 駆動・性能評価実験終了 ☆HAWAII-2 control system の開発終了