論文紹介07(2): ULXsの最近の論文から November 19, 2007 Tsunefumi Mizuno

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論文紹介07(2): ULXsの最近の論文から November 19, 2007 Tsunefumi Mizuno Hiroshima University “New flaring of an ultraluminous X-ray source in NGC 1365,“ R. Soria et al. 2007, MNRAS 379, 1313

UltraLuminous X-ray sources (ULXs) X線連星(M=1-10Msolar)、活動銀河核(M=106-109Msolar) コンパクト天体への質量降着で輝く 放射圧<=重力の条件;エディントン限界 Le=1.5x1038(M/Msolar) erg/s) 中性子連星なら2x1038 erg/s 星の進化でできるブラックホール(10Msolar)なら2x1039 erg/s 1970年代、Einsteinが1039 erg/sを超える天体 (ULXs)を近傍銀河中に多数発見。 (Fabbiano et al. 1992) … 測光 「あすか」により~10のULXsのスペクトル解析。多温度黒体放射(MCD)の発見(Makishima et al. 2000) … 分光 Newton/Chandra/Suzakuによる詳細なスペクトル解析。100以上? … 精密分光 XIS0 (0.3-10 keV) X-1 SN1978K 7′ X-2 「すざく」によるNGC1313のイメージ。1039 erg/sを超える少数の天体が銀河からのX線放射のほとんどを占める Cal sources

Opt. thick cool/truncated disk ULXs/BHBの状態遷移 中質量ブラックホールの有力候補であるULXsとブラックホール連星を統一的に理解したいと考えるのは自然でしょう 1 10 100 Energy(keV) Low State Slim Disk High State Very High State PL with thermal cutoff PL Opt. thick disk PL with cutoff (disk photon Comptonization) Opt. thick cool/truncated disk Opt. thick high-temp disk McClintock & Remillard 2006 Kubota & Makishima 2004 High Luminosity Slim Disk Very High State High State Low State Low Luminosity

ULXs研究の現状 BH連星であることはコンセンサスがとれている Beaming説(エディントン限界を大きく破る)にたち、M~10Msolarとする人もいる MCDをどうbeamingするか、状態遷移をどう説明するか?少数派。 状態遷移がしばしば見られる。 「Low State<->High State」とみなす「Very High State <-> Slim Disk」とみなすかは人による。 Soft excess(~0.2 keVのMCDないしは黒体放射)がしばしばみられる。 High StateとみなすとRin>1000 km、M=数100 Msolar Very High Stateとみなすと「内側の欠けた」降着円盤。M=50-100Msolar (解析が正しければ解釈は著者の自由ですが、変動する天体なのに一部の観測結果だけで議論を展開する論文(わりと多い)はいかがなものかと個人的には思います) 本日紹介するのは、NGC1365中のULXの「あすか」「Newton」「Chandra」によるデータ解析 by R. Soria et al. (2007 MNRAS, 379, 1313)

X-1 in NGC 1365 1040 erg/s ! HSTによりD=19+-1Mpcと求まっているのも利点 UVバンドでの銀河のイメージ。赤丸はULXの位置(X1が一番明るい) PLモデルを仮定したROSAT、ASCA、Newton、Chandaによる0.3-10keVの光度

E4、E5でのスペクトル E4 E5 soft excessの存在は有為(F-testによる) Tin=0.27 keV Rin=1600/cosq km G1=1.1 G2=2.5 Eb=5.7 keV soft excessの存在は有為(F-testによる) E4はPLに折れ曲がりの兆候。(ULXにしばしば見られる) E5はsingle PL。MCD(Slim Disk)は棄却される E5 Tin=0.41 keV Rin=700/cosq km G=0.8

フレア時のスペクトル A3 G=1.9 A5 A5/A3比 G=1.7 A3-A5ともsingle PLで説明可(MCDでもOK) フレアの落ち始めは、0.7-2 keVだけが下がる Ionized absorption (N=1022 cm-2, x=L/nr2~100) A5 A5/A3比 G=1.7

Discussion(1) N=1022 cm-2, x=L/nr2~100なるionized absoption 0.7-2 keVの吸収 N=1022 cm-2, x=L/nr2~100なるionized absoption L=5x1040 erg/sより、等方的なシェルを仮定するとr=5x1016 cm (0.01pc)。これは連星系としては大きすぎる X線の一部(~10%)が吸収されていると考えるとうまくいく アウトフローが、放射の一部を隠した? 放射に寄与する円盤、コロナも吹き飛ばす?(光度減少の要因) すると光度は、エディントン限界に近いはず。M~200Msolar

Discussion(2) Soft excess (Tin=0.2-0.4 keVのMCD) MCDのRin(E4で1600 km、E5で700 km)を最終安定軌道とすると、M=180 MsolarおよびM=80 Msolar Rin一定でないので、駄目 そもそも系内BHでRin=最終安定軌道が確立した天体は、MCD成分が卓越 Very High State(コンプトン成分が卓越)では、円盤の温度上昇(内側ほど高温)が頭打ちになる(Kuncic & Bicknell 2004) Rinは”transition radius”とみなすべき MCD成分が全放射の1/fの時は、Rin=f x Riso(真の最内縁) (Soria et al. 2007 in preparation) f=4, Riso=400 km => M=50Msolar程度(アウトフローがあるので、不定性は大きい) その他 ビーミングを考えると、エディントン限界M=200Msolarよりは小さくなる 系内天体はせいぜい3x1039 erg/sなので、10Msolarより大きいのは間違いないであろう