商圏・行動圏の把握と変化 ~岡山県民生活行動圏調査より~

Slides:



Advertisements
Similar presentations
地理情報システム論 第11回 GIS による処理技法 アドレスマッチングの利用 空間的分布の特徴の把握.
Advertisements

2.一極集中と多極分散. 連携の在り方 都市の発生 分業の発生規模の経済 ・地域特化の経済 ・都市化の経済 集積 大都市の形成.
平成 27 年度「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」 事業計画概要 (様式1)(別紙 4)① 「事業名」(学校名) 実施体制イメージ図 参加・協力機関 ○ イメージ図や協力機関等を記載して、実施体制をわかりやすく記載する。 ※代表機関には下線を引くこと。 参加・協力機関: ○○ 機関.
消費者行動の変化 MR 4215 USU 1. 目次 1、消費者行動について 2、 AIDAM の法則 3、 AISAS の法則 4、 Web マーケティング 5、まとめ 6、参考文献 2.
プッシュ型メディアによる広告 2012/10/15 情報管理論 関係継続の実践 川村洋次 教科書ページ 経営情報論.
平成27年度補正予算IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (企業保険者等が有する個人の健康・医療情報を活用した行動変容促進事業)
テクノロジーマネジメント研究科 1回生 香山 幸秀 城念 佑次
地理情報システム論 第14回 GISによる処理技法と応用(3) ラスタ形式による空間的演算 ~土地利用の予測
既存ストックを活用した市街地整備手法の創設(個別利用区制度の創設) ○ 市街地再開発事業においては、現行制度上、既存建築物を残しながら事業を実施するためには施行地区内の 関係権利者の全員の同意を得る必要がある。 ○ 今回の制度改正により、関係権利者の全員の同意によることなく、有用な既存建築物を残しつつ土地の整序.
社会調査とは何か(3) 調査対象者の選定方法
平成26年度 地域公共交通確保維持改善事業 事業評価 生活交通ネットワーク計画(地域内フィーダー系統)の概要
マーケティング戦略の決定.
宮っ子自転車おかたづけ大作戦 ~宇都宮市における駐輪政策~ 宇都宮大学 中村行政学研究室 まちづくり提案Aチーム
行動モデル夏の学校 買い物地選択行動 モデルのパラメータ推定
消費者行動 堀 啓造 香川大学経済学部.
「知的財産(活動)による事業貢献の“見える化”に向けて」
小樽市における 将来的必要医療・介護病床数 ~行政資料による簡易シミュレーション~
食料自給率の「なぜ?」             著者 末松広行 稲葉ゼミ  06a2139z 半田哲也.
テーマ:市町村合併を推進すべき 11HRディベート大会 平成15年9月25日(木) <否定側> ●山口美希 ●内村華奈子 ●今井優香
市場調査の手順 問題の設定 調査方法の決定 データ収集方法の決定 データ収集の実行 データ分析と解釈 データ入力 データ分析 報告書の作成.
横浜市立大学 齊藤毅憲ゼミナール 今若美夏・山田芙由子・鈴木武・濱嶋紗弓・鷲頭有沙
横浜市立大学 齊藤毅憲ゼミナール 今若美夏・山田芙由子・鈴木武・濱嶋紗弓・鷲頭有沙
平成27年度補正予算IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (企業保険者等が有する個人の健康・医療情報を活用した行動変容促進事業)
ファッション産業とアパレル産業 2311395 山口 湧平.
来客者数に与える気温と降水量の影響に関する研究
6.総合事業・整備事業への移行 【参考】大和高田市のケアプラン分析の例
1971年にスタートした長期時系列の「福岡エリア」生活者データ
日本の都市と計画の展望 国土の様相,都市の様相から計画へ 大分大学  佐藤誠治 萩島教授退官記念シンポジウム.
東山動植物園における象舎の改装が利用者に与える影響
横浜にLRTを走らせる会 横浜の公共交通活性化をめざす会 柴田 智洋
次の紹介内容は ⑥洪水・はん濫の情報を確認する手段 ⑦洪水発生時の避難のポイント ⑧居住地域のハザードマップを見てみよう ⑨避難の際の心得
大学での講義中の スマートフォンの私的使用 ―その頻度と内容-
変わりゆく空間の在り方 高千穂大学商学部 新津ゼミナール映画班 甲斐大介 田中淳也 若林光昭 渡邊優子.
調査対象の決定 (今日の目標) 1. 全数調査と標本調査の違いを理解する。 2. 標本調査の種類と特徴を理解する。 3.
マーケティング戦略.
事業の全体概要図イメージ例 事業区分:①新たなヘルスケアサービス創出支援事業 コンソーシアム等名称; 1-① 事業の背景・目的
手軽におしゃれ、ディップ式ポテトチップス
電力自由化の是非 肯定派.
田中 潔 (岡山商科大学商学部) 社会調査における 地理情報の活用 田中 潔 (岡山商科大学商学部)
Net de sample 茉莉花茶.
小関ゼミナール 町おこし班 幸得 正快 加納 爽平 羽岡俊樹
マーケティング戦略の決定.
東洋大学 中野ゼミ E班 多田将輝 趙路潔 垣沼聖美 山崎心
地方都市における 大型店舗の郊外進出と 商店街の衰退
Myルートガイドサービス 防災 減災 少子 高齢 産業 創出 My ルートガイドサービス 誕生の キッカケ
名古屋市のヒートアイランド対策 C08001 赤塚裕司 C08002 池田 仁 C08003 井田 軍            C08004 市橋和茂
導入段階.
商店街×ICT活用による 地域活性化のご提案
原田 洋輔 江黒 晃 小川 華奈 木村 洋史 佐々木 翔一 永嶋 広樹 広重 求 松本 立子 担当教官: 石田東生
おかやま商圏の 特徴と変化 田中 潔 (岡山商科大学商学部)
都市・港湾経済学(総) 国民経済計算論(商)
平成27年度補正予算IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (企業保険者等が有する個人の健康・医療情報を活用した行動変容促進事業)
福津市  住みやすい街政策 榎本博議員事務所 金澤 優希 堤 公稀 .
参考資料1 都道府県に占める政令市・特別区のシェア等の比較 参考資料1 人口(人) 面積(K㎡) A GDP(億円) 昼夜間人口 比率(%)
Residential Laboratory -22世紀に向けた集合住宅の再編-
福島県 帰還支援アプリ 防災 減災 少子 高齢 産業 創出 帰還支援アプリ 誕生の キッカケ 帰還支援アプリ でこう 変わった!
第10回 GISで地域構造を捉える 地理的空間構造 空間構造の捉え方 都市と都市システム GISによる都市システムの解析.
我が社の経営の現状と課題 題名 ○○○○ ○○農園 (氏名) 経 営 概 要 所在地 ○○市○○ 主要事業 (品目) 様式1
現代社会と経営 (11月22日:商店街) 長岡技術科学大学 情報経営系教授 阿部俊明.
山崎孝史 大阪市立大学大学院文学研究科 教員
1~15までの数字の中から、 1個の数字を選び、覚えて下さい。
地理情報システム論 第8回 GISによる処理技法(1) データの入手と座標系の変換 ベクタ形式における空間的演算(1)
会 場 あおもり健康志向スイーツゼミナール概要 青森県観光物産館アスパム 【ゼミナールの目的・内容】 【講師(総合アドバイザー)】
BSJ特別セッション(2001、甲子園大学) 「人間科学データの蓄積と利用」 指定討論2 林 篤裕 (大学入試センター)
○○圏域 新たな広域連携促進事業概要 ※連携する市町村を黄色で着色した地図を 添付 圏域市町村 圏域人口 主要産業 圏域面積 圏域の特長
第3回データ運用検討分科会資料 資料3 第1回・第2回分科会の振り返り
消費者行動.
厚生白書 人口減少社会の到来と少子化への対応 971221 波多野宏美.
大学生の私服について.
ワークシート イノベーション推進計画.
Presentation transcript:

商圏・行動圏の把握と変化 ~岡山県民生活行動圏調査より~ 田中 潔 (岡山商科大学商学部) tanaka@po.osu.ac.jp

主な動機・目的 岡山県内の生活圏・行動圏の把握 長年にわたるデータ蓄積と整備 新たな行動モデルの確立 住民の生活行動圏は行政界とは異なる様相を示しており、地域銀行として基盤データとして整備しておかなければならない 長年にわたるデータ蓄積と整備 単発では意味がない。長期間の追跡(定点調査) 新たな行動モデルの確立 行動圏の岡山方式モデルができないだろうか

主な研究者スタッフ (順不同、敬称略) 岡山大学グループ 脇本 和昌(故人)、垂水共之、栗原考次 岡山商科大学グループ 鳥越 良光、田中 潔

岡山県民の生活行動圏調査(1979~2003) 岡山経済研究所 http://www.okayama-eri.or.jp/ (財)岡山経済研究所が県民の行動様式把握と行動モデル化を目的に実施 第1回目は1979年に実施 最近には,2003年に第10回目を実施.2004年に報告書発行 岡山県内市町村単位に聞き取り調査(層別2段抽出法,18歳以上)を実施 住所,通勤・通学,通院,交際,観光,買物などの出向先,行動様式、理由などについて調査

調査対象地域の推移 毎回4~8千名を調査

いくつかの成果 岡山県民の生活行動圏調査報告書(第1回~第10回) 研究所会員や主要機関に配布 より詳細な結果については研究所会員に有償提供 岡山県民の生活行動圏調査報告書(第1回~第10回) 研究所会員や主要機関に配布 より詳細な結果については研究所会員に有償提供 研究所報「岡山経済」にて連載・特集 主要市部結果については岡山県の消費動向調査にて流用→その後県は中止 岡山県商業の重要な基盤データ

お若い頃の垂水先生 1979年当時、データ入力も大変だった IBM型パンチカード1枚80byte、1ケース=約8枚、7,000人で5~6万枚以上 写真の1ケースが約2,000枚 少なく見積もっても25ケースの読み取り (写真のカード群が2HD3枚に収まった) 写真:http://www.ems.okayama-u.ac.jp/stat/tarumi/homeJapan.htmlより

住所-出向先行列T m=78(岡山県内) ある品目について, 住所iに居住する人から出向先jの回答が得られる ( i,j=1,2,…,78)

依存度 A市に居住する者が、B町へ出向き、ある目的(購買や行動)を行う割合を依存度とする。 =B町に行く者の合計÷A市でその目的を行う者の合計(18歳以上) 例 生鮮品をB町で買うA市の依存度 =  A市に住みB町で生鮮品を買う者の合計  A市に住む18歳以上で、生鮮品を買う者合計

いくつかの生活行動圏 第10回(2003)結果より

調査対象範囲

通勤・通学圏 地元への出向が多い

平常時の通院 地元への出向が多い

重症時の通院 拠点が形成される

介護通所 地元への出向が多い

おかやま地域 品目別の商圏変化と特徴 1991と2003の比較 生鮮食品,洋服, 家庭電気器具,映画・レジャー

生鮮食品 最寄品の代表品目 住所の近くでの購入が比較的多い 地元中小小売店が得意とする品目の1つ 客単価は小さいものの来店頻度が多いことが期待される

生鮮 1991

生鮮 2003

生鮮食品の傾向 かつては予想通り地元購入が多かった 次第に,最寄性が失われてきた 生活様式の変化(出向頻度の減少) モータリゼーション 大型量販店でのまとめ買い 生活様式の変化(出向頻度の減少) 頻度も毎日から週に2回程度に 参考: 生鮮頻度「週2・3回」55% (玉野市消費者調査2003夏)

洋 服(主に婦人服) 買回り品の代表的な品目 時間距離よりも購買品目や店舗優位性により商圏が決まる 洋 服(主に婦人服) 買回り品の代表的な品目 時間距離よりも購買品目や店舗優位性により商圏が決まる このため,県下市部に点在し,地域の商圏を形成し,その中で岡山市,津山市の吸引力が大きい商品

洋服 1991

洋服 2003

洋服の傾向 買回り品のため,主要商業施設のある市町村への集中傾向にある 岡山市の商圏が県南東部から県西北部にかけて連なって形成されている 80年ごろ勝山町にあった商業核は,その後,久世町に移動した 90年代以降地域に点在した商圏は岡山市や津山市に次第に吸引傾向にある

家庭電気器具 かつては,地元市町村での購買率の高い商品(運搬や据付などの面から) 郊外型大型量販店の進出に伴い,各地に商圏核が形成された

家電品 1991

家電品 2003

家庭電気器具 1980年ごろは地元購買が多く,他市町村への流出は少なかった その後,家電専門量販店の郊外進出が相次いだ 現在では県内の各地に商圏核が形成されており商圏の分散傾向にある

映画・レジャー 消費行動は物販中心からレジャー志向へ移行する傾向にあるといわれている 市部中心に展開してきた商圏核は,近年,新形態「シネマコンプレックス」型劇場の登場により,その構造に変化が起き始めている

映画等 1991

映画等 2003

映画・レジャーの傾向 1991年は岡山市,津山市への2極化が始まる 途中、岡山,津山の2極がさらに進む しかし, 2003年には倉敷への集中傾向となり,3曲構造となる 倉敷が県下ナンバーワンになる 倉敷のシネマコンプレックスの影響顕著

生活行動圏調査の終結 多額の経費負担、銀行支店の協力が難しくなってきた それに代わる婦人会などの偏り(県民の抽出からはズレてきた) 岡山県下78市町村→27市町村へ 地域の商店街の沈滞・消滅 2003年第10回を最後に終了

POSデータを始め、大量データが容易に収集できる環境が整ってきた ICカードなどによりその規模や範囲はさらに広がることだろう その一方で個人の意見は調べづらく危機的な状況にある このような時代だからこそ、これまでの調査技法の知恵やマインドがますます必要になる 分析のみならず回答を収集することの重要性をもう一度見つめるべき

商圏構造を,数値地図を利用した表現法を検討 地図情報など基本情報の整備,公開,保守の重要性 商圏構造の定量的評価が課題 行動を規定する要因抽出やモデル化へ(質のGIS化はこれからの課題) 距離や時間や勤務・通学地など地図情報 購買意識や様式の変化 など量と質の両面で

ご清聴ありがとうございました