エネルギー回収と投入による振動体振幅の制御

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エネルギー回収と投入による振動体振幅の制御 平成30年度 修士論文発表会 振動発電機を用いた エネルギー回収と投入による振動体振幅の制御 Control of vibration amplitude by generation and regeneration of energy using vibration energy harvester 騒音振動工学研究室 学籍番号:15301385 名前:稲田 千翔之 指導教員 小林 泰秀 准教授 それでは 題目 といたしまして稲田が発表します.

研究背景 振動発電 環境中の振動エネルギーより発電する 用途:ワイヤレスセンサーの電源 発電による振動体の振幅変化が考慮されていない 環境に存在する振動の周波数は未知 現在普及しつつある技術として,振動発電技術があります.環境中の振動源によって揺れている振動体の振動エネルギーより発電する技術で,外部からの電源供給のできないワイヤレスセンサーに利用できます.しかし,発電による振動体の振幅変化が考慮されていないこと,また通常,振動の周波数は未知であり,発電機の固有振動数が一致しない場合があることから,負荷に対して常に高い発電効率でエネルギーが得られるとは限りません. 常に高い発電効率を得られるとは限らない

研究目的(最終目的) 最終目的 振動体の周波数に追従し,発電の最大効率を維持する振動発電機を実現する …このために 発電機負荷 発電機の固有振動数 の動的な制御が実用上重要 そこで最終目的として,振動体の周波数に追従し,発電の最大効率を維持する振動発電機を実現することを目指します.このためには発電機負荷と発電機の固有振動数の動的な制御が重要となると考えられますが

研究目的(本研究での条件設定) …ただし本報告では 振動体の周波数は既知かつ一定で振動体の周波数と発電機の固有振動数が一致 振動体の目標振幅を維持するように負荷を動的に調整 発電効率の最大化 振動体の振幅に依存して負荷を変化 ただし本報告では簡単のため,まず振動体の周波数は既知で一定であるとし、それに一致するように発電機の共振周波数が決定される場合を考えます。 また,発電効率の最大化は振動体の振幅に依存して負荷を変化させることになるため、振動体の目標振幅を維持するように負荷を動的に調整することを考えます。

修士論文概要(本発表で説明する内容) 第2章 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた 振動体振幅の制御(先行研究[5])の概要 第2章 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた      振動体振幅の制御(先行研究[5])の概要 振動体振幅の維持のためにエネルギー散逸を利用 第3章 交流電源によるエネルギー回収・投入を       用いた振動体振幅の制御 第4章 コンデンサによるエネルギー回収を用いた        振動体振幅の制御 ここで、修士論文の概要について簡単に紹介します. 先行研究の内容である第二章では振動体振幅の維持のために抵抗によるエネルギー散逸を利用します.第3章からは,発電したエネルギーを回収して保存し,系への再投入を行うことで振動体の振幅制御をすることを検討します.そのために第3章ではエネルギーの回収と,保存したエネルギーの投入を簡単のため交流電源によって模擬し,4章では実際にエネルギーの回収をしつつ振動体振幅の制御を行うことを検討します.本発表では,この第2章から4章まで順番に説明していきます. 振動体振幅の維持のために,発電したエネルギーを回収保存し再投入 3章:エネルギーの回収と,保存したエネルギーの     投入を交流電源によって模擬 4章:実際にエネルギーの回収

実験装置 i 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 w(t) x1(t):振動体の変位 Generator Vibrating body Vibration source A/D PIO Driver PC m1 m2 k1 x0(t) x1(t) w(t) R(t) i Mirror Laser PSD v1(t) PSD circuit RS(t) x1(t):振動体の変位 v1(t):変位電圧 RS(t):可変抵抗指示値 R(t):可変抵抗値 始めに第2章について述べます.まず実験装置の説明をします. ここに振動体があり,その中に振動発電機が設置されています.そして振動体が、こちらの加振源によって加振されます。 振動体の変位x1は,レーザー変位計から出力される変位電圧v1として取得しており、実験ではこの変位電圧の振幅を目標値一定に維持することで、振動体の振幅制御を行います。 変位電圧の振幅を目標値一定に維持するためには可変抵抗値R(t)の大きさに比例する抵抗指示値RS(t)を自動調整します. [5]永井和貴, 稲田千翔之, 小林泰秀, "振動体の振幅を一定とする振動発電機負荷のフィードバック制御系の安定性解析",第60回自動制御連合講演会 (2017)

予備実験 抵抗値最大(回路開放) 振幅最小 抵抗値最小(回路短絡) 振幅最大 抵抗値最大,最小の中間でv1(t)の振幅を制御 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 抵抗値最大(回路開放) 振幅最小 抵抗値最小(回路短絡) 振幅最大 抵抗値最大,最小の中間でv1(t)の振幅を制御 予備実験にて抵抗値を手動調整したときの図を右側に示します.縦軸は振動振幅で横軸は抵抗値です. 予備実験では抵抗値が大きくなるほどv1の振幅は小さく,一方で抵抗値が小さくなるほどv1の振幅は大きくなる結果が得られており,制御実験ではそのときの最大値と最小値の中間で制御が可能です.

定常発振制御系のブロック線図 i 制御系の目的 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 w(t) LPF 𝜋 2 PI cont. eu(t) 𝑉 1(t) - 𝑉 1 * u(t) Generator Vibrating body Vibration source m1 m2 k1 x0(t) x1(t) w(t) R(t) i Mirror Laser PSD v1(t) PSD circuit RS(t) 続いて制御系のブロック線図について簡単に説明します.振幅制御には定常発振制御系を用いて,変位電圧 𝑣 1 (𝑡)の推定振幅 𝑉 1(t)が目標値 𝑉 1 *一定となるように抵抗指示値RS(t)を変化させて制御しています. 現在赤で示されている部分はレーザー変位計からの変位電圧から推定振幅を出す部分で, (変位電圧の振幅は,出力された変位電圧v1は絶対値関数とローパスフィルタ(カットオフ角周波数0.25rsd/s)を通して平滑化した後,係数π/2を乗じることで推定振幅𝑉 ̂1(t)として得ます.) 制御系の目的 変位電圧 𝑣 1 (𝑡)の推定振幅 𝑉 1(t)が目標値 𝑉 1 *一定となるように抵抗指示値RS(t)を変化させる

定常発振制御系のブロック線図 i 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 w(t) u(t) Vibration source u(t) RS(t) eu(t) PI cont. k1 x0(t) i Vibrating body 𝑉 1 * Generator - R(t) m2 𝑉 1(t) 𝜋 2 LPF m1 x1(t) Mirror Laser その振幅と目標値との偏差をPI補償器へ入力し, PSD v1(t) PSD circuit

定常発振制御系のブロック線図 i 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 w(t) u(t) Vibration source u(t) RS(t) eu(t) PI cont. k1 x0(t) i Vibrating body 𝑉 1 * Generator - R(t) m2 𝑉 1(t) 𝜋 2 LPF m1 x1(t) Mirror Laser その出力を指数関数に通し正数に変換したものを指示値Rs(t)として用いています. PSD v1(t) PSD circuit

実験結果 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 目標値V1* (0.8V) 実験結果を示します.右の図は左の図の拡大図です.図中赤線がレーザー変位計から出力される変位電圧,緑線がその推定振幅,青線が抵抗指示値を示しています.制御開始後,所望の振動振幅になるように抵抗値が自動調整され,振動振幅が一定に落ち着いていることがわかります.また,拡大図より,振幅の大きさは目標値に収束していることがわかります.したがって抵抗値の調整によって振動体の振幅が目標値に収束することがわかります。 抵抗値の調整によって振動体の振幅が目標値に収束する

先行研究のまとめと課題 先行研究のまとめ 抵抗値の調整によって振動体振幅を目標値に維持ができる 課題 抵抗はエネルギーの散逸のみ 抵抗によるエネルギー散逸のみを用いた振動体振幅の 制御(先行研究[5])の概要 先行研究のまとめ  抵抗値の調整によって振動体振幅を目標値に維持ができる 課題 抵抗はエネルギーの散逸のみ 維持できる振動体の振幅は加振源の振幅の大きさよって制約される 加振源の振幅が小さくなり目標値の大きさを維持できなくなる場合,振幅の制御ができない ここまで,抵抗値の調整によって振動体振幅を目標値に維持ができることがわかりました.ただし抵抗はエネルギーの散逸のみを行えるものであるため,維持できる振幅の大きさは加振源の振幅によって制限されるため,加振源の振幅が小さくなり,振動体の振幅が目標値の大きさを維持できなくなる場合にその制約を超えて大きな目標値に制御することはできません.このため本研究では,発電したエネルギーを回収して保存し,系への再投入を行うことで振動体の振幅制御をすることを検討します. 発電したエネルギーの回収・保存 加振源の振幅が小さいときに保存したエネルギーを系に投入

実験装置 簡単のため v0(t) 交流電源より電源電圧 𝑣 0 (𝑡)を生成 交流電源によるエネルギー回収・投入を用いた振動体振幅の制御 D/A v0(t) Generator Vibrating body Vibration source A/D PIO Driver PC m1 m2 k1 x0(t) x1(t) w(t) Mirror Laser PSD v1(t) PSD circuit 簡単のため 加振源の駆動信号w(t)を利用可能とする 交流電源によってエネルギー回収・投入が可能であるとする 交流電源より電源電圧   𝑣 0 (𝑡)を生成 第3章の説明に移ります.実験装置は第2章の装置の可変抵抗器を交流電源に変更したものです.簡単のため振動源の信号を使用でき,交流電源によってエネルギー回収と投入が可能であるとするとします.交流電源電圧と振動源の周波数を合わせるため,電源電圧の生成には振動源の駆動信号を利用します. 交流電源は振動発電機の端子に直接接続され,電圧v0(t)を生成します.

定常発振制御系のブロック線図 v0(t) 時変ゲイン𝑮(𝒕)を変化させて振動体振幅を制御する 交流電源によるエネルギー回収・投入を用いた振動体振幅の制御 𝑤(𝑡)= 𝑋 0 sin 𝜔 𝑛 𝑡 ,  𝜔 𝑛 =2𝜋 𝑓 0 𝑋 0 :振動源振幅  𝜔 𝑛 :振動源角周波数 w(t) Vibration source PI cont. k1 x0(t) Vibrating body v0(t) 𝑉 1 * Generator G(t) m2 - 𝑉 1(t) m1 x1(t) 𝜋 2 LPF Mirror Laser 続いて制御系のブロック線図を示します.第2章の制御系と異なる点は赤で示されているところで,PI補償器の出力を直接時変ゲインG(t)とし,それを振動源の駆動信号に乗じることで電源電圧を得ます.この時変ゲインG(t)を変化させることで,振動体振幅制御を行います. PSD v1(t) PSD circuit 時変ゲイン𝑮(𝒕)を変化させて振動体振幅を制御する

予備実験 G(t)を定数としたときの 電力の向きの変化 振動体の振幅変化 交流電源によるエネルギー回収・投入を用いた振動体振幅の制御 を見る v0’:振動発電機側の電圧 v0:交流電源側の電圧 制御実験の予備実験として,G(t)を定数としてときの電力の向きの変化と振動体の振幅の変化とを見ました.電力の向きは振動発電機側と交流電源側との間に抵抗を接続し,振動発電機側の電圧V0ダッシュと交流電源側の電圧V0をオシロスコープで計測することで観測します.

予備実験 電力の向き 交流電源によるエネルギー回収・投入を用いた振動体振幅の制御 G(t)が正 G(t)が負 1.2V G(t)が正 v0’とv0は同相 振幅:v0’> v0 電力の向き 振動発電機→交流電源 1.0V G(t)が負 v0’とv0は同相 振幅:v0’< v0 電力の向き 振動発電機←交流電源 0.5V 1.0V 右側にオシロスコープの画面を撮影したものを示します. まず,電力の向きについてですが,G(t)が正のとき,負のときどちらの場合でもv0’とv0は同相となり,その振幅はG(t)が正のときはv0’が大きく,負のときはv0が大きくなりました したがって,電力の向きはG(t)が正のときは振動発電機側から交流電源側へとなり,負のときはその逆となることがわかります.また,振動体振幅はG(t)がゼロのときと比べて,G(t)が正のときは小さく,G(t)が負のときは大きくなる結果を得られました.したがってG(t)の正負によって,エネルギーの回収と投入の模擬ができていることがわかりました. 振動体振幅はG(t)が0(回路短絡)のときと比べて G(t)が正:減少 G(t)が負:増加 G(t)の正負によってエネルギーの回収と投入の模擬ができる

制御実験 振動体の振幅が小さい場合(G(t)=0の時, 𝑉 1 (t)は約1.3V) G(t)が負の方向へ増加 交流電源によるエネルギー回収・投入を用いた振動体振幅の制御 振動体の振幅が小さい場合(G(t)=0の時, 𝑉 1 (t)は約1.3V) 加振源の振幅:0.02mm v1の振幅目標値V1*:1.8v G(t)が負の方向へ増加 𝑉 1 (t) (G(t)=0) V 1 (t) V 1 (t) 続いて制御実験の実験結果を示します. まず振動体の振幅が小さい場合の時間応答を示します.PIゲインは試行錯誤的に決定しています. 青線が時変ゲインG(t)を示しており,右の図は左の図の拡大図です.制御は0秒から開始されており,制御開始後約30秒で振幅が一定値に収束していること,【マウスクリックしてアニメーション】時変ゲインが負の方向へ大きくなっていること,【マウスクリックしてアニメーション】振動体の振幅が大きくなっていることがわかります.拡大図を見ると,振幅が青の点線で示されている目標値に収束していることがわかります. KP=10000,KI=5000

制御実験 振動体の振幅が大きい場合(G(t)=0の時, 𝑉 1 (t)は約2.2V) G(t)が正の方向へ増加 交流電源によるエネルギー回収・投入を用いた振動体振幅の制御 振動体の振幅が大きい場合(G(t)=0の時, 𝑉 1 (t)は約2.2V) 加振源の振幅:0.03mm v1の振幅目標値V1*:1.8v G(t)が正の方向へ増加 𝑉 1 (t) (G(t)=0) V 1 (t) V 1 (t) 振動体の振幅が大きい場合の時間応答を示します.制御開始後約30秒後に振幅が一定値に収束していること,【マウスクリックしてアニメーション】時変ゲインが正の方向へ大きくなっていること,【マウスクリックしてアニメーション】振動体の振幅が小さくなっていることがわかります.また,拡大図より,振幅が青の点線で示されている目標値に収束していることがわかります.したがってエネルギー回収と投入切り替えることによって振動体の振幅が目標値に収束することがわかりました。 KP=10000,KI=5000 エネルギーの回収と投入により振動体の振幅が目標値に収束する

Laser displacement gauge 実験装置 コンデンサによるエネルギー回収を用いた振動体振幅の制御 Generator Vibrating body Vibration source A/D PIO Driver PC v1(t) m1 m2 k1 x0(t) x1(t) w(t) Laser displacement gauge R(t) C R1 vc 1 2 Differential amplifier circuit RS(t) コンデンサの充電電流を動的に変化させ振動体の振幅制御を行う 簡単のため充電電流の調整に可変抵抗器を用いる ブリッジダイオードとコンデンサを追加 実験前にR1で放電 第4章の説明に移ります.この実験装置はコンデンサの充電電流を調整し振動体振幅の制御を行おうとするものです.充電電流の調整には簡単のため,可変抵抗器を用います.実験装置は第2章の装置にブリッジダイオードとコンデンサ,放電用の抵抗R1を加えたものです.コンデンサのプラス端子を端子1番につなげることで可変抵抗と直列に接続することができます.

定常発振制御系 抵抗指示値RS(t)を変化させ充電電流を調整し 振動体の振幅を制御 コンデンサによるエネルギー回収を用いた振動体振幅の制御 Vibration source k1 x0(t) u(t) RS(t) eu(t) PI cont. R(t) Vibrating body Generator 1 m2 𝑉 1 * 2 C R1 m1 - x1(t) 𝑉 1(t) Laser displacement gauge 𝜋 2 LPF v1(t) 続いて本章の実験で使用する制御系のブロック線図を示します.可変抵抗R(t)への指示値Rs(t)を変化させることで,コンデンサへの充電電流を調整し,振動体の振幅の制御を行います. 抵抗指示値RS(t)を変化させ充電電流を調整し 振動体の振幅を制御

振動体の振幅はコンデンサの充電が進むにつれて小さくなる 実験結果(制御無し) コンデンサによるエネルギー回収を用いた振動体振幅の制御 振幅目標値V1* = 0.12 V KP = 0,KI = 0 実験結果を示します. まず”制御無し”の結果を示します.コンデンサは放電を行ってから,可変抵抗器に20秒の時点で接続しています.右図の青線Vcはコンデンサ電圧ですがノイズが大きいため,ローパスフィルタ(カットオフ角周波数1rad/s)によってノイズを除去したものを桃色線で示しています.コンデンサと抵抗を接続した直後である20秒付近で振動振幅は最大値に達し,その後徐々に振幅が小さくなっていることがわかります.またその時のコンデンサの電圧は常に上昇していくことがわかります.この結果より,抵抗値の操作がなくても,振動体の振幅はコンデンサの充電が進むにつれて小さくなっていくことがわかります. 振動体の振幅はコンデンサの充電が進むにつれて小さくなる

実験結果(制御あり) 振幅目標値V1* = 0.12 V コンデンサによるエネルギー回収を用いた振動体振幅の制御 KP = 1,KI = 6 続いて”制御あり”の結果を示します.制御は20秒の時点で開始しています.左側の図より,振幅がおおよそ一定に落ち着いているとき,抵抗値はほぼ一定の速度で低下していることがわかります.また,その拡大図である右側の図より,振幅は目標値との間にまだわずかな偏差があり,一方で一定に見えていた振幅は右肩下がりに低下していくことがわかります.

実験結果(KIを増加) 振幅目標値V1* = 0.12 V 振動体の振幅 PI補償器に二重積分器を追加 コンデンサによるエネルギー回収を用いた振動体振幅の制御 振幅目標値V1* = 0.12 V KP = 1,KI = 6,8,10,15 振動体の振幅 時間経過で減少するtの関数 本実験では… 偏差を小さくするため,KIを増加させていったときの振幅を示します.偏差が小さくなっていく一方で,右肩下がりの傾向は変わらないように見えます.この理由として,本実験での振動体の振幅は,時間が経つにつれ減少していくtの関数であり,このためランプ状の目標値信号に対して,1型のサーボ系によって,定常偏差がなくならないことと同様に,定常偏差が残っていると考えられます.そこで,PI補償器に2重積分器を追加し新たに実験を行いました. PI補償器に二重積分器を追加

実験結果(2重積分器を追加) 振幅目標値V1* = 0.12 V コンデンサによるエネルギー回収を用いた振動体振幅の制御 u(t)= 𝐾 𝑃 𝑒 𝑡 + 𝐾 𝐼 𝑒(𝑡) 𝑠 + 𝐾 𝐼2 𝑒(𝑡) 𝑠 2 追加 u(t):PI補償器からの出力 KP:比例ゲイン KI:積分ゲイン KI2:2重積分器のゲイン e(t):偏差 [KP = 1,KI = 15 ,KI2= 0 ,0.3] 右上の式のように新たに2重積分器を追加しました.図は2重積分器を追加して行った結果の振幅と2重積分器を追加する以前の振幅を重ねて示します.図より2重積分器を追加した結果,振動体振幅は徐々に目標値に近づいていき,目標値付近で落ち着くときがあるように見えます.このような傾向は2重の積分器を追加する以前の実験では見られなかった傾向で,したがって2重積分器を追加することで振幅の目標値での維持が可能になると考えられます.

まとめ エネルギーの回収・投入によって振動体振幅を維持するシステムの検討をした 今後の課題 エネルギーの回収と投入により振動体の振幅が目標値に収束することを示した より実用的なシステムを構築するため,コンデンサの充電を利用し,エネルギーの回収をしつつ振動体振幅を所望の大きさ一定とする制御系の実現可能性を示した 今後の課題 可変抵抗器はエネルギーの消費を伴うため,  可変抵抗器を利用せずに,コンデンサ充電電流の調整する 最後にまとめです. 今回,エネルギーの回収・投入によって振動体振幅を維持するシステムの検討をしました このうち,エネルギーの回収と投入によって振動体振幅の調整ができることを示し,またより実用的なシステムを構築するため,コンデンサの充電を利用し,エネルギーの回収をしつつ振動体振幅を所望の大きさ一定とする制御系の実現可能性を示しました. 今後の課題は,可変抵抗器はエネルギーの消費を伴うため,これを利用せずに,コンデンサ充電電流の調整することです.