横国大理工 ○中津川博、窪田 正照、伊藤篤志

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横国大理工 ○中津川博、窪田 正照、伊藤篤志 日本金属学会春期大会 (2014) 熱電材料 Pr1-xSrxMnO3の磁性と熱電特性 横国大理工 ○中津川博、窪田 正照、伊藤篤志 それでは、このようなTitleで横浜国大 中津川が発表させて頂きます。 2014/3/23

oxide thermoelectric materials Disadvantage Advantage 50%Co3+ 50%Co4+ CaMn0.98Mo0.02O3 g3 = 1 g4 = 6 Ca2.7Bi0.3Co4O9 50%Mn3+ 50%Mn4+ 酸化物熱電変換材料は、N型としてMnペロフスカイト酸化物、P型としてCa349が高い熱電性能を示す材料として知られています。こちらは、Urataらによって報告された酸化物熱電変換モジュールですが、熱電発電を繰り返す過程で熱膨張率の違いによりN型素子が破断するという問題が指摘されています。しかしながら、Hikesの式が示すように、Coはlow-spin状態を取るので154μV/Kという高いゼーベック係数が期待されます。Mnはhigh-spin状態を取るので79μV/Kという高いゼーベック係数が期待されます。更に、Mnペロフスカイト酸化物は、Mn3+ richの系ではP型、Mn4+ richの系ではN型となり、Mn酸化物のみのモジュールの作製も可能です。 Urata et al, Int. J. Appl. Ceram. Technol. 4, 535-540 (2007) g3 = 10 g4 = 4 2014/3/23

oxide thermoelectric generation 50℃ 50mm heater 640K 297K water cooled heatsink Ca0.99Yb0.01MnO3 [(Ca0.9Y0.1)2CoO3]0.62CoO2 R=2.54Ω, |S|=3.98mV/K Z<T> = 0.25 ⊿T = 343K 0℃ alumina plate 1.4V 0.2W 50μm silver sheet silver paste 我々が作製した酸化物熱電変換モジュールを示します。N型としてMnペロフスカイト酸化物、P型としてCa349を使用し、10対のPN素子で構成されています。このモジュールをヒーターと水冷ヒートシンクで挟み、343Kの温度差を付けて、外部負荷に掛かる電圧と電流を測定しますと、開放電圧1.4V、最大電流0.6Aで最大出力0.2Wの熱電発電を示しました。このモジュールは電極と素子の接合が良好で、接触抵抗の少ない熱電発電を示しています。もし、50対のPN素子が作製できれば、1Wの最大出力が期待されます。また、Z<T>=0.25より、最大変換効率4%が見積もられます。 ηmax = 4% our power generation thermoelectric oxide module 0.6A 2014/3/23 0.54A

Phase diagram of Mn oxides La1-xCaxMnO3 Pr1-xSrxMnO3 metal metal A-type AFM 本研究では、Mnペロフスカイト酸化物のみで熱電変換モジュールを作製するために、高いP型の性能を示すMn酸化物を探索することを目的とします。LaCaMnO3系ではx=0.2で強磁性絶縁体から強磁性金属に変化するので、x=0.1~0.2で高いP型の性能が期待されます。一方、PrSrMnO3系ではx=0.3で強磁性絶縁体から強磁性金属に変化するので、より広い組成範囲で高いP型の性能が期待されます。 P-type N-type P-type N-type Schiffer et al, Phys. Rev. Lett. 75, 3336-3339 (1995) Tokura et al, Physica C. 263, 544-549 (1996) 2014/3/23

Experimental procedure standard solid-state reaction sintered 1673K in N2 X-ray diffraction @RT RINT2500 (Rigaku, 40kV, 200mA) Rietveld analyses RIETAN-FP program magnetic susceptibility MPMS (Quantum Design) 5K-RT, H=1T electric resistivity 80K-395K (ResiTest8300 ) 373K-1073K (ZEM-3) Seebeck coefficient thermal conductivity @RT TC-7000-R (ULVAC) 実験方法です。LaCaMnO3系はx=0.1, 0.2, 0.3, 0.4の四種類、PrSrMnO3系はこれら六種類の試料を一般的な固相反応法を用いて、窒素雰囲気中1673Kで焼成しました。結晶構造はX線回折測定より、リートベルト解析によって同定しました。磁化率はMPMSを用いて、5Kから室温の温度範囲で測定しました。電気抵抗率とゼーベック係数は、80Kから395Kの温度範囲ではResiTest8300、373Kから1073Kの温度範囲ではZEM-3を用いて測定しました。熱伝導率は室温でTC-7000-Rを用いて測定しました。 X=0.1 X=0.3 X=0.5 X=0.7 X=0.2 X=0.4 Tokura et al, Physica C. 263, 544-549 (1996) 2014/3/23

Seebeck coefficient La1-xCaxMnO3 Pr1-xSrxMnO3 結果です。ゼーベック係数の温度依存性を示します。LaCaMnO3とPrSrMnO3は共に、x=0.1で200K付近に高いP型のゼーベック係数を示しています。LaCaMnO3よりもPrSrMnO3の方が高いゼーベック係数を示していますが、これは後に示しますMn-O-Mn角度の傾きに依存していると考えられます。PrSrMnO3の方がより大きく傾いておりますので、3d電子の局在がより大きいと考えられます。x=0.4では両者共にN型のゼーベック係数を示します。 2014/3/23

electric resistivity La1-xCaxMnO3 Pr1-xSrxMnO3 電気抵抗率の温度依存性を示します。LaCaMnO3はx=0.2で、PrSrMnO3はx=0.3で金属-絶縁体転移が確認されます。LaCaMnO3がx=0.3で高抵抗になっているのは、構造相転移によるものであると考えられます。また、PrSrMnO3がx=0.4でより低抵抗になっているのは、二重交換相互作用による強磁性が強く作用している為であると考えらます。 2014/3/23

XRD@RT : lattice constant 93% 7% perovskite structure 室温でのX線回折データをリートベルト解析した結果を示します。LaCaMnO3はx=0.3で斜方晶から正方晶へ構造相転移しており、PrSrMnO3ではx=0.4~0.5の間で構造相転移しています。 pseudo-cubic structure 2014/3/23 La1-xCaxMnO3 Pr1-xSrxMnO3

XRD@RT : Mn-O-Mn angle La1-xCaxMnO3 Pr1-xSrxMnO3 LaCaMnO3ではab面内のMn-O-Mn角度が180°から大きく傾いていますが、PrSrMnO3ではc軸方向のMn-O-Mn角度も約160°に傾いています。これが、PrSrMnO3でより高いP型のゼーベック係数を示した原因であると考えられます。 2014/3/23 La1-xCaxMnO3 Pr1-xSrxMnO3

thermal conductivity @RT La1-xCaxMnO3 LaCaMnO3の室温で測定した熱伝導率を示します。xの増加に従い、Mn-O-Mn角度の傾きが減少しますので、熱伝導率が増加傾向を示すと考えられます。ただし、約1.5W/mKという低い熱伝導率を示しています。 2014/3/23

Seebeck coefficient Pr1-xSrxMnO3 PrSrMnO3の熱電特性を探索する為、高温物性をZEM-3を用いて測定しました。x=0.1と0.2のP型のゼーベック係数は、高温ではN型に変化して行くことが分かります。また、x=0.5と0.7についても測定し、高いN型のゼーベック係数を確認しました。 2014/3/23

electric resistivity Pr1-xSrxMnO3 電気抵抗率の温度依存性を示します。x=0.1と0.2は半導体的挙動を示していますが、x=0.3と0.4では強い強磁性相互作用により金属-絶縁体転移が確認されます。一方、x=0.5と0.7では電荷整列により低温での金属的挙動が消滅していますが、高温では低い電気抵抗率が維持されています。 2014/3/23

Figure of merit : ZT Pr1-xSrxMnO3 以上のデータの性能指数ZTを示します。x=0.1のP型の熱電性能は500KでZT=0.002の極大値を示します。一方、N型の熱電性能は温度に対して単調増加を示し、x=0.7ではZT=0.09の最大値に近づいています。ここで、熱伝導率は1.5W/mKと仮定しました。 2014/3/23

summary Mnペロフスカイト酸化物中のMn-O-Mn角度の傾きはMn中の3d電子の局在に影響を及ぼし、傾きを制御することでP型の熱電性能を向上できる。 強い強磁性相互作用は高いP型の熱電性能を示す組成範囲を制限する一方、N型の熱電性能の向上が期待できる。 Pr1-xSrxMnO3では、x=0.1で500KにおいてZT=0.002のP型の極大値を示し、x=0.7でZT=0.09のN型の最大値を高温で示す。 以上を纏めます。 2014/3/23

Thank you for your kind attention. ご清聴有難うございました。 2014/3/23