描写作品コンクール2回目
52469 空が雲に覆われ辺りは灰色。 そよそよと揺れている紅い木々。 割れ目ができた黒い雲。 そこから、現れた一筋のカーテン。 黒土が白く照らされる。
52102 夜になっても暗くならない町。 空から白い雪が舞い落ちる。 大きなクリスマスツリーはきらきら光っている。 流れる歌は思い出の曲。 ショーウィンドウには沢山のおもちゃが飾られている。
52486 冷たい風。 暗くなった町。 静まりかえる木々。 オリオン座が天で輝く。
52437 街灯が点く。 暗闇の中にイチョウの木が浮かびあがる。 黄色い葉の先から雫が落ちた。 下に溜まった水溜りに波紋ができる。 水溜りの平面が再び鏡のように戻ると、周囲もまた静寂につつまれた。
52435 「ミーン、ミーン、ミシミシシー。」 腹をせわしく震わせながら、音を出す無数の塊。 1匹がぽとりと地面に落ちた。羽は破れ、脚が1本欠けている。 それでもなお、木の根元にしがみつき、夕日が沈みかけた空へと最後の音を響かせた。
52478 うっすらと辺りが明るくなってきた。 人々は白い息を吐きながら駅へ向かう。 自然と足早になり、ただカツカツと靴音だけが響いている。
52405 太陽が少しずつ欠けていく。 まぶしい光が次第に月の影で覆われていく。 ダイヤモンドリング、そして昼間なのに闇の世界。 影を抜け、再び太陽は輝きを取り戻した。 街角で立ちどまって見ていた人々も、何事もなかったかのように活動を再開する。
52103 樫の樹にぶら下がっている,小さなどんぐり。 風に吹かれて,そのどんぐりが落ちた。 次の日,それは「小さな前足」に拾われた。 帰り道の途中で,「小さな前足」は「今日の収穫」を土の中に隠した。 次の年,すっかり忘れ去られてしまった小さなどんぐりは,土の中でひっそりと芽を吹いた。
51510 目覚まし時計が荒々しくなり始めた。 郵便配達のバイクがあわただしく走り去る。 隣の台所ではやかんがしゅんしゅんと音をたてる。 薄明るい朝日は、部屋を優しく照らしている。 庭の土は雪で覆われていた。
52450 線路ぞいの家々を、夕日が照らしている。 そのうちの一つ、レンガ作りの一戸建ての前に、少女は赤い自転車を止めた。 鍵を開けて家に入り、靴箱の上の手さげ袋を取る。 中を見て、センター試験の過去問題集を確認し、少女はドアを出て鍵をかける。 手さげ袋を肩にかけて自転車にまたがり、ペダルに足をかけた。
52110 ねこがいる。 風が吹いた。 茶色い葉っぱが音を立ててどこかへいった。 ねこはベンチの下にかくれた。 丸くなってしまった。
52419 朝、目を覚ます。 布団から出る。 寒さに躊躇し、しばし思案する。 結局立ち上がり、窓を開ける。 冷気を含んだ風が頬を差す。
52458 籠の中にみかんがある。 その周りに用のなくなった皮が散らばっている。 少年の顔が隣に並ぶ。 毛布を掛けた。 足元の猫もその中に潜り込み、丸くなった。
52465 太陽がやっと顔を出しはじめた。 辺りはまだほのかに夜の静けさを感じさせる。 窓の外に吹きつける冷たい風。 中では暖かいミルクが柔らかな湯気をたてている。 いつの間にか窓は白く染まり外が見えなくなっていた。
52473 コートにブーツ姿で街路を歩く女性たち。 信号が赤になり立ち止まる。 突然、風が吹いた。 彼女たちは一斉に身をすくませる。 信号が変わり、みんな足早に歩き始めた。