東京大学ICEPP 織田 勧 日本物理学会秋季大会 シンポジウム RHICで切り拓くQCD物性の世界 2008年9月22日(月) 山形大学

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東京大学ICEPP 織田 勧 日本物理学会秋季大会 シンポジウム RHICで切り拓くQCD物性の世界 2008年9月22日(月) 山形大学 1/17 J/yで観る 閉じ込めの破れ 東京大学ICEPP 織田 勧 日本物理学会秋季大会 シンポジウム RHICで切り拓くQCD物性の世界 2008年9月22日(月) 山形大学

2/17 動機 チャームクォークと反チャームクォークの深い束縛状態であるJ/yも閉じ込めが破れたQGP中では色デバイ遮蔽により分解するはず。 T. Matsui and H. Satz, Phys. Lett. B 178, 416 (1986) 重クォーク(チャーム, ボトム)が生成されるのは衝突初期のハード散乱のみ。 RHICのエネルギー(√sNN=200GeV)では主にグルオン・フュージョン (g+gJ/y+X) J/yの収量が抑制されればQGP生成の証拠になり、系統的に測定すればQCD物性を調べられるはず。 競合する効果 原子核効果 原子核中でのパートン分布関数の変化、J/yと原子核との衝突による分解 無関係のチャームクォークと反チャームクォークが再結合して収量が増える ccやy’やボトムクォークから崩壊してできるJ/yの寄与 分解温度の束縛エネルギー依存性 J/y c `c Physics motivation of J/psi measurement in heavy ion collisions is the most important probe for QGP study. Due to Debye color screening, J/psi will dissociate in the QGP. At RHIC energy, heavy quarks are created in initial hard collisions, mainly gluon fusion. However, there are competing effects, such as cold nuclear matter effects, feed down from excited charmonia and bottom quarks. Regeneration of J/psi from uncorrelated charm and anti-charm quarks is also important. So, we need to experimentally disentangle these effects. H. Satz, J. Phys. G 32, R25 (2006)

SPSでのJ/y測定 (√sNN=17.3GeV) 3/17 SPSでのJ/y測定 (√sNN=17.3GeV) Phys. Lett. B 477, 28 (2000) 2000年2月 sabs = 4.18 +/- 0.35 mb 生成されたJ/yが通過 する原子核の距離L L

RHICでのJ/yの測定 ~2% (Run5 p+p) ~8% (Run5 p+p) ~10% PHENIX実験 STAR実験 4/17 RHICでのJ/yの測定 ~2% (Run5 p+p) PHENIX実験 中心ラピディティ |y|<0.35 J/ye+e- 前後方ラピディティ 1.2<|y|<2.2 J/ym+m- STAR実験 |h|<1 トリガー Single ET トリガー E>3.5-5.4GeV Double electron トリガー Ei,,j>1.2GeV 2005年以後 arXiv:0806.0353 [nucl-ex] ~8% (Run5 p+p) ~10% at pT=10GeV/c

200GeV衝突でのPHENIXのJ/yの測定 5/17 200GeV衝突でのPHENIXのJ/yの測定 年/衝突系 p+p d+Au Cu+Cu Au+Au 2001-2002 PRL 92, 051802 (2004) PRC 69, 014901 2002-2003 PRL 96, 012304 (2006) PRC 77, 024912 (2008) 2004 PRL 98, 232301 (2007) 2005 PRL 98, 232002 PRL 101, 122301 2006 解析中 2007 2008 ★STAR

M.J. Leitch for the PHENIX collaboration, arXiv:0806.1244 [nucl-ex] 6/17 M.J. Leitch for the PHENIX collaboration, arXiv:0806.1244 [nucl-ex]

p+p衝突 (基準) 重イオン衝突のデータの比較の基準 J/yの生成モデルへの制限 7/17 PRL 98, 232002 (2007)

d+Au衝突 (原子核効果) 原子核中でのパートン分布関数の変化 原子核との衝突による分解断面積s 8/17 d+Au衝突 (原子核効果) 原子核中でのパートン分布関数の変化 DIS, DYで求まる構造関数から決める。 様々なパラメトリゼーションが用いられている グルオンが電荷を持っていないために大きな不定性がある 原子核との衝突による分解断面積s フィットパラメータ Phys. Rev. C 77, 024912 (2008)

重イオン衝突 (原子核効果+QGP?) 9/17 EKS98 shadowing model 実線はd+Auのデータから決められた 原子核効果から予測されるRAA 点線は±1sのバンド 原子核効果以上のJ/y 抑制は中心(前方)ラピディティでNpart~200(100)くらいで起こり始めているようだ。 → RHICでもJ/yを通して閉じ込めの破れが観えた! (2s弱の有意度) Phys. Rev. Lett. 101, 122301 (2008)

J/yの生成起源 √s=200GeVのp+p衝突でのJ/y生成 ccJJ/y+g 崩壊 : <42% (90% C.L.) 10/17 J/yの生成起源 4145 J/y give ~80 cc candidates J/y y’ √s=200GeVのp+p衝突でのJ/y生成 ccJJ/y+g 崩壊 : <42% (90% C.L.) y’J/y+X 崩壊 : 8.6 ± 2.5% bクォークJ/y+X 崩壊 : 3.6 +2.5-2.3% J/y の直接生成 : 残り

J/yの残存確率 SJ/y=RAA/RAA(原子核効果) 11/17 J/yの残存確率 SJ/y=RAA/RAA(原子核効果) nDSg shadowing model EKS98 shadowing model p+p 200GeV Cu+Cuの最中心衝突でJ/yの分解が始まり、 Au+Auの最中心衝突で直接生成したJ/yの分解が始まっているように見える。

Bjorkenエネルギー密度を基準に SPSのデータと重ねてみた(t0=1fm/cを仮定) 12/17 Bjorkenエネルギー密度を基準に SPSのデータと重ねてみた(t0=1fm/cを仮定) ポテンシャルモデルによる J/yのformation timeは t=0.9fm/c. EKS98 shadowing model RHICとSPSのJ/yのデータがエネルギー密度でスケールしている? Phys. Rev. C 71, 034908 (2005) arXiv:nucl-ex/0409015 RHICとSPSともにeBjに対してNpart scalingを仮定

2008年のd+Auのデータの重要性 13/17 色つきボックスは 原子核効果の分解断面積の誤差 現在これが一番大きい。 現在使っている2003年の データの30倍の統計量が 今年取れた。 -0.35<y<-0.35 -2.2<y<-1.2 1.2<y<2.2 それとは別に原子核中の グルオン分布関数には 大きな不定性

2008年のd+Auの データの重要性 (つづき) グルオン分布関数の不定性より、データの誤差が小さくなる。 14/17 2008年のd+Auの データの重要性 (つづき) expected accuracy simulation グルオン分布関数の不定性より、データの誤差が小さくなる。 分布関数を仮定しないGlauber計算を用いたdata driven modelの方が良さそう。 M.J. Leitch, arXiv:0806.1244 PHENIX collaboration, Phys. Rev. C 77, 024912 (2008) Global error = 12% RAA/CNM=55 +23–38 % |y|<0.35 Global error = 7% RAA/CNM =38 +18– 22 % 1.2<|y|<2.2

J/y v2 (2007年のAu+Auのデータ) 最終的には統計誤差は2/3くらいになる予定。 15/17 J/y v2 (2007年のAu+Auのデータ) 最終的には統計誤差は2/3くらいになる予定。 モデルを区別(棄却)するにはあと5倍の統計量は欲しい。 D. Krieg and M. Bleicher, arXiv:0806.0736

高横運動量へ (pT>5GeV/c, STARのデータ) 16/17 高横運動量へ (pT>5GeV/c, STARのデータ) Z.Tang, arXiv:0804.4846 200GeVでのp+p衝突ではbJ/y+X の寄与が全体では3.6 +2.5-2.3%だが、pT>5GeV/cでは20%以上 bの寄与を除いていないRAAはpTとともに増加しているように見える。 AdS/CFT対応を用いた計算(H.Liu et al., Phys. Rev. Lett. 98, 182301(2007))はRAAがpTとともに減少することを予測し、データとは合っていない。 Z.Xu and T.Ullrich, arXiv:0809.2288 U J/y

まとめ RHICでもJ/yを通して閉じ込めの破れが観えた!(2s弱の有意度) 17/17 まとめ RHICでもJ/yを通して閉じ込めの破れが観えた!(2s弱の有意度) Au+Au最中心衝突では直接生成されたJ/yも分解しているように見える。 統計的有意度を向上させるだけでなく、J/yを用いたQGP研究に2008年のd+Auのデータは本質的に重要。 今後も順調にルミノシテ ィが上がれば、より進ん だQCD物性研究が可能 になる。 LHCと切磋琢磨 #U x100 #J/y M.J. Leitch, arXiv:0806.1244 J/y & U  